TINHIFI T3 PLUS

こんにちは。今回は「TINHIFI T3 PLUS」です。マニアの間ではお馴染み中国のイヤホンブランド「TINHIFI」の最新モデルです。12月25日より国内版も一般販売が開始され、より多くの方に体験しやすくなりました。
「T2」から始まる同社の主力製品の「Tシリーズ」ですが、現在は価格グレードのみを踏襲し、デザイン、ドライバー構成、そして音質傾向も新たに作り直した「PLUS」モデルを新たな「主力」としてリリースを続けています。すでに販売されている「T2 PLUS」と「T1 PLUS」に次いで今回登場したのが「TINHIFI T3 PLUS」で、今回も「T3」と比べて全く新しいイヤホンと生まれ変わっていますね。
→過去記事(一覧): 「TINHIFI」ブランドのイヤホンのレビュー
TINHIFI T3 PLUS」は「10mm液晶ポリマー(LCP)振動板ダイナミックドライバー」を搭載するシングルダイナミック構成のイヤホンです。価格帯としては70ドル前後で、かつての「T3」と同様の価格帯でまとめられています。
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「TINHIFI」はもともとは長年の実績のあるOEM/ODMメーカーで、2017年に発売した「T2」以降本格的に製品展開を進めており、「T2」「T1」「T2 Pro」の後、2019年にリリースされたのが「T3」で、「T2」同様の円筒形の金属シェル(タンクボディ)を採用し、1BA+1DDのハイブリッド構成を初めて採用しました。ちなみに「TINHIFI」ブランドとしてはハイブリッド構成のイヤホンは今のところ「T3」だけだったりします(最近ではサブブランドの「TKZK」でハイブリッドを作っていますね)。

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いっぽう今回の「TINHIFI T3 PLUS」では3Dプリンティングによるレジンシェルを採用し、耳にフィットしやすいエルゴノミクスデザインで形成されています。フェイスはマーブル模様のフェイスパネルを使用し、ハンドメイドで美しく仕上げられています。
ドライバーには10mmサイズの「液晶ポリマー(full-size liquid crystal polymer; LCP)振動板・二重磁気回路ダイナミックドライバー」をシングルで搭載。LCP振動板は最近では「Moondrop Aria」などでも採用されていますが、高い硬度で迅速なレスポンスと高精細なサウンドが特徴とのことです。
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また付属ケーブルは上位モデルの「TINHIFI T5」と同様の線材を使用。柔らかく取り回しの良さが特徴とのことです。「TINHIFI T3 PLUS」の購入は海外版はAliExpressやHiFiGoなど、また国内版も12月25日より一般販売が開始されています。
価格は国内代理店を経由した国内版が9,980円前後、海外版はアマゾンにて9,000円前後およびAliExpressおよびHiFiGoでは69ドルで販売されています。また海外モデルには専用ケース付などを選択できるセラーも一部ありますね。
楽天市場(国内正規品): TINHIFI T3 PLUS
Amazon.co.jp(L.S オーディオ):   TINHIFI T3 PLUS ※プライム扱い・現在 7,184円で購入可能
Amazon.co.jp(HiFiGo):  TINHIFI T3 PLUS ※プライム扱い
HiFiGo: TINHIFI T3 PLUS ※+10ドルでケース付選択可能。100ドル以上で送料無料


