Shuoer S12

こんにちは。今回は「LetShuoer S12」です。14.8mm平面磁気駆動ドライバーをシングルで搭載したイヤホンで、地味な外観ながら音質面のクオリティの高さから一部で注目されているモデルですね。 ブランドの「LetShuoer」または「Shuoer」は「TAPE(Pro)」で個性的なデザインとともに他の中華ブランドに先駆けて静電ドライバーのハイブリッドイヤホンを比較的低価格でリリースしたことでご存じの方もいらっしゃるでしょう。実際はそれ以前から中国でカスタムIEMやオリジナルイヤホンを数多く手がけており、近年は外部ブランドのOEM/ODM分野でも評価の高い製品をいくつも手がけているようです。
というわけで、もともと気になっていた製品ではあったのですが、評判の良さを聞いて2月頃にオーダーしていました。平面磁気駆動ドライバー搭載イヤホンというと、最近では以前レビューした「7Hz Timeless」が人気ですし、TINHIFIが同社の平面駆動ドライバー搭載モデル「P1」「P1 PLUS」を完全リニューアルした「TINHIFI P1 Max」のプリセールスが開始されました。また目新しいところでは14.5mm平面ドライバーを搭載した「MUSE HiFi Power」という製品もあるようです。これらの製品はどれもアンダー200ドルの価格設定で、今年はこのクラスで平面磁気駆動ドライバー搭載モデルがトレンドになりそうな雰囲気もありますね。


■ 製品の概要について

LetShuoer S12」(または「Shuoer S12」)は中国のイヤホンブランド「LETSHUOER」(または「SHUOER」)の製品で、14.8mmサイズの平面磁気駆動ドライバーをシングルで搭載します。「SHUOER ACCOUSTICS」(LETSHUOER)は2016年に創業したIEM/カスタムIEMのファクトリーブランドで、中国国内でのカスタムIEMビジネスのほか数多くの製品をリリースしており、最近では複数のブランドでODM/OEM供給も行っているようです。私の知る限りでも「BG○P」や「K○EAR(T○I)」の人気製品の一部を同社が手がけているようです。

Shuoer S12Shuoer S12

LetShuoer S12」では新たに開発した大口径14.8mmの平面磁気駆動ダイナミックドライバーを搭載。詳細な高音域、鮮明な中音域、そして力強い低域を備え、卓越したサウンドパフォーマンスを生み出します。
スペックはインピーダンス16Ω、感度102±1dB/mWと平面磁気駆動ドライバーとしては比較的鳴らしやすく使いやすいさも特徴ですね。
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本体は高品質のアルミニウム合金材料で構成され、高精度のCNCプロセスにより成形、さらに研磨によりマットな表面処理を行いシンプルなデザインで仕上げられています。またシェルデザインは大量のデータに基づく設計により、しっかりとしたフィット感で長時間の着用でも快適な装着感を実現しています。

付属ケーブルは高純度単結晶銅銀メッキ線ケーブルを採用。コネクタは0.78mm 2pin仕様で、プラグは3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスの2種類のプラグから選択することもできます。
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LetShuoer S12」のカラーバリエーションはシルバー(Frosted Silver)とグレー(Nebula Gray)の2種類を選択可能です。購入はAliExpress、HiFiGoなどの主要セラーまたはAmazonにて。
価格は169ドル、Amazonでは18,999円です。Amazonではプライム扱いのショップもあるようですね。
HiFiGo: Shuoer S12 ※カラー、プラグ種類選択可能
Amazon.co.jp(L.S オーディオ): LetShuoer S12 ※カラー、プラグ種類選択可能
Amazon.co.jp(プライム扱い):Shuoer S12(3.5mm)Shuoer S12(4.4mm)


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

パッケージは製品画像を載せたシンプルなもの。最近やたら凝ったパッケージもこの価格帯では増えていますが、正直開封してしまえばおなじですからね(^^;)。ボックス裏面には日本語の記述もあります。今回は私はグレー(Nebula Gray)の4.4mm仕様を購入しました。
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パッケージ内容は、本体、ケーブル、イヤーピースは3種類(白色、黒色、ウレタン)でそれぞれS/M/Lサイズ、レザーケース、説明書、保証書など。
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アルミ製の本体は非常にシンプルなデザインで、正直なところ「非常に地味」です(^^;)。コネクタ部分が四角く張り出している以外は耳にあわせたシルエットになっており、ハウジング自体は非常にコンパクトです。「人間工学に基づく云々」という記述はわりとどのメーカーのイヤホンの説明にもあるのですが、「LetShuoer S12」については本当にしっかり考慮されているらしく、絶妙にしっくりくる装着感で耳への収まりも抜群です。新幹線移動など長時間の利用でも最近のイヤホンのなかではいちばん快適だったかもしれませんね。遮音性もまずまずで、質実剛健、非常に実用性の高いデザインです。
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コネクタは2pin仕様で窪みなどはありません。ケーブルも一般的な中華2pinよりさらに突起の少ない仕様ですがそれでもケーブル装着時でコネクタの色が隙間から見ます。付属ケーブルは単結晶銅銀メッキ線仕様で被膜は若干硬めで弾力がありますが取り回し自体は良好です。購入時にプラグ種類を選べるのは有り難いですね。私は4.4mm仕様で購入しました。
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イヤーピースは3種類のタイプが付属するなどイヤホン本体同様に装着性には結構意識しているようです。今回私は黒色のイヤーピースを合わせています。他にも定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、よりフィット感の強いタイプでは「AZLA SednaEarfit XELASTEC」や「SpinFit CP100+」など、自分の耳に合う最適なイヤピースを選択するのも良いでしょう。


