TINHIFI P1 Max

こんにちは。今回は「TINHIFI P1 Max」です。「TINHIFI」は中華イヤホンブランドのひとつとして最近では主要モデルは国内代理店でも取り扱われるようになり、マニアの間では手堅い高音質ブランドとして認知されるようになりましたね。同社でも平面駆動振動板ドライバーを採用する上位モデルのラインとして設定されているのが「Pシリーズ」で、「TINHIFI P1 Max」は既存の「P1」「P1 PLUS」とは異なる、全く新しく再設計されたデザインを採用するたモデルになります。

■ 製品の概要について

「TINHIFI」(当初は「TIN Audio」)は、もともと優れた製品を製造するOEM/ODMメーカーでしたが、自社ブランドとして最初にリリースした「T2」以降の「Tシリーズ」は中華イヤホンの定番製品として多くのモデルが高評価されていますね。さらにその上位モデルとしてリリースしたのが独自の平面駆動ドライバーを採用した「Pシリーズ」です。最初にリリースされた「TINHIFI P1」は非常にバランスの良いサウンドと平面駆動イヤホンとしては比較的鳴らしやすいチューニングで一部のマニアの間で好評を博しました。
過去記事(一覧): TINHIFI製イヤホンのレビュー

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今回の新しい「TINHIFI P1 Max」は全く新しい「14.2mm 平面駆動ダイナミックドライバー」を搭載。2μmの超薄型のアルミニウム振動板と軽量アルミニウムコイルを使用し、両面アレイN52磁石を採用して巨大な磁力を生成します。この新しいドライバーはより正確な定位性と幅広いダイナミックレンジ、そして高速なレスポンスを実現します。さまざまなジャンルの楽曲に対して詳細かつ明瞭なサウンドを提供します。インピーダンスは16Ω±15%、感度は98±3dBで、今回も平面駆動タイプとしては利用しやすい仕様にまとめられています。
TINHIFI P1 MaxTINHIFI P1 Max
ちなみに、「TINHIFI」の平面駆動ドライバーを採用するフラグシップモデルの「P2」および「P2 PLUS」が全く新しいシェルデザインを採用しているのに対し、既存の「TINHIFI P1」および「P1 PLUS」は過去に製造を委託された別ブランドにODM供与したことのあるシェルデザインをほぼそのまま採用していました。当時としては最初の平面駆動モデルとして、ドライバーまわりの開発に注力しつつ購入しやすい価格設定をするうえで必要な選択肢だったのだと思います。その経緯を考えれば、今回「P1」を再定義するに当たっては、新しいドライバーとともに全く新しいシェルデザインを採用したのは当然の流れだろうと思います。

TINHIFI P1 MaxTINHIFI P1 Max
TINHIFI P1 Max」ではハウジング部分に3Dプリンティングされたレジン製で、フェイスパネルはステンレス鋼のトーチアレイワイヤーの3D形成で手作りされ、外観においても光沢のある宝石のような仕上げになっています。いっぽうでハウジングに軽量なレジン素材を採用することで本体重量は片側4.8gと軽量で、優れた装着感により長時間のリスニングにも快適性を提供します。

他にも「TINHIFI P1 Max」ではコネクタに0.78mm 2pin仕様を採用し、108コア構成の高純度単結晶銅線ケーブルが付属します。
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TINHIFI P1 Max」の購入はAliExpressまたはアマゾンなどの主要セラーにて。
今回オーダーした「LuckLZ Audio Store」での価格は 169ドルです。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

TINHIFI P1 Max」のパッケージは先日レビューした「T3 PLUS」と同様のシンプルな白箱ですがロゴはパンダのキャラクターがついたポップなものです。TFZあたりでもありましたが、下位モデルより上位モデルのほうがポップな路線に行く感覚はちょっと日本人には?となるかな、とおもいますが、まあ気にしないことにします。
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル(0.78mm 2pin)、イヤーピース(シリコン3タイプ、S/M・Lサイズ、黒色のみ2サイズ)、ウレタンイヤーピース(グレー)が2ペア、布製ポーチ、説明書、保証カードです。
TINHIFI P1 MaxTINHIFI P1 Max

