Hidizs AP80 PRO-X

こんにちは。今回は「Hidizs AP80 PRO-X」です。私のブログでは久々のDAP(デジタルオーディオプレーヤー)の紹介ですね。「Hidizs」のDAPは同社にとって最初のモデルである「AP60」をAliExpressで購入して使っていたこともありましたので、個人的にも結構興味があるアイテムです。今回のモデルは二コンパクトDAPの人気モデル「AP80」「AP80 PRO」からのアップグレードモデルで、DACチップのアップグレード(デュアル「ES9219C」搭載)、MQA 8X対応、E-book対応など、性能面をブラッシュアップしています。Android系DAPが主流ななか、軽快な動作で気軽に高音質が楽しめる独自OSタイプの製品はたいぶ少なくなっていますので、貴重な選択肢のひとつだといえるでしょう。

■ 製品の概要

ハイレゾオーディオの分野でDAP(デジタルオーディオプレーヤー)は欠かせないアイテムですが、昨今はFiiOやShanling、Cayinといった中華系メーカーがハイエンドでもSONYやAstell&Kernとったかつての定番ブランドより露出を増し、実際多くのユーザーを獲得しています。その変化のポイントはOSへのAndroid系OS搭載で、日本でも「Amazon Music」「Apple Music」といったストリーミングサービスがハイレゾ・ロスレス配信を開始することで、これらのアプリをインストール可能な製品が主流になってきました。この流れはコンパクトやエントリーといったクラスでも例外では無く、「Shanling M3X」のように過去のモデルの専用OS仕様からモデルチェンジでAndroid系搭載になったことで人気機種になった例もあります。
しかし、Android系DAPはどうしてもシステムが重く、それが本体サイズにも影響しますし、バッテリー稼働時間や操作性でも制限が多くなるのもまた実情です。そんななか気軽に使える軽快さと、安定した動作が期待できる専用OSタイプのDAPもまた根強い人気があります。

そして、エントリークラスの価格帯で高性能の専用OS搭載し、機能面でも音質面でもマニアからも評価を得ているのが「Hidizs」の「AP80シリーズ」です。
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今回紹介する最新の「Hidizs AP80 PRO-X」は、ESS製「ES9219C」DACチップセットをデュアル構成で搭載。「AP80」のES9218Pシングル、「AP80 PRO」のES9218Pデュアルに比べてアップデートされています。新しいチップセットの採用により、PROとの比較で「Hidizs AP80 PRO-X」ではSNRが119dB→130dBへ、DNRが115dB→121dBへスペックアップしています。
また新しい「ES9219C」チップセットの特徴として「MQA」への対応があり、「Hidizs AP80 PRO-X」でもチップセットのハードウェアデコードを使用しMQA音源の8Xデコードに対応しています。
CPUには「AP80 PRO」に引き続きFPGAチップ「HBC3000」を搭載。最大32bit/384kHz PCMおよびDSD256にネイティブ対応し高精度マスタークロックによりクロックジッターを制御できます。

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また、「Hidizs AP80 PRO-X」は「AP80シリーズ」の双方向のBluetooth接続機能を継承。ハイレゾコーデックとしてSONY LDAC(最大96kHz)、HiBy UAT(最大192kHz)、そして高音質コーデックとしてapt-XAACに対応。ワイヤレスイヤホン用の高音質プレーヤーとして、逆に「Hidizs AP80 PRO-X」をレシーバーとしてスマートデバイスから高音質ストリーミングの再生など、幅広い用途での利用が可能です。またUSBケーブルで接続することでスマートデバイスにも対応するUSB-DACアンプとしても利用可能。幅広い利用範囲に対応するDAP専用OSの「HiBy OS 3.0」を搭載する「Hidizs AP80 PRO-X」ならではの特徴といえるでしょう。

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このように非常に多機能な「Hidizs AP80 PRO-X」のオペレーションは2.45"(480x360)のIPS HDタッチスクリーンにより快適な操作性を持っています。また出力も3.5mmステレオのほか、2.5mm/4極のバランス出力にも対応します。

Hidizs AP80 PRO-X」の購入はアマゾンのHidizsオフィシャルストアにて。カラーバリエーションはシルバー、ブルー、ブラックの3色で、価格は24,999円です。
Amazon.co.jp(HIDIZS JP): Hidizs AP80 PRO-X ※現在3599円OFFのクーポンを配布中


