KZ AS16 Pro

こんにちは。今回は「KZ AS16 Pro」 です。「KZ」の多ドラ構成のイヤホン人気が絶頂期に発売された製品に片側8BA構成の「AS16」がありますが、今回フェイスデザインを一新、ドライバーの一部をリニューアルし、チューニングをアップデートした新バージョンがリリースされました。外観上は大きな変更が加えられた「KZ AS16 Pro」ですが多くの点で従来の「AS16」を踏襲しつつより購入しやすい価格帯に変更されるなど、「AS16」から4年を経てより魅力的な製品になりましたね。

■ 製品の概要について

低価格中華イヤホンの分野の代表的ブランドとして長らく話題の中心にいた「KZ」ですが、同社が得意としブランドの発展に大きく影響した「多ドラ路線の恐竜的進化」はここ1~2年で完全にピークアウトした印象があります。
特に様々な振動板を採用するなど、ここ数年中華イヤホンでトレンドになっている高性能ドライバーの登場により、低価格ドライバーを積み重ねる足し算の音作りが飽きられ始めていた要素もあるのではと思います。そのため、「KZ」自身も今年に入って主要な新モデルは全てシングルダイナミック構成という状態でしたが、ここにきて、既存モデルの中でも人気のあった構成を見直しリヌーアルするというアプローチも出てきました。
実際のところ、ここ数年はKZ的アプローチに代わる方向性として次々登場した様々な素材の振動板を採用したシングルダイナミック仕様の低価格中華イヤホンも、やはり似たような傾向の製品が乱立する流れになったり、最近では低価格モデルで可能な表現力の限界が見え始めることで、逆にKZやTRNの既存モデルの人気が復活しはじめたりもしています。

KZ AS16 ProKZ AS16 Pro

そんな空気を理解した上でのこのタイミングなのかはよくわかりませんが、KZのマルチBAモデルの中でも長期間にわたって人気を継続しているモデルのひとつ「AS16」がリニューアルするのは興味深いですね。
KZ AS16 Pro」のベースとなった「AS16」は、2019年に同社がリリースした人気8BAモデル。まず姉妹ブランドのCCAから最初の8BAモデルである「CCA C16」が発売されされ、その後にKZブランドの本命としてリリースされた製品です。「AS12」の発売後は6BAの「AS12」や5BAの「CCA A10」およびODMブランド向けの製品など様々なバリエーションモデルに派生していきます。

KZ AS16 ProKZ AS16 Pro
KZ AS16 Pro」のドライバー構成は高域用の2BAユニット「KZ 31736」が2基(合計4BA)、中音域用に「KZ 29689」が2基(2BA)、低域用に「KZ 22955」が2基の高4:中2:低2の3Way構成となっています。この「KZ AS16 Pro」で採用されるドライバー構成自体は「AS16」と同様の記載になっています。しかし、CG画像でも実際のモデルでも「KZ AS16 Pro」の高域用「KZ 31736」は黒色のシャーシを使用したユニットが採用されており、他と同じ銀色のシャーシの「AS16」とは異なることが分かります。また後述の通り実際のユニット配置も若干の違いがあります。

一新したフェイスパネルは「AS16」の亜鉛合金製の厚みのあるプレートから、「KZ AS16 Pro」はフレーム状の外周パーツのみ金属製でダイヤモンドカットされた樹脂製のパネルを中央に埋め込むことで見た目の華やかさとともに軽量化も実現しています。また付属ケーブルは最近のKZ製品で採用されている銀メッキ線仕様となりました。
KZ AS16 ProKZ AS16 Pro

KZ AS16 Pro」のカラーバリエーションは「シアン」と「ブラック」の2種類が選択できます。
購入はAliExpressなどの主要セラーまたはアマゾンにて。
価格はAliExpressが55ドル、アマゾンが9,900円です。
AliExpress(KZ Official Store): KZ AS16 Pro
Amazon.co.jp(KZ Flagship Store): KZ AS16 Pro ※10%OFFクーポン配布中
Amazon.co.jp(GK Offical Store): KZ AS16 Pro ※プライム扱い


