NICEHCK M5

こんにちは。今回は 「NICEHCK M5」です。しばらく前に届いていましたが、例によって仕事が立て込むと更新が一気に滞る個人ブログです(スミマセン)。いやー計画的にってなかなか難しいものですね(^^;)。
それはさておき、中国イヤホンのマニアなら知らぬものなしなイヤホンセラー「HCK Earphones」のオリジナルブランド「NICEHCK」の新作です。Mシリーズはハイブリッド構成の製品のようで、今回の「NICEHCK M5」は4BA+1DD構成。搭載するドライバーユニットとチューニングにこだわったミドルグレードのイヤホンになります。また最近の同社のロゴマークが入った金属フェイスプレートは「アイアンマン」な雰囲気もあり、見た目にも楽しいイヤホンになっていますね。

■ 製品の概要について

中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」のオリジナルブランド「NICEHCK」はこれまでも他の中華イヤホンとは異なる個性的な製品を数多くリリースしています。最近は30ドル以下の超低価格の製品や、逆に200ドルオーバーのシングルダイナミック製品の「NICEHCK Topguy」「NICEHCK Lofty」などイヤホンブランドとしても幅広いラインナップを揃える存在になってきましたね。
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今回の「NICEHCK M5」はアンダー200ドルのミドルグレードにあたる「4BA+1DD」構成のハイブリッド製品。かつては某B○VP製品の「ほぼ双子」イヤホン(ただしBG○P側は否定)の「NICEHCK M6」という製品がありましたが、今回の「NICEHCK M5」はマルチドライバーハイブリッド仕様、という事以外には全く共通点はありません。おそらく製造元も異なると思われます。
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NICEHCK M5」では4基のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーと1基の10mmダイナミックドライバーを5ドライバー構成を経験豊富な音響エンジニアによるチューニングにより、高・中・低域の3wayの配置を行い、理想的なクロスオーバーチューニングが施されています。これにより非常に低い歪みレベルによる安定したサウンドを実現しています。
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NICEHCK M5」のハウジングは3Dプリンティングによるレジン製。複雑なサウンドコントロールを精緻な成形により実現してます。フェイスプレートはアルミニウム合金製で高級感のある表面仕上げで特徴的なデザインにまとめられています。

また「NICEHCK M5」ではフェイスプレートプレートに3種類のサウンドフィルターが選択可能なチューニングバルブを配置。それぞれのサウンドフィルターは交換可能で、標準の「グレー」はバランス、「ブルー」は低域強調、「レッド」は高域強調の変化をもたらします。
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NICEHCK M5」には高純度の銀メッキ線ケーブルが付属し、味付けのないニュートラルなサウンドが特徴です。コネクタは2pinの0.78mm仕様でを採用しています。カラーバリエーションはグリーン(ゴールド)とパープル(シルバー)の2種類が選べます。
NICEHCK M5」の購入はAliExpressの「NiceHCK Audio Store」にて。価格は179ドルです。いずれAmazon.co.jpでも出品される可能性も高そうですね。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): NICEHCK M5 ※現在セール価格で約173ドルで販売中


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

NICEHCK M5」のパッケージは「NICEHCK Topguy」「NICEHCK Lofty」などの上位モデルと同様な製品グラフィックを掲載した白箱デザイン。最近はやたら豪華なパッケージを採用している製品も増えていますが、派手すぎず、かつ安っぽくも無く、ちょうど良い感じですね。
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パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル(ケーブルタイ付き)、イヤーピースは「AET07」風のタイプが装着済みMサイズを含め4サイズ、グレーのタイプが3サイズ、サウンドフィルター(「レッド」「ブルー」)、フィルター交換用ドライバー、レザーケース、説明書および保証書など。
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今回私はグリーン(ゴールド)でオーダー。3Dプリンティングによるレジン製シェルは非常に滑らかでプラスチック感はほとんど感じません。アルミ合金製のフェイスプレートは全面を覆っているわけでは無く、また最近のNICEHCKのロゴもあって、特にゴールドのタイプは「アイアンマンみ」が強いですね(^^;)。デザイン的には好みが分かれると思いますが、個人的にはまあ楽しいからエエかな、と思います。装着性は一般的ですが特に困ることはないでしょう。
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付属ケーブルはシンプルな2芯タイプ。被膜は柔らかく取り回しは良好です。2pin仕様ですのでリケーブルには困ることは無いと思いますが、個人的には多くの場合リケーブルは不要で、付属ケーブルのままで良好なサウンドを楽しめると感じました。
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フェイス部分のフィルターバルブは金属製で、非常に小さなパーツなので交換時には紛失に注意が必要。というのも、非常に本体との密閉性が高いためネジは結構キツめになっているので、力を入れすぎてフィルターを飛ばしたり、本体に傷を付けたりする恐れもあるので、最初は注意しましょう(慣れれば特に問題なく交換できます)。
メーカーサイトでは100時間程度のエージングを推奨していますが、個体差もあるかもしれませんがエージングによる変化は少なめでした。多少派手目に感じる方はエージングで鳴らし込むことで落ち着く可能性があります。またイヤーピースは付属で「AET7」タイプが付属しますのでほぼ問題ないと思いますが、よりフィット感を高めたい場合、他に定番のJVC「スパイラルドット」や、密着感の強いタイプでは「AZLA SednaEarfit XELASTEC」や「SpinFit CP100+」など、自分の耳に合うものに交換するのも良いと思います。


