qdc Anole V3II Special Edition

こんにちは。今回は私が過去に購入した未レビューのイヤホンを紹介する「棚からレビュー」企画です。
今回紹介するのは「qdc Anole V3II Special Edition」(限定カメレオンバージョン)です。米国の共同購入サイト「Drop」から購入したものですが、もともとは3BAモデルの「qdc Anole V3II」をベースに中国のショップコラボで200個限定で発売されたものです。特徴はフェイスパネルのカメレオンのロゴとクリアブルーのシェルですね。本レビュー掲載時点