こんにちは。更新そのものは1週間ぶりくらいですが、前回のはほぼ勢いで書いたみたいな内容でしたので実質的なレビューとしては2週間以上ぶりくらいになっちゃいました。この時期、本業の方がいわゆる年末進行に加えて年明け以降の年度末シーズンに向けてのお仕事が集中していて、いろいろな時間軸の案件をパラレルでやってたりしますので、なかなか集中してじっくり聴くことができずにおります。とはいえ気付けば方々の依頼を含め書きかけのレビューが20件以上と結構シャレになってなかったりして。まあ、そもそも勢いで書かないとコンスタントには仕上げられない気分屋なあたりは相変わらずだったりもしますね。というわけで、年末に向けてぼちぼち仕上げていきたいと思います。
というわけで今回は「LZ A4 PRO」(2021年モデル)です。大量の書きかけのなかでも、さらにその下の方で「オマエいつになったら掲載するんだよ」的な感じになってたイヤホンです(汗)。老舗の中華イヤホンブランド「LZ HIFI」のリニューアルシリーズの第2弾的な感じで、先日レビューした「LZ A2 PRO」に次いで登場しました。3BA+1DDのハイブリッド構成で、かつての「LZ A4」(2BA+1DD構成)よりドライバー構成をアップデートしつつ、レジン製シェルを採用。いっぽうで4種類のチューニングノズルと3種類の音圧調整モジュールの交換式フィルターを搭載するなど、ギミックの多さはしっかり「LZ A4」を継承する、独特な製品に仕上がっています。
2021年モデルの「LZ A4 PRO」は2016年にリリースされた「LZ A4」のリニューアル版ともいえる製品で、ドライバー構成はKnowles製の3基のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーとカーボンナノチューブ(CNT)振動版ダイナミックドライバーを組み合わせた3BA+1DD仕様に進化しています。以前のLZ製イヤホンは金属製ハウジングを採用していましたが、「LZ A4 PRO」では同じくリニューアルされた「LZ A2 PRO」同様に3Dプリンティングによるレジンシェルを採用しています。
ドライバー構成は中高域用のKnowles製デュアルBAドライバーと、高域用で同じくKnowles製BAのツィーターを搭載。低域ではカーボンナノチューブ(CNT)振動板のダイナミックドライバーを搭載し、「LZ A4 PRO」ではドライバーの内容的にも構成的にも「LZ A4」よりアップグレードされているのがわかりますね。
しかし、「LZ A4 PRO」の最大の特徴はレジン製シェルのイヤホンとしてはかなり独特なフィルター交換ギミックです。かつての「LZ A4」でもノズルと背面の両方のフィルターを搭載していることが売りのイヤホンでしたが、まさか「LZ A4 PRO」でもそのギミックを再現するとは。。。「LZ A4 PRO」では「赤」「黒」「金」「青」の4種類のノズルフィルターと、「赤」「黒」「青」の3種類の背面部装着の音圧調整モジュール(キャビティ・チューニングホール)を組み合わせ、合計12種類のサウンドチューニングを選択することが出来ます。
「LZ A4 PRO」の購入はAliExpressまたはAmazonのHCK Earphonesにて。価格はAliExpressが259ドル(割引後価格246ドル)、Amazonが28,600円です。AliExpressの購入方法・サポートなどはこちらを参照ください。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): LZ A4 PRO ※セール価格217.56ドル(予定)
Amazon.co.jp(NICEHCK): LZ A4 PRO
■ 3Dプリンティングによる使いやすいシェルデザインに秘められた「変態ギミック」。
「LZ A4 PRO」のパッケージは「LZ A2 PRO」同様のシンプルな白箱デザイン。パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピースは黒色タイプ(Mサイズ装着済み)およびグレーの開口部が広いタイプと狭いタイプの3種類でそれぞれS/M/Lサイズ、フィルターセット(固定金具に取り付け)、フィルターホール交換用ドライバー、メタルケース、説明書、保証書。
ノズルフィルターと音圧調整モジュールはLZ製イヤホンではお馴染みの交換用フィルターノズルを固定した黒い金具に固定されています。「LZ A4 PRO」のシェル形状は「LZ A2 PRO」と同様のサイズのレジン製ですが、金属製のノズルフィルターと背面部の音圧調整モジュール(キャビティ・チューニングホール)がかなり特徴的ですね。一見すると普通のデザインなのによく見ると分かる人には「なんじゃこりゃ」感があると思います(^^;)。まさに「変態ギミック」ですね。
