Khadas Tone 2 Pro

こんにちは。今回は「Khadas Tone 2 Pro」です。スタイリッシュなコンパクトデザインに様々な機能を搭載した多機能USB-DACです。DACチップには定評のあるESS「ES9038Q2M」、USB IFおよびMQAデコードに「XMOS XU216」、ヘッドホンアンプには「OPA1612」を4基搭載。ヘッドホン出力は3.5mmステレオに加え4.4mmバランス出力にも対応し、ラインアウトも通常のRCAに加え独自仕様の「Balanced RCA」に対応することで、専用ケーブルを組み合わせればバランス出力が可能になります。また独特のホイールコントロールも目を引きますね。ヘッドホンアンプとしても価格を考慮すればまずまずの仕上がりで(個人的には思った以上)、さらにこの多機能をイロイロ遊び尽くしたい、というガジェット好きな方に最適なアイテムだと感じました。

■ 製品の概要について

「Khadas」は中国で2016年に設立されたメーカーで、オープンソースコミュニティに対応するシングルボードコンピュータ(SBC)やI2S対応ボードなどを開発・製造販売をしているようです。そのなかで音響機器製品として同社ボードやRaspberry PiなどにUSBまたはI2S接続が可能なD/A音響ボード「Tone 1」を発売しており、さらに汎用のUSB-DAC/オーディオアダプターのパッケージ製品として製品化されたのが今回紹介する「Khadas Tone 2 Pro」となります。
→ 「Khadas Tone 2 Pro」製品概要(Khadas社サイト)

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Khadas Tone 2 Pro」はUSB-DACとしての心臓部であるDACチップに定番チップのひとつであるESS製「ES9038Q2M」を搭載。またヘッドホンアップチップとして「OPA1612」を4基搭載しています。そしてUSB IFチップにはこちらも定番のXMOS社製「XMOS XU216」を搭載。最大32bit/768kHz PCMとDSD512に加えてMQAデコードにも対応します。
Khadas Tone 2 ProKhadas Tone 2 Pro

もともとが多様な用途を想定した音響ボードをベースにしているため、「Khadas Tone 2 Pro」のインターフェースはコンパクトな筐体上に凝縮されており、入力はUSB-Cおよびコアキシャル(同軸SPDIF)、さらに音響ボードらしい点として外部電源を兼用するI2S入力インターフェースを搭載します。このインターフェースは将来Bluetoothユニットがオプションでリリースされることが予告されています(いまのところは発売は未定のようです)。
Khadas Tone 2 ProKhadas Tone 2 Pro
またヘッドホン出力は3.5mmステレオ(シングルエンド)と4.4mmバランスの2系統。最近でこそ小型オーディオアダプター製品でバランス出力に対応しているものも複数登場していますが、この製品の登場当時(2020年末頃)では結構な目玉機能のひとつだったと思います。またラインアウト(プリアウト)は「Khadas」独自の「Balanced RCA」を搭載。通常のRCAアナログ出力はもちろん、専用の「Balanced RCA - XLR3アダプタ」を別途購入し併用することでXLR仕様のバランス出力に対応します。非常にマニアックですがこれらの機能をシングルボードに凝縮しているのはとても興味深いですね。
Khadas Tone 2 ProKhadas Tone 2 Pro

そして「Khadas Tone 2 Pro」ではデザイン上のアクセントにもなっている大きなボリュームノブが様々なモード設定にも対応するロータリー・プッシュエンコーダーとして機能します。音量はもちろん、入力切り替え、ゲイン調整、フィルターモード、そして再生・停止や電源ON/OFFといった操作に対応します。またノブの下にはRGBリングライトがあり、再生フォーマット、再生モード、音量、ゲインなどによりライトのカラーが変わります。
Khadas Tone 2 ProKhadas Tone 2 Pro
Khadas Tone 2 Pro」のカラーバリエーションは「ブラック」「レッド」「ブルー」の3色。購入はAmazonの公式ストアにて。価格は32,000円です。
Amazon.co.jp(khadas): Khadas Tone2 Pro DAC ※現在2,000円 OFFのクーポン配布中


