TFZ TEQUILA PRO

こんにちは。今回は「TFZ TEQUILA PRO」 です。以前販売されていた「TEQUILA 1」の後継・アップグレードモデル、という位置づけですが、正確には新しく仕切り直してリバイバル登場させた、という感じかもしれませんね。当時から根強いファンも多かった独特の円筒形デザインを踏襲しつつ高級感を増したハウジングに、音質面もドライバー回りをグレードアップ&ブラッシュアップ。第3世代ドライバーの特徴である包み込むような音場感のある低域を活かしつつ、従来のTFZとは少し異なる適度に柔らかく透明感のある中高域を実現しています。その聴きやすく「イマドキ」なサウンドは、TFZ製品の中でも現在最も多くのユーザーに好感されそうなチューニングに仕上がっていると思います。
なお、中国のイヤホンブランド「TFZ(The Fragrant Zither)」は私のブログでも継続して注目し、新製品を紹介し続けているブランドです。これまでの各製品レビューおよび世代ごとの変遷の個人的なまとめなども掲載していますので、よろしければ併せてご覧ください。
過去記事(一覧): TFZ製イヤホンのレビューおよびまとめ
過去記事: TFZ製イヤホンの世代一覧表およびまとめ(リンク)


■ (振り返り) 「TFZ(TFZLUX) TEQUILA 1」(2018)とはどんなモデルだったか

上記リンクの世代表およびまとめでも記載していますが、2017年末頃、当時の中心モデルだった「EXCLUSIVE KING」(初代KING)などの「第2世代」のアッパーグレードとして「第2.5世代」ドライバーが発表され、その最初のモデルとして「KING PRO」と「TEQUILA 1」が発表され、2018年から販売が開始されました。このなかで「TEQUILA 1」は発売に合わせて新たに「TFZLUX」という新しいサブブランドを立ち上げ、中国ではファション寄りでのブランド展開も企画されていたようです。そのため、カラーバリエーション以外にフェイスデザインを選べるなどの特徴もありました。
過去記事: 「TFZLUX TEQUILA 1」 デザインもサウンドも従来のTFZとは一変した開放型「オトナ」イヤホン【購入レビュー】

TFZ TEQUILA 1イヤホンとしての「TEQUILA 1」はこの当時のTFZ製品のなかで唯一、密閉型ではなくセミオープン仕様を採用し音の広がりを意識したチューニングを採用。また「第2世代」の多くのモデルでみられた硬質な切れの良い高域とパワフルな低域のドンシャリ系チューニングに変わり、「TEQUILA 1」ではよりウォームで中低域寄りのチューニングに仕上げられています。最近では「Kinera」のサブブランド「QoA」が「女性向け」というコンセプトでファッション性を高めるとともに「Kinera」より高域をより聴きやすいチューニングでまとめるアプローチを取っていますが、ある意味「TEQUILA 1」はこの発想を先取りした製品だったと言えるかもしれません。しかしデザイン的には注目されたものの当時の評価は振るわず、マーケット的はいまひとつの製品として販売を終了しています。


■ 製品の概要について

TFZ TEQUILA PRO」は「TEQUILA 1」のシェルデザインを踏襲しつつ、TFZの経験を踏まえて新しく発売されたアップグレードモデルです。ドライバーには11.4mmのダイヤモンド振動板とテスラマグネットグループを採用したダイナミックドライバーを搭載。TFZ独自のデュアル磁気回路(Dual-Magnetic Circuit Two Divided-Frequency)を踏襲しつつ新しく生まれ変わったダイナミックドライバーは5-40kHzの周波数特性を持ち、細部まで徹底したディテールと滑らかに整えられたバランスを実現しているとのこと。
TFZ TEQUILA PROTFZ TEQUILA PRO
もともとの「TEQUILA 1」では「KING PRO」と同じ第2.5世代ドライバーをセミオープン型のハウジングで鳴らしていましたが、「TFZ TEQUILA PRO」で採用される「11.4mmダイヤモンド振動板ドライバー」は、はおそらく「NO.3」「KING EDITION」などで採用される第3世代「M1U」ユニットをブラッシュアップしたものと思われます。
TFZ TEQUILA PROTFZ TEQUILA PRO
このドライバーは、「TEQUILA 1」と比較して、「50%強化されたダイナミックレンジパフォーマンス」と「甘くて暖かいボーカルと楽器をより明確にし、より詳細なディテールを表現」するとのこと。また「強化された中高域を提供」するとの記述もあります。また「360度のサウンドフィールド」など音場感や定位の向上もポイントに挙げています。これらの特徴はまさに第3世代ドライバーの特徴であり、「TEQUILA 1」の高域を抑え暖色傾向にした傾向から、「TFZ TEQUILA PRO」ではよりニュートラルな中高域の表現を行っているという解釈もできますね。
TFZ TEQUILA PROTFZ TEQUILA PRO
そのうえで、「TFZ TEQUILA PRO」では合金素材による密閉型デザインとなり、「TEQUILA 1」でベント(空気孔)となっていたフェイス部分はガラスプレートによるクリスタルデザインに仕上げられています。また付属ケーブルは銀メッキ線&高純度銅線のミックス線仕様を採用しています。