このギミックを実現するためには本体側のフィルター固定部分(ネジを切ってある部分)は金属製にしないと摩耗により密閉性を維持できないので、3Dプリントしたシェルにそれらのパーツもしっかり固定する必要があります。果たしてLZは費用対効果的なものを考えているのか・・・まあ同様のアプローチをレジンシェルでやってる会社が無いところを見るときっと無駄にコストかかってそうですね(笑)。
ノズルフィルターは、レッドが最も高域が抑制され、ブルーがもっともニュートラルに出力されます。順番としては、
レッド > ブラック > シルバー >ブルー ですね。音圧調整モジュール(背面モジュール)はレッドがもっとも低域が強調され(よりドンシャリ寄りとなり)、ブルーがもっとも低域が抑制されます。どちらのフィルターも中間のブラックが標準で装着されます。
ケーブルは8芯タイプのグラフェンコート銀メッキ線ケーブルが付属します。グラフェンタイプのケーブルが付属するのは結構珍しいですね。しっかりと編み込まれたダークシルバーのケーブルですが、グラフェンタイプとしては被膜も比較的柔らかく取り回しも良いです。イヤーピースはグレーのシリコンタイプが2種類と、LZ製イヤホンで毎回同梱される黒色の柔らかいイヤーピースが付属します。他にも定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、「AZLA SednaEarfit Light Short」、また密着感の強いタイプでは「AZLA SednaEarfit XELASTEC」などに交換しフィット感を向上させるのも良いと思います。
■ 12種類のフィルターによる比較的分かりやすい変化を楽しむイヤホン
「LZ A4 PRO」のサウンドは、12種類(4×3種類)のフィルターによる多彩なチューニングが楽しめますが、全体としてはバランスの良いドンシャリ傾向を維持しており、また各ドライバーユニットによる音域ごとの質の高さも感じます。もともとの「LZ A4」自体はイベントで試聴した程度ですが、方向性は継承しているのではと感じます。
以前レビューした「LZ A2 PRO」がいかにも「LZ HIFI」的な明瞭スッキリのサウンドを現在のクオリティにアップデートしていたのに対し、「LZ A4 PRO」はその上位バージョンというよりは「傾向を変えられるギミックそのものが特徴」のイヤホンといえるでしょう。「LZ A2 PRO」は1万円そこそこの価格で非常に高いサウンドクオリティを実現しており、コストパフォーマンス的にはかなり優秀なモデルでした。いっぽうの「LZ A4 PRO」は音質面では非常にバランスが良いイヤホンですが、250ドル前後の価格設定は他社もアッパーグレードの非常に強力な製品がひしめくレンジでもあるため、そのなかでは「割と良い」レベルにまとまってしまうかもしれません。「LZ A2 PRO」と比べて約3倍の価格の価格差は12種類のサウンドフィルターギミックにどれだけ魅力を感じるかで評価を分けるポイントになるかもしれません。
ノズルフィルター、背面モジュールの組み合わせによる変化は結構大きくイヤホンの傾向を変化させます。自分の好みのバランスに調整できる可能性が高い、という点では無試聴で購入する中華イヤホンとしては多少リスクが少ない、という見方も出来るかもしれません。「黒フィルター+黒(背面)モジュール」を基本として、順にフィルターやモジュールを変更してみることで好みのサウンド探してみるのが良いでしょう。
ただし、12種類の組み合わせの中には「この組み合わせは明らかに合わない」というものもあります。特に赤フィルターは販売サイトのf値グラフの通り、極端に中高域の抑制させるため、ちょっと扱いづらいフィルターです(販売サイトのf値グラフを引用します)。
グラフではフラットぽく見えますがボーカル帯域にゲインを合わせると逆に4kHzあたりの刺さりやすい帯域の刺激が増すため結構キツめに感じる場合があります。この赤フィルターに青モジュール(最も低域を抑制)を組み合わせはなかなか残念な印象になります。「赤フィルター+赤モジュール」の組み合わせにより結構派手さを強調したサウンドとなるため、赤フィルターを使用する場合はこの一択かもしれませんね。また背面モジュールも青色モジュールは同様に癖が強く、なかなか合わせにく印象です。こちらも「青フィルター+青モジュール」の同色合わせ一択でカマボコ寄りなサウンドを楽しむ印象向けといった感じでしょう。それ以外の組み合わせは大きくハズレは無く、好みによって変える感じでしょう。
まず基本の「黒フィルター+黒モジュール」は最も落ち着いた印象でバランスも良く聴き疲れしない印象。まずはこのチューニングで「LZ A4 PRO」のサウンドをじっくり楽しむことをお勧めします。そのうえで、これにもう少し鮮やかさを加えるために好みで銀フィルターや青フィルターに変える感じです。