■ インプレッション

Shuoer S12LetShuoer S12」の音質傾向は非常にニュートラルで、平面駆動ドライバーの歪みの少ない精緻な表現力による中高域を備えつつ、低域についても十分な量感と解像感があります。
この価格帯の平面駆動ドライバー搭載モデルで以前レビューした「7Hz Timeless」では多少温かみがあり、全体の解像感はそこまで高くないものの厚みのある低域が特徴でした。また「TINHIFI P1」(無印)は「LetShuoer S12」と同様に高い解像感を持ちつつやや中高域寄りのTINHIFIらしいサウンドでした。後に発売された「P1 Plus」もより鳴らしやすくはなったものの傾向自体は「P1」と似ているようです。
これに対し、「LetShuoer S12」のサウンドはこれらの製品のなかで最も素直で「質の良い平面駆動型ヘッドホンのような仕上がり」だと感じました。歪みの少なさ、直線的で見通しの良い高域、明瞭感の高い中音域、そしてタイトで深く沈む低域、それぞれのバランスが非常に整っており、このクラスのイヤホンのなかでもトップクラスの完成度を実現しています。同時に最近の競合機種同様に平面駆動型イヤホンとしては鳴らしやすく、ある程度の駆動力を確保できれば小型のオーディオアダプターでも十分に実力を堪能できるのも魅力ですね。

Shuoer S12高域は明るく明瞭ながら過度な硬さが無く非常に自然で伸びやかな印象です。平面駆動らしい歪みの少ないクリアなサウンドといえるでしょう。適度な主張があり煌びやかさも感じますが金属質に感じる事はありません。
中音域はフラットで正確な音を鳴らす印象です。中高域は抜けが良く、女性ボーカルの高音も明瞭でスッキリしています。音場は立体的ですが広すぎず低域も比較的正確なようです。比較すると「7Hz Timeless」はやや暗くウォームで、「LetShuoer S12」のほうが明るくハッキリくっきりした印象。その分多少あっさりしたサウンドに感じる場合もあるかもしれませんが、音源の良し悪しをありのままに鳴らしてくれる感じは個人的には好印象です。
低域は十分な量感を保ちつつ非常にタイトで締まりのある音を鳴らします。かつての平面駆動ドライバー搭載のイヤホンは低域が弱いことが多くありましたが、「LetShuoer S12」では量的に不足することは無く、また逆に低域の厚みや柔らかさが特徴的だった「7Hz Timeless」と比べてより直線的で明瞭な輪郭とスピード感があります。重低音も深さを感じつつ非常にタイトでミッドベースと明瞭に分離するため、より解像感を得やすい印象がありますね。


■ まとめ

このように「LetShuoer S12」は明瞭で優れた表現力をもちつつ疲れない快適な装着感とサウンドで、ジャンルを問わず幅広く楽しめるオールラウンダーという印象です。個人的には非常に好みのサウンドです。いっぽうでもう少し余韻や雰囲気、低域の厚みを楽しみたい方には「7Hz Timeless」のほうが好みという方もいらっしゃると思います。
再生環境にもよりますが、バランス接続ではシングルエンドと比較して「疲れない範囲」で明瞭感とタイトさが増すので、より音場感や分離性を感じたい方は最初からバランス接続のモデルを選択する方が良いでしょう。また付属ケーブルでかなりサウンドチューニングが行き届いているためリケーブルでは印象が崩れてしまうと感じる事が多いかもしれません。個人的には付属ケーブルとの組み合わせを推奨します。

Shuoer S12ちなみに、海外レビューやツイートを見ていると「○○と△△は同じドライバーを使用しているのでは?」みたいなネタ話を最近よく見かけます。確かに少し前には「LCP(液晶ポリマー)振動板」ダイナミックドライバーを搭載した「Moondrop Aria」「TINHIFI T3 PLUS」「DUNU TITAN S」が相次いでリリースされ(こっそり「TRIPOWIN Leá」も人気ですね)、それぞれ各社のキャラクターを反映したサウンドではあるものの、全体の音質傾向はよく似ていて、かつ同様に完成度が高く「同じドライバーのチューニング違いでは」と考えてもおかしくない印象ではありました。
そして「LetShuoer S12」も含め、160~200ドル前後のレンジでよく似た仕様の「比較的鳴らしやすい高音質な平面駆動ドライバー」搭載イヤホンが相次いで登場していたりします。個人的には全てが同じドライバーだとは思いませんが、中華イヤホンの生産数・販売数や品質面(音質、歩留まり)からビジネス視点で考えるにある程度は同じサプライヤーが一括供給していると考える方が自然かも、と考えます。もともと分業の進んでいる業界ではありますが、今後の中華イヤホンのトレンドは、魅力的な最新ドライバーを主要なメーカーや新進気鋭のブランドがどう調理し製品に仕上げていくか、そんな流れになってくるのかもしれませんね(^^)。