NICEHCK Topguy

こんにちは。今回は「NICEHCK Topguy」です。先日レビューした「Lofty」に続き登場した「NICEHCK」ブランドの新たなフラグシップですね。「10mmチタンマグネシウム合金振動板ダイナミック ドライバー」をシングルで搭載し、中低域寄りのチューニングだった「Lofty」とは異なる方向性の、より中高域がハッキリした明瞭サウンドを実現しています。またカラフルで美しいシェルデザインも上位モデルらしく、外観も音質的にも満足度の高いイヤホンに仕上がっています。
中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」のオリジナルブランド「NICEHCK」はこれまでも他の中華イヤホンとは異なる個性的な製品を数多くリリースしていますが、最近ではミドルグレード以上の製品も増えてきています。今回の「NICEHCK Topguy」は先日レビューしたピュアベリリウム振動版ドライバー搭載の「NICEHCK Lofty」に続く200ドルオーバーのイヤホンで、現時点では「NICEHCK」では最上位のモデルとなります。
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NICEHCK Topguy」は航空グレードのアルミニウム合金を5軸CNC加工で形成した金属製シェルを採用。非常に軽量ながら高い剛性を持っており、音質面においても耐久性の上でもメリットがあります。さらにフェイスプレートはブラックのカーボン柄または3色の手書き模様によるプレートをレジンでコーティングしており、美しく個性的なデザインを演出します。
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そして「NICEHCK Topguy」の最もポイントとなるドライバーは新開発の「10mmチタンマグネシウム合金振動板ダイナミック ドライバー」をシングルで搭載。このドライバーの詳細については不明ですが、「チタンマグネシウム合金振動板」というとFenderの「THIRTEEN 6」などで搭載されていた「HDD(HIGH DENSITY DYNAMIC)」ドライバーが思い出されます。また最近ではダルマオーディオの「Ethereal」が振動板のドーム部にマグネシウム合金、エージ部でチタン合金を使用する複合ドライバーの構造をとっていましたね。通常のチタン(チタン合金)ドライバーと比べて非常にレアなことからも製造には非常に高度な技術を必要とするものと推測されます。
最近はドライバーで使用される材質の違いより、製造方法などの技術的側面の高度さがフォーカスされる製品も増えてきましたね。「NICEHCK Topguy」もそういった面でよりコストのかかっている製品なのではと思います。
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NICEHCK Topguy」の付属ケーブルは「Lofty」同様「NICEHCK BluePP 台湾製 6N OCC高純度銅線ケーブル」を採用。「Lofty」は購入時にプラグの種類を選択する方式でしたが、「NICEHCK Topguy」では付属ケーブルは4.4mm/5極のバランスケーブルの1択となり、かわりに「3.5mmステレオ」と「2.5mm/4極バランス」用の変換コネクタが付属します。おそらく「Lofty」でも4.4mm版がすぐに売り切れるなど販売数に明確な違いがあったようですね。

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カラーバリエーションは「カーボンブラック」のほか、「レッド」「ブルー」「グリーン」があり、AliExpressではオーダー時に個別指定で左右で異なる色を選ぶことも可能になったようです。
※左右の個別色指定についてはHCK(@hckexin)にDMなどで直接お問い合わせください。

NICEHCK Topguy」の価格はAliExpressが259ドル(カラーモデル)249ドル(ブラック)、Amazonが32,000円です。AliExpressでの購入方法およびアフターサービスについてはこちらを参照ください。HCKについてはAliExpressで購入してもサイト内のメッセージ欄やTwitter DMなどで問い合わせ等に対応してくれるため、万が一のトラブルなどを想定しても比較的購入しやすいセラーだと思います。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): NICEHCK Topguy
Amazon.co.jp(NICEHCK): NICEHCK Topguy ※プライム扱い/国内在庫あり