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

今回私は「シアン」の「マイク無し」モデルを購入しました。パッケージはKZの上位モデルで使用される黒箱タイプ。パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/L)、説明書。イヤーピースは従来までの黒いフジツボ型のものです。
KZ AS16 ProKZ AS16 Pro

KZ AS16 Pro」の本体形状は「AS16」を踏襲しておりサイズ感などに違いはありません。ただフェイスパネルが樹脂部分が大半を占めるようになったことで多少軽量化されていますね。ステムノズルのメッシュパーツは細かい目のものになっています。
KZ AS16 ProKZ AS16 Pro
前述の通り「AS16」と搭載するBAユニットの型番および数量は同じですが「KZ 31736」ユニットについては黒色にペイントされたものが搭載されています。また低域用の2基の「KZ 22955」ユニットは「AS16」では少し斜めにずらして配置されているのに対し、「KZ AS16 Pro」では普通に2段積みとなっているなどチューニングの変更に伴う配置の違いもわかります。いっぽうで音導管部分は「KZ AS16 Pro」も「AS16」同様に乳白色の不透明のパーツが使用されています。この部品は「KZ ASX」以降の透明なタイプにしてほしかったですね。
KZ AS16 ProKZ AS16 Pro
ちなみに改めて「KZ AS16 Pro」および「AS16」のドライバー構成について振り返ってみます。どちらのモデルも「高域4、中域2、低域2」のバランスの良い3Wayのドライバー配置を採用しています。KZが使用する低価格BAはKnowles製等と比べてコスト相応に品質の差があり、高出力での歪みやすさなどが懸念されます。そこで音域ごとに同じBAユニットを並列に配置することで1基あたりの出力を分散し歪みを軽減するアプローチが行われました。これがKZや競合するTRNの製品で多ドラ化におけるひとつの「セオリー」といえます。「KZ AS16 Pro」および「AS16」はまさに「セオリー通りの構成」で、さらに「KZ AS16 Pro」では高域用のユニットをブラッシュアップするとこでさらに音質面を強化したことが分かります。

KZ AS16 Pro(8BA):高「[2BA] 31736*」×2(4BA) / 中「29689」×2(2BA) / 低「22955」×2(2BA)
KZ AS16 (8BA)   :高「[2BA] 31736」×2(4BA) / 中「29689」×2(2BA) / 低「22955」×2(2BA)
CCA C16 (8BA)  :高「30095」×4(4BA)  /  中「29689」×2(2BA) / 低「22955」×2(2BA)
KZ ASX(10BA):高高「[2BA] 30017s」×2/高「[2BA] 31736s」×2/中「29689s」/低「22955s」

余談ですが、同社の10BAモデルの「KZ ASX」は「高高域4、高域4、中域1、低域1」というかなり特殊は構造を採用しています。単純に上記のセオリーに準じていないだけで無く、過剰なまでの高域偏重の配置をネットワークで無理矢理に中低域寄りのバランスに寄せるというアプローチを取っており、上流やケーブル等でバランスが崩れる可能性を感じずにはいられませんね(実際そうなります)。
KZ AST / CCA CA12さらに余談ですが、12BAの「KZ AST」および「CCA CA24」は、高「30095s」+「30019s」+「50024」×6、中高「(2BA) 30017s」、中「29689s」、低「22955s」という、何度見ても謎な構成で、何個かのユニットはほぼ微調整のためだけの存在でほとんど音が出て無いのでは、というのが想像できなくもありませんね(そのために海外で炎上したみたいですが)。私も「ASX」についてはレビューしましたが、「AST」および「CA24」については購入はしたものの、レビューについてはそのままお蔵入りとしています。

こう考えると「AS16」はKZのマルチBAモデルにおける「良心」ともいえる存在で、今回4年越しで「KZ AS16 Pro」を構成を変えずに(※極めて重要)製品化したことは本当に良い判断だったのではと思っています。