TFZ TEQUILA PRO」の購入は「Penon Audio」や「LuckLZ Audio Store」などTFZ製品を扱っているセラーにて(レビュー掲載時点でAliExpressのTFZ Official Storeでは取扱い無し)。価格は169ドル~です。
Penon Audio(直営店): TFZ TEQUILA PRO

また上記以外にも「Angeldac Audio Store」(132.78ドル)などより安価なストアもあるようですね。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

TFZ TEQUILA PRO」のパッケージは他のTFZ製品のパッケージとは異なる、コンパクトでシンプルな引き出ししきのボックスを採用。このパッケージは「MY LOVE 4」で採用されたものと同じタイプです。
TFZ TEQUILA PROTFZ TEQUILA PRO
TFZ TEQUILA PRO」は「TEQUILA 1」のデザイン的なアイデンティティを継承した新たなミドルグレードのプロダクトとして登場しました。現在、TFZのフラグシップクラスを支える「第4世代」ドライバーは基本的に200ドルオーバーの製品でのみ採用されており、また同社の主力プロダクトがアンダー100ドルに集中していることから、その中間にあたる100~200ドルのミドルグレードに新製品を必要としたことは容易に推測できます。特に「KING EDITION」および「ESSENCE」(どちらも129ドル)より上位の150ドルオーバーは最近私のブログでも様々な製品を紹介しており、高級化、高音質化が進む中華イヤホンのなかでも最もホットな価格帯ですからね。
似たような話でアンダー100ドル台に投入された「MY LOVE 4」と、アンダー200ドル台の「TFZ TEQUILA PRO」。この2製品がほかのTFZ製品とは異なるパッケージを採用しているのには、何らかの意味があるのかもしれませんね。「リバイバル」シリーズ、みたいな。
TFZ TEQUILA PROTFZ TEQUILA PRO

TFZ TEQUILA PRO」は「TEQUILA 1」のデザインを踏襲した金属シェルを採用。円筒形のシェルパーツは中央で接合されており、中央に樹脂製の2pinコネクタ部分のある内部パーツを挟み込むように接合されています。そのため樹脂製のコネクタ部分も強度が保たれており外れるようなことはありません。
TFZ TEQUILA PROTFZ TEQUILA PRO
この円筒形のデザインと本体の厚さのため装着性は度外視しているようにも見えますが、実際には耳に収まりやすいサイズ感、ステムの絶妙な角度・長さと、ケーブル装着位置などかなり計算されたデザインで見た目以上に良好な装着感が得られます。「TFZ TEQUILA PRO」のシェルデザインを「TEQUILA1」と比べるとセミオープン型のフェイス部分を除き、基本的には全く同じ形状であることが分かります。当時からよく考えられたデザインだったんですね。
TFZ TEQUILA PROTFZ TEQUILA PRO
ケーブルは「LIVE X」以降の上位モデルに付属するミックス線タイプの線材を採用しています。コネクタは同じ0.78mm 2pinですが、カバーのないタイプ。本体側のカバー部分はCIEM 2pinと互換性があるため、リケーブルで使用することが出来ます。いっぽう中華2pinやTFZタイプのカバー付きコネクタのケーブルはリケーブルでは使用できません。ちなみに「TEQUILA 1」は「KING PRO」同様にこの時期の他の製品よりは質の良いケーブルが付属していましたがそれでも「TFZ TEQUILA PRO」のケーブルでは相当情報量もアップしているようです。
イヤーピースは付属品のほか、よりフィット感を高めるために交換するのもお勧めです。具体的には定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、より密着感の強いタイプではSpinFit「CP100+」、AZLA「SednaEarfit XELASTEC」などがお勧めです。


■ インプレッション(音質傾向など)

TFZ TEQUILA PROTFZ TEQUILA PRO」の音質傾向は弱ドンシャリ傾向で、中低域の広がりや量感を感じるとともに、中高域は明瞭ながら適度に柔らかく、より透明で自然なサウンドにまとめられた印象。ベースとしては同じ第3世代でもキレの良い「KING EDITION」より音場感を重視した「NO.3」の方向性に近く、アップグレードモデルの「No.3 Ti」がキレや明瞭感(ともすると派手さ)を強化した印象なのに対し、「TFZ TEQUILA PRO」では中低域の包み込むような音場感とダイヤモンド振動板の優れた解像感を維持しつつ、「Moondrop KXXS」のような中高域のアプローチを感じる印象です。低域の厚みがあるため多少ドンシャリ方向に聴こえますが、全体のバランスとしては「KXXS」など最近の多くの製品同様にハーマンターゲットカーブを意識したものになっているのかもしれませんね。