■ カラフルなフェイスプレートも美しい。落ち着いた質感のデザイン

「NICEHCK」ブランドのパッケージも最近はすっかり方向性が固まってきた感じがありますね。今回も白箱に製品グラフィックを載せたシンプルなデザインを採用しています。今回はグリーンをオーダーしました。
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NICEHCK Topguy」のパッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピースはソニー風の黒色タイプが3サイズ、「AET07」風のタイプが4サイズ、マグネット式のケーブルタイ、3.5mmおよび2.5mmプラグへの変換コネクタ、レザーケース、説明書および保証書など。
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NICEHCK Topguy」のデザインはとても落ち着いた雰囲気でまとまっていますが、アルミ合金製の各部品は非常に丁寧な仕上がりで高級感を感じます。またレジンコートされたフェイスプレートもとても美しいですね。どのような場所でも合いそうな、とてもお洒落な雰囲気を纏っています。いっぽうで金属製ハウジングながら非常に軽量で重さで耳から落ちることも無く、装着性も良好です。
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「Lofty」と比較した場合、ハウジング部分の形状は同様ですが、「NICEHCK Topguy」のほうがフェイスプレートに厚みがあるため、側面はその分だけ大きく感じますね。装着性は良好で、イヤーピースは「AET07」風のタイプのほか、多くの場合は付属のイヤーピースで問題なく装着できると思います。よりフィット感を高めたい場合は、定番のJVC「スパイラルドット」や、密着感の強いタイプでは「AZLA SednaEarfit XELASTEC」や「SpinFit CP100+」など、自分の耳に合うものに交換するのも良いと思います。
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また本体コネクタは2pin対応で凹みのないフラットな仕様。そのため、付属のケーブルも「Lofty」同様に最近のHCKのCIEM 2pinとは異なる「中華2pin」タイプになっています(もちろんCIEM 2pinでもリケーブル可能)。ケーブルは「NICEHCK BluePP 台湾製 6N OCC高純度銅線ケーブル」の4.4mm/5極タイプが同梱されます。布張りで仕様の濃紺のケーブルにクローム処理されたコネクタやプラグ部品など見た目にも高級感のあるケーブルです。「NICEHCK BluePP」については過去記事の「Loftyの高域強化セット」編でも紹介している通り、情報量が多く中低域をメインに非常に深みのある音を引き出してくれる非常に良質なケーブルです。「NICEHCK Topguy」では4.4mm/5極バランスプラグ仕様が付属し、3.5mmステレオと2.5mm/4極バランスについては変換コネクタが付属します。このグレードのイヤホンを検討される方は基本的にDAP等を再生環境で使用されると思いますし、最近ではバランス接続と言えば4.4mmがほぼ主流になる流れのようですので、この選択は妥当だと思います。
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他にもハードケースも「Lofty」と同様にブルーのレザータイプが付属。より高級感があり、付属品も含めていれても十分な容量があります。またマグネット式のケーブルタイも付属します。


■ 明瞭なハッキリサウンドだけど自然で上質。絶妙にまとめた高い完成度。

NICEHCK TopguyNICEHCK Topguy」の音質傾向は明瞭感のある高域が印象的なフラット方向から弱ドンシャリの傾向。全体的な音作りは同じくHCKのハイグレード製品である「NICEHCK Lofty」と近いアプローチは感じるものの、「Lofty」が比較的ボーカル帯域から低域への厚みを持ったチューニングに対して、「NICEHCK Topguy」は非常にハッキリとした伸びのある高域など、全体的にスピード感やキレの良さを感じやすい印象です。伸びの良い明瞭さと優れた解像感に加えて質の高い自然な表現力や音場など、フラグシップにふさわしい、3万円前後の製品としても非常に優れたサウンドのイヤホンです。

ちなみに、「NICEHCK Lofty」も非常にまとまりの良いイヤホンでしたが、当初の「ピュアベリリウム」らしい高域みたいなものを期待された方は最初から「NICEHCK Topguy」を選択した方がよいかもしれませんね。というか、もし「NICEHCK Topguy」のほうが「ピュアベリリウムです」みたいな触れ込みで販売されたとしたら、私とかは「ベリリウムぽい高域」とかレビューで書いてしまいそうでちょっと怖い(笑)。まあ、結局は材質の種類まで聴き分けることは出来るはずも無く、振動板の種類とかは音質面の重要な要素ではあると思いますが、結局はどのようにサウンドチューニングするか、製品として仕上げるかということなのだなと実感する次第です。

