こんにちは。今回は「Hidizs Mermaid MM2」(以下「Hidizs MM2」)です。中国のオーディオブランド「Hidizs」の「Mermaid」シリーズの新モデルですね。今回の「MM2」はアンダー100ドル級ながら、「低電圧静電磁気BMドライバー」と「10.2mm ダイナミックドライバー」の2ドライバー構成のモデルで、さらにフェイス部分に交換式サウンドバルブを搭載し、3種類のチューニングが楽しめる非常に意欲的な仕様になっています。音質的なクオリティも高く、実績のあるDAPだけでなくイヤホン製品も積極的な展開を感じさせる仕上がりとなっています。
■ 製品の概要について
「Hidizs」は日本でも比較的コンパクトなDAP(デジタルオーディオプレーヤー)が知られるブランドですが、イヤホン製品も「Mermaid シリーズ」として様々な製品をラインナップしており、実は結構評価が高かったりもします。個人的にも以前ハイブリッドモデルの「Hidizs MS2」を購入レビューしておりとても好印象でした。日本でも従来の某代理店ではなく、Hidizs社が直接日本のアマゾンに出店するなど、購入しやすい環境が整ってきたこともあり、今後マニアの間で大きく注目されるポテンシャルを持っていると思います。
今回の「Hidizs MM2」は、従来の「MS」シリーズとは異なるコンセプトラインのハイブリッドモデルです。大きな特徴は2つあり、ひとつは「6mm 低電圧静電磁気BMドライバー(Low-voltage Magneto-static Balanced Membrane Driver)」および「10.2mmPEK高分子ポリマー振動板ダイナミックドライバー」のハイブリッド構成を採用している点。まず「6mm 低電圧静電磁気BMドライバー」ですが、いわゆる「静電(EST)ドライバー」の一種で「静磁(静電磁気)ドライバー」と分類されるタイプですね。
一般的なESTドライバーが静電気が帯電した振動膜を前後の電極板からの信号で振動させる方式で、構造的に非常に高電圧を必要とするのに対し、静磁(静電磁気)ドライバーでは静電気と磁気を併用することでより低電圧で実装することが可能になっています。いわばESTと平面磁気の中間のようなドライバーですね。これまでハイブリッド構成で多用された中華BAによるツィーターと比べ、歪みが非常に少なく解像度の高い高域を実現できる点が特徴です。
また、「Hidizs MM2」の中低域には10.2mmサイズのPEK高分子ポリマー振動板ダイナミックドライバーを搭載。またCCAWボイスコイルやN52ネオジム磁石を採用することでスピード感のある低域と滑らかでディテールに優れた中音域を実現してます。
そして「Hidizs MM2」のもうひとつの大きな特徴がフェイス部分で交換可能な3種類チューニングバルブです。交換式サウンドフィルターというとノズル部分でフィルター素材により特定の音域を抑制するタイプが多いですが、「Hidizs MM2」ではフェイス部分のベント(空気孔)に交換式チューニングバルブを実装し、ドライバーユニットからの音抜けをコントロールすることでより自然なサウンドチューニングを可能にしています。取り外し可能なチューニングバルブは「Balanced」(ローズゴールド)、Treble(シルバーグレー)、Bass(ダークレッド)の3種類が付属しています。チューニングバルブを変更することで好みに合わせた音の変化を楽しむことが出来ます。
また「Hidizs MM2」は付属品も充実しており、0.78mm 2pin仕様のコネクタを採用する付属ケーブルは
高純度のOFC銅線と銀線がそれぞれ60本の撚り線で構成したミックス線ケーブルを採用。また「Hidizs MM2」専用に設計されたレザーケースが付属。環境に優しく、汚れに強い仕様になっています。
「Hidizs MM2」の購入はAliExpressまたはAmazonのHidizs直営のオフィシャルストアにて。
カラーは「シルバー」と「ブラック」の2色が選択できます。
価格はAliExpressが79ドル、アマゾンが11,999円です。
AliExpress(Hidizs Offical Store): Hidizs MM2
Amazon.co.jp(HIDIZS JP): Hidizs MM2 ※現在1699円OFFのクーポン配布中
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Hidizs MM2」のパッケージは製品グラフィックが描かれた黒いボックスデザイン。背面には日本語を含む3カ国語で製品仕様が記載されています。