■ インプレッション

NICEHCK M5」の音質傾向はバランスとしてはフラット方向に近いニュートラルさを持ちつつ、ハイブリッドの特徴を活かした明るくハッキリした音を鳴らします。特筆すべきは中高域の明瞭さや低域の深さといった「ハイブリッドらしさ」を感じつつ、ドライバー間のつながりは非常に良く、よりハイグレードなCIEMメーカー製品のような質の良さを感じます。最近ではアンダー100ドルの低価格中華イヤホンでも「4BA+1DD」という構成自体はさほど珍しくはなくなってきましたが、「NICEHCK M5」には、それらの製品とは明らかに一線を画した「音質の良さ」があります。

NICEHCK M5一般的にマルチドライバー・ハイブリッド仕様のイヤホンでもアプローチの違いによりさまざまな傾向の製品が存在しますが、100ドル台の多くは低価格中華イヤホンの「派手な寒色系ドンシャリ」のアプローチに近い製品が多くなります。あるいはハイブリッド化の理由付けとして「マルチBAで低域を濃く強調してみました」みたいなサウンドの製品もよく見かけますね。これに対して「NICEHCK M5」のサウンドはリスニングイヤホンとしての楽しさを維持しつつ、ドライバーのチューニングは、あくまで狙った音作りのための手段のひとつとしてハイブリッドを採用している「Unique Melody」や「qdc」といったCIEMメーカーに近いアプローチを感じます。ドライバーのスペックに目新しさはありませんが、この音作りだけでも価格以上の価値は十分にあるイヤホンだと感じますね。逆に「派手な中高域」や「濃厚で重く深い低域」といった「いかにもハイブリッド」なサウンドを期待される方には向きません。

そして「NICEHCK M5」のフィルターギミックは同様のフィルター機能を搭載する多くの製品と比べても「存在意義を感じる」ものです。フィルターギミックを搭載する多くの製品はステムノズル部分で特定の帯域を「減衰」させることでバランスに変化を与えています。この方式でも完成度の高いフィルター機能を提供している製品ももちろんありますが、多くはベストバランスの「基準」となるフィルターがあり、あとは好みで高低を変える、というパターン、という印象です。
NICEHCK M5いっぽうで「NICEHCK M5」ではフェイス部のベント(空気孔)でハウジングの「音抜け」を調整するアプローチを採用。標準の「グレー」ではフラット方向の音作りで、低域強調の「ブルー」もしっかり中高域が出ることでイマドキの「W字カーブ」に近いバランスになります。逆に高域強調の「レッド」も低域が減衰することは無く、よりハイブリッドらしいメリハリが強調され、高域の主張が増した印象になります。個人的にはグレーの標準フィルターが好みでしたが、どのフィルターもそれぞれのバランスで好感が持てるチューニングで、気分で使い分けるのもアリかな、と感じさせました。

NICEHCK M5」の高域は明るく明瞭な音を鳴らします。BAによる硬質さや煌びやかさを感じさせつつ過度にギラつくこと無くまとめているのは好印象。「レッド」フィルターではより一般的な「ハイブリッドらしい」主張のある寒色系の音を鳴らします。間違いなくハイブリッドの音ではあるものの中高域への繋がりは抜けは良く、まとまりの良さで派手さをコントロールしている印象です。
中音域は凹むことなく鳴ります。見通しの良いスッキリした印象。味付けの無いニュートラルなサウンドバランスで、解像度は高く、ボーカル帯域もしっかり聴かせてくれます。音場は一般的ですが演奏との分離も良く、定位は比較的正確な印象。ジャンルを選ばず楽しめるポテンシャルの高さを感じます。
低域はダイナミックドライバーの旨みを活かした質感と量感が印象的。ただ過度に濃くなりすぎず、しっかりとした存在感を保ちつつも、全体のバランスを維持し、繋がりに違和感のない音を鳴らします。ミッドベースは直線的で自然な締まり感で絶妙な量感を演出します。重低音は深く、重量感があり、沈み込みも良好。いっぽうで全体のスッキリしたバランスでまとめられているため、解像感もあり、音数が多くBPMの速い曲でもしっかり鳴らしてくれます。


■ まとめ

このように「NICEHCK M5」は、ハイブリッドらしい楽しさを維持しつつ、自然な繋がりの良さ、まとまりのあるスッキリとしたチューニングで非常に質の高いサウンドを実現しています。標準のグレーのフィルターでも十分に価格に見合う完成度を持っていると思います。様々な音源を楽しめるリスニングサウンドでありつつ、「下品すぎない」ハイブリッド感を堪能したい方には最適でしょう。
NICEHCK M5個人的には普段よりハイグレードなサウンドモニターやニュートラル傾向のイヤホンを使っている方の「ちょっと気分を変えたいとき」にぴったりはまるような気がします。逆にKZ/CCAやTRNなどのハイブリッド製品に慣れている方にはずいぶんと大人しいサウンドに感じるかもしれませんね。
NICEHCK M5」は3種類のフィルターバルブのほか、リケーブルでも結構変化を楽しめるイヤホンですので、このような場合には多少変化の分かりやすいケーブルを選んでみるのも良いかもしれません。私も完全に「見た目合わせ」で「NICEHCK GreenJelly」を合わせてみましたが、グラフェンコートの分かりやすい変化でこれはこれで結構楽しい印象でした。ポテンシャルの高さと質の良さを活かし、自分に合った変化で長く楽しめるイヤホンのひとつかもしれないですね(^^)。