
こんにちは。今回は「KZ ZEX」です。「KZ (Knowledge Zenith)」の20ドル台の低価格中華イヤホンですが、ドライバー構成に独自の低電圧仕様「静電(EST)ドライバー」(私のブログでは「中華EST」と呼称します)と10mm「二重磁気回路ダイナミックドライバー」のハイブリッド構成のモデルです。同じく「中華EST」ドライバーを搭載した低価格中華イヤホンとしてはKZのサブブランド「CCA」の「CCA NRA」が先行で反場されており、今回の「KZ ZEX」は「NRA」よりダイナミックドライバー部分を変更し、KZ独自のフェイスパネルを採用した「双子モデル」といっても良い製品です。音質面でも高評価の「NRA」を継承し、KZらしい寒色系のサウンドを踏襲しつつ、よりバランスの良い低価格イヤホンに仕上がっています。


「KZ ZEX」は独自の「6.8mm 低電圧静電(EST)ドライバー」と「10mm 二重磁気回路ダイナミックドライバー」の組み合わせによるハイブリッドモデルです。静電(EST)ドライバーについては、「CCA NRA」同様に数万円以上の多くの「静電ドライバー搭載イヤホン」が採用するSonion製ではなく、KZ/CCA製イヤホンのBAユニット同様に、中華メーカーから供給を受けた「6.8mm 中華ESTドライバー」だと解釈した方がよいでしょう。
「静電(EST)ドライバー」では磁気ではなく振動膜自体の静電気で振動することから、通常は膜の大きさにより相応の電力が必要となります(静電型ヘッドホンでは別途電力供給用の専用アンプを必要とする製品も多いですね)。しかしイヤホン用ユニットでは振動膜の小型化や構造の工夫(具体的には磁力を併用するなど)により低電力で稼働するように作られています。さらに「中華EST」=メーカー表記では「低電圧静電ドライバー」(Low voltage electrostatic driver)は、より低電力で駆動するために磁力なども併用していると考えられ、その点を踏まえてとしてSonion製の静電ドライバー等とは厳密には区別されます(この構造により「中華EST」を「静磁ドライバー」という言い方もあるみたいですね)。


「KZ ZEX」のインピーダンス25Ω、感度103dB/mWの仕様は「CCA NRA」と同一ですが、低域のダイナミックドライバー部分が「NRA」が「トリプル磁気ドライバー」なのに対し、「KZ ZEX」では従来のKZ製イヤホン同様に「二重磁気回路ダイナミックドライバー」を採用しています。
→ 過去記事: 「CCA NRA」 2千円台の価格設定でEST(静電)ドライバー搭載ハイブリッド構成。手軽に高音質を楽しめる低価格中華イヤホン【レビュー】
「KZ ZEX」では亜鉛合金製のフェイスプレートを採用しており、「ブラック」「グラファイト(ブルー)」「ローズゴールド」の3種類のカラーバリエーションが設定されています。


「KZ ZEX」の購入はAliExpressおよびAmazonの主要セラーにて。価格はAliExpressが21.99ドル、Amazonが2,780円~3,360円程度です。AliExpressでの購入方法などはこちらを参照ください。
AliExpress(Easy Earphones): KZ ZEX
Amazon.co.jp(L.S オーディオ): KZ ZEX
Amazon.co.jp(GK Offical Shop): KZ ZEX
Amazon.co.jp(KZ Flagship Store): KZ ZEX
■ 独自のフェイスプレートとカラーバリエーションを持った「CCA NRA」との双子モデル
例によって今回も異なるセラーからカラーバリエーションを購入しました。先行出荷された「ブラック」比較的早く届きましたが、他のカラーは出荷待ちで多少待たされました。現在は各色プライム在庫があるセラーもありますし、それ以外でもすぐに出荷してくれるでしょう。なお、今回は1個だけ輸送中にロストしてしまい再オーダーしました。まあ中国発送だとたまにあります。もちろんAmazonでもAliExpressでも返金処理が可能ですので心配はありません。


「KZ ZEX」のパッケージは例によって本体デザインを掲載したイラストパッケージとなっています。パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピースは本体装着済みMサイズ(通常タイプ)およびS/M/Lサイズ(柔らかいタイプ)、および説明書。付属ケーブルは「CCA NRA」と同じ、少し前のTFZに付属していたような厚めの被膜で覆われたタイプになりました。 多少好みは分かれるかもしれませんが、しなやかさがあるケーブルで絡まりにくく取り回ししやすいため使い勝手は良いと感じるでしょう。


シェルデザインは亜鉛合金製の厚めのフェイスプレートと樹脂製のハウジング。ハウジング部分の形状は「KZ ZAX」などの既存モデルと同様ですが、ステムノズルもハウジングと一体成形でイヤーピースをフックする部分が少す突起が大きくなっています。


そのかわりかもしれませんが、樹脂ハウジングの継ぎ目が即目部分と背面部分の間にあります。「KZ ZSTX」や最近の「KZ EDX Pro」などもハウジング部分は一体成形だったので、ここが別部品で組んでいるのはちょっと意外でした。特にグラファイトカラーのモデルはブラックとブルーのツートンカラーみたいになっていますね。この辺も静電ドライバーを搭載するための工夫なのかもしれませんね。


シェル形状は「CCA NRA」との比較ではフェイスプレート以外は全く同じで、ほとんどカラーバリエーションみたいな感じにも見えますね。「KZ EDX Pro」の比較ではフェイスプレートの厚み以外にも継ぎ目部分の違いで僅かにシェル自体も厚みが増しているようです。


