Audirect Beam3PLUS

こんにちは。今回は「Audirect Beam3PLUS」 です。日本国内では10月22日より発売開始となった最新のLDAC対応Bluetoothレシーバー搭載小型USB-DACですね。国内販売元のIC-CONNECTさんより発売前にレビュー用サンプルの提供をいただき、約1ヶ月間使用しての紹介となります。
Audirect Beam3PLUS」 は、DACチップにESS製「ES9281AC PRO」を搭載し32bit/768kHz PCM、DSD512およびMQAフォーマットに対応。また高性能Bluetoothチップを搭載し、「LDAC」「aptX HD」などのハイレゾコーデックでの接続が可能です。そして出力には3.5mmステレオに加えて、4.4mmのバランス接続にも対応。オールラウンドな性能をコンパクトなメタルボディに凝縮した、非常に利用範囲の広いオーディオアダプター製品です。
Audirect Beam3PLUS」は一体成型の銅・亜鉛合金を使用したメタルボディを採用しており、高い剛性を持つつ、シンプルかつ高級感のあるデザインにまとめられています。またダークブルーに塗装された側面はマットなコーティングを施し滑りにくい質感に仕上げられています。

Audirect Beam3PLUSAudirect Beam3PLUS

「Audirect」(あるいは「Hilidac」ブランド)の「Beam」シリーズではこれまでに数種類のオーディオアダプター製品がリリースされており、最近でもスマートデバイス用の超小型アダプタ「Atom 2」やスティック型で3種類のゲイン調整が可能なスタンダードモデルの「Beam2se-21」がリリースされており、私のブログでも紹介をしています。
→ 過去記事: 「Audirect Atom 2」のレビュー
→ 過去記事:「Audirect Beam2se-21」のレビュー

これらの2製品および今回の「Audirect Beam3PLUS」ではすべてDACチップにESS Technology社の「ES9281AC PRO」を採用しています。これは低電力DACの「ES9218P」と同等のコアをベースにMQAレンダラーを内蔵し、ヘッドフォンアンプおよびスマートデバイス用オーディオアダプタ向けの回路を一体化したオーディオコーデックチップです。コンパクト設計ながら32bit/768kHz PCM、DSD512、そしてMQAに対応し、各種ハイレゾ音源および配信サービスを高音質で再生できます。

Audirect Beam3PLUSAudirect Beam3PLUS

そして、「Audirect Beam3PLUS」が「Atom 2」「Beam2se-21」と比較してオーディオ的にアップグレードされている点は「バランス接続対応のデュアルアンプ」による高出力および高音質化が挙げられます。超小型のためDACチップセット内蔵アンプを使用する「Atom 2」、ゲイン調整可能なオペアンプチップを別途搭載する「Beam2se-21」と比較しても、2基のオペアンプを搭載する「Audirect Beam3PLUS」はより高出力で、また左右独立のアンプ駆動による分離性および音質の向上がおこなわれています。また接続プラグも3.5mmステレオに加えて4.4mm/5極のバランス接続に対応出来るのも大きなメリットですね。

11Audirect Beam3PLUSもちろん「Audirect Beam3PLUS」も「Beam2se-21」同様に3種類のゲイン調整(Low/Mid/High)の調整が可能で、また本体中央下部にあるLEDは再生されている音楽フォーマットに応じて色が変化します。
そして「Audirect Beam3PLUS」では側面のスイッチを「Bluetooth」モードにすることで高音質のワイヤレスレシーバーとして利用することが可能です。チップセットにはQualcommの「CSR8765」を搭載しており、Bluetooth 5.0対応に加え、コーデックも「LDAC」「aptX HD」のハイレゾコーデックおよび「aptX」「AAC」「SBC」の各コーデックに対応します。USB-DACとしてもワイヤレスレシーバーとしても多彩な機能を搭載しつつコンパクトサイズにまとめられています。

Audirect Beam3PLUS」の購入はIC-CONNECT直営店および各専門店にて。価格は22,000円です。
Amazon.co.jp(IC-CONNECT直営店): Audirect Beam3PLUS


■ シンプルなデザインと操作性に多機能を凝縮

Audirect Beam3PLUS」のパッケージは今回もメーカー名だけが記載された非常にシンプルなボックス。私の手元には約1ヶ月前に先日レビューした「Audirect Beam2se-21」と一緒に届いてます。
Audirect Beam3PLUSAudirect Beam3PLUS

