SUPERTFZ FORCE1

こんにちは。今回は「SUPERTFZ FORCE1」です。相変わらず謎の製品ラインを増殖し続けている中国のイヤホンブランド「TFZ(The Fragrant Zither)」ですが、文字通りTFZを超える「ステージモニター向けの新ブランド」として「SUPERTFZ」を立ち上げ、その最初のモデルとして登場したのが今回の「SUPERTFZ FORCE1」となります。同社はこの手の取り組みを過去にも何度かトライしていていますが、結局は企画倒れになっています。今回の新シリーズは果たして、という感じですが、いきなりロゴがもうJ○じゃねーかとか、それはともかく(汗)、実際に購入して聴いてみると「まあ音は良い」んですよね(^^;)
ちなみに、TFZは私のブログで最も精力的に紹介しているブランドのひとつで、新製品は都度購入しており、おそらく日本で最もレビューをしているかもしれませんね(^^)。
過去記事(一覧): TFZ製イヤホンのレビュー

また冒頭に記載した同社のさまざまな製品展開についてなどをまとめた記事も3回に分けて掲載しています。TFZというブランドを理解いただくうえでの最適なガイドだと思います。
過去記事: 【メーカー別まとめ】 「TFZ」イヤホン編 その① その② その③


■ 製品の概要について

改めて、これまで数多くのラインナップを展開してきたTFZが新たにステージモニター向けに立ち上げた新ブランドが「SUPERTFZ」で、「SUPERTFZ FORCE1」はその最初のモデルです。
SUPERTFZ FORCE1ちなみに、TFZがステージモニター向けを明確に意識したのは2017年に登場した第2世代ドライバー搭載モデル「SERIES 4」からだと思われます。その後、2018年に第2.5世代ドライバーを搭載し、現在も「名機」として評価される「KING PRO」では発売当時はメーカーサイトでミュージシャンの感想をリンクするなど、製品名通り「プロ向け」というアプローチを打ち出していました(この当時はアップグレードモデルにやたらと「PRO」をつける、という風潮はまだ多くなかった頃だと記憶しています)。しかし「KING PRO」以降、プロ向けという表記は見かけても、本格的にステージモニター向けと表記した製品は登場しなくなります。今回の「SUPERTFZ」は満を持して、という感じかもしれません。

メーカーの記述によると、「SUPERTFZ FORCE1」はハイレゾ級のステージサウンド(製品説明では「high-definition stage level」と表記)をクリスタルライトをイメージした未来的なデザイン(同様に「metaverse fashion」と表記)で製品化。「TFZ ESSENCE」で採用されたハウンドメイドによる透明レジンのハウジングと光の入り具合で様々な色に変化するフェイスプレートによる美しい仕上がりとなっています。またフェイスパネルには「SUPERTFZ」の新しいロゴデザインがプリントされています。にしても満を持したロゴがいかにも短絡すぎるあたりに「やはりTFZは今回もやりやがったのか」感が無きにしも・・・
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閑話休題、「SUPERTFZ FORCE1」のドライバーユニットは最新の「第4世代」テスラダイナミックテクノロジーを採用した「10.2mm ベリリウムコート振動板 二重磁気回路ダイナミックドライバー」をシングルで搭載。ナノコーティングされたベリリウムコート振動版に加え、TFZ独自の「デュアルチャンバー」「デュアルボイスコイル」という2つの磁気回路を持つドライバー仕様を継承し、テスラレベルの磁石を使用して「第4世代」ドライバーの技術により構成されています。このドライバーはより詳細な解像度と大花に改善されたダイナミックレンジにより非常にクリアなサウンドを実現。より自然でリアルな音場表現と正確な楽器とボーカルのポジショニングを可能にしているとのことです。
SUPERTFZ FORCE1SUPERTFZ FORCE1
また、「SUPERTFZ FORCE1」ではこのドライバーユニット全体を共振抑制効果がある金属シャーシに収納し、全体を充填レジンで成型するという製造方法が採用されています。この手法は「TFZ ESSENCE」で最初に採用されており、中国の某OEM/ODMメーカーの製造技術をTFZが取り入れたと見られます(同様の技術による低価格イヤホンが以前「A2イヤホン」という俗称でマニアの間で話題になりましたね)。今考えると「TFZ ESSENCE」は「SUPERTFZ FORCE1」など今後の製品につなげるためのトライアルだったのかもしれませんね(「ESSENCE」は現在販売を終了しています)。
SUPERTFZ FORCE1SUPERTFZ FORCE1