イヤーピースは「CCA NRA」同様に最近の柔らかいタイプが付属します。しかし、「NRA」とは異なり本体装着済みのMサイズのみ「KZ ZSN Pro X」などのモデルで装着済みで付いているものと同じ、丸形のタイプが付いており、このMサイズが耳に合う方はそのまま使う方が良いでしょう。
いっぽう柔らかい方のイヤーピースは、やはりMサイズ以上ではしっくり来ないことが多いと思います。SサイズやLサイズなどMサイズ以外の方はとりあえず100均のイヤーピースのほうがだいぶマシに感じるかもしれませんね。できれば定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light Short」などの耳にフィットするタイプのイヤーピースに交換するのがお勧めです。
■ ダイナミックドライバー部分の違いにより、よりスッキリした印象のオールラウンドモデルに。
「KZ ZEX」の音質傾向は寒色系のドンシャリで、同様に「中華EST」ドライバーを搭載する「CCA NRA」と非常に近い印象のサウンドです。誤差の範囲で全く同じかも、とも感じましたが、開封直後の印象で低域は「CCA NRA」のほうが僅かに強めの印象で、「KZ ZEX」のほうがその分ニュートラル方向に感じるかもしれませんね。
最初に届いたブラックはHCKのエージングマシンにて100時間程度のエージングを行いましたが、後で届いた他のカラーの印象では1日程度の慣らし込みで落ち着くようです。「KZ ZEX」のバランスとしては最近のKZ等の中華ハイブリッドに多いドンシャリ方向でまとめつつボーカル帯域にもある程度主張のある印象。いっぽうで「CCA NRA」同様に高域部分は明瞭さを持ちつつBAの音より直線的で、金属質なギラつきのない伸びのある見通しの良い音を鳴らします。静電型ドライバーといいつつスマートフォンなどの再生環境でもそれなりに鳴ってくれる印象も同様ですね。「KZ ZEX」の高域は「中華EST」ドライバー独特のシャープさを感じる明瞭な音を鳴らします。「KZ ZEX」についてはMサイズに限り「普通のイヤーピース」が付属しているため、付属イヤーピース同士で「CCA NRA」と比較すると、「KZ ZEX」のほうがより伸びの良さを感じるかもしれませんね。同価格帯の中華ハイブリッドのBAのような金属質なギラつきなどは無く、非常に見通しの良い音を鳴らします。いっぽうで耳に付くような刺さりを感じさせない印象で歪みの極めて少ない高音など、出音自体は「CCA NRA」と同様の印象です。「KZ ZEX」もインピーダンス、感度などのスペックは「NRA」と全く同じで相違点はダイナミックドライバーのみなので、高域部分についてはフェイス部分の違いなどほぼ誤差の範囲と言って良いでしょう。ただ「NRA」同様に出力の大きい再生環境ではちょっと主張が強めにでる場合もあります。
中音域は凹むことなく鳴り、適度な主張とともに硬質ながら癖の無い印象。解像度については高域同様に静電ドライバーの恩恵もあってか中高域を中心にドライながら明瞭感があり、「KZ ZSTX」などのハイブリッドモデルより見通しの良さを感じます。女性ボーカルやピアノなどは伸びが良く、男性ボーカルも余韻も含め心地よい印象。ある程度エージング後の印象では低域との分離が「CCA NRA」と比べても若干高く、よりスッキリした印象に感じます。ボーカル帯域は少し前面で定位するものの、より音場感を感じやすくなりました。いっぽう、ボーカルの濃さや低域の迫力といった臨場感などは「CCA NRA」のほうが得やすいため、この辺をどう捉えるかが選択のポイントになるかもしれませんね。低域は非常にパワフルで重さを感じる、ある意味「馴染みのある最近のKZの音」なのですが、「中華EST」ドライバーとのバランスにより、過度に強調されること無く、心地よいドンシャリのバランスでまとまっています。重低音は比較的深く、ミッドベースも適度に締まりがあり量的には結構多いものの分離は良く過度に膨らむことはありません。解像感は「CCA NRA」より得やすいため、よりスピード感のある音数の多い曲でも楽しめる印象です。
一聴しただけでは区別ができないくらいの僅かの差ですが、上流(プレーヤーやアンプ、再生する音源など)を変え、場合によってはリケーブルなどにより、双方の違いはより顕在化します。「CCA NRA」はポップスやロックなどでより音数の少ないイマドキの曲が楽しく、臨場感が楽しめ、「KZ ZEX」のほうがよりオールラウンドな印象です。そういった意味では動画やゲームなども「CCA NRA」のほうがちょっとだけ向いているかもしれません。ただ、しつこいですが、標準ケーブルとスマートフォン/タブレット直挿しや小型DAPでは「一聴しただけでは誤差の範囲くらいの違い」です。多くの場合は見た目などでどちらかを選んでも全く問題ないと思います。リケーブルについては基本的にはKZのハイブリッドと同様の考え方でいいと思います。多少傾向が分かりやすいケーブルの方が相性は良いでしょう。低価格のものでは8芯銀メッキ線で情報用アップとともに多少メリハリが強めに出る「JSHIFi Hi8」(1,650円)やより見通しが向上する「JSHiFi SKY」(1,880円)はとても選びやすい選択肢ですね(qdcコネクタが売り切れている場合も順次入荷すると思います)。「KZ ZEX」は本体のカラーバリエーションも選べるため、リケーブルを見た目で合わせる場合も選びやすいですね。もちろん本体価格とのギャップを気にしなければ「TRIPOWIN Jelly」など16芯線や24芯線を合わせるのも楽しいでしょう。色々なケーブルで違いを試して見るのも良いですね。










