「Audirect Beam3PRO」&「LOTC OTG Adapter」

こんにちは。今回は 「Audirect Beam3PRO」&「LOTC OTG Adapter」です。本業の年度末シーズンと重なったこともありレビューの掲載が4月になってしまいました(汗)。日本国内では2月中旬より販売している製品です。「Audirect」社の「Beam」シリーズの小型オーディオアダプターで、昨年レビューした「Beam2se-21」の上位モデルになりますね。また「Beam3」系統ではワイヤレスポータブルアンプ仕様の「Beam3PLUS」もリリースされており、「Audirect Beam3PRO」はこのオーディオアダプター版という捉え方もできそうです。
Audirect」(あるいは「Hilidac」ブランド)の「Beam」シリーズではこれまでに数種類のオーディオアダプター製品がリリースされており、最近でもスマートデバイス用の超小型アダプタ「Atom 2」やスティック型で3種類のゲイン調整が可能なスタンダードモデルの「Beam2se-21」、そして「Beam3」シリーズのワイヤレスポータブルアンプ「Beam3PLUS」がリリースされており、私のブログでも紹介をしています。
過去記事(一覧): 「Audirect」製品のレビュー

Audirect Beam3PROAudirect Beam3PRO

今回の「Audirect Beam3PRO」でもこれらの機種同様、DACチップにはESS Technology社の「ES9281AC PRO」を採用しています。低電力DACの「ES9218P」と同等のコアをベースにMQAレンダラーを内蔵しており、ヘッドフォンアンプおよびスマートデバイス用オーディオアダプタ向けの回路を一体化したオーディオコーデックチップのようですね。コンパクト設計ながら32bit/768kHz PCM、DSD512、そしてMQAに対応し、各種ハイレゾ音源および配信サービスを高音質で再生できます。

Audirect Beam3PROAudirect Beam3PRO

さらに「Audirect Beam3PRO」ではシングルエンド仕様ながら左右独立2系統のオペアンプを搭載。シングルのオペアンプを搭載する「Beam2se-21」と比較して、2基のオペアンプを搭載する「Audirect Beam3PRO」はより高出力で、また左右独立のアンプ駆動による分離性および音質の向上がおこなわれています。また「Beam2se-21」同様に側面のボタンで3段階のゲイン調整も可能で、ハイゲインでは2.88mVms、600Ωのヘッドホンにも対応する高出力を実現しています。

また「Audirect Beam3PRO」および「Beam2se-21」等に対応するLightningポート用変換アダプター「LTOC OTG Adaptor」も同時に発売になりました。製品付属のType-C仕様OTGケーブルをLightningポートに変換し、iPhoneでの利用が可能になります。iPhoneでの利用をしたい場合は併せて購入するとよいですね。
※現在販売中の「Audirect Beam3PRO」では、「LTOC OTG Adaptor」もオマケ(試供品)としてセットになったバージョン(価格は同じ)となっているそうです。現ロット終了次第、通常通り別売りになると思いますので、興味のある方はお早めにどうぞ。
LTOC AdaptorLTOC Adaptor
Audirect Beam3PRO」の購入は国内販売元のIC-CONNECTの直営店または各専門店にて。
価格は18,000円(直営店価格)です。またType-C to Lightning変換アダプター「LTOC OTG Adaptor」の価格は2,500円です。
※現在国内で出荷されている「Audirect Beam3PRO」には「LTOC OTG Adaptor」がオマケ(試供品)で付属し、実質2,500円分お得なセット版となっています。
Amazon.co.jp(IC-CONNECT): Audirect Beam3PRO ※現在「LTOC OTG Adapter」も付属中
Amazon.co.jp(IC-CONNECT): Audirect LTOC OTG Adaptor


■ 製品の内容について

Audirect Beam3PRO」のパッケージは「Beam3PLUS」同様のメーカー名だけが記載された非常にシンプルなボックス。オプションの「LTOC OTG Adaptor」は無地の小箱に入っています。
「Audirect Beam3PRO」&「LOTC OTG Adapter」「Audirect Beam3PRO」&「LOTC OTG Adapter」

Audirect Beam3PRO」のパッケージ内容は本体、USB Type-C用ケーブル、USB-A用変換コネクタ、説明書。また「LTOC OTG Adaptor」のほうは本体のみが入っていました。
「Audirect Beam3PRO」&「LOTC OTG Adapter」「Audirect Beam3PRO」&「LOTC OTG Adapter」