■ パッケージ構成、製品の外観および機能について

パッケージは製品写真を載せた非常にシンプルなもの。箱の裏面に各インターフェースの説明、側面にスペックが記載され、パッケージの中には製品の写真を載せたフォトカード風の英語版の説明書が付属します。
Khadas Tone 2 ProKhadas Tone 2 Pro
パッケージ構成もこの説明書のほかは本体と接続用USB Type-Cケーブルのみと非常にシンプルです。本体は88×68×17mm、100gというサイズ感で長辺はほぼクレジットカードと同じで短辺がちょと大きいくらいのサイズ感。シリコンバンドでスマートフォンの背面に固定しても違和感のない印象です。
Khadas Tone 2 ProKhadas Tone 2 Pro
ただ実際には例えばiPhoneの場合はI2S端子側から給電が必要ですし、接続にはKhadas純正の「Khadas USB C-Lightningケーブル」が必要なようです。Androidの場合は多くの場合バスパワーで使用できるようですが、やはり接続には付属のKhadas純正USB-Cケーブルを使用する必要があります。より短いType-C OTGケーブルなどでは認識しませんでした。この辺の仕様についてはもう少し一般的なほうがよかったですね。
Khadas Tone 2 ProKhadas Tone 2 Pro

そのため、今回はMac(Intel MacBook Proおよび M1 Mac mini)およびWindows環境(Windows 11 ProおよびWindows 10 Pro環境)で確認してみることにしました。使用方法およびWindows用ASIOドライバーのインストール方法などは付属の英語版の説明書、または同一内容の日本語マニュアルがメーカーサイトに用意されています。
「Khadas Tone 2 Pro」日本語マニュアル(Khadas社サイト)
「Khadas Tone 2 Pro」英語マニュアル(Khadas社サイト)

driver日本語のマニュアルは想像以上にしっかりと翻訳されており、多くの場合導入で困ることはないと思います。Windows用ドライバーは以下のURLで最新版がダウンロードできるようです。
→ 「Khadas Tone 2 Pro」Windows用ドライバー(最新)

またファームウェアについてはマニュアルに従いDFU Toolで確認したところ既に最新版が導入されていたためそのまま使用することにしました。

Macについては多くのUSB-DAC製品同様にドライバーは不要で接続しただけで問題なく認識しました。「Audirvana」などのアプリを使用する場合はMac側の設定は特に不要ですが、「Apple Music」や「Amazon Music」でハイレゾ音源を使用する場合はMIDI設定で最大サンプリングレート変更します。

Khadas Tone 2 Pro」の外観上の最大の特徴である大きな円形のノブはダイヤル(回転)と側面を軽くクリックする操作で対応します。結構特徴的で他には無いギミックのため最初は「???」となるかもしれませんが(私もなりました)、動作の仕組みが分かってしまえばそれほど難しくはありません。

Khadas Tone 2 Proシングルクリックで「再生/停止」(例えばMacの場合はMusicアプリが起動しApple Musicを再生/停止します)し、ダブルクリックで各モードを順に移動し、ノブの下にあるRGBリングのカラーが順に変化します。RGBリングがターコイズ(ライトブルー)になっているときはボリューム調整で音量に応じてリングの長さが変わります。
「ボリューム」を起点にすると、ダブルクリックで「ボリューム(ターコイズ)」→「モード選択(レッド)」→「ゲイン/プリアウト(レッド&グリーン)」→「入力切替(レッド&イエロー)」→「フィルター(レッド&パープル)」となります。このうち「モード選択(レッド)」でノブを回しても以降のダブルクリックと同様に切り替わるギミックとなります。
一般的には「入力切替(レッド&イエロー)」は「自動」で、「フィルター(レッド&パープル)」も初期値または気に入ったもので固定であまり触ることはないと思いますので、「ゲイン/プリアウト(レッド&グリーン)」のモードだけ覚えておけば良いかもしれませんね。各モードのRGBリングの配色は前述のマニュアルに詳細に記載されていますので最初のうちは参照しながら操作してみてください。また再生中は音源のフォーマットやサンプリングレートに応じてRGBリングが変化します。こちらについても詳細はマニュアルを参照してください。


■ インプレッション(ヘッドホン&イヤホン)

