KZ EDC

こんにちは。今回は「KZ EDC」です。KZ製イヤホンのなかでもシングルダイナミック構成でかつリケーブル不可(ケーブル直結)タイプのモデルとなります。アンダー10ドルの超低価格製品ですが、「KZ EDX」よりは若干上の価格設定となっており、その代わりシェルもカラフルなクリアカラーに金属プレートによる光沢のあるデザインと見た目にも美しさを意識するなど、一見するとよりライトユーザーを意識したモデルのようにも見えます。しかし、内容的には新しいダイナミックドライバーを使用し、従来とは結構異なる音質傾向になっているなど、最近のKZの中でも色々興味深いモデルとなっています。

■ 製品の概要について

KZ EDC」は低価格中華イヤホンのブランドとしてはお馴染み「KZ」のなかでもシングルダイナミック構成でアンダー10ドルクラスの超低価格モデルのひとつ。ケーブル直結型でリケーブル不可仕様ながらカラフルなデザインが特徴的です。
KZ EDCKZ EDC

ただし、「KZ EDC」は同じくシングルダイナミック構成の最近の「KZ EDX」およびアップグレードモデルの「EDX Pro」「EDS」とは全く異なるタイプのドライバーを搭載しています。またライトユーザーを意識したようなカラフルなデザインを採用しつつ、いっぽうでインピーダンス35Ω、感度95dB/mWと、ちょっと従来のKZ製イヤホンとは結構異なるスペックも気になるところ。おそらくTWS製品で使用した薄型キャビティ、低消費電力タイプの新型ダイナミックドライバーを有線イヤホンに活用していくための「実験的モデル」の意味のあるのかも、と思ったりします(なお、最初のテストモデルが「GK G1」で「KZ EDC」はドライバーチューニングを変えてのリトライという話もあるそうです)。

KZ EDCKZ EDC

KZ EDC」は10mmサイズの新しいタイプのダイナミックドライバーをシングルで搭載。このドライバーの振動板は一般的なPET樹脂ですが表面に「Diamond-Like cut pattern」が処理されているという記載があります。いわゆるDLC(Diamond-Like Carbon)をコーティングしている複合振動板とは異なり、似たような反応を示すPET振動板、みたいなイメージでしょうか。正直あまりよくわかりません(汗)。その辺の意味不明な解説を無視して外観で比較すると、TWS製品の「KZ SK10」や「KZ T1 Pro」で採用されている薄型キャビティの複合振動板ドライバーぽい印象も受けます。いっぽうで「KZ EDC」では薄型キャビティが穴の空いたタイプになっており、「KZ SK10」とはちょっと仕様が異なっていたり。シングルダイナミック構成で鳴らすためのチューニング変更の可能性もありますね。

KZ EDCKZ EDC

KZ EDC」はリケーブル不可の直結タイプで、ケーブルはOFC(無酸素銅)線を使用しています。けーぶるはリモコンマイクの有無を選択できます。フェイスプレートは本体と同じクリアカラーの樹脂パネルの内側に金属パネルを埋め込んでおり、光沢感を演出しています。カラーバリエーションは「パープル&ブルー」と「ブラック」の2色が選択できます。
購入はAliExpressの各セラーにて。価格は8.9ドルです。


■ 製品の外観および装着性など。

KZ EDC」はケーブル直結モデルということで、同社のケーブル製品と同じサイズのより小さなパッケージで届きました。このサイズのパッケージは同じく直結タイプの「KZ ZSE」「KZ ED4」と同様ですね。内容はイヤホン本体、イヤーピース(S/M/L)、説明書です。
KZ EDCKZ EDC

KZ EDC」の本体部分はクリアカラーの樹脂製で、シェル形状は「KZ EDX」と同一です。ケーブル部分はアップグレードモデルの「EDX Pro」や「EDS」に付属する厚みのある被膜のケーブルと同様のタイプながら、こちらは銀メッキ線ではなくOFC(無酸素銅)線を採用しています。また樹脂製フェイスプレートの内側に金属プレートが貼り付けられており、正面から見ると光沢のあるフェイスに刻印されたKZロゴが映えるデザインになっています。
KZ EDCKZ EDC

従来の「KZ EDX Pro」「EDS」などと同じシェルサイズとケーブルの質感ですので装着性も同一な印象、多くの方に使いやすいデザインと言えるでしょう。イヤーピースは付属品のほか、例によって定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、またよりフィット感の強いタイプでは「SpinFit CP100+」など、自分の耳に合う最適なイヤピースに交換するのも良いでしょう。


■ インプレッション(音質傾向など)

KZ EDCKZ EDC」の音質傾向は中低域寄りで「一応」ニュートラルなサウンドバランス。一応、というのはフラット寄りにチューニングされていると言うよりは、メリハリが抑えられ多少平坦になってる、というニュアンスの方が近いサウンドだからですね。TWS製品の「KZ SK10」(1BA+1DD構成)と比べて、「KZ EDC」はよりスペースのあるシェル形状で逆にシングルダイナミックになったということもあり、より箱鳴りを活用した音の広がりを感じるチューニングになっています。いっぽう、「KZ SK10」がBAによって補完していた高域は明らかに明瞭感に欠けており、「このドライバーをチューニング変更だけでシングルで鳴らすのは無理があるのでは?」と思わずにはいられない印象です。

それでも全体としてはややウォームで聴きやすいバランスのイヤホンになっており、高めのインピーダンスと低めの感度ながら、まあ普通に鳴らせる程度の反応で無難なイヤホンという印象。なるほどカラフルなデザインは「音質にとやかく言わない層」に「見た目だけ」で訴求するためだったのか、そう思わせる音作りです。
高域は伸びないものの籠もりはありませんし、中低域はそれなりに厚みがあるため、音数の少ない最近のポップスなどを聴く上ではチープな音には感じないでしょう。また、どの音域も近すぎない距離で同様に鳴るため、ボイスチャットやWeb会議などでは結構音声が聞き取りやすく、使いやすい印象を持つかもしれませんね。
KZ EDCリスニング向けとしてはいろいろ不満がある製品ですが、非マニア層向けの普段使いでは「不可はない」印象のため、それこそプレゼントや、組織でまとめ買いして配布する用途には向いていそうです。
それ以外では、たとえば勉強中や集中して仕事を片付けたい時のBGM用など、丸みがあり刺激の無い音で、むしろ「意識せず使いたい」場合などにも良いのかも(なお、普段からいろいろなイヤホンを聴いているマニア諸氏は、意識させない音作りがむしろ気になって集中できない、という逆効果パターンもあるので注意^^;)。さらに装着性で問題が無ければ「寝ホン」としても使えそうです。


■ まとめ

というわけで、「KZ EDC」はTWS用の別タイプのダイナミックドライバーの再活用という意味で、従来のKZ製イヤホンとは異なるアプローチを試みた興味深いイヤホンでした。ただ「試しに活用方法を模索してみた感」も結構あって、お勧めできるイヤホン化というと結構微妙です。
KZ EDC掲載時点はアマゾンではどのセラーも出していないようですが、もしプライム扱いであった場合は、前述のような「プレゼント用途」(特に高域が苦手な方や、BGM用として普段イヤホンをあまり使わない方向け)としては一定のニーズには対応出来そうではあります。ただAliExpressで購入する前提では、結局は中華イヤホンをまめに購入されているマニアのコレクション目的以外にはあまりイメージできないかもしれません。今後、有線のハイブリッドモデルなどでこのドライバーを活用してまた違った面を見せてくれる可能性もありますし、KZのトライを見守っていきたいと思います。