パッケージ内容は本体、USB Type-C用ケーブル、USB-A用変換コネクタ、説明書。「Audirect」の製品パッケージはどの製品もシンプルですが高級文具のようなスタイリッシュさも感じますね。
Audirect Beam3PLUSAudirect Beam3PLUS

Audirect Beam3PLUS」の本体はおちついたブラックおよび側面のダークブルーのデザイン。大きさは 75mm×39mm×12mmと手のひらにすっぽり収まるサイズ感で、重量 69gと比較的軽量にまとめられています。スティック型の「Beam2se-21」のようなイヤホンケーブルと一体化するような手軽さはありませんが、ポケットに入れて持ち歩いても支障の無いサイズ感です。
Audirect Beam3PLUSAudirect Beam3PLUS
コネクタ及びスイッチ類はすべて側面にあり、上側はUSB/Bluetooth切り替えスイッチとUSB-Cコネクタ、下側は3.5mmおよび4.4mmのコネクタが配置されています。左右の側面は、右側が電源とゲイン変更(「G」)ボタン、左側は再生/停止および音量/曲送り・曲戻しの各ボタンとなります。

右側の「G」ボタンを押すと、上から2番目のLEDがモードごとに3色のカラーに変化します。ゲインのモード変更は曲の再生中なども行われ、切り替え時のノイズなどはありませんでした。また、本体下部のLEDは再生ビットレートおよびフォーマットが表示されます。USB-DACとして使用時に現在どのモードで再生しているのかが一目で分かりますね。
Audirect Beam3PLUSAudirect Beam3PLUS

付属のUSBケーブルはコネクタ部分が金属製でケーブルの被膜もしっかりしており高級感があります。スマートフォンとの接続でApple MusicやAmazon Music(HD)でのハイレゾ/UltraHD再生も問題なくできました。「Audirect Beam3PLUS」側でも44kHzまたは48kHzの曲のときは赤色、96kHzの曲では青色とビットレートに合わせて再生できているのが確認出来ました。

Audirect Beam3PLUSAudirect Beam3PLUS

いっぽうモードをBluetoothモードに変更し、ワイヤレスに接続してみると、こちらも「LDAC」コーデックでの接続を確認。またスマートフォン側で「aptX HD」やそれ以外のコーデックに変更しても問題なく利用できました(Android端末では「開発オプション」を有効にすると手動でコーデック変更ができるようになります)。なお、ワイヤレス接続時は再生する音源のビットレートに関わらず、LDACで「高音質」の場合は96kHzで送信されるためブルー、aptX HDは48kHzのため他のコーデック(44.1kHz)同様にレッドで点灯します。この辺は「Audirect Beam3PLUS」の性能とは関係なく、Bluetoothコーデックの仕様のようですね。

Audirect Beam3PLUSそれ以外の点としては、Bluetoothでのワイヤレス接続時のみ、本体上面右側のマイクを使ってハンズフリーでの音声通話ができます(USB-DACモード時には対応しません)。また、「Beam2se-21」にサービス品として付属してたLightningケーブルを使用し、iPhoneと「Audirect Beam3PLUS」を接続した場合も問題なく動作しました。こちらは「Beam2se-21」も同様ですが「サポート外」の扱いのようですので、自己責任での利用が前提となります。それでもカメラアダプター無しで接続できるのは有り難いですね。ケーブルはAudirect純正のほか、確認した範囲ではShanling UA2やFiiOなど向けのOTG-Lightningケーブルが使用できました(相性の悪いものもあるようですので、あくまで自己責任でお願いします)。


■ デュアルアンプとバッテリー給電により高出力&低ノイズに加え余裕のある自然なサウンドを実現

Audirect Beam3PLUS」の音質傾向は同社の「Atom 2」および「Beam2se-21」同様に癖の無い明瞭な音を鳴らしますが、DACチップのヘッドホンアンプ回路をベースにチューニングされている「Atom 2」を基準に比べると、「Beam2se-21」がよりエッジの効いたハキハキとしたサウンドで、今回の「Audirect Beam3PLUS」はより自然ながら解像感があり、深みを感じるサウンド。特に3種類のゲインでの変化が非常に自然で使いやすいのが印象的でした。またノイズ特性も非常に高く、反応の良いCIEMなどのイヤホンでもホワイトノイズが発生することは無く、またハイゲインでは比較的鳴らしにくいAKGなどのヘッドホンも十分に鳴らせる駆動力があります。