Khadas Tone 2 ProKhadas Tone 2 Pro」の音質傾向は非常に元気な印象の明瞭サウンド。良い意味で「DACとオペアンプの音をそのまま伝えている」、非常に素性の良い「いかにもClass-Dアンプ」という印象のサウンドです。
最近はポータブルな製品でもアナログアンプ的な厚みや奥行き、そしてニュートラルな輪郭など据置きオーディオにより近づけた自然な音作りを目指すことが多いのですが、もともとシングルボードコンピュータのメーカーらしく、基盤の美しさによるノイズの少なさ、安定した電源供給など、発想そのものが「よりダイレクト」であることに注力している印象で、それがそのままサウンドにも感じられます。非常にスッキリしたサウンドで、基盤設計の美しさもあってゲインを上げても歪みが非常に少なく明瞭な解像感を維持したままコンパクトな筐体からは想像できないような高出力を実現します。
オーディオの世界では高出力・高音質なClass-Dアンプが小さなブックシェルフより大型の本格的なスピーカーのほうが相性が良かったみたいな話は以前よくありましたが、おそらく「Khadas Tone 2 Pro」にもこのパターンは当てはまり、手持ちのSennheiser「HD800」や「HD8XX」やbeyerdynamic「DT1770 PRO」などのヘッドホンとの相性の良さを感じました。

いっぽうホワイトノイズも非常に少なく、反応の良いイヤホンでも明瞭に鳴らすことが出来ます。シングルエンド(3.5mm)とバランス(4.4mm)については、オペアンプ以降が二重化される「駆動力を高めるタイプ」の変化が楽しめます。分離性やノイズ特性なども分かりやすく好転するためよりハッキリしたラインの際立つサウンドになりますね。
Khadas Tone 2 Proなお、ボリュームノブはアナログ仕様ですが、音量150段階のDAPなどと比較して少ない回転数でゼロから最大まで変化するため、特に高出力のバランス出力では反応の良いCIEMなどでは扱いにくい場合もあるかもしれませんね。また前述の通りいかにもD級なサウンドなので、キレッキレにエッジの効いたハイブリッドイヤホンとの組み合わせでは「ちょっとやりすぎ感」が出てしまう、というケースもありそうです。
鳴らしにくいモニター的なヘッドホンや、同じくフラット傾向のイヤホンなどニュートラルな製品と相性が良さそうです。


■ インプレッション(プリアウト、I2Sほか)

プリアウト(ラインアウト)は同社独自の「Balanced RCA」に対応しているため、バランス出力同様L/R独立のオペアンプ(LPF)から左右それぞれ出力されています。もちろん通常のシングルエンドのRCAにも対応するわけですが、ここで専用の「Balanced RCA」ケーブルを用意し、両方の入力に対応したヘッドホンアンプ「SMSL SP200」に接続して聴き比べてみました。専用の変換アダプターケーブルは「Khadas RCA-XLR3」で、Amazonで6,480円で購入できます。
Khadas Tone 2 Pro / RCA-XLR3Khadas Tone 2 Pro / RCA-XLR3
「Balanced RCA」プラグはセンターの芯部分で2つに分かれており、XLR3に対応する3極を提供しているのがわかりますね。ではまず通常のRCAケーブルを「SMSL SP200」のRCA端子に接続、ヘッドホン出力はどちらの場合もバランスでハイゲインモードで「HD8XX」および「HD800」で試聴してみました。結果的に言うと、「Balanced RCA」ケーブルの効果は「絶大」で、かなり分かりやすい違いがありました。まずシングルエンド(RCA)ではちょっと籠もったような、少し下がった印象でやや平坦さを感じます。
Khadas Tone 2 ProKhadas Tone 2 Pro
「HD8XX」での印象は「Khadas Tone 2 Pro」に直挿しのほうが好印象でした。ここで変換アダプタ「RCA-XLR3」を経由しバランスで接続したところ、一気に覚醒し、解像感、情報量、そして奥行きなど、全ての面において分かりやすく変化を実感しました。スピーカー出力でもこれなら結構楽しめるのでは、という印象です。いっぽうの通常のRCA接続も外部ヘッドホンアンプとの組み合わせでは今ひとつでしたが、一般的なデスクサイドのアクティブスピーカーなどと組み合わせるケースでは十分な実力を発揮できると思います。


■ まとめ

というわけで、「Khadas Tone 2 Pro」はコンパクトながら多くの機能を搭載し、SBC(シングルボードコンピュータ)メーカーらしい、非常に質実剛健な作りがそのまま音質傾向にも反映された製品でした。純粋にオーディオ的に捉えると多少好みが分かれそうな要素もありますが、非常に明瞭でスッキリしたサウンドは十分に使い勝手の良さを感じます。これだけでオーディオを完結させる、というアイテムというよりガジェット的に機能を楽しむような使い方が向いていそうです。製品の特性を理解して使用すれば十分にお買い得な製品だと思いますよ(^^)。