AUDIOSENSE DT300

こんにちは。今回は「AUDIOSENSE DT300」です。アンダー2万円クラスの3BA構成のモデルで、3Dプリントによる美しいクリアシェルに金箔をあしらったフェイスプレートと、見た目の美しさも際立つイヤホンですね。ドライバーには「AUDIOSENSE」の既存モデル同様に「Knowles」製バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを全面的に採用し、音質面も質の高いサウンドを実現しています。
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AUDIOSENSE DT300」は中国のイヤホンブランド「AUDIOSENSE」の新モデルです。同社と言えばKnowles製ユニットによる8BAモデルで3万円台を実現した「T800」でマニアの間でも一躍有名になりましたが、その後も精力的に新モデルをリリースしており、最近では知名度もかなり上がってきました。また同社の初期の製品では樹脂製のシェルパーツを使用していましたが、「T800」以降では3Dプリンティングによる精度の高いレジン造形のハウジングを採用しており、見た目の美しさも特徴のひとつになってきていますね。
AUDIOSENSE DT300AUDIOSENSE DT300

今回の「AUDIOSENSE DT300」は同社にとって「T300」依頼の3BAモデルで、Knowles製のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーをそれぞれの音域にあわせて配置する3Way構成となっています。
搭載ドライバーにはKnowles製「WBFK-30095」(高域)、「ED-29689」(中域)、「CI-22955」(低域)のまさに「定番」構成を採用。これまで数多くのマルチBAイヤホンやCIEMで採用されてきた組み合わせだけに「AUDIOSENSE DT300」のチューニングがどのように発揮されるかが注目されるところです。
AUDIOSENSE DT300AUDIOSENSE DT300
また「AUDIOSENSE DT300」ではハンドメイドのフェイスプレートを使用。金箔をあしらったひとつひとつ異なる模様は美しさがあります。またコネクタはMMCXを採用しリケーブルが可能です。

AUDIOSENSE DT300」の購入はAliExpressまたはAmazonのオフィシャルストアにて。価格はAliExpressが179ドル、Amazonが18,650円です。為替手数料などを考慮するとAmazonのほうが実質的には低価格になりそうです。通常はAmazonからの購入でよいと思います。
Amazon.co.jp(AUDIOSENSE Official Store JP): AUDIOSENSE DT300


■ 金箔をあしらったクリアブルーの美しいシェルデザイン。装着性も良好なサイズ感。

AUDIOSENSE DT300」のパッケージは「T800」や「DT200」などと同様の黒箱にシルエットアートが描かれたタイプ。シンプルなパッケージだけに「Knowles」ロゴが「AUDIOSENSE」のメーカーロゴやモデル名以上に目立つ気がするのも例によって同様です(^^)。Knowles製BAを全面的に採用しつつ高いコストパフォーマンスを実現している、というのも同社のキャラクターのひとつでもあるので、その点をよく表したデザインといえるでしょう。
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箱を開けると全面を埋め尽くすようにプラスチック製のゴツいケースが入っており、付属品がその中に全て収納されているのも「DT200」「T800」と同様です。このケースは「防水ケース」としてAliExpressで単独でも販売されています(本当に防水かどうかは試してないのでわかりません^^;)。パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(シリコン3種類、それぞれS/M/Lサイズ。およびウレタン3ペア)、クリーニングブラシ、説明書、そして前述のハードケース。
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AUDIOSENSE DT300」のシェルは今回も3Dプリンティングによるフルレジン製で例によって非常に美しい仕上がりです。前回の1BAモデルの「DT100」でも同様のクリアブルーのシェルがとても綺麗でしたが、よりサイズが大きくなり、また個体によって柄の異なるフェイスプレートには金箔があしらわれており、より美しいアクセントを加えています。
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ちなみに、従来このタイプのマルチBAイヤホンでは手作業で各BAに音導管のシリコン製などのパイプを接続し、それをシェルパーツにひとつひとつ固定し、その後にレジンを充填し再硬化させる必要があり、製造コストがかかる理由になっていました。しかし3Dプリントではあらかじめ音導管を含めたシェルを成型し、搭載するBAサイズに開けられたスペースに装着することで製作することで、低コスト化を実現できるだけで無く、より正確なBAの配置により柔軟なサウンドコントロールができるようになりました。「AUDIOSENSE」のようにフルKnowles製BAを搭載しつつ、数年前では考えられなかった低価格を実現できているのもそうですが恩恵は大きいですね。
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シェルサイズは「DT200」より少し大きく、「T800」より小さい、とドライバー数に応じたサイズ感になっています。それでも大きすぎることは無く装着感は良好です。付属するケーブルは同社製イヤホンではおなじみの銀メッキ線タイプのケーブルです。コネクタ仕様はMMCX。取り回しが良く使いやすいケーブルです。
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イヤーピースは黒色タイプ、グレータイプ、ソニー風、の3種類のシリコン製と、ウレタン製が3ペア付属します。選択肢が多いため自分に合うタイプを選ぶことは問題なさそうですが、他にも定番のJVC「スパイラルドット」やよりフィット感の強いタイプでは「AZLA SednaEarfit XELASTEC」や「SpinFit CP100+」に交換するのも良いでしょう。耳にフィットするイヤーピースを選択することで遮音性は十分に高めることが出来ると思います。