SUPERTFZ FORCE1」の購入はAliExpressにてTFZ製品を販売する主要なセラー等にて。
価格は79ドルです。AliExpressでの購入方法についてはこちらを参照ください。
AliExpress(The Fragrant Zither Official Store): SUPERTFZ FORCE1
AliExpress(Penon Audio): SUPERTFZ FORCE1
AliExpress(LuckLZ Audio Store): SUPERTFZ FORCE1

※7月15日から国内版も発売されることが発表されました。実売価格は14,800円前後とのことです。
Amazon.co.jp(国内正規品): SUPERTFZ FORCE1


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

SUPERTFZ FORCE1」のパッケージはタワー型のボックスで、これまでの同社製品とくらべてよりデザイン性を意識したものです。ただ内箱は底上げになっていて実際には上半分くらいが実際の中身だったり。TFZが時々やる無駄にでかい箱の縦長バージョンです(汗)。なお底上げされた下半分もたぶんボール紙か何かが詰まっているらしくそれなりに重量感はあります(汗)。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピースが2種類でS/M/Lサイズ、布製ポーチ、説明書。内容そのものはSUPERになってもそれほど違いは無いようです。
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レジンで充填されたシェルはそれなりに重量感があります。フェイス部分の内部に施された黄金色のカラーリングは見る角度と光の反射により虹のように様々な色で光沢を放ちやはり綺麗ですね。フェイスプレートとは「Super TFZ」と書かれたプリントと、「例の」○Hぽい羽が付いた人のロゴマーク(ヤバイよヤバイよ)。コレについてはネタにするとほんときりが無さそうなので以降は「あえて」スルーします(汗)。内部でドライバーを収納している金属シャーシにも「SUPERTFZ」のプリントが施されています。
SUPERTFZ FORCE1SUPERTFZ FORCE1

なお、「SUPERTFZ FORCE1」のシェル形状は以前レビューした「TFZ ESSENCE」と全く同一です。両者の違いは内部金属シャーシのロゴ記載の有無と、フェイスパネルのプリント内容くらい。ですね。ステムノズルも内部シャーシと同じく金属製でドライバーシャーシとは音導管で接続されています。構造としては金属ハウジングのイヤホンをレジンで覆ってシェルを成型している、という感じになります。このシェル形状はコネクタ部分がTFZタイプのカバー付き2pinに対応した形状である点以外は前述の「A2イヤホン」と同じで、レジンシェル内に格納されている金属シャーシも同じ形状です。ただ実際に比較してみると「SUPERTFZ FORCE1」および「TFZ ESSENCE」のほうが(おそらくグレードの高い)透明度の高いレジンを使用しており、よりコストをかけているのがわかりますね。

SUPERTFZ FORCE1SUPERTFZ FORCE1

ケーブルは柔らかい銀メッキ線タイプですがプラグ部分とケーブル分岐部分がクローム処理された四角い金属パーツを採用しており、従来とは明らかに異彩を放っています。
SUPERTFZ FORCE1」は「ESSENCE」同様に、従来のTFZ製イヤホンの装着感とは結構異なるため、より耳穴奥までしっかり挿入する印象になります。イヤーピースをしっかり合せれば装着性および遮音性は比較的高いでしょう。イヤーピースは付属品のほか、定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、より密着感の強いタイプではSpinFit「CP100+」などへの交換も良いと思います。


■ サウンドインプレッション

SUPERTFZ FORCE1SUPERTFZ FORCE1」の音質傾向はニュートラルで、低域寄りですがフラット方向のバランスです。「プロ用ステージモニター」という表現をTFZが最初に用いたかつての名機、「KING PRO」をちょっとだけ彷彿とさせるフラット感もありますが、「ESSENCE」同様にパワフルな印象もあり、より幅広い層を対象にリスニングイヤホンとしても十分に楽しめるバランスに仕上がっていると感じます。
SUPERTFZ FORCE1」は金属シャーシを密閉した構造もあり「KING PRO」より低域は強く厚みが、中音域は密度感があります。また、高い解像感と早いレスポンスがあり、非常に明瞭に分離します。そして立体的な空間表現と定位の正確さ、非常に見通しが良く明瞭に鳴る高域は「SUPERTFZ FORCE1」においても優れている要素と言えるでしょう。なお、「SUPERTFZ FORCE1」はインピーダンス32Ω、感度105dBと「KING PRO」の55Ωに比べると一般的に見えますが、実際は結構鳴らしにくく、ある程度の駆動力を必要とします。

