TRI i3 Pro

こんにちは。今回は「TRI i3 Pro」です。中華イヤホンの新興ブランドとして急速にマニアの間で認知が広がっている「KBEAR」の兄弟ブランドが「TRI Audio」で、よりこだわりのあるハイグレードモデルを多く手がけている印象がありますね。その「TRI」ブランドのなかでも特に人気が高かったのが「TRI i3」でした。なんと言っても特徴はそのドライバー構成で、金属ハウジングの中に「10mm平面磁界駆動型ドライバー」、「8mmダイナミックドライバー」、そして「BAドライバー」の3種類のドライバーによるハイブリッドと、一見するとかなりトリッキーな製品でした。実際「TRI i3」は非常に巨大なハウジングで異彩を放っていたのですが、いっぽうで音質面に関してはこの3種類のドライバーが絶妙なバランスで調和し、非常に質の高いサウンドを実現し「名機」とも呼ばれていました。

そして今回の「TRI i3 Pro」では、この「TRI i3」のエッセンスを完全に継承しつつ、シェルサイズを26%も小型化。さらに音質面もさらに磨きをかけた、まさにブラッシュアップモデルといえるでしょう。
→過去記事: 「TRI i3」 平面磁界駆動型ドライバー+BA+DDの個性的ながら手堅くバランスの良いサウンドが楽しい。限定生産の中華ハイブリッドイヤホン【レビュー】
TRI i3 Pro」は大人気モデル「TRI i3」を継承しアップデートされたイヤホンです。A7050アルミニウム合金を採用した金属ハウジングは26%もの小型化を実現。「TRI i3」同様に、「10mmサイズの平面磁界駆動型ドライバー」に「8mm 複合振動版ダイナミックドライバー」と「バランスド・アーマチュア型(BA)ドライバー」のトリプルドライバー・ハイブリッド構成となっています。
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改めて「平面磁界駆動型ドライバー」について紹介すると、平面タイプの振動版を使用する「平面駆動ドライバー(Planar Magnetic Driver)」のなかでも、平面振動板を稼働させるボイスコイルが2重の構造になっています。ちなみにMeze Audioの高級ヘッドホン用にこのタイプのドライバーを供給しているRinaro社の商標では「Isomagnetic Driver」(等磁力ドライバー)とも呼ばれます。

また「A7050」アルミニウム合金はアルミに亜鉛とマグネシウムを添加した合金で、7000番台はアルミ合金のなかで最も高い強度と引っ張りや折り曲げに対して高い剛性を持っています。最近ではスマートフォンの軽量化にも重要な役割を果たしている素材ですが、「A7050」は「超々ジュラルミン」と呼ばれ、高い腐食耐性を持っています。ジュラルミンというとアタッシュケースや飛行機外装の素材としてもよく知られていますね(^^)。
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TRI i3 Pro」は小型化にあわせてサウンドチューニングも「TRI i3」でのフィードバックを受けてより優れたリスニング体験ができる改良を行っているようです。またコネクタもMMCXから2pin使用に変更となりました。

TRI i3 Pro」の購入はAliExpressの「Easy Earphones」またはAmazonの「WTSUN Audio」にて。価格はAliExpressが 189ドル、Amazonが22,999円です。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。
AliExpress(Easy Earphones): TRI i3 Pro
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): TRI i3 Pro
※Amazonは現在プライム在庫あり(国内発送)。
※現在WTSUN Audioでは2,000円OFFクーポン配布中。実質20,999円で購入できます。



■ 大幅に小型軽量化したシェルデザイン。高い装着性ながらイヤーピース選びも結構重要に。

TRI i3 Pro」のパッケージデザインは「宇宙」をイメージしたものだそうです。そのサウンドの深さ、広さをイメージしたもの、という感じですね。
TRI i3 ProTRI i3 Pro
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(白色タイプS/M/L、「KBEAR 07」5サイズ)、クリーニングブラシ、クリーニングクロス、レザーケース、説明書。イヤーピースに「TRI i3」同様の白色タイプ以外に「AET07」のそっくりさんこと「KBEAR 07」が全サイズ付属しているのは有り難いですね。
TRI i3 ProTRI i3 Pro

TRI i3 Pro」の本体は美しく鏡面処理されたアルミニウム合金製。前回の「TRI i3」を持っていると大幅にコンパクトになったシェルは一目瞭然です。また想像以上に軽量な点も驚きを感じます。また本体サイズ変更と同時に側面に4カ所のベント(空気孔)が追加されたことがわかりますね。とはいえ音漏れなどが気になることは無いようです。
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実際に「TRI i3 Pro」と「TRI i3」を比べてみると、似たデザインながら、大きさは「親子かな」と思うほどに違います。シェルがコンパクトになったことで、「TRI i3 Pro」の装着感は「TRI i3」とはかなり違いがありますね。「TRI i3」がハウジング自体が耳を覆うように固定していたのに対し、「TRI i3 Pro」はイヤーピースでしっかりフィットさせる装着感になります。
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TRI i3 Pro」に付属するケーブルは5N OFCタイプの8芯タイプで今回は2pin仕様になりました。「TRI i3」のケーブルより太さがありますが、適度に柔らかく取り回しは良い印象です。またレザーケースと一緒にノズル用のクリーニングブラシと、本体用のクロスが付属します。鏡面処理された本体をこまめに手入れするのに最適なほか、収納時にクロスに本体を包んでおくことでキズ防止などにもよいかもしれませんね。
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イヤーピースは「TRI i3」と同じ台形の白色タイプと「AET07」とそっくりな「KBEAR 07」が5サイズ付属します。「TRI i3 Pro」は大幅に小型化したことで装着性が大幅に向上した反面、よりイヤーピースでしっかり固定する必要があります。普段Mサイズより大きいイヤーピースを使用してる方は標準の白色タイプのイヤーピースでは十分なフィット感が得られない場合もありそうです。このようなケースでは「KBEAR 07」のほうを使用するか、定番のJVC「スパイラルドット」や、より密着感の強いタイプではAZLA「SednaEarfit XELASTEC」などに交換するのも良いと思います。