■ 装着性が大きく向上した3Dプリントのレジン製シェルを採用。

今回はBFセールの際にレザーケース付で購入しました。手元には10日程度で届いたと思います。イヤホン本体のパッケージはロゴのみが記載されたシンプルな白箱タイプ。箱を開けると柔らかい素材を貼り付けたふたと本体が登場します。このコストをあまりかけずにちょっとだけ高級に見せるパッケージングはTINHIFI結構得意だなぁ、と思います(^^)。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル(0.78mm 2pin)、イヤーピース(シリコン2タイプ、S/M・Lサイズ)、ウレタンイヤーピース1ペア、布製ポーチ、説明書、保証カード。また+10ドルで追加したケースは「TINHIFI T4」に付属していたものと同じタイプのレザーケース(AliExpressで12ドル~14ドル前後)でした。
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TINHIFI T3 PLUS」のシェルは3Dプリントされたレジン製で比較的コンパクトな印象。装着性も良好ですね。レジンはわりと厚みがあるようですが充填タイプのシェルではないためとても軽量です。にしても「T3」「T2 PLUS」「TINHIFI T3 PLUS」の3機種を並べただけでも同じメーカーには全く見えないあたりはいかにも(OEM/ODM製造メーカーでもある)「TINHIFI」らしいですね。
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ケーブルは「TINHIFI T5」と同じ撚り線タイプの銀メッキ線を採用しているとのことでとても柔らかく取り回しは良好です。ただし、コネクタ部分については「T5」は埋め込み式の「CIEM 2pin」だったのに対し、「TINHIFI T3 PLUS」は本体側がフラットな2pin仕様のため、ケーブルも「中華2pin」タイプになっています。
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イヤーピースは硬さの異なる2タイプのシリコンと初代「T2」からの伝統ともいえるブルーのウレタンイヤーピースが1ペア付属します。イヤーピースについては付属品のほか、定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、またよりフィット感の強いタイプでは「SpinFit CP100+」など、自分の耳に合う最適なイヤピースに交換するのも良いでしょう。


■ TINHIFIらしさを手堅くまとめた、同社製品で最も汎用性が高く使い勝手の良いモデルかも。

TINHIFI T3 PLUS」の音質傾向は「TINHIFI」らしい弱ドンシャリで癖の無いニュートラルなサウンドバランス。ただ元々の「T2」「T3」といった「タンクモデル」がやや中高域にフォーカスしたサウンドバランスだったのに対し、「PLUS」系は高域をやや大人しくして中低域に厚みを持たせ聴きやすくした印象があります。「TINHIFI T3 PLUS」も「T3」と比べると同様の印象で多少高域のスッキリ感は失われているものの、明瞭な中高域があり、高域が強めの曲でも聴きやすく、かつ全体としても自然なバランスにまとめられています。
TINHIFI T3 PLUSなお既存モデルの「T2 PLUS」も同様のアプローチで比較的好評なモデルですが、中低域の厚みをより強くしたため、個人的には中高域がわずかに伸びきらない部分がありました。いっぽう「T3」に関しては「T2 Pro」の方向性を維持しつつ、全体のバランスを整えニュートラルな方向性にした、という印象のサウンドで、これはこれで良かったのですが、その後登場した「T4」がこのアプローチを完全にブラッシュアップしたため、「T4持ってればT3は無くてもいいかな」という雰囲気にマーケット自体がなってしまった感じはあります。
今回の「T3 PLUS」は「T2 PLUS」の方向性を継承しつつ、ボーカル帯域から中高域の明瞭感をよりアップグレードした印象。もちろん既存の「T3」「T4」とは異なる方向性をしっかり提示できていますし(両方持っていても使い分けできるでしょう)、また前述の「T2 PLUS」より全体の音域にわたってバランスが良く明瞭に感じる点も好印象です。そしてレジン製のシェルデザインはより軽く、装着性、遮音性の上でも使いやすくなった印象があります。他社製品と比べると突出したポイントがあるわけではありませんが、案外このくらいのサウンドが汎用性の高さという意味で一番使いやすく、価格的にも「ちょうど良い」のではと感じます。ちなみに、LCP振動板を採用し100ドル以下、という似たキャラクターを持つ「Moondrop Aria」との比較も興味深いですね。

