TRN TA2

こんにちは。今回は「TRN TA2」です。中国のイヤホンブランド「TRN Audio」ですが、最近ではそのコストパフォーマンスの高さは維持したまま、より独自の路線を鮮明にしてきていますね。そのなかでもKZなどの競合メーカーとは異なる路線を鮮明にしたモデルはKnowles製BAとダイナミックドライバーのハイブリッド構成をTRNで初めて採用した「TRN TA1」でした。
そして今回の「TRN TA2」では同じくKnowles製BAを今度は2基搭載し、さらにダイナミックドライバー部分はカーボンナノチューブ振動版ドライバーを採用するなど、TRNとしての独自色を鮮明にしてきました。いっぽうで価格は50ドル以下で低価格中華イヤホンの範疇にしっかりまとめるなど、TRNの底力を感じさせるイヤホンだと思います。
TRN TA2TRN TA2

TRNは従来はハイブリッドやマルチBAモデルでも自社ブランドのBAユニット(製造はおそらくBellsing)、つまり中華BAを採用してきました。中華BAはKnowlesやSonionといった有名メーカーのBAドライバーと比べて圧倒的に安いユニット単価で、いわば中華ハイブリッドの低価格化を牽引してきた原動力ともいえる要素ですが、高ゲインでの歪みやすさやそもそもの音質面の差といった「安かろう悪かろう」な部分も否定できませんでした。
KZおよび当時それに追随していたTRNはこの中華BAを並列に並べマルチドライバー化することでユニットごとの負担を減らし和音として高音質化するアプローチを目指してきました。この手法は結果的にスペックモンスター競争となり、マーケティング的にも効果的だったのですが、いっぽうで当初の目的(中華BAの音質差を補うため)がどこかへいってしまった感もありました。なによりユニット数が増えれば価格も上昇するわけで、「それなら原点に戻って、最初から音の良いBAを使えばいいんじゃない?」と思うのは(目的に立ち返れば)必然ではないかと思います。

今回の「TRN TA2」をはじめ、Knowles製BAを搭載した「TRN TAシリーズ」の製品はTRNがコレまで蓄積した技術ベースにBAユニットを高音質化することで、よりシンプルな構成で質の高いモデルを生み出そうとするアプローチではと推測します。
TRN TA2TRN TA2
TRN TA2」はKnowles製「RAD-33518」バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを2基、8mmサイズのカーボンナノチューブ振動版ダイナミックドライバーを1基搭載する「2BA+1DD」構成のハイブリッドモデルです。「RAD-33518」はKnowles製のBAユニットの中でもFiiOをはじめとする中華メーカーが中心となって採用する高域ユニットで、搭載メーカーはFiiO、IKKO、SIMGOT、HIDIZSなど非常に多岐にわたります(「RAD-33518」自体がFiiOが「WBFK-30095」をベースにKnowlesからのライセンス生産をしているユニットというウワサもあります)。ダイナミックドライバー部分は振動板にカーボンナノチューブ(CNT)を採用。先日レビューした「TRN VX Pro」では10mmサイズのCNT振動板ドライバーを採用していましたが、「TRN TA2」では少しコンパクトな8mmサイズでの搭載となります。また内部ではテスラレベルの二重磁気回路を使用するなど、従来の同社の技術を反映しています。

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TRN TA2」のシェル本体部分はクリアカラーの樹脂製ですが、本体を覆い剛性を高めているフェイスプレートにはアルミニウム合金を採用。フェイスデザインはミドシップスポーツカーをイメージしてるらしいです(^^)。カラーバリエーションは、シルバー(Moonlight silver)、ブルー(Alpine blue)、ピンク(Rose pink)、ブラック(Moonlight Black)の4色が選択できます。
TRN TA2TRN TA2

TRN TA2」の購入は「HiFiGo」の直営店またはAmazonマーケットプレイスにて。
価格は「HiFiGo」が 42ドル、Amazonが5,686円です。
HifiGo: TRN TA2 2BA+1DD Hybrid In-Ear Monitors
Amazon.co.jp(HiFiGo): TRN TA2


