TRN VX PRO

こんにちは。今回は「TRN VX PRO」です。8BA+1DDの9ドライバーハイブリッド構成をコンパクトな金属ハウジングに搭載しつつ、アンダー100ドルの驚異的な低価格を実現した、中国のイヤホンブランド「TRN Audio」の最新モデルです。

TRN VX PRO」は名称の通り、昨年「TRN」がリリースした「TRN VX」(6BA+1DD構成)のアッパーグレードモデルに相当しますが、確かにTRNらしい寒色系ドンシャリながらバランスの良さで評価の高かった「VX」の方向性を踏襲しつつ、より高いレベルのサウンドを実現しています。まさに「スペックモンスター系低価格中華イヤホン」の頂点ともいえる製品ですが、実際に聴いた印象でも音質的な完成度は非常に高く、このドライバー構成が単なるキワモノでは無くちゃんとした意味を持って機能している点も驚きを感じました。
TRN VX PROTRN VX PRO

TRN VX PRO」は「TRN」の「Vシリーズ」のフラグシップに当たる9ドライバー使用のハイブリッドモデルです。Vシリーズは広い意味では初期の「V10」~「V80」までの各モデルも含みますが、実際には同社の特に品質面で大きなターニングポイントとなった「V90」からの各モデル、つまり「V90」(4BA+1DD)、「V90S」(5BA+1DD)、「VX」(6BA+1DD)、そして今回の「TRN VX PRO」(8BA+1DD)の4モデルと考えるのが適切でしょう。これらの製品は精緻なCNC切削加工された金属ハウジングを採用し、寒色系ドンシャリのサウンドバランスを維持しながらも比較的ニュートラルなつながりのよさがあり、それぞれの方向性で表現力を高めてきました。

TRN VX PROTRN VX PRO

今回の「TRN VX PRO」は高域用の「30095」BAを4基、中音域用の「50060」BAも4基、そして低域用の「10mm 二重磁気回路ダイナミックドライバー」は「カーボンナノチューブ(CNT)振動板」と「1テスラレベルマグネット」を採用した高反応タイプになりました。音域ごとに同型番をBAをより多く並列に並べて鳴らし、1基あたりの出力を抑えることで、低価格中華BAユニット特有の歪みなどの癖を抑制し質感を高めるという、TRNの15BAモデル「TRN BA15」などでも採用されているチューニング方法が「TRN VX PRO」でも取られており、低コストのドライバーを積み上げることで「コスト高の質の高いドライバー」に匹敵するサウンドを構築するという同社が得意とするアプローチが今回も発揮されています。
TRN VX PROTRN VX PRO
TRNの「Vシリーズ」4機種と競合となることが想定される「KZ ZAS」のドライバー構成を比較してみると、もともとTRNは音域ごとにわりとシンプルな組み合わせで、毎回複雑なサウンドバランスの組み合わせを行うKZとは対照的ですが、「TRN VX PRO」の構成ではそのなかでもとりわけシンプルなのが確認出来ますね。

TRN VX PRO: (ステム部) [30095]×2 (ハウジング部) [30095]×2 + [50060]×4 + 10mmDD(CNT)
TRN VX:     (ステム部) [30095]×2 (ハウジング部) [50060+30095] + [50060]×2 + 10mmDD
TRN V90S:   (ステム部) [30019]×2 (ハウジング部) [50060]×3 + 10mmDD
TRN V90:   (ステム部) [30019]×2 (ハウジング部) [50060]×2 + 10mmDD
KZ ZAS:     (ステム部) なし    (ハウジング部) [30019]×1 + [50024s (2BA)]×3 + 10mmDD(XUN)

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TRN VX PRO」のカラーバリエーションはダークブルー(Midnight blue)とクロームシルバー(Moonshine silver)の2色が選択できます。またケーブルは銀メッキ線タイプでリモコンマイク付も選択可能です。
購入はHiFiGoの直営店またはAmazonのHiFiGoにて。
価格はマイク無しモデルので、HiFiGoが88.80ドル、Amazonが9,934円です。
HiFiGo: TRN VX PRO
Amazon.co.jp(HiFiGo):  TRN VX PRO