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

Hidizs AP80 PRO-X」のパッケージは製品イメージをプリントした黒箱タイプ。裏面には日本語を含む言語で製品概要の記載があります。
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パッケージ内容は本体、予備の保護フィルム(前後、標準で1枚は本体に貼付済)、USBケーブル「Type-C - Aタイプ」と「双方Type-Cタイプ(OTG)」タイプ、説明書、保証カードほか。説明書は各国語での記載されており、日本語でも記載されています。
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Hidizs AP80 PRO-X」の本体サイズは6.1×5.45×1.38cm、重量は72.57gで、同価格帯の同じく「HiBy OS」を搭載する小型DAP「HiBy R3Pro」と比べてもひとまわり以上小型軽量で、Android系OS搭載のShanling M3Xあたりと比較するとサイズの小ささはもちろん重量が5分の1と、いかにコンパクトであるかがわかりますね。
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初回の電源投入で言語選択の画面が出るので「日本語」を選び起動します。メニューで横方向にスワイプし、「システム設定」を選び、「時刻調整」(初期値がCST=中国標準時で時刻設定されており、日本時間より1時間ずれているので調整します)、好みでバックライト点灯時間の調整などを行います。設定画面は右方向にスワイプすることで抜けることが出来ます。音楽データをコピーしたmicroSDXCカードを挿入し、「プレーヤー」で「音楽をスキャン」すれば準備完了です。
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「再生/停止」「曲送り」「曲戻り」などの操作はタッチスクリーン操作のほか、右側のボタン操作でももちろん可能です。操作はキビキビ、とまではいきませんが違和感のない速度で操作できます。なお、曲ソートが日本語やアルファベット順にならないのは中華系専用OSのDAPでは毎度のことなので「そーゆーものだ」と思いましょう。再生は「曲名」「アルバム」「アーティスト」「ジャンル」「ファイル形式」「フォルダ参照」と一通りの検索が可能です。
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標準では上記の「システム設定」で「スリープ」はOFF、「待機時間電源オフ」が5分に設定されていますので、無操作状態で5分経つとシャットダウン動作に入ります。電源OFF時間を長くしてスリープを数分で設定するなど使用方法に合わせて設定を変更します。ちなみに「Hidizs AP80 PRO-X」はバッテリ稼働もAndroid系OS搭載DAPに比べて格段に長く、シングルエンドの再生時間11時間、バランスで8時間の長時間再生が可能です。

Hidizs AP80 PRO-X画面で下から上方向にスワイプすると「システム設定」のなかでよく使う項目がアイコンになっています。
下側は「画面の明るさ」と「音量」、「再生/停止」「曲送り」「曲戻り」の各項目(再生中は曲名も表示)。
上側は左から「Bluetooth ON/OFF」「ゲイン Low/High」「USBモード(ファイルモード/USB-DAC/ドック接続用)」「Line-out ON/OFF」が設定されています。またBluetoothについてはメニューの「Bluetooth」からワイヤレスイヤホンやスピーカーなどのペアリングや解除ができます。


■ インプレッション①(音質傾向)

Hidizs AP80 PRO-X」の音質傾向はESS系DAPらしい明瞭感とエッジの効いた印象。味付けの無いニュートラルなクリアサウンドが心地よいですね。ノイズ特性も非常に高く、感度の良いイヤホンでもほぼホワイトノイズ等は発生しません。
Hidizs AP80 PRO-Xまたハイゲインでは2VrmsとこのサイズのDAPとしては高出力で、出力特性も非常に素直なようです。そのためシングルエンド、バランスとも鳴らしにくいヘッドホンなどでも歪むこと無く音量を上げられることは好印象です。「Hidizs AP80 PRO-X」はシングルエンドおよびバランスのどちらでも好印象ですが、特にバランス接続の方が解像感や分離性、特に空間表現の鮮明度について優れており、デュアルDACの恩恵をより鮮明に感じることができるようです。これに対しシングルエンドはよりありのままの音を淡々と鳴らす印象でよりニュートラルさが増します。

Hidizs AP80 PRO-X」には特徴のひとつとして「HiBy OS 3.0」独自機能の「MSEB」(Mage Sound Eight-Ball Tuning)というイコライザーの一種(正確にはEQと音場調整に基づく複数のアルゴリズムを組み合わせて設計された音質調整機能)を搭載しますが、この機能を使用する場合はシングルエンドの方が「キマる」印象で、バランス接続では「MSEB」および「EQ」ともニュートラルの方が良いと思います。
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もちろん、ミドルグレード以上、さらにはハイエンドのDAPや据置きアンプなどの出力に勝るものではありませんが、気軽な普段使いアイテムとして、アンダー200ドル、2万円台の製品としては十分な音質だと感じました。特に小型DAPがあまり得意としない音場感、あるいは空間表現について「Hidizs AP80 PRO-X」はクラス以上の印象があり(特にバランス接続)、より大型のプレーヤーのような余裕のあるサウンドに近いイメージで楽しむことが出来るのは大きな強みといえるでしょう。
また、今回レビューした「Hidizs AP80 PRO-X」のファームウェアは「1.0」でアップデートも特にリリースされていませんでしたが、すでに「AP80 PRO」で何度かアップデートしより安定したバージョンを元に作られているらしく、動作に不安定な要素はありません。またシャットダウン後の起動や動作の軽さはAndroid系OSに比べて専用「HiBy OS」の強みですし、シンプルで直感的な操作性もすぐに馴染むことが出来ると思います。