■ スポーツカーを意識したフェイスデザインと50ドル以下では異例の充実した付属品

TRN TA2」のパッケージは、「VX Pro」と同じサイズのボックス。パッケージアートはスポーツカーを意識したというフェイスデザインがプリントされています。
TRN TA2TRN TA2
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル(TRNタイプCコネクタ)、シリコンイヤーピースは装着済み白色Mサイズと、別に黒色タイプおよび白色タイプがS/M/Lサイズ、ウレタンイヤーピース(黒色)が1ペア、6.3mmステレオジャック変換プラグ、円形の金属製ハードケース、説明書、保証書など。まあ「VX Pro」と同じなのですが、アンダー50ドルクラスの「TRN TA2」ではかなりの充実度ですね。

TRN TA2TRN TA2
TRN TA2」のシェルデザインは比較的コンパクトで、KZやTFZなどのシェルサイズに近いデザイン。ただ多少シェイプされた形状になっているためか装着性はより向上している印象です。とはいえ、TRNとしてKnowles製BAを最初に搭載した「TA1」が「TRNらしさ」を徹底的に無くした(むしろFiiOあたりにOEMでもするのかなと思えるくらいの)デザインだったのに対して、「TRN TA2」はちゃんと「TRN製イヤホン」だなと思えるデザインでまとめられていますね。
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フェイス部分のスリット上の部分はベント(空気孔)になっており、裏面からメッシュパーツが貼られています。そのため再生時には多少の音漏れがあります。通常の屋外ので利用は満員電車など密接した環境で無ければ問題は無いレベルですが図書館など静かな場所での利用は難しそうです。イヤーピースは標準で2種類のシリコン製とウレタンタイプが1ペア付属しますが、個人的にはやや低域が強く出過ぎる印象があったため、より耳穴奥まで挿入できる形状のものに交換しました。例によって定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、またよりフィット感の強いタイプでは「SpinFit CP100+」など、自分の耳に合う最適なイヤピースに交換するのも良いでしょう。


■ 従来のTRNとは一線を画した自然なサウンド。リケーブルでより表現力が向上。

TRN TA2TRN TA2」の音質傾向は中低域寄りのドンシャリ。開封直後は多少低域が強めに出る場合もあるかもしれません。以降は例によってHCKで購入したエージングマシンで100時間ほど鳴らした状態でのレビューとなります。「TRN TA2」は従来のTRNの「派手めの寒色系ドンシャリ」とはやや方向性が異なり、付属ケーブル、付属イヤーピースの組み合わせでは低域が厚く、結構ウォームさも感じる印象になります。最近では「TRN VX Pro」はベースになった「VX」よりさらにキレの良い中高域寄りのサウンドで聴く人によっては多少腰高に感じる場合もある印象だったのとは正反対かもしれませんね。しかし、このサウンド自体はリケーブルやイヤーピースの交換などでかなり激変しますので、比較的変化を楽しみやすいイヤホンともいえるでしょう。私はカラバリを2種類入手しているので、それぞれリケーブルなどの違いを比較して楽しむことができました。

TRN TA2」の高域は、TRNらしい明るい音を鳴らします。TRNが最初にKnowles製BAを搭載した「TRN TA1」ではわりと従来通りの寒色系ドンシャリのチューニングでしたが、今回は同じBAユニットを2基並列で並べて出力を強化しつつ、全体としては聴きやすいバランスにまとめています。付属ケーブルでは低域が前面に出やすいため少し遠くなる、あるいは主張が控えめに感じる場合もありますが籠もることは無く煌びやかやさ鋭さも表現されています。伸びや抜け感もこの価格の中華ハイブリッドとしてはまずまずで、シンバル音などより細かい音をしっかり捉えて綺麗に鳴らしつつ刺さりやすい帯域はコントロールされているのは好感できます。