NICEHCK Topguyというわけで、「NICEHCK Topguy」の高域は鮮やかさのある伸びの良い音を鳴らします。解像度は非常に高く明るい印象です。実はシンバル音の聞こえ方など「Lofty」の高域とも近い印象なのですが、全体のバランスが異なるため、「NICEHCK Topguy」のほうがより主張が強く、シャープで見通しの良い印象に感じます。高域の主張が増しているとはいえ、派手なイヤホンにありがちなギラつきやハイ上がりのような、要するに「歪み」は皆無のため、普通に聴いていて刺さりなどを感じたりすることはありませんし、非常に直線的なサウンドのためシャリ付きなどもほとんどありません。いっぽうで高高域の原音再現性も十分に高いため、音源で刺激のある音もしっかり表現されます。そのため高域の刺激全般が苦手な方には向かない可能性もあります。しかし、これまで様々なイヤホンを聴いてこられたマニアで、どうもスッキリしない、もっと見通しの良い音を、と思われている方には、バランスが良く聴きやすいイヤホンながらしっかり高域も表現できている、という点で好感される製品ではないかと思います。

NICEHCK Topguy中音域は、高域同様に鮮やかさがあり、明瞭で解像感の高いサウンドながら自然な音場表現と響きが印象的なサウンドです。全体的に癖をほとんど感じない自然な印象ながら、ボーカル帯域が少し強調されたイマドキの音質傾向でチューニングされており、この辺は「Lofty」との共通点を少しだけ感じます。しかし「NICEHCK Topguy」のほうがよりハッキリとしたキレのある描写で、いっぽうで輪郭が不自然に際立つことも無く、1音1音を綺麗に表現してくれる表現力の高さがあります。女性ボーカルおよび男性ボーカルとも美しい響きと余韻を楽しめます。音場は適度な広さと奥行きを感じ、分離も良く演奏の表現力は高いものの、定位はボーカルが若干前面に出る印象です。最近のロック、ポップス、アニソンなどのボーカル曲に最適化されたサウンドだと思います。

低域は十分な量感を持ちつつ、「Lofty」に比べてタイトで、スピード感のある印象です。重低音は深く沈みますが、やや広がりと響きがあり、明瞭で存在感のある中高域をしっかり下支えする印象です。ミッドベースはより存在感があり、直線的で締まりのある音を鳴らします。こちらも解像感は高く、音数の多いEDMやハードロックなどでも損なうこと無く表現できています。また低域についても自然な質感を持っており、全体として「明瞭なハッキリサウンドだけど自然で上質」という、一見するとミスマッチな要素を上手くまとめている点にHCKの音作りの経験値の高さというか、「成熟」ぷりを感じました。ほんと、伊達に変態イヤホンを作ってるばかりじゃなかったんですね(褒め言葉)。

NICEHCK Topguy個人的には「NICEHCK Topguy」は付属品についてもほぼ満足しており、リケーブルを含めて特に換える必要は無いかなと感じました。
しかし、例えばもう少し低域の厚みを増すことで相対的に高域を聴きやすく、と感じる方でしたら「NICEHCK BLOCC」や「NICEHCK BlueIsland」などの単結晶銅線ケーブルへのリケーブルを検討してみるのも良いかもしれませんね。また付属する3.5mmなどへの変換コネクタはどうも大きすぎるので、「JSHiFi-ZHX」のようなケーブルタイプや「Cayin PH-35X」のようなL字型タイプを容易した方がよさそうですね。


 というわけで、「NICEHCK Topguy」はHCKのフラグシップにふさわしく、非常に質の高いサウンドを楽しめるイヤホンでした。個人的には、中低域寄りの「Lofty」との棲み分けがしやすく、気分や曲に応じて使い分けが出来るのが有り難いですね。この価格帯のイヤホンを何個も所有するとなると結構マニア度は高いかもしれませんので、もし検討される方は好みの傾向によってどちらかを選ぶというシチュエーションも多いかもしれませんね。どちらにせよ非常に完成度は高く、長く楽しめるイヤホンとして十分にお勧めできると思いますよ(^^)。