
こんにちは。今回は「FiiO JH3」です。中国の大手オーディオブランド「FiiO」のエントリークラスの2BA+1DD構成ハイブリッドイヤホンですね。FiiOが以前作ったサブブランドの「JadeAudio EA3」(1BA+1DD)の後継モデル的な位置づけの製品で、13.6mmという大口径のダイナミックドライバーを2基のBAでサポートするデザインが特徴的です。
今回は年度末シーズンの本業の合間にいろいろ買っていたイヤホンのひとつですが、4月に入り少し落ち着いたので改めて聴いてみたいと思います。
■ 製品の概要について
今回の「FiiO JH3」ですが、これは前述の通りFiiOがネット直販専用につくったサブブランド「JadeAudio」の系統といえる製品です。「JadeAudio」からはシングルダイナミックの「EA1」、ハイブリッドの「EA3」をリリースしていますが、これらの製品は思いのほか評判が良く、その後のFiiOブランドでもフェイスロゴとケーブルなどを変更したモデルを「FD1」「FH1s」として販売されました。
→過去記事: 「JadeAudio EA3」 FiiOのサブブランドが誕生。Knowles製BA+13.6mm大口径DD ハイブリッド仕様の高音質&低価格中華イヤホン【購入レビュー】
そして「JadeAudio」ラインの新製品は最初からFiiOブランドの「Jシリーズ」として「FiiO JD3」(1DD)と「FiiO JH3」(2BA+1DD)の2モデルがリリースされました。


ハイブリッドモデルの「FiiO JH3」は「JadeAudio EA3」「FiiO FH1s」を受け継ぎ、13.6mmというカナル型イヤホンとしてはかなり大口径のダイナミックドライバーを搭載します。この13.6mmドライバーは「FH7」や「FH9」といった上位モデルに搭載されるドライバーと同じサイズで、さらに新設計の磁気構造により、磁束を20%増加させ、豊かで充実した中音域と、力強い低音域を実現しているとのことです。


また「FiiO JH3」ではステムノズルの音導管部分にFiiOによるカスタマイズされた2基のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを搭載。よりダイレクトで鮮明な高域を実現しています。さらにFiiOの特許技術「バランスド・プレッシャーリリーフ・システム」により、気圧調整をセミオープン構造で自動的に最適化。歪みを抑制し、自然で弾力ある低音を実現しています。


そして、「FiiO JH3」はクリアブラックの樹脂ハウジングにフェイスプレートでCNC加工されたアルミニウム合金を採用。ケーブルには1芯あたり30本、4芯で120本の高純度単結晶銅線を使用。コネクタは汎用性の高い0.78mm 2pin仕様となっています。
「FiiO JH3」の価格は海外サイトが59.99ドル、国内では8,800円~程度で販売されています。
Amazon.co.jp(国内正規品): FiiO JH3
HiFiGo: FiiO JH3
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「FiiO JH3」のパッケージはFiiOのお馴染みのハードケース内に本体、ケーブル、イヤーピースなどがまとめられています。「FH1s」(「JadeAudio EA3」のFiiO版)とパッケージについては踏襲していますが、より簡易的な包装になっていますね。


本体形状も「JadeAudio」の各モデルのハウジング形状を踏襲し、フェイスプレートのみアルミニウム合金性の金属プレートになりました。またステムノズルも2基のBAユニットが収容できるように若干形状が変更になっています。


やはりハウジングから透けて見える13.6mmダイナミックドライバーは迫力があります。比較的コンパクトなハウジングにびっしりとドライバーで埋まっている様子がわかりますね。同じFiiOでも「FH3」と比較すると全く異なる系統のイヤホンであることが伺えます。


とはいえ「FiiO JH3」も装着性は比較的良好です。イヤーピースは付属のもののほか、よりフィット感を高めるため、定番のJVCの「スパイラルドット」、Acoustune「AET07」など開口部が大きいタイプの製品を利用することをお勧めします。


ケーブルは「FiiO FH1s」と同じ銅線タイプ。非常に柔らかい被膜で取り回しも良いですが、若干絡まりやすいかもしれません。それでも「JadeAudio EA3」付属の銀メッキ線ケーブルよりはかなりグレードアップしていますね。なお「JadeAudio」の各モデル同様に、本体コネクタ部分の小さい突起はTFZ性イヤホンと互換性のある形状のため、リケーブルではTFZタイプのコネクタのものも利用できます。
■ インプレッション

先日のKZ関連のトラブルもあり、低価格中華イヤホンのマニア層でも「ドライバー数が多ければ良いわけでもない」ことがより浸透してきました。そして、この絶妙なタイミングで登場した「FiiO JH3」は、非常にシンプルにその事実を証明しているようにも感じます。

「FiiO JH3」の高域は、やや硬質で明瞭な音を鳴らします。ややドライでスッキリした印象ですね。「EA3」より多少直線的な印象が増しておりより煌びやかさを感じやすくなったかもしれません。ただし刺激などは抑えられておりストレスはありません。TRNほど派手ではありませんが、普段多くの中華ハイブリッドのサウンドに慣れ親しんでいる方でも違和感なく、またより自然な質感と感じるでしょう。KZなどのいわゆる金属質なギラつきは無く、歪みの少ない高域です。

低域は13.6mmという大口径ドライバーの特徴を活かし、非常に重く深く、質の高い音をを鳴らします。とはいえ、全体が低域に支配されるような印象にはならず、大口径ドライバーは余裕のあるサウンドで質感を高めることに注力しているように感じます。ミッドベースは直線的で適度な締まりが有り、重低音の沈み込みは深く、重さを感じる音が鳴ります。中高域同様にドライな印象でレスポンスも早く、EDMなど音数が多くても重量感のある音をしっかり鳴らしてくれるのは好印象です。
■ まとめ

ちなみに、最近はアンダー100ドルのクラスでも「Moondrop Aria」「TINHIFI T3 PLUS」「DUNU TITAN S」のLCPドライバー搭載3製品のようにわりと上位の価格帯の製品を意識したサウンドバランスを採用するものが増えています。
そんななか、「FiiO JH3」ではあえてKZやTRNと同じ土俵の「寒色系ドンシャリ」で音作りをしているのがとても興味深いですね。まあ大手メーカーのFiiOはほぼ全ての価格帯でラインナップを揃えていますし、ちょっと毛色の異なるJシリーズが「狙って」このような音作りをするのは当然かもしれません。というわけで個人的感想としては、「FiiO JH3」は非常にポジティブな意味で、間違いなくアンダー100ドルのイヤホンだと思います。まあ、そもそも「お値段以上」というのも結局は「主観」ですからね(^^)。