■ 寒色系の美音系サウンド。従来より反応が良いチューニングながら使いやすい印象。

AUDIOSENSE DT300」の音質傾向は寒色系の弱ドンシャリで、比較的聴きやすい印象のサウンドです。3BAイヤホンとしては比較的低域の量感も多く、高域は煌びやかさを感じつつ刺激も少なめで聴きやすい印象がありますね。曲によって中高域付近で若干スッキリしない印象もありますが、全体としてはボーカル曲と相性が良いチューニングといえるでしょう。3BAイヤホンとしては音場は広く自然な広がりと奥行きを感じます。十分な解像感があり分離も良く定位も比較的正確なため、個々の音を捉えることも容易な印象です。ボーカル帯域は多少温かみがありますが、再生環境で多少の変化がありました。
AUDIOSENSE DT300AUDIOSENSE DT300」は特徴として、「AUDIOSENSE」の従来のマルチBAモデルに対して比較的感度が高く、「反応が良いイヤホン」であるということがいえます。たとえば8BAの「T800」、2BAの「DT200」の場合、インピーダンスはそれぞれ9Ω、14Ωと、マルチBAらしい非常に低い仕様になっているものの、感度については90dB/mW、99dB/mWと、かなり低めに調整されており、「DT200」については2BA構成ながら独特の厚みのある低域を生み出し、「T800」では8BAというCIEM等ではある程度センシティブになる構成ながら比較的多くの環境で使いやすい鳴り方をすることも同製品に好印象を持つ方が多かった理由かなと想像します。
これに対してインピーダンス 11Ω、感度 106±3dB/mWの「AUDIOSENSE DT300」はこれらの機種とは多少アプローチが異なります。普段私は数種類のDAPおよびポータブルアンプ等でリスニングを行い、レビュー時には据置き環境で試したりしますが(具体的には「再生環境について」にて触れています)、この再生環境の違いで印象が変わりやすいイヤホンもそれなりにあります。「AUDIOSENSE DT300」については比較的変化を感じやすいイヤホンのようですね。

AUDIOSENSE DT300」の高域は煌びやかさを感じつつ刺激を抑えた聴きやすい音を鳴らします。バランスの良い適度な主張と存在感があります。明るく硬質な印象ですが、過度にエッジが立つことは無く、滑らかさもあります。このクラスとしては十分な解像感があり籠もりなどはありません。
AUDIOSENSE DT300中音域は凹むことなく鳴りボーカル帯域は少し前面で鳴ります。やはり多少硬質で寒色系の音ですが、人工的な音にはならずボーカル帯域は少し温かく自然な印象です。音場は比較的広く自然な広がりと奥行きを感じます。十分な解像感があり定位も良好です。最近のポップスなどのボーカル曲と相性が良い印象です。全体的に明瞭な印象ですが、再生環境により音数の多い曲では中高域を中心に多少うるさく感じる場合もあります。この場合、異なるプレーヤーを使用する以外にも後述のとおりリケーブルによりバランス接続に変える、あるいはイコライザなどによる調整でも分離が向上し、見通しの良さなどの変化が得られるようです。
低域は3BAイヤホンとしては十分な量感があり、解像度の高さと質感の良さを感じます。重低音は深く沈み分離の良さを感じます。締まりも良く好印象ですね。ミッドベースは直線的な鳴り方でしっかりした存在感を保ちつつ中高域との分離も良好です。美音系に区別されるサウンドですね。


AUDIOSENSE DT300AUDIOSENSE DT300」も付属ケーブルのほか、何種類かのリケーブルを試しましたが、標準ケーブルでの印象はまずまず良好なため、多くの場合リケーブルは不要かもしれません。ただ再生環境や曲の好みなどにもよりますが、中高域などにもう少し見通しの良さが欲しい場合は、バランス接続に変更してみるのも良いでしょう。その場合、多くの銀メッキ線ケーブルよりOCCなどの高純度銅線ケーブルなどのほうが相性が良いかもしれませんね。いっぽう分かりやすく変化のあるケーブルのなかでも「JSHIFI-D4G」(4芯金メッキ線ケーブル)など相性の良いケーブルもありました。このケーブルは組み合わせるイヤホンにもよりますが中高域にスッキリした印象とドンシャリ方向の変化が得やすいケーブルですので、思いのほか「AUDIOSENSE DT300」と相性が良いのかもしれませんね。もちろん個人差はあると思いますのでいろいろ試してみるのも良いと思います。
というわけで、「AUDIOSENSE DT300」は価格的にも手頃で見た目にも音質面にも美しく、バランスの良いイヤホンだと思いました。たぶん「見た目買い」で行っても十分に楽しめる良作だと思いますよ(^^)。