■ インプレッション②(各種機能)

Hidizs AP80 PRO-X」は「HiBy OS 3.0」の特徴を活かした多機能DAPですが、それらの各種機能についても直感的かつ安定した動作で利用することができました。

まずBluetoothについてはバージョンは4.2ですが、プレーヤー、レシーバーの双方の機能を持ちます。まずプレーヤーとしての使用では、メニューの「Bluetooth」の項目から、ワイヤレスイヤホンやスピーカーなどとペアリングを行い使用します。コーデックに一般的なAACなどのほか、apt-XおよびLDACが使用でき、非常に安定した接続性で楽しむことができます。
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また逆にレシーバーモードについても、スマートフォンなどで接続先に「Hidizs AP80 PRO-X」を選んでペアリングすることでLDACコーデックに対応したワイヤレスアンプとして利用できます。同種の製品としては「Shanling UP5」「FiiO BTR5 2021」など売れ筋の製品もありますが、単独のDAPとしての使い方をメインとしてストリーミングなどで時々、という用途ならば「Hidizs AP80 PRO-X」も有力な選択肢ですね。

次に、「Hidizs AP80 PRO-X」をUSB-DACとして使用する場合は、本体のモードを変更する必要があります。ワイヤレスの方は「Bluetooth 4.2」までの対応のため、特にLDACなどの高音質モードの場合はある程度の遅延が発生します。そのため、DACモードでのUSB接続は、ハイレゾでの音楽再生はもちろん、動画視聴やゲームなどでの利用の場合も有効ですね。「システム設定」の項目を選択するか下からスワイプして「USB」をタップし、「USBモード」を「ストレージ」から「オーディオ」に変更し「確定」します。
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Macの場合はUSB Audio Class 2.0で認識しますのでドライバーなどは不要です。Audirvanaでも384kHz、DSD128対応、MQAレンダラー搭載とちゃんと認識されていますね。Windows用のASIOドライバーはメーカーサイトの「Download Center」の「AP80 Pro-X Windows Driver」を選択しリンクから入手します。同じページでは今後ファームウェアが更新された場合も入手できます。ドライバーはお馴染みのThesycon製でUSBまわりがXMOSチップだということがわかります。インストール時には本体を接続しデバイスチェックがあります。
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また、「DACモード」時の「Hidizs AP80 PRO-X」はMacおよびWindowsのほか、Androidデバイスへ等へのOTG接続にも対応します。またiPad OSも対応に含まれており、実際はUSB-Cコネクタ仕様のモデルを想定しているようです。iPhoneについてはShanling/FiiO/IKKOなどのオーディオアダプタ用のLightning OTGケーブルを使用すると認識はするのですがiPhone側からバスパワー供給を行おうとするため電力不足で動作できないというエラーが表示されます。この辺は今後のファームウェアのバージョンアップでUSB-DAC接続時にバスパワー供給を行わない仕様(本体のバッテリ稼働する仕様)に変更されれば対応出来るかもしれませんね。


■ まとめ

Hidizs AP80 PRO-Xというわけで、久々のDAPのレビューでしたが、「Hidizs AP80 PRO-X」は想像以上に軽量コンパクトなうえ、多機能を軽快かつ安定した動作で利用できたことに驚きました。また音質面においても「確かに普段使いならコレでも十分かな」と思わせる内容でした。製品としては「AP80」からブラッシュアップとアップグレードを続けた3代目の製品としてかなり洗練されてきているのだろうと思います。それであえてウィークポイントを挙げるとすると、やはりバランス接続が2.5mmという点で、最近ほぼ主流となってきた4.4mmでは変換ケーブルまたはアダプターが必要となることでしょう。同時にアマゾンのHidizs直営店では2.5mmプラグを4.4mmにするHidizs製変換ケーブルは販売されていますが「Hidizs AP80 PRO-X」向けの4.4mmプラグを2.5mmにするケーブルが無いのもちょっと惜しいですね。ただこの点以外は非常に優れた超小型&低価格DAPだと思いますので、ライトユーザーのメイン機としてはもちろん、マニアも普段使いのサブ機として良いアイテムだと思いますよ。