TRN TA2中音域は標準ケーブルでは曲によっては低域の主張により多少凹みますが、ボーカル帯域を中心に従来の低価格中華ハイブリッドとは質の異なる音像表現が楽しめます。「TRN TA2」で搭載されているKnowles「RAD-33518」BAはKnowles「WBFK-30095」をベースにしたユニットだと言われていますが、「WBFK-30095」がツィーターとしての用途が一般的なのに対して、「RAD-33518」はFiiOなど他のメーカーの採用例を見ても高域に加えミッドレンジまでカバーするケースが比較的多く見られます。BAユニットとしての違いなどは把握していないものの、「TRN TA2」の中音域の「質感の違い」も、従来のTRNブランドの中華BAから「RAD-33518」を採用した事による違いと考えるのが自然でしょうね。癖の無い出音で解像感は高く情報量の多い明瞭な音を鳴らします。いっぽうで中華ハイブリッドにありがちな金属質な印象ではなく、僅かに温かく自然なつながりがあります。女性ボーカルは細ること無く綺麗に伸びます。標準ケーブルでは男性ボーカルの低音が厚みのあるミッドベースで若干ディテールがマスクされる印象がありますが、この辺はリケーブルでほぼ改善できます。

TRN TA2低域はミッドベースを中心にとても存在感のある音を鳴らします。同じCNT振動板を使用していても10mmサイズを採用する「TRN VX Pro」がよりタイトで控えめだったのに対し、「TRN TA2」ではキレよりも音色や描写を重視したような印象で、従来のTRN製イヤホンよりウォームな印象を与えるポイントになっています。とはいえ解像感は良好で明瞭さもあり、重低音もしっかり沈む印象。アコースティックな音源で深い低域を鳴らしたときの自然な質感はメリハリ重視の中華ハイブリッドとは一線を画するものです。この深く厚みのある低域はより広い音場表現につながっており、広がりのあるステージで鳴っているような印象はとても心地よさがあります。
ただ標準ケーブルおよびイヤーピースではこの低域の主張が強すぎる印象があったのも事実。イヤーピースはより耳奥までフィットできるものを選択し、リケーブルで情報量を向上させることを推奨します。

リケーブルは情報量が多く適度に中高域に伸びのある銀メッキ線などが相性が良いでしょう。TRN純正では「TRN BA15」に付属する「TRN T6」16芯ケーブルはスタンダードなアップグレード手段ですね。また、先日レビューした「JIALAI」ブランドのケーブルは入手性、手頃な価格、品質と3拍子揃っており、銀メッキ線の「JIALAI JLY2」は「TRN TA2」と抜群の相性の良さを感じました。中高域の主張が格段に向上し、低域を含めた全体のバランスがよりニュートラルになります。いっぽうでそれぞれの音域の特徴は維持されており、アンダー50ドルとは思えない質の高いサウンドが楽しめます。ブルーのモデルと合わせると見た目もいい感じですね。
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TRN TA2」と相性が良いのはポップス、アニソンなどのボーカル曲のほか、インストゥルメンタルもこの価格帯のイヤホンとしては結構楽しめる印象。特に女性ボーカルは綺麗ですね。またアコースティック音源との相性も良くジャズなども良い雰囲気で再生できます。いっぽうクラシックなどは雰囲気や定位が変わってしまう場合があり、スピード感のある曲ではもう少しキレが欲しいと思うかもしれませんね。そのような場合は従来の「TRN TA1」も相変わらず良い選択肢だと思いますよ。

というわけで、「TRN TA2」はTRNというブランドらしさを維持しつつ、また別の可能性を感じさせてくれるモデルでした。これは「TRN TA1」が外観や仕様でTRNらしさを徹底的に排除しつつ音質面ではしっかりTRNの方向性を維持していたのとは対照的ですね。今後「TA1」をリプレースするかも?なKnowles製BA搭載のエントリークラス「TA」も届く予定ですが、やはり同社の今後の製品展開にも目が離せないなと思いました(^^)。