■ サウンドインプレッション

KZ AS16 ProKZ AS16 Pro」の音質傾向は中低域寄りの弱ドンシャリ。「AS16」が中低域中心ながら比較的フラット寄りのバランスであったことを考慮すると、多少「AS12」や「CCA C16」の方向性を意識したKZらしいチューニングといえるでしょう。全体のバランスとしては高域を多少抑えているものの「TRN VX」や「VX Pro」のような、ドンシャリ傾向ながらニュートラルなバランスで高評価を得ているアプローチにも近く感じるのも、今回のアップデートを良い印象と捉える評価が多い理由かもしれませんね。想像以上に「AS16」とは違いがあり、よりリスニングサウンドとしての完成度を高めるアプローチにより、4年間の進化をしっかり感じる事ができます。

KZ AS16 Pro」の高域は鮮やかで明瞭な音を鳴らします。主張自体は「AS16」と同様ですが派手さを多少抑えた印象で、駆動力のある環境でも刺激を増すこと無く聴きやすい鳴り方を維持してくれます。いっぽうで「AS16」より分離感が向上しより硬質でスッキリした印象のサウンドに変化しており、シンバル音などの解像感は高く煌めきのあるサウンドもしっかり楽しめます。
KZ AS16 ProKZの高域というと低価格ハイブリッドに多い金属質のギラつきを思い浮かべる方も多いと思いますが、「AS16」では高域用BAを従来機種から変更し「CCA C16」ほどでは無いものの若干ウォームに調整することで制御してきました。しかし駆動力のある環境やリケーブルで多少刺激が増す場合もあり最適解とはいえなかったようです。
この点を「KZ AS16 Pro」では新しいBAユニットにより効果的に歪みを抑制しており、多少ハッキリしたチューニングでも問題なく対応出来るようになったのではと考えられます。こうして高域の鋭さや明瞭感が増したことにあわせて、逆に主張自体は「AS16」より少なめにしており、リケーブルなどで変化があっても過度にキツくならないようになっています。4年を経た進化を感じる改善だといえるでしょう。

中音域は「AS16」同様の密度感も感じさせつつ、よりスッキリとした分離の良い音を鳴らします。よりドンシャリ的なバランスのため「AS16」より音場感を感じやすいのも好印象でしょう。味付けの無い印象ですが厚みがあり多少濃く感じるものの、それ以上に分離は良く解像感も向上したいんしょうがあります。ボーカル帯域は比較的近くで定位し、音場も一般的ですが1音1音が非常に明瞭で聴き取りやすいため、窮屈さを感じることはないでしょう。いっぽうで厚みのある低域がより強調されたことで、弾性ボーカルなどの中低域はしっかりとした厚みを感じ、濃い音を楽しむことができます。また高域の質感の向上により女性ボーカルなどの伸びや抜け感も向上しています。

KZ AS16 Pro低域も非常に情報量が多く、沈み込みの深い厚みのあるサウンド。分離性が高くキレの良さを感じるのは特徴的。籠もることは全く無く、立ち上がりの早いコントロールされた低音はとても気持ちよく感じます。量的には「AS16」より増しており、全体としてドンシャリ方向のバランスに調整されています。重低音はより深く重い印象で、量感が増した事でしっかり存在を実感出来るようになりました。ミッドベースは「AS16」を踏襲し厚みを持ちつつも直線的で解像感ある音で中高域としっかり分離し粒立ちの良い音を鳴らします。


■まとめ

今回の「KZ AS16 Pro」は「AS16」の評価の高かった点をしっかり踏襲しつつ、音質面については「AS16」の個性とKZらしさとの折り合いを上手く付けることに成功した印象です。
KZ AS16 ProKZ AS16 Pro」では、まず「AS16」より低域および中低域に厚みを持たせ、高域は若干少なめにするチューニングの変更を行い、低域の厚みと音場感を増すことに成功しています。さらに高域用BAのアップデート(高音質化)により、よりハッキリとした出音にすることで存在感を維持し、さらに明瞭感と伸びの良さを向上させています。「KZ AS16 Pro」のバランスはいわゆるハーマンターゲット的なものとはほぼ縁の無い(笑)、いかにもKZらしい印象ですが、しっかりと完成度を高めることで心地よりリスニングサウンドを手に入れることに成功したようです。
価格的にも手頃感が増したとこもありますし、久しぶりに文句なくオススメできるKZ製のマルチBAイヤホンになったと思いますよ(^^)。