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、サウンドチューニングバルブ、イヤーピース(開口部の広いタイプおよび通常タイプの2種類、それぞれS/M/Lサイズ)、レザーケース、説明書、保証書など。付属のレザーケースはこのクラスのイヤホンに付属するものとしてはとても高級感がありますね。
本体は同社の「MSシリーズ」を踏襲した樹脂製のシェルデザインを採用しつつ、フェイスパネルは菱形にカットされた立体的なデザインが特徴的ですね。「Hidizs MM2」の特徴のひとつである交換式のチューニングバルブは円形のダイアル状になっていて、フェイスパネルの中央にセットされています。個人的にはとても面白いデザインだと思いますが、フェイス中央に突起物がある、というアプローチは使い勝手や好みの上で多少意見が分かれるかもしれませんね。
金属製のステムノズルはやや太いですが装着性は良好です。コネクタ部分はフラットでケーブル側のコネクタと本体側の楕円形の突起部が同じ大きさで接合する感じ。カバーで覆うタイプではありません。そのためリケーブルはCIEM 2pinまたは中華2pinが選択できますね。交換用のチューニングバルブは専用のプレートに固定されています。なおプレートには「Balanced(ローズゴールド)」用のネジ穴は無いため、他のバルブを取り付けた際にプレートの外した場所に固定しておきます。
ケーブルはのミックス4芯タイプ。左右に分けて2芯ごとに被膜で覆われています。プラグや分岐部分は金属製で高級感がありますね。細めのケーブルで適度に柔らかく取り回しは良好です。ヤーピースは開口部の大きいタイプ、小さいタイプで各サイズが付属します。付属品のほか、よりフィット感を高めるために定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」などに交換するのも良いでしょう。
■ サウンドインプレッション
「Hidizs MM2」の音質傾向は癖の無いバランスの良さを持つドンシャリ傾向。ボーカル帯域の凹みは少なく滑らかで僅かに温かみを感じるなど、分かりやすいドンシャリ(V字カーブ)というよりは、最近のトレンドともいえる「U字カーブ」の印象に近くなっています。静磁ドライバーによる高域は煌めきをもちつつ金属質なギラつきは無く、直線的に伸びます。標準の「Balanced(ローズゴールド)」フィルターでは刺さりやすい帯域も適度に聴きやすく、全体として自然なバランスにまとめられています。
ただし低域強調の「Bass(ダークレッド)」チューニングバルブを使用すると一気に低域寄りのサウンドに変化します。これは標準の「Balanced(ローズゴールド)」及び高域強調の「Treble(シルバーグレー)」バルブでは中低域の量感や高域の伸びなどに変化があるものの、あくまで「好みに合わせる」程度の違いなのとは対照的です。
この手のフィルター交換タイプのイヤホンの多くはベースとなるサウンドがあり、「Hidizs MM2」でも「Balanced」と「Treble」のように微調整の範囲でまとめるのが一般的ですが、「Bass」だけはこれらとは異なる嗜好の方向けに作られた別のイヤホンのように変化します。おそらく「Bass」は最近のニュートラルなサウンドを好む傾向とはちょっと異なる印象ですが、おそらく「低域好き」なユーザー層には一定の評価を得るかも知れないと感じました。
「Hidizs MM2」の高域は、静磁ドライバーらしい直線的で歪みの非常に少ない音を鳴らします。適度に明るく煌めきと見通しの良さがあり、シンバル音などもスピード感のある鳴り方をします。ただし低電圧で駆動するとはいえ、上流での変化は大きく、十分に駆動力を確保できる再生環境のほうがより静磁ドライバーらしさを実感出来るでしょう。
スマートフォン用のオーディオアダプターや小型DAPの場合、多少ウォームさが増し、やや控えめな印象に感じるかもしれませんね。これらの再生環境では「Treble(シルバーグレー)」により低域をやや抑え、中高域を伸ばす変化を実感しやすくなります。ただ、十分に駆動力のある環境では標準の「Balanced(ローズゴールド)」と「Treble(シルバーグレー)」では高域の違いはほとんど無く、むしろ「Treble(シルバーグレー)」のほうがやや解像感が落ちる印象に感じるかもしれません。そのため再生環境により使い分けるのが良さそうですね。
そのため解像度重視、キレ重視の方向けではありません。とはいえスネアやベースの鳴りは自然で心地よく、また分離もこのクラスとしては悪くないため、多くのジャンルの音源で心地よく楽しめる低域だと思います。