SUPERTFZ FORCE1SUPERTFZ FORCE1」の79ドルという価格設定は、TFZの従来機種でいうと「LIVE3」(69ドル)および「T2 PRO」(69.8ドル)より上位、「MY LOVE 4」(89ドル)より下位という、なかなか絶妙なポジショニングですね。もし今後「SUPERTFZ」がシリーズ化され「FORCE3」や「FORCE5」のようなモデルが登場する場合、上位モデルはよりフラット感が強く中高域メインにチューニングを行ったサウンドモニター色の強い製品になることが予想されます。そしてエントリーに位置づけられるはずの「SUPERTFZ FORCE1」はより幅広い層をターゲットに、ライブモニターとしての実用性も意識しつつ、リスニングイヤホンとしての楽しさも十分に表現したイヤホンと言えるでしょう。デザインやロゴマークなど気になる要素はありますが、79ドルのイヤホンとして「少なくとも音は良い」です(^^;)。

SUPERTFZ FORCE1」の高域は明瞭で見通しの良い音を鳴らします。明るく透明感があり直線的に伸びる印象。解像度は高く分離も良いため、細かい音をしっかり捉えることができるでしょう。鋭さのある音源はありのままに鋭さを感じますが歯擦音は制御されており刺さり等もコントロールされている印象。高域の主張はそこまで強くありませんがニュートラルなバランスで、この価格帯の製品としてはありのままの音を十分に表現していると思います。

SUPERTFZ FORCE1中音域は明瞭さとともに厚みがあり、密度感がある音で細部まで詳細に表現する印象。そのため味付けや主張は無いものの「KING PRO」よりボーカル帯域は前向きで中音域全体で濃い印象を受けます。女性ボーカルは光沢があり伸びやかで男性ボーカルの厚みもあり、ライブ音源は生々しい臨場感があります。この価格帯のイヤホンとしては解像度は高く、演奏との分離も良好です。音場は一定の広さがありそのなかで立体的に定位する印象。広がるような抜けの良さはありませんが窮屈には感じないでしょう。定位も十分に正確なため、インストルメンタルも心地よく楽しめます。分析的なリスニングでもライブモニターとしての表現力は備えていると言えるでしょう。ただ中低域は多少ドライで、解像感及び密度感により曲によっては聴き疲れやすい可能性もあります。この辺はモニター的なイヤホンとしてのトレードオフですね。

低域は「KING PRO」よりパワフルで弾力があります。しかし締まりの良い音で中高域への見通しも良いため、籠もりや過剰な響きを感じることは無いでしょう。ミッドベースは直線的で、アタックは強く、レスポンスはスピード感があります。重低音も深く重量感がありますが、十分にタイトで解像感を感じる音で鳴ります。音数の多くスピード感のある曲でも十分に楽しめる質感を持っています。とはいえ、「SUPERTFZ FORCE1」の低域は「KING PRO」よりは量感があるものの全体のバランスとしては比較的ニュートラルなため、「ESSENCE」のような低域中心のサウンドとはかなり印象が異なります。


■ まとめ

SUPERTFZ FORCE1というわけで、「SUPERTFZ FORCE1」は例のロゴといい、ネーミングといい、どうしてもキワモノ感が拭えないというのが一般的な反応のようですが、実際はかなり真っ当につくられた高音質イヤホンという印象でした。また「SUPERTFZ FORCE1」の79ドルという価格設定も以前の「ESSENCE」に比べるとかなり購入しやすさがありますね。「ESSENCE」のときは搭載ドライバーはもちろん、使用しているレジンの透明度やフェイス部分の仕上がりには差があるものの同様の技術で作られた「A2イヤホン」が20ドル前後で購入できるのに対して100ドルを超える価格設定に躊躇された方も多かったかもしれませんが、個人的には「SUPERTFZ FORCE1」については(ロゴの問題さえ気にしなければ)79ドルという価格設定としてはアリかなと思いました。今後国内版が発売されるかは不明ですので、現時点ではなかなか購入される方も少ないかもしれませんが、興味があれば挑戦されるのも良いと思いますよ(^^;)。
※7月15日から「例のロゴ」もそのまま(汗)、国内版も発売されることが発表されました。実売価格は14,800円前後とのことです。例によってかなり価格差があるので国内版の価格だとちょっと評価が変わるかも知れませんね。