■質の高さを継承しつつ、より濃い中低域と見通しの良い中高域など、さらに成熟したサウンドに

TRI i3 Pro」のサウンドは非常に滑らかなバランスの若干中低域寄りの弱ドンシャリ傾向。比較すると「TRI i3」のほうが僅かに腰高に鳴っているようにも感じます。全体のバランスの違いに加え、「TRI i3」より分離が向上し、相対的に各音域の見通しが良くなった印象です。「TRI i3 Pro」はより落ち着いた中低域があり、より濃く、芯の通った印象で感じますね。いっぽうで中高域はよりダイレクト感が増し、粒立ちも良くなっている印象で、フラット寄りに感じた「TRI i3」より多少メリハリのあるサウンドに感じるのではと思います。
TRI i3 Proちなみに、平面駆動タイプのドライバーを搭載する多くのイヤホン同様、「TRI i3 Pro」もしっかり「覚醒」させるためにはプレーヤー側にある程度の駆動力が必要です。DAPなどはハイゲインモードを使用すべきですし、それでも多少平坦に感じるようでしたら、よりパワーのあるアンプなどを試してみてください。また「TRI i3 Pro」は「TRI i3」より大幅にコンパクトになったことで、耳の小さな方でも使いやすくなった反面、逆に耳穴が大きめの方は、よりフィット感のあるイヤーピースを選んでいただく必要があるため、「TRI i3」の巨大なハウジング自体で固定するような装着感とは聴いた印象にも変化があるかもしれません。付属の「KBEAR 07」タイプ(あるいは「AET07」)や他のイヤーピースを工夫し、ベストポジションを探していただくのがよいでしょう。


TRI i3 Pro」の高域は、「TRI i3」同様に主張は少し控えめですが、比較的明るく明瞭な音で伸びの良さを感じます。また少し柔らかくなった印象で、「TRI i3」は特に音量を上げた際に感じた「中華ハイブリッドらしい派手さのある音」はかなり制御されており、より上質な鳴り方になった印象です。ただもともと「TRI i3」の高域の質感も非常に良好でしたのでその差は僅かだと思います。適度な煌めきを感じつつ刺さり等の刺激はありません。シンバルなども綺麗に鳴っており心地よいサウンドです。

TRI i3 Pro中音域は味付けのないニュートラルな印象ながら密度の高い音を鳴らします。ボーカル帯域は自然な距離で定位しハイブリッドとしては非常に自然な音場表現を実現している点は「TRI i3」と同様です。ただ、特に中低域により濃さがあり、曲によっては迫力を感じる音を鳴らすため、「TRI i3」の広い空間で鳴っている印象に比べると少し前に出るように感じるかもしれませんね。「TRI i3 Pro」はよりボーカルに艶があり、男性ボーカルの余韻などをより楽しめるように鳴った印象です。また相対的に中高域の見通しの良さが向上しており、女性ボーカルの抜けも良く、心地よさがあります。平面磁界ドライバーによる歪みのない情報量の多い印象で、明瞭な音像表現があります。演奏は自然な奥行きで聴きやすい印象です。「TRI i3 Pro」はさらにリスニング向けのチューニングが施されたようです。

低音域については「TRI i3 Pro」も深く、力強い質の高いサウンドを継承しています。ただ中音域(特に中低域付近)の主張が増しているため、相対的には多少滑らかになった印象かもしれません。重低音は深く重量感のある沈み込みがあり、存在感のある音をならしますが、質感の良い音で過度に響く印象はありません。ミッドベースは直線的で見通しの良さがあります。自然な範囲ながら適度なキレの良さと解像感がありスピード感のある曲でも心地よいサウンドが楽しめます。


TRI i3 ProTRI i3 Pro」は、ロック、ポップスやアニソンなどのボーカル曲はもちろん、インストゥルメンタル、ジャズ、クラシックなどジャンルを問わず楽しめる、質の高いサウンドのリスニングイヤホンだと思います。「TRI i3」と比較し、その良さをしっかり継承しつつ、より「成熟した」サウンドになりました。「TRI i3」では「3種類のドライバーを使ったハイブリッドなのに」とか「この巨大なハウジングのイヤホンなのに」みたいな、「ちょっとキワモノ」だと思ったら「かなり良い音だった」という「意外性」も評価に上乗せされていたかもしれません。
しかし、今回の「TRI i3 Pro」では、大口径の平面磁界ドライバーが生み出す、歪みが無く情報量の多いサウンドにBAおよび複合ダイナミックによる高域および低域がさらに滑らかに融合し、その構成が「必然」と思わせる質の高さを手に入れたように感じます。実際に聴いてみるとそれは小さな変化かもしれませんが、アラウンド200ドルクラスの製品としては製品としては結構大きな「進化」かもしれませんね。
もっとも既に「TRI i3」を所有していて、そのサウンドがとても気に入っている方がわざわざ買い直す必要はないと思いますが、それでも「ブラッシュアップした違い」を感じたいディープなマニアの方、そしてまだこのシリーズを体験したことの無い方は、よろしければぜひとも挑戦いただいてもよいと思います。とても満足感のあるイヤホンですよ(^^)。