また「低域強調(ダークレッド)」のチューニングバルブでは量感が一気に増し、よりパンチのあるミッドベースと深く重い重低音を楽しむことが出来ます。ただし他の2種類のチューニングバルブと比べて一気に低域が増すため、全体のバランスとしては多少好みが分かれるかもしれませんね
■ まとめ
というわけで「Hidizs MM2」はアンダー100ドルのイヤホンの中でも「静磁ドライバー」搭載や交換式チューニングバルブの搭載など個性的な仕様を持ちつつ、音質面では極めて主流的な、非常にバランスの良い仕上がりとなっていました。同時に低域強調のフィルターを組み合わせることで、低域好きの方にも対応出来るサウンドに変化するなど、フィルター付き製品のなかでもかなり意欲的な音作りに挑戦していると感じました。
最近ではアンダー100ドル級ではLCP振動板を採用した「Moondrop Aria」「TINHIFI T3 PLUS」「DUNU TITAN S」の3モデルに注目が向かいがちですが、これらの製品がハーマンターゲットカーブを意識したフラット寄りのニュートラルサウンドの範囲内でメーカーごとの違いを出している印象ですね。しかし「Hidizs MM2」の場合は、一見するとオーソドックスなドンシャリ系(V字カーブ)のサウンドの中で聴きやすくあらゆるジャンルで楽しめる癖の無さを持っていたり、立体的な音場感とこのクラスとしては非常に優れた定位性など、丁寧な音作りを実感させる要素があります。そのため、他とは異なる選択肢のひとつとして興味深く、オススメできるイヤホンだと感じました。
「Hidizs」は日本でも比較的コンパクトなDAP(デジタルオーディオプレーヤー)が知られるブランドですが、イヤホン製品も「Mermaid シリーズ」として様々な製品をラインナップしており、実は結構評価が高かったりもします。個人的にも以前ハイブリッドモデルの「Hidizs MS2」を購入レビューしておりとても好印象でした。日本でも従来の某代理店ではなく、Hidizs社が直接日本のアマゾンに出店するなど、購入しやすい環境が整ってきたこともあり、今後マニアの間で大きく注目されるポテンシャルを持っていると思います。
今回の「Hidizs MM2」は、従来の「MS」シリーズとは異なるコンセプトラインのハイブリッドモデルです。大きな特徴は2つあり、ひとつは「6mm 低電圧静電磁気BMドライバー(Low-voltage Magneto-static Balanced Membrane Driver)」および「10.2mmPEK高分子ポリマー振動板ダイナミックドライバー」のハイブリッド構成を採用している点。まず「6mm 低電圧静電磁気BMドライバー」ですが、いわゆる「静電(EST)ドライバー」の一種で「静磁(静電磁気)ドライバー」と分類されるタイプですね。
一般的なESTドライバーが静電気が帯電した振動膜を前後の電極板からの信号で振動させる方式で、構造的に非常に高電圧を必要とするのに対し、静磁(静電磁気)ドライバーでは静電気と磁気を併用することでより低電圧で実装することが可能になっています。いわばESTと平面磁気の中間のようなドライバーですね。これまでハイブリッド構成で多用された中華BAによるツィーターと比べ、歪みが非常に少なく解像度の高い高域を実現できる点が特徴です。
また、「Hidizs MM2」の中低域には10.2mmサイズのPEK高分子ポリマー振動板ダイナミックドライバーを搭載。またCCAWボイスコイルやN52ネオジム磁石を採用することでスピード感のある低域と滑らかでディテールに優れた中音域を実現してます。
そして「Hidizs MM2」のもうひとつの大きな特徴がフェイス部分で交換可能な3種類チューニングバルブです。交換式サウンドフィルターというとノズル部分でフィルター素材により特定の音域を抑制するタイプが多いですが、「Hidizs MM2」ではフェイス部分のベント(空気孔)に交換式チューニングバルブを実装し、ドライバーユニットからの音抜けをコントロールすることでより自然なサウンドチューニングを可能にしています。取り外し可能なチューニングバルブは「Balanced」(ローズゴールド)、Treble(シルバーグレー)、Bass(ダークレッド)の3種類が付属しています。チューニングバルブを変更することで好みに合わせた音の変化を楽しむことが出来ます。
また「Hidizs MM2」は付属品も充実しており、0.78mm 2pin仕様のコネクタを採用する付属ケーブルは
高純度のOFC銅線と銀線がそれぞれ60本の撚り線で構成したミックス線ケーブルを採用。また「Hidizs MM2」専用に設計されたレザーケースが付属。環境に優しく、汚れに強い仕様になっています。
