SeeAudio X Crinacle Yume Midnight

こんにちは。今回は「SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」 です。前回に引き続き、有名レビュアーのCrinacle氏監修によるコラボモデルで、日本でも音質面の完成度の高さから人気急上昇中の「See Audio」と大手セラーの「HiFiGo」のコラボレーションになります。2BA+1DD構成の「See Audio Yume」をベースに設計しているようですが、シェル形状は最近の4BAモデル「See Audio Bravery」に近いデザインになっており、Crinacle氏のサウンドチューニングがどのような形で反映されているのかとても興味深いところです。実際オリジナルの「Yume」と比べても完成度は高く、Crinacle氏チューニングとSee Audioとの相性の良さを感じる仕上がりとなっていますね。

■ 製品の概要と特徴など。

「See Audio」は2019年に生まれた非常に新しい深圳発のブランドで中国国内でCIEM(カスタムIEM)メーカーとして評価を高め、その後数々のユニバーサルモデルで本格的に市場参入を果たしました。最初のグローバルモデルとして2BA+1DD構成の「Yume」、そして日本市場限定の3BAモデル「ANOU」をリリースし、最近では4BAモデルの「Bravery」が販売されており、どの機種も優れたサウンドチューニングで高い評価を得ています。また海外ではより上位のモデルも販売しています。
過去記事(一覧): SeeAudio製イヤホンのレビュー

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SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」は同社のユニバーサル仕様におけるリファレンスモデルともいえる「Yume」をベースに、最新モデルでのテクノロジーを投入し、さらにCrinacle氏によるサウンドチューニングを実施。シェルには再設計されたデザインを採用し、カーボンファイバー製の新しいフェイスプレートを使用しています。
また、内部は「Yume」同様に、ドライバーユニットに2基のカスタムチューニングされたバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーと、9.2mm シリカゲル振動板(Liquid Silicone Diaphragm)ダイナミックドライバーを搭載。独自技術「L.F.C.(Low-Frequency Filter Conversion)テクノロジー」により、ドライバー間のつながりを向上しより滑らかなサウンドを実現しているようです。

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さらに、「SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」では、より高品質の 5N OCC 高純度単結晶銅銀メッキ線ケーブルを採用。イヤーピースにも5サイズの新しいタイプのものを採用しています。このような高いポテンシャルを持った「Yume」の音響設計に加え、シェルデザインやアクセサリをグレードアップすることによりCrinacle氏のサウンドチューニングに十分に応え、より優れた拡張性と解像度、そしてより広く活気のあるサウンドを実現しています。
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購入はHiFiGoサイトまたはアマゾンのHiFiGoマーケットプレイスにて。価格は 199.99ドル で、アマゾンでは 23,233円 で購入できます。なお現在の出荷分でアクリルスタンド(9.99ドル)は付属しないかもしれません。あらかじめご了承ください。
HiFiFo: SeeAudio X Crinacle Yume Midnight
Amazon.co.jp(HiFiGo): SeeAudio X Crinacle Yume Midnight


■ サイズアップしたシェルデザイン。ケーブル&イヤーピースも一新。

パッケージサイズは従来の「Yume」「ANOU」と同じですが、「Midnight」という名称の通り、青空の「Yume」に対して月夜のデザイン。デザインアートにCrinacle氏も登場していますね。パッケージ背面には同社測定の周波数特性が掲載されているのも従来通りですが、比較すると「Yume」より4kHzあたりから大きく特性が変わっており、やや弱ドンシャリ方向の調整になっているのが分かります。「ドライバー構成」のグラフも「Yume」は中高域が強めという記載に対し「SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」ではMidsが僅かに少ない表記になっています。
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パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(XS/S/M/L/XLサイズ)、交換用ノズルメッシュパーツ、ハードケース、保証書、「Rinko」キャラクターのシール、プレートなど。イヤーピースは「AET07」風のタイプが5サイズ付属します。また今回もアクリルスタンドが同梱されていました。

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SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」の本体はピアノブラックのレジン製でクリアーブラックの「Yume」のようにシェルの中を見ることは出来ません。またサイズも「Yume」「ANOU」より大きく、「Bravery」に近いサイズ感になりました。この外観は「Bravery」、中身は(チューニング違いの)「Yume」というデザインが音質的にどのような影響を及ぼすのかはよくわかりませんが、見た目の高級感は格段にアップしていますね。十分に所有欲を満たしてくれそうです。ただ個人的には「Yume」のコンパクトな装着性もなかなか良かったのですが(^^;)。
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カーボンファイバーのフェイスプレートは落ち着いていてとても格好良いですね。見る角度で色の変わる「Yume」や「ANOU」のグリッター柄も良いですが、シンプルなデザインの「SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」のほうが結果的に高級感を感じます。

SeeAudio X Crinacle Yume MidnightSeeAudio X Crinacle Yume Midnight
アクセサリも今回も充実していますね。銀メッキ線ケーブルはやや弾力のある被膜ですが、「Yume」付属の導線タイプより絡まりにくく取り回しも良い印象です。イヤーピースはいわゆる「AET07」タイプがXS。XLを含めた5サイズ付属します。
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イヤーピースは付属品のほか、定番のJVC「スパイラルドット」などを組み合わせるのも良いと思います。ただ、「Bravery」に付属する「AZLA SednaEarfit XELASTEC」については個人的にはあまり合わない印象でした。シェル形状は似ているのですがモデルによって最適なイヤーピースが異なるというのも興味深いですね。