Audirect Beam3PRO」の本体は先日レビューした「Beam2se-21」と同じサイズで53×15×10mmのコンパクトサイズ。今回は「Beam3PLUS」同様のダークブルーのつや消し塗装が施されており落ち着いた印象です。本体重量は23gです。
Audirect Beam3PROAudirect Beam3PRO
LEDは2カ所でロゴ下は通電時に点灯、側面ボタン横のLEDはボタンを押すたびにゲインモードに応じて色が変化します。この辺の動きも「Beam2se-21」と同様ですね。
Audirect Beam3PRO「Audirect Beam3PRO」&「LOTC OTG Adapter」
そして「LTOC OTG Adaptor」も本体と同じ金属製のコンパクトなアダプターで付属ケーブルのコネクタ部分と同じブロンズカラーの仕上がりになっています。実際にiPhoneに接続した場合もL字タイプの接続となるため違和感はほとんど無くサイズ的にもほとんど気にならないのではと思います。


■ インプレッション

udirect Beam3PROAudirect Beam3PRO」の音質傾向は同社の多くの製品同様に癖の無い明瞭な音を鳴らしますが、「Beam2se-21」とと比べてハイゲインモード時でも非常に自然で伸びのある音を鳴らします。またさらに解像感が向上しており、深みを感じます。
シングルアンプの「Beam2se-21」は、シリーズの中でも特にエッジの効いたハキハキとしたサウンドでやや派手な印象もありましたが、こちらは既存のオーディオアダプターの中でもアンプ周りに余裕のある印象を受けます。
小型アダプタにありがちがメリハリを際立たせた分かりやすいサウンドでは無いため、ちょっと大人しめに感じるかもしれませんが、奥行き感やディテールの表現では、一部の低価格DAPとの比較なら「Audirect Beam3PRO」のほうが優れていると感じるケースも少なくないでしょう。普段それなりのグレードのDAPやアンプを使用している方なら「ポータブルでもこの奥行きや解像感が出るのか」と驚かれるかもしれません。
ノイズ特性も非常に高く、反応の良いCIEMなどのイヤホンでもホワイトノイズが発生することは無く、またハイゲインでは比較的鳴らしにくいヘッドホンも利用できます。例えば「AKG K712 Pro」あたりでもハイゲインでスマートフォンの60~75%程度のボリュームで十分な音量を確保できました。小型のポータブルアダプタとしては十分な出力といえるでしょう。
udirect Beam3PROAudirect Beam3PRO
なお、同じBeam3系のワイヤレスアダプタの「Beam3PLUS」はバランス出力での駆動力に特徴があったのに対し、シングルエンドではそこまでパワフルという印象ではありませんでした。それに対してシングルエンド専用の「Audirect Beam3PRO」ではハイゲインでの自然な伸びの良さはメリットを感じました。あえてシングルエンド専用の「Audirect Beam3PRO」でデュアルアンプを搭載することで、アンプの特徴がより活きる、という印象はとても興味深く感じました。

「Audirect Beam3PRO」&「LOTC OTG Adapter」そしてiPhoneで「Audirect Beam3PRO」を利用可能にする「LTOC OTG Adaptor」ですが、これは内容的には「ddHiFi TC28i」とほぼ同じ機能をもった製品と考えて良いようです。
メーカー動作保証外ですので詳細は割愛しますが、Audirect製品以外のメーカーのオーディオアダプターでも「LTOC OTG Adaptor」を組み合わせることでほぼ全てiPhoneでの利用が可能でした。
ただし、いわゆる「Lightningカメラアダプター」の代替としては利用できません。以前のiOSバージョンではわりと使えたケースもありましたが、最近はLightningコネクタ部分のApple純正チェックが厳しくなっているようですね。ただ「抜け道」もあるかもしれませんので、この辺はあくまで自己責任でという感じですね。とはいえ、「TC28i」より外観のつくりもしっかりしており、より低価格ということもあり、iPhoneユーザーであればとりあえず入手しておいて色々試して見るのも良いと思います。


■ まとめ

というわけで、スマートデバイス用のオーディオアダプターも数多くの製品が登場しているなかで、「Audirect Beam3PRO」はシンプルなスティック型としては最大級の駆動力を持ちつつ、あまりパワフルさを感じさせない、最もニュートラルなサウンドを実現しています。より味付けの無いモニター的なサウンドを好まれ、そのような傾向のイヤホンやヘッドホンを積極的に利用される方には「Audirect Beam3PRO」は良い選択肢となるでしょう。また、本体側に音量調整が無くゲインの切り替えのみということはよりシンプルな操作性となり、イヤホンを換えたときの音量をあまり気にしなくていいなど結構メリットもあります。スマートデバイスで快適なオーディオ環境を手軽に実現するためのアイテムとして十分にお勧めできると思いますよ。