「Hidizs MM2」の購入はAliExpressまたはAmazonのHidizs直営のオフィシャルストアにて。
カラーは「シルバー」と「ブラック」の2色が選択できます。
価格はAliExpressが79ドル、アマゾンが11,999円です。
AliExpress(Hidizs Offical Store): Hidizs MM2
Amazon.co.jp(HIDIZS JP): Hidizs MM2 ※現在1699円OFFのクーポン配布中
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Hidizs MM2」のパッケージは製品グラフィックが描かれた黒いボックスデザイン。背面には日本語を含む3カ国語で製品仕様が記載されています。
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、サウンドチューニングバルブ、イヤーピース(開口部の広いタイプおよび通常タイプの2種類、それぞれS/M/Lサイズ)、レザーケース、説明書、保証書など。付属のレザーケースはこのクラスのイヤホンに付属するものとしてはとても高級感がありますね。
本体は同社の「MSシリーズ」を踏襲した樹脂製のシェルデザインを採用しつつ、フェイスパネルは菱形にカットされた立体的なデザインが特徴的ですね。「Hidizs MM2」の特徴のひとつである交換式のチューニングバルブは円形のダイアル状になっていて、フェイスパネルの中央にセットされています。個人的にはとても面白いデザインだと思いますが、フェイス中央に突起物がある、というアプローチは使い勝手や好みの上で多少意見が分かれるかもしれませんね。
金属製のステムノズルはやや太いですが装着性は良好です。コネクタ部分はフラットでケーブル側のコネクタと本体側の楕円形の突起部が同じ大きさで接合する感じ。カバーで覆うタイプではありません。そのためリケーブルはCIEM 2pinまたは中華2pinが選択できますね。交換用のチューニングバルブは専用のプレートに固定されています。なおプレートには「Balanced(ローズゴールド)」用のネジ穴は無いため、他のバルブを取り付けた際にプレートの外した場所に固定しておきます。
ケーブルはのミックス4芯タイプ。左右に分けて2芯ごとに被膜で覆われています。プラグや分岐部分は金属製で高級感がありますね。細めのケーブルで適度に柔らかく取り回しは良好です。ヤーピースは開口部の大きいタイプ、小さいタイプで各サイズが付属します。付属品のほか、よりフィット感を高めるために定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」などに交換するのも良いでしょう。
■ サウンドインプレッション
「Hidizs MM2」の音質傾向は癖の無いバランスの良さを持つドンシャリ傾向。ボーカル帯域の凹みは少なく滑らかで僅かに温かみを感じるなど、分かりやすいドンシャリ(V字カーブ)というよりは、最近のトレンドともいえる「U字カーブ」の印象に近くなっています。静磁ドライバーによる高域は煌めきをもちつつ金属質なギラつきは無く、直線的に伸びます。標準の「Balanced(ローズゴールド)」フィルターでは刺さりやすい帯域も適度に聴きやすく、全体として自然なバランスにまとめられています。
ただし低域強調の「Bass(ダークレッド)」チューニングバルブを使用すると一気に低域寄りのサウンドに変化します。これは標準の「Balanced(ローズゴールド)」及び高域強調の「Treble(シルバーグレー)」バルブでは中低域の量感や高域の伸びなどに変化があるものの、あくまで「好みに合わせる」程度の違いなのとは対照的です。
この手のフィルター交換タイプのイヤホンの多くはベースとなるサウンドがあり、「Hidizs MM2」でも「Balanced」と「Treble」のように微調整の範囲でまとめるのが一般的ですが、「Bass」だけはこれらとは異なる嗜好の方向けに作られた別のイヤホンのように変化します。おそらく「Bass」は最近のニュートラルなサウンドを好む傾向とはちょっと異なる印象ですが、おそらく「低域好き」なユーザー層には一定の評価を得るかも知れないと感じました。
「Hidizs MM2」の高域は、静磁ドライバーらしい直線的で歪みの非常に少ない音を鳴らします。適度に明るく煌めきと見通しの良さがあり、シンバル音などもスピード感のある鳴り方をします。ただし低電圧で駆動するとはいえ、上流での変化は大きく、十分に駆動力を確保できる再生環境のほうがより静磁ドライバーらしさを実感出来るでしょう。