レジン製のシェルは今回も非常にシンプルなデザイン。以前の「P1」「P1 PLUS」のシェルがコンパクトながら相当に個性的な形状だったこともあり、装着性については「TINHIFI P1 Max」はかなり改善されています。また遮音性も比較的高いデザインのようです。
TINHIFI P1 MaxTINHIFI P1 Max
とはいえアンダー100ドルの「T3 PLUS」と比べると「ちょっとシンプルすぎない?」という印象もあります。元々の「P1」「P1 PLUS」も同社がOEM/ODMメーカー時代だった頃に他社に供給していた金属シェルをそのまま使っていましたし、どうもP1系統は平面駆動ドライバーにコストの大半を持って行かれているのかも。これが倍以上の価格設定で多少余裕のある「P2」「P2 PLUS」になると個性的な金属シェルを採用したりするわけですね。
TINHIFI P1 MaxTINHIFI P1 Max
このようにシンプルすぎるかもしれないデザインの「TINHIFI P1 Max」の新しいシェルですが、たとえばTFZやKZなどの製品のシェルサイズと比較すると多少コンパクトなため、より多くの方が装着しやすい形状だと思います。非常に軽量ということもありしっかり耳にホールドできる、という点も良いですね。実用性重視という感じがとても「TINHIFI」らしいですね。
TINHIFI P1 MaxTINHIFI P1 Max
付属ケーブルは単結晶銅線の2芯タイプ。被膜は比較的柔らかく取り回しは良いようです。イヤーピースは3種類が付属し、そのうち1種類は「T1S」でも付属する丸みを帯びた新しいタイプ(グレーのイヤーピース)のものです。付属のイヤーピースのなかではこのグレーの新タイプがフィット感および遮音性においても最も好印象でした。他にも定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、またよりフィット感の強いタイプでは「SpinFit CP100+」など、自分の耳に合う最適なイヤピースに交換するのも良いでしょう。


■ サウンドインプレッション

TINHIFI P1 MaxTINHIFI P1 Max」の音質傾向は「TINHIFI」らしい聴かせどころを心得つつ、全体としてはニュートラルにまとめられたフラット方向のバランス。最近登場した14mm級の平面駆動ドライバー搭載イヤホンのなかでは「最も無味無臭」でリファレンス的なサウンドと言えるかも知れませんね。
「LETSHUOER S12」のレビューで、「これらのドライバーは微妙にサイズやスペックが異なるため同一では無いと思われるがサプライヤーが共通しているなど時期的に音質傾向的にも何らかの共通点があり、今後は注目度の高いドライバーユニットを各メーカーがどのようなサウンドに仕上げていくかがっトレンドになるのでは」という推測を記載しましたが、「TINHIFI P1 Max」のサウンドは改めてその推測を実感するものでした。

TINHIFI P1 Max」と既にレビューしている「LETSHUOER S12」「7Hz Timeless」、そして次回レビュー予定の「MUSE HiFi Power」の比較では、どの製品も非常に近い音質傾向でありつつ、それぞれに個性のあるサウンドを楽しめます。まずハウジングのサイズ感などもっともアレンジの強いのが「MUSE HiFi Power」で(詳細は次回)、もっとも明瞭かつスピード感や解像感に優れるのが「LETSHUOER S12」、よりドンシャリ方向(V字カーブ)のバランスでリスニング寄りのチューニングなのが「7Hz Timeless」です。
TINHIFI P1 Maxそして「TINHIFI P1 Max」はこの4種類の中の中間、というか、サウンドバランスは最もフラット寄りで、解像感は「7Hz Timeless」以上「LETSHUOER S12」以下です。しかし「TINHIFI P1 Max」はボーカルの映える奥行き感と自然な音色は「TINHIFI」らしさと同時によりハイエンドなサウンドに近いエモーショナルさを感じます。
TINHIFI P1 Max」はポップなパッケージングとは逆に4種類の中でもっとも手堅く、面白みや個性という点では他ほどは目立ちませんが、より質感重視のサウンドであるといえるでしょう。