またモジュールを低域を強調する「赤」に変更し、「黒フィルター+赤モジュール」の組み合わせもCNT振動板ダイナミックドライバーの旨みを最も実感できる印象でドンシャリ傾向の楽しいサウンドと厚みのある空間表現がとても心地よくオススメです。ここで銀フィルターや青フィルターに変えていくことでボーカル帯域の華やかさを加える事が出来ます。普段聴く曲のジャンルや自分の好みで変更して頂くことをオススメします。
「LZ A4 PRO」の高域はLZらしい伸びのあるスッキリした音で存在感のある音を鳴らします。より高域のスッキリさを強調させるためには銀フィルターまたは青フィルターを使用します。適度に刺さりをコントロールしたチューニングですが、煌びやかで鮮やかに表現してくれる印象。またKnowles製BAの採用により低価格ハイブリッドのような金属質なギラつきは無く伸びの良さを感じます。
中音域は特に凹むことなく鳴ります。各フィルターによりボーカル帯域が比較的分かりやすく変化するため、多くの方はここが好みを選ぶポイントになるでしょう。「LZ A2 PRO」よりBAらしさを感じるサウンドで癖の無い印象ながら情報量の多さや音像表現、音色の鮮やかさなど感じます。いっぽうで音場は一般的な印象。また分離感も悪くはありませんがスッキリというよりは雰囲気のある音という感じのため、「LZ A2 PRO」と比べるとやや温かく感じます。音数の多い曲ではボーカル帯域をより強調したフィルターやモジュールを選びたくなりますが、そうするともう低域などの演奏の厚みが欲しいと感じたり。この辺は多少ウィークポイントに感じる場合もあります。
「LZ A4 PRO」の高域はLZらしい伸びのあるスッキリした音で存在感のある音を鳴らします。より高域のスッキリさを強調させるためには銀フィルターまたは青フィルターを使用します。適度に刺さりをコントロールしたチューニングですが、煌びやかで鮮やかに表現してくれる印象。またKnowles製BAの採用により低価格ハイブリッドのような金属質なギラつきは無く伸びの良さを感じます。
中音域は特に凹むことなく鳴ります。各フィルターによりボーカル帯域が比較的分かりやすく変化するため、多くの方はここが好みを選ぶポイントになるでしょう。「LZ A2 PRO」よりBAらしさを感じるサウンドで癖の無い印象ながら情報量の多さや音像表現、音色の鮮やかさなど感じます。いっぽうで音場は一般的な印象。また分離感も悪くはありませんがスッキリというよりは雰囲気のある音という感じのため、「LZ A2 PRO」と比べるとやや温かく感じます。音数の多い曲ではボーカル帯域をより強調したフィルターやモジュールを選びたくなりますが、そうするともう低域などの演奏の厚みが欲しいと感じたり。この辺は多少ウィークポイントに感じる場合もあります。
低域はCNT振動版ダイナミックドライバーらしい、適度にシャープで直線的な音を鳴らします。全体としてパワフルですが赤色モジュールでも低域が強すぎる事は無く、存在感を保ちつつ中高域との分離の良さを保っているため心地よさがあります。いっぽうで青色モジュールでは個人的には物足りなく思いました(ですので基本は黒色モジュールか赤色モジュールを選びます)。重低音は存在感と力強さがあり、ミッドベースは直線的かつ締まりの良さがあり、より詳細な表現力を感じます。スピード感があり音数の多いハードロックやEDMでも心地よく鳴らしてくれます。
というわけで、「LZ A4 PRO」は12種類のフィルターおよびモジュールの組み合わせにより、細かなサウンドチューニングが出来つつ、3Dプリンティングによる多くの方に受け入れやすいデザインを採用するなど硬軟取り混ぜた意欲作だと感じました。とはいえ価格的には「ギミックを楽しめるディープなマニア向け」という印象もあります。純粋に音質の比較では同価格帯は選択肢が多いですから、これだけを選ぶ、というより、同価格帯のイヤホンを複数持っているマニアが追加で購入するアイテムだとは思います。その辺を理解した上で、興味のあるマニアの方は掴んでみるのも楽しいと思いますよ。
というわけで、「LZ A4 PRO」は12種類のフィルターおよびモジュールの組み合わせにより、細かなサウンドチューニングが出来つつ、3Dプリンティングによる多くの方に受け入れやすいデザインを採用するなど硬軟取り混ぜた意欲作だと感じました。とはいえ価格的には「ギミックを楽しめるディープなマニア向け」という印象もあります。純粋に音質の比較では同価格帯は選択肢が多いですから、これだけを選ぶ、というより、同価格帯のイヤホンを複数持っているマニアが追加で購入するアイテムだとは思います。その辺を理解した上で、興味のあるマニアの方は掴んでみるのも楽しいと思いますよ。