スマートフォン用のオーディオアダプターや小型DAPの場合、多少ウォームさが増し、やや控えめな印象に感じるかもしれませんね。これらの再生環境では「Treble(シルバーグレー)」により低域をやや抑え、中高域を伸ばす変化を実感しやすくなります。ただ、十分に駆動力のある環境では標準の「Balanced(ローズゴールド)」と「Treble(シルバーグレー)」では高域の違いはほとんど無く、むしろ「Treble(シルバーグレー)」のほうがやや解像感が落ちる印象に感じるかもしれません。そのため再生環境により使い分けるのが良さそうですね。
中音域は癖の無いニュートラルなサウンドで、適度に広く立体的な音場感でボーカルと演奏が自然に分離します。また定位感も優れており、音源の位置関係をほぼ正確に捉えることができます。そのため「Balanced(ローズゴールド)」と「Treble(シルバーグレー)」のどちらのチューニングバルブでも分析的に聴くモニター的な使い方もある程度は可能かもしれません。こちらも両者のノズルは再生環境や聴きたい音で好みによって使い分けるのが良いでしょう。
ただし全体としては滑らかさと僅かな温かさのあるリスニングサウンドにまとまっていますので、エッジの効いた解像感重視のサウンドではありません。自然な範囲での明瞭さと見通しの良さを保ちつつ、長時間のリスニングでも聴き疲れしないサウンドにまとまっています。また「低域強調(ダークレッド)」のチューニングバルブでは一気に中低域寄りのサウンドに変化するため、低域の厚みのともに中低域の深さが強調されたサウンドになります。大きく広がりや奥行きのある音場感を楽しみたい方にはこのフィルターを交換する可能性が高いでしょう。
低域は力強さとともに締まりがあります。ミッドベースは直線的でスピード感とともにパワーがあります。重低音はタイトに鳴るものの重量感があります。「Balanced(ローズゴールド)」と「Treble(シルバーグレー)」のチューニングバルブでは、過度に低域が響くことはありませんが量的には十分な主張があります。また中高域同様に自然な印象を保っており、過度にタイトすぎない印象。ただし全体としては滑らかさと僅かな温かさのあるリスニングサウンドにまとまっていますので、エッジの効いた解像感重視のサウンドではありません。自然な範囲での明瞭さと見通しの良さを保ちつつ、長時間のリスニングでも聴き疲れしないサウンドにまとまっています。また「低域強調(ダークレッド)」のチューニングバルブでは一気に中低域寄りのサウンドに変化するため、低域の厚みのともに中低域の深さが強調されたサウンドになります。大きく広がりや奥行きのある音場感を楽しみたい方にはこのフィルターを交換する可能性が高いでしょう。
そのため解像度重視、キレ重視の方向けではありません。とはいえスネアやベースの鳴りは自然で心地よく、また分離もこのクラスとしては悪くないため、多くのジャンルの音源で心地よく楽しめる低域だと思います。
また「低域強調(ダークレッド)」のチューニングバルブでは量感が一気に増し、よりパンチのあるミッドベースと深く重い重低音を楽しむことが出来ます。ただし他の2種類のチューニングバルブと比べて一気に低域が増すため、全体のバランスとしては多少好みが分かれるかもしれませんね
■ まとめ
というわけで「Hidizs MM2」はアンダー100ドルのイヤホンの中でも「静磁ドライバー」搭載や交換式チューニングバルブの搭載など個性的な仕様を持ちつつ、音質面では極めて主流的な、非常にバランスの良い仕上がりとなっていました。同時に低域強調のフィルターを組み合わせることで、低域好きの方にも対応出来るサウンドに変化するなど、フィルター付き製品のなかでもかなり意欲的な音作りに挑戦していると感じました。
最近ではアンダー100ドル級ではLCP振動板を採用した「Moondrop Aria」「TINHIFI T3 PLUS」「DUNU TITAN S」の3モデルに注目が向かいがちですが、これらの製品がハーマンターゲットカーブを意識したフラット寄りのニュートラルサウンドの範囲内でメーカーごとの違いを出している印象ですね。しかし「Hidizs MM2」の場合は、一見するとオーソドックスなドンシャリ系(V字カーブ)のサウンドの中で聴きやすくあらゆるジャンルで楽しめる癖の無さを持っていたり、立体的な音場感とこのクラスとしては非常に優れた定位性など、丁寧な音作りを実感させる要素があります。そのため、他とは異なる選択肢のひとつとして興味深く、オススメできるイヤホンだと感じました。