TINHIFI P1 Max」の高域は明瞭さを感じつつ直線的で自然な伸の良さが印象的です。歪みの少ない見通しの良さは平面駆動らしい要素でしょう。適度な煌びやかさも感じますが「7Hz Timeless」ほど派手では無く、「LETSHUOER S12」より解像感では僅かにゆずりますが自然な鳴り方で、最も聴き疲れしない高音といえるでしょう。これらの14mm級平面駆動ドライバー搭載モデルは従来の平面駆動にありがちな「鳴りにくさ」がほとんどなく、大抵の再生環境で十分なパフォーマンスを示します。「TINHIFI P1 Max」でも同様にスマートフォンのオーディオアダプターでもある程度は楽しめるレベルになってくれます。とはいえやはりある程度駆動力をかけた方が高域の伸びや透明感は向上するようですね。

TINHIFI P1 Max中音域は凹むことなく味付けのないありのままの音を鳴らします。「7Hz Timeless」のリスニング寄りの僅かにウォームな鳴り方に比べると、明瞭さのある「LETSHUOER S12」の方向性に近いかもしれませんね。しかし「S12」は明瞭感が先に来るためかなりシャープでキレ重視のサウンドに感じるのに対し、「TINHIFI P1 Max」も多少モニター的な締まりのあるハッキリした音色ながら、よりボーカル帯域が引き立ち、演奏に奥行きを感じさせます。このような中音域の音作りは「TINHIFI」が最も得意とするところで、特にロック、ポップス等のボーカル曲をメインで聴かれる場合、4種類のイヤホンの中で「TINHIFI P1 Max」が最も好みと思われる方も少ないでしょう。いっぽうで「S12」に比べて「TINHIFI P1 Max」ではやや淡泊なサウンドと感じるかもしれません。この辺は再生環境やメインで聴く音源など好みによって分かれる要素かもしれませんね。「TINHIFI P1 Max」の音場は一般的で決して広くはありませんが奥行きがあり演奏とボーカルの分離は良好。女性ボーカルやピアノのハイトーンの抜けも良く、男性ボーカルは余韻は少ないものの適度に厚みがあり心地よさを感じます。

低域は「7Hz Timeless」ほどの厚みは無いもののフラット傾向で十分な量感です。ミッドベースは響きは少なく直線的な印象。締まりのある音でスピード感のある減衰と解像感が印象的です。重低音も深くタイトな印象です。ジャンルを問わず楽しめる表現力と自然な音色があります。ただスピード感や分離の良さという点では「LETSHUOER S12」のほうが勝っているでしょう。低域の音数の多いEDMやハードロック等では多少好みが分かれそうです。


■ まとめ

TINHIFI P1 Max今回は「TINHIFI P1 Max」について同じ14mm級平面駆動ドライバーを搭載する「7Hz Timeless」および「LETSHUOER S12」との比較でレビューしてみました。結論としてこれらのイヤホンは見た目は全く異なりますし、ドライバーのサイズやスペックも微妙に異なってはいますが、特徴はよく似ており、それだけにメーカーごとの特徴、特に音作りについてのこだわりをかなり分かりやすく実感することが出来ました。どれを選ぶか、これはかなり難しい問題で、優劣は付けがたく、ほぼ好みの違いと言うしかないでしょう。
いっぽうで従来の「P1」「P1 PLUS」とは外観だけでなく、様々な点で全く別のイヤホンと考えてよいでしょう。より小口径のドライバーでかつ鳴らしにくさのあった「P1」と、多少鳴らしにくさは改善された「P1 PLUS」はより中高域寄りの「初期のTINHIFIのサウンド」をより分かりやすくグレードアップしたようなサウンドでした。これはこれで特徴的で良いとは思うのですが、バランスの良さ、使いやすさ、そして1音1音の質感という点では「TINHIFI P1 Max」のほうが優れているようです。他の機種同様に十分にオススメできるイヤホンだと思いますよ(^^)。