TINHIFI T3 PLUSTINHIFI T3 PLUS」の高域は、明瞭感のある音を鳴らします。「TINHIFI」としては多少主張を抑え聴きやすさを重視した印象ですが「T2 PLUS」より伸びが向上しています。刺激を抑えつつも「T2 PLUS」より高域の質感の良いものをと思っている方には最適なバランスといえるでしょう。分離は良くシンバルなども鮮やかさのある音で綺麗に分離しますが、刺さりやすい帯域でちょっと後ろに下がり刺激を抑えている印象。「Moondrop Aria」と比較すると、「TINHIFI T3 PLUS」の高域の方が明るく鮮やかで、明瞭感のあるハッキリとした音を鳴らします。「Aria」は比較すると僅かに温かく柔らかい音に感じますが、いっぽうで透明感や見通しの良さは「TINHIFI T3 PLUS」より多少高い表現力を持っているようです。この辺はどちらが良いかは好みや普段聴く曲のジャンルで変わってきそうですね。

中音域は、ニュートラルで癖の無い音を鳴らします。音場は広く、ボーカル帯域は自然な距離感で定位する印象。分離は良く、音源の忠実度も比較的高め。全体としては少し下がって聴こえるものの明瞭感のあるハッキリした印象です。とはいえ自然なチューニングのため、派手なドンシャリ系やボーカル押しのメリハリの強いイヤホンと比べると多少大人しく感じるかもしれませんね。
「Aria」との比較では「TINHIFI T3 PLUS」のほうがボーカルは存在感があり、特に男性ボーカルを中心に厚みと深さを感じるいっぽう、「Aria」のほうが演奏とのコントラストが美しく女性ボーカルの高域は伸びがあります。

TINHIFI T3 PLUS低域は締まりのある直線的な印象ですが量的な不足は無く、パワフルな鳴りもしっかり楽しめるバランスになっています。重低音は適度な深さと重量感があり、過度に響くことはありませんが質の良さを感じます。ミッドベースは直線的で膨らむことは無く鳴ります。いわゆる中華ハイブリッド的なキレ重視のサウンドとは印象が異なりますが、それでもある程度のスピード感は維持されており、締まりのあるミッドベースのおかげで音数の多い曲でも結構楽しめる印象です。「Aria」との比較ではミッドベースを中心に「TINHIFI T3 PLUS」のほうが力感があり、楽しさを感じるバランスだといえるでしょう。

TINHIFI T3 PLUS」はボーカル曲を中心に様々なジャンルで幅広く楽しめるバランスの良いイヤホンといえるでしょう。また「Moondrop Aria」(79.99ドル)との比較では海外版では10ドル程度価格差があり、外観も「Aria」のほうが相応に高級感がありますが、音質的には甲乙付けがたく、「TINHIFI T3 PLUS」のほうが好みという方も一定数はいらっしゃると思います。しいていえばより自然で透明感があるのが「Aria」で、ボーカル帯域を中心に鮮やかさが少し強調されているのが「TINHIFI T3 PLUS」といった感じだと思います。
TINHIFI T3 PLUSまた前回レビューした「IKKO OPAL OH2」との比較では音質的な完成度の高さでは「OH2」が頭ひとつ抜けて優れていますが、実際聴いてみると多少淡泊に感じる方も多いかも。その点ではリスニングイヤホンとしては「TINHIFI T3 PLUS」のほうが楽しいと思います。ただより抜け感のある明瞭な高域を求める方は「T4」「T5」といった上位モデルを検討するのも良いと思います。とりあえず100ドル前後の価格帯が派手なドンシャリ一辺倒にならず、このように質の高いイヤホンを選べるようになってきたのは良い傾向ですね。

マニアであれば無試聴突撃で全部揃えよう、と言いたいのが本音ではありますが(笑)、幸い国内代理店も結構積極的で専門店での試聴も可能になっていますので、足を運べる方は実際に聴き比べて好みを探すことをオススメします。「Aria」「OH2」、そして今回の「TINHIFI T3 PLUS」の3機種について、とりあえず「アンダー100ドル」クラスでの個人的な好みでも上位は確定かな、と思っています(^^)。