ちなみに、先日レビューした「TFZ T2 PRO」が前モデルよりインピーダンスを少し上げるチューニングを行うことでスマートフォン直挿しやBluetoothケーブルでも音質的な変化を抑えた(代わりに音量はやや取りにくくなった)アプローチをとったこともあり、その違いを区別するためか、今回の「TFZ TEQUILA PRO」ではメーカー説明の中で「プロフェッショナルな音楽プレーヤーを使用することで音質が大幅に向上し、楽曲のディテールがより深く表現されます」と、実質「DAPやアンプの使用前提」を記載するようになりましたね。
TFZ TEQUILA PROTFZ TEQUILA PRO」のインピーダンスは20Ω、感度108dB/mWと「TFZ NO.3」と同じ仕様で「T2 PRO」などに比べても音量は取りやすいですが、スマートフォン直挿し等では高域の歪みや逆に平坦に聞こえるなど、本来の実力を発揮できない場合があります。また開封直後よりある程度のエージング後のほうが全体的に滑らかさが増し、よりニュートラルなサウンドに変化したようにも感じられました。本レビューではHCKで購入したエージングマシンにて100時間程度のエージングを実施後の状態にて記載しています。

TFZ TEQUILA PRO」の高域は、明瞭感がありつつ見通しの良い自然な音を鳴らします。高い解像感や伸びの良さを感じつつ、鮮やかで透明感のある音を鳴らしてくれます。ウォームな印象だった「TEQUILA 1」に比べるとかなりドライで伸びのある高域ですが、いっぽうで適度な柔らかさもあり、聴き疲れることなくリラックスして楽しめる印象ですね。またキレの良さや煌めきなどは十分に感じつつ刺激などはかなりコントロールされています。

TFZ TEQUILA PRO中音域も高域同様に適度な柔らかさと透明感があり見通しの良い音を鳴らします。明るく明瞭さを保ちつつ、癖の無いニュートラルなバランスです。いっぽうでダイヤモンド振動板の解像感とレスポンスの良さも十分に感じられ、音数の多い曲でもしっかり分離し、自然さを失わない範囲でスピード感があります。ボーカル帯域は「NO.3」より若干近くで定位し、僅かにW字寄りの「イマドキ」のチューニングも感じます。そういった意味ではモニター的ではないのですが、分離の良さと立体的な音場感からインストルメンタルも心地よいですね。個人的にはブラスの鳴りの良さが印象的でした。

低域は非常に深く重い重低音とともに、立体的な音場感を演出する厚みのある印象です。締まりの良い解像感のある音を鳴らしつつ、非常に重厚な響きと音の広がりを感じさせます。重低音の沈み込みも良く、しっかりとした量感も感じられます。ミッドベースはしっかりとした締まりのあるタイトな音をならしつつ、抜けの良い残響感があり「NO.3 Ti」にも通じる低域の表現力を感じさせます。曲によっては多少演出過多に感じる場合もありますが、ポップスやロックなどのボーカル曲だけでなく、ジャズやクラシックとも非常に相性が良く、心地よさを感じるサウンドです。


■ まとめ

というわけで、「TFZ TEQUILA PRO」は正直なところ「想像をかなり上回って当たり」のイヤホンでした。開封直後から結構良い印象だったのですがエージングにより全体的に滑らかさが増し、質感についてもかなり良くなりました。「TEQUILA 1」の「企画倒れ、暖色系」のイメージからすると、外観と名前だけは踏襲しているものの、サウンド的には全く別の進化と言って良いでしょう。とりあえず気になった方は購入してみても良い思う、結構オススメできるイヤホンです。
もっとも、それなりに脚色のあるサウンドなので、硬派なマニアからは意見が分かれる可能性も多いかも。従来のTFZのキレの良いドンシャリ方向とは相当異なりますし、「フラット/ニュートラルなサウンド」を是とされる向きからもネガティブに判断されるかもしれません。
TFZ TEQUILA PROしかし、たとえば「KXXSやKATOの透明感のあるサウンドは心地よいけど、これに低域の厚みや臨場感があるともっと楽しいのに」とか、「クラシックやジャズ、ライブ音源をもっと明瞭かつ臨場感のある音で楽しみたい」みたいなニーズには「TFZ TEQUILA PRO」は最適でしょう。それ以外にも実際聴いてみると好感を持つ方は結構多いのでは、と感じる印象でした。
マイナーモデルだけに国内で発売されるかどうかはわかりませんが、もし店頭試聴できる環境で登場すれば結構人気になるかもしれないなと思ったりもしています(^^)。