Audirect Beam3PLUSUSB-DACモードで比較して、「Beam2se-21」では「Atom 2」に近いローゲインからミッド、ハイに上げていくとかなり大きめに音量も変化し、同時に音質傾向もよりエッジの効いたメリハリが強めのサウンドになりました。その点で「Audirect Beam3PLUS」ではどのモードでも非常に自然で、余裕を持ってイヤホンを鳴らしている感じがします。パワーのある元気な音を聞きたいときは「Beam2se-21」が便利ですが、よりしっかり鳴らしたい場合は、「Audirect Beam3PLUS」は確実に1ランク上のサウンドになります。スマートフォン本体からの給電で駆動力に限界のある「Beam2se-21」に対して、自身でバッテリーを搭載し、オペアンプも二重化されている恩恵はかなり大きいですね。また出力に関しては小型USB-DACとしてはかなり十分な仕様で、シングルエンドこそ「Beam2se-21」(ハイゲイン)とあまり変わらない仕様(122 mW@32Ω)ですが、バランスではしっかり2倍近い出力(230 mW@32Ω)で鳴らしてくれます。この出力を派手にならず余裕を持って駆動してくれるのはかなり使い勝手が良いですね。

ちなみに、近いスペックかつ同グレードの製品としては「Shanling UP5」が思い浮かぶと思います。サイズ的にも同様で4.4mmバランス接続対応、LDAC対応のオーディオアダプター/USB-DACと仕様も酷似していますね。また機能面では搭載チップ等はより新しいものを採用しており、専用アプリや液晶表示など、より進化した印象もあります。実際に比べてみると「Audirect Beam3PLUS」のほうが厚みは少ないもののやや大きく、重量も20gほど重くなります。しかし、実際の操作性はボタン操作とLEDの色表示だけの「Audirect Beam3PLUS」のほうが違和感が無く、使いやすく感じました。
Audirect Beam3PLUS余談ですが、「Shanling UP5」は好評だった前モデルの「UP4」と比べてマニアの間でもイマイチの評価で、その理由の大半が操作性の悪化によるものみたいです。またつい最近までファームウェアが不安定で私も持ち出して使用する気にはならない製品でした。音質面については特にUSB-DACモードでの進化が大きく、ワイヤレスモードでも「UP4」より進化が見られるものの、「Audirect Beam3PLUS」は出力やノイズ特性面でも「Shanling UP5」とほぼ同等、場合よってはそれ以上の実力を持っており、ワイヤレスモードでの音質の安定性などを考慮しても使いやすさを感じました。

またUSB-DACモードでMacBook Proに接続し、「Audirvana」などのアプリケーションで32bit/768kHzまでアップサンプリングして再生してみましたが、スマートフォン接続時と同様に安定したサウンドで明瞭に再生されました。やはりワイヤレスとUSB-DACモードではBluetoothコーデックを通すため相応に透明感や見通しに差が出ますがどちらも十分に実用的な印象です。なお、DSDについてはMacではDoPとなるためDSDの対応はDSD256までとなるみたいですね。
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WindowsについてもWindows10以降であれば「USB Audio Class 2.0」に対応しているためドライバー無しで接続することが出来ます。この環境でもAmazon MusicやiTunes(Apple Music)などのアプリケーションでは問題なくハイレゾで使用できるものの、ASIO用のドライバーがないため、「foobar2000」などの対応プレーヤーではDSDのネイティブ再生のほか音質面でも本領を発揮することができません。この辺はUSB-DACとして使用する上で確実にニーズがある部分ですので、メーカーにも対応をぜひとも期待するところですね。
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というわけで、「Audirect Beam3PLUS」は2万円程度の購入しやすい価格設定のなかでスマートデバイス用オーディオアダプタ、ワイヤレスレシーバーという2つの機能を中心に様々な機能をバランス良くまとめ、安定しかつ実用的な音質を実現していました。色々使える持ち歩きに便利なアダプターを探している方にはうってつけだと思いますし、限られた予算のなかでPCやスマートフォンを高音質化したいと考えている方にも楽しめる製品に仕上がっているのではと思います。有名メーカーのような目立った存在ではありませんが、興味のある方には十分オススメできるアイテムだと思いますよ。