■ シンプルながら個性的なデザインを踏襲。このクラスでは初めての充実した付属品もポイント。

TRN VX PRO」のパッケージは、「VX」など従来モデルの小さい箱と、「X7」や「BA15」の豪華ボックスの中間くらいの大きさ。今回のモデルでは「X7」や「BA15」ほどではないものの付属品は充実しており、特に円形のメタルケースが付属するため、同価格帯の以前のモデルよりパッケージが変更されたようですね。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル(TRNタイプCコネクタ)、シリコンイヤーピースは装着済み黒色Mサイズと、別に黒色タイプおよび白色タイプがS/M/Lサイズ、ウレタンイヤーピース(黒色)が1ペア、6.3mmステレオジャック変換プラグ、円形の金属製ハードケース、説明書、保証書など。
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100ドル以下の低価格中華ハイブリッドまたはマルチBAのイヤホンではTRN自身としても、また競合するKZ/CCAも最小減の付属品でコストを下げていたのに対し、「TRN VX PRO」では上位モデル同様に付属品を一気に充実させ、大きく差別化を図っている点が注目したいところですね。なお、付属ケーブルは「TRN X7」に付属するケーブルと同じタイプCコネクタの銀メッキ線ケーブルです。「TRN BA15」のような16芯の「TRN T6」ケーブルではありません。この辺は価格帯の違いとともに「マイク付き」が選べる仕様ゆえでしょう。

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TRN VX PRO」は「VX」同様にCNC加工されたコンパクトな金属製シェルで8BA+1DDという構成ながら軽量です。「VX」と非常によく似た独特のシルエットですが、フェイス部分はよりシンプルなデザインになり、逆に背面は僅かに突起があるデザンになりました。そのため装着感は「VX」よりさらに良好になり遮音性も増しているようです。今回「Midnight blue」を選択しましたが、非常に落ち着いたカラーで作りも良く、シンプルながら高級感を感じます。
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おそらく競合機種になる「KZ ZAS」と比較すると、「TRN VX PRO」は独特の形状のためフェイス部分は少し大きく見えますが、実際は結構大きさの違いを実感します。「KZ ZAS」も「KZ ZAX」などの従来モデルよりは多少コンパクトなのですが、それでも金属ハウジングの「TRN VX PRO」は特に厚みの違いが顕著ですね。
TRN VX PRO」の付属イヤーピースは2種類のシリコンタイプとウレタンタイプが付属しますので自分に合ったものを選ぶのも良いでしょう。おそらく標準の場合は白色タイプを使用することが多そうですね。他にも定番のJVC「スパイラルドット」、Acoustune「AET07」、より密着感の強いタイプでは「SpinFit CP100+」やAZLA「SednaEarfit XELASTEC」など自分の耳に合う最適なイヤピースを選択するのも良いと思います。


■ CNTドライバーのキレとスピード感で多ドラながらスッキリ感したバランスを維持

TRN VX PRO」の音質傾向は多少派手あのある「TRNらしい」寒色系ドンシャリのサウンドですが、「TRN VX」の比較的ニュートラルで中高域に明瞭さのあるバランスをより強化した印象も感じます。「VX」も他のTRNのハイブリッドモデルに比べると低域は控えめな印象でしたが、「TRN VX PRO」ではより中高域~高域にフォーカスし、スッキリした印象のサウンドに仕上げられています。低域を軽快にしたことで中高域寄りで全体のバランスは向上していますね。ドライバー数は増えているものの、ダイナミックドライバーをCNT(カーボンナノチューブ)振動板にした効果は思いのほかありそうです。
TRN VX PRO分かりやすく「派手さ」も感じますが、中華ハイブリッドにありがちや歪みなどの「粗さ」はほとんど感じず、自然で広がりのある音場も含め、質感も良いと思います。「TRN BA15」での同型番BAをより多く並列に鳴らすことで中華BA特有の歪みを抑え、独特の響きと音場感を演出する音作りはハイブリッドの「TRN VX PRO」でも実現できているようです。
なお、「TRN VX PRO」が本領を発揮するためにはやはり付属ケーブルでは実力不足というか、多少もったいない気がします。「TRN T6」16芯銀メッキ線ケーブル(「BA15」に付属するケーブルと同じ)をはじめとして、情報量の多い銀メッキ線などによるリケーブルしたほうがよいでしょう。もっとも、言うまでも無くこのイヤホンを購入される大抵の方はリケーブル前提で使いそうではありますね(^^;)

また、開封直後より多少エージングを行ったほうが全体としてのバランスが向上しスッキリ感が増した印象です。私はHCKから購入したエージングマシンを夏頃から使用しており、今回も100時間~程度のエージングを行っていますが、おそらく1~2日程度の慣らし込みでも十分だと思います。

RN VX PROTRN VX PRO」の高域は、明るく派手めの高い音を鳴らします。「TRN VX」より主張が増しており、煌めきや鋭さは増しているものの、刺さりなどの刺激はなく、全体として明瞭感のあるスッキリした音を聴きやすく鳴らしてくれる印象。音源に沿ったシャリ付きなども僅かにありますが、「いかにも中華ハイブリッド」みたいな金属質のギラつきは抑えられており、最近のモデル同様に質感は向上しています。「TRN VX PRO」も4基の高域用BA「30095」を並列で鳴らし1基当たりの出力を抑えることで歪みを抑えたコントロールを行う「BA15」に近いアプローチが行われていると思われます。ちなみに「30095」を4基、というのはCCAのマルチBAモデルにも存在するアプローチですが、TRNはこの辺のコントロールではよりアドバンテージがあるように感じますね。

中音域は凹むことなく鳴ります。ボーカルは比較的近くで定位するものの音場は広がりがあり、高い解像感と分離の良さで見通しの良い音に感じます。中高域の伸びの良くキレがありますが、曲によって僅かに歯擦音などがあり、ちょっと騒がしく感じる場合があります。この辺はある程度のエージングと情報量の多いケーブルで解消できるため、気になる方はリケーブルを何種類か試して見るのをオススメします。TRNらしい寒色系の硬質でドライな印象はありますが、癖は無く音色は明るく鮮やかです。ボーカル帯域は女性ボーカルも男性ボーカルも明瞭で輪郭もハッキリしており、余韻も含め楽しむことが出来ます。スピード感のある音ですが、マルチBA的な響きもあり、インストゥルメンタルも心地よく、楽しさがあります。

RN VX PRO低域は「TRN VX」も含め従来のTRNのハイブリッドのなかでは控えめに感じますが、実際は非常に力感がありタイトな音を鳴らしてくれます。いかにもハイブリッド、という感じのミッドベースの厚みや膨らみを抑えより直線的にしたことで、全体としてはニュートラルでスピード感やキレの良さをより実感できるバランスになっているのではと感じます。いっぽうで重低音は深い沈み込みと解像感があり、カーボンナノチューブ振動板の実力を発揮できている印象です。
TRN VX PRO」は非常にバランスの良いイヤホンのため、ジャンルを問わず楽しむことが出来るイヤホンだと思います。いっぽうで高域がもっと穏やかな方がよいかたや、よりウォームな製品を好まれる方にはやはり派手すぎると思うかもしれませんね。

ちなみに、同価格帯の「KZ ZAS」(7BA+1DD)と比較すると、「KZ ZAS」はKZ/CCAの従来モデルと比べるとかなりバランスと質感が向上したイヤホンだとは思いますが、両者を比べると、寒色系で硬質ながら深い低域と厚めのサウンドが印象的なKZらしさを感じつつ、多少派手さを抑えてきているのに対し(それはそれで良いと思います)、「TRN VX PRO」はよりニュートラルでスピード感があり、1音1音の精度が高く感じます。派手さを持ったサウンドをしっかり継承しながらレベルアップをしている印象ですね。
RN VX PRORN VX PRO
リケーブルは情報量を底上げし、イヤホンの各音域を伸ばすタイプのケーブルと相性の良さがあります。TRN純正の「TRN T6」はAmazonではほとんど販売されておらず、AliExpressなどで購入する必要があるものの純正だけに相性は良好です。また手頃な選択肢としては「JSHiFi-SKY」を見た目のブルーで選んでも特に低コストでバランス化するのには良いですね。よりハイグレードなものでは「NICEHCK SilverDay」が好印象でした。全体的に密度感が増すものの、過度に高域が派手にならず、また銅線ケーブルの様に低域が膨らむことも無いので、少し価格が上がりますがなかなか良い選択肢ではと思います。

というわけで、「TRN VX PRO」は「TRN VX」から着実に進化し、「アンダー100ドルクラスの中華ハイブリッド」という分野をしっかり踏襲し、完成度を高めてきました。ビルドクオリティの高さや充実した付属品など、製品としてのお得感もありますし、今後定番イヤホンのひとつとして、幅広く定着していくかもしれませんね。もちろんお勧めできるイヤホンですよ(^^)。