■ Crinacle氏のチューニングにより、明瞭かつよりフラットなリスニングサウンドに。

SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」の音質傾向はフラット寄りのサウンドバランスですが「Yume」に比べると、リスニング要素が強まり、完成度が高まった印象です。個人的には「ハーマンターゲットカーブ」について、「意識したチューニングを行った製品を好意的に感じることが多い」ものの、「ハーマンターゲットカーブ」自体はあくまでひとつの目安に過ぎない、という考え方です。
SeeAudio X Crinacle Yume Midnightベースとなった「Yume」は以前のレビューで記載したとおり「とにかくハーマンターゲットカーブにがっつり寄せてみました」というサウンドが特徴で、海外ではそれなりに高評価も多いものの、全体的には「まずまずの仕上がり」というのが一般的な評価のようです。
これに対し、「SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」では高域はより高い表現力を持ち、中音域も明瞭さと音場表現が向上しています。また低域も締まりと解像感が増した印象があります。全体的により明るく鮮やかに、さらにより輪郭が明瞭になった印象で「Yume」とは全く異なるイヤホンと考えた方が良いかもしれませんね。

また「Yume」は全体的により温かく滑らかさがあります。おそらく「L.F.C.(Low-Frequency Filter Conversion)テクノロジー」によるドライバー感を調整する働きがより効果的なのは「Yume」のほうで、「SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」では、逆により個々のドライバーの質感が前面に出る印象もあります。個人的にはキャラクターがここまで違うと使い分けが出来るのでコレはコレで有りかな、と思ったりもしました。

SeeAudio X Crinacle Yume MidnightSeeAudio X Crinacle Yume Midnight」の高域は、明るく鮮やかさを感じる音を鳴らします。「Yume」の滑らかでやや温かい印象とは結構異なっており、両者の違いを分かりやすく印象づける帯域といえるでしょう。「Yume」はハーマンターゲットカーブにより詳細に寄せるためか、多くの製品と比べてメリハリがやや弱く感じる部分もありましたが、「SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」ではむしろ積極的に輪郭をハッキリさせている印象もあります。そのため煌びやかさなどは増していますが、刺さり等の刺激はより細かくコントロールしているようですね。「Yume」の高域で不満を感じていた方にはかなり良い印象の変化だろうと思います。

中音域は基本的に「Yume」の特徴を踏襲していますが、特に音場感などチューニングによる変化も確認出来ます。全体的にニュートラルな鳴り方ですが明瞭さと適度な光沢があり、同時に自然な温かさも感じられます。「SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」では分離感および解像感が増すことで音場がさらに立体的に感じるようになりました。同様に密度感に違いを感じるかもしれません。
SeeAudio X Crinacle Yume Midnight「Yume」では若干カマボコ気味に感じたのがよりニュートラルなバランスとなることで、ボーカルと演奏の定位も向上したように感じます。ただこの辺はイヤーピースによっても結構印象が変わるようです。付属のイヤーピース以外にも何種類か試してより自分と相性の良いものを探す方が良いかもしれません。
また輪郭が明瞭になったことで、各音域のつながりの滑らかさは「Yume」より僅かにさがっており、ドライバーごとの主張を感じる場合もありました。前述の通り「L.F.Cテクノロジー」については多少効きを抑えているのかもしれませんね。

低域は全体と印象としては「Yume」と同様に非常にバランスの良い印象でまとめられていますが、僅かに量感が増しており、多少厚みが増した印象を受けます。十分なパンチ力があり、かつ締まりの良い音を鳴らしてくれます。重低音の沈み込みも深く解像度は高い印象。ミッドベースも直線的でスピード感があり、いっぽうで硬すぎず、分離の良い心地よさがあります。


■ まとめ

SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」はハーマンターゲットカーブに準拠してるとされる「Yume」よりも、あるいはフラットなリスニングイヤホンかもしれません。ただ、「Yume」は2BA+1DDというドライバー構成をあまり意識させませんでしたが、こちらは「よりハイブリッドらしさ」を感じる「メリハリ」も同時に感じさせます。これは良し悪しというより、アプローチの違いと解釈する方が良いと思います。完成度は非常に高く、多くの方に十分にオススメできるイヤホンだといえるでしょう。

SeeAudio X Crinacle Yume Midnightただ、悩ましいところは同様の価格帯での選択肢が非常に多いことです。「Moondrop KATO」「QoA Adonis」「FiiO FH3/FH5s」「BQEYZ Autumn」などなど。これら価格も構成も似た各イヤホンは、どの製品もそれぞれに個性があり良し悪しもあるわけですが、音質傾向の方向性は似ている点もあり、また総合点も人気もそこそこ高い機種ばかりですので、頭ひとつ抜けるほどの圧倒的なポイントはありません。なので、これらの機種と「SeeAudio X Crinacle Yume Midnight」との比較でもやはり同様で、「個人的な優劣はあると思いますが、基本は好みの世界」ということにしておきます。
そうなってくると最後の決め手は、デザインであったり、キャラクターなどを通じて「そのイヤホンをどれだけ好きになれるか」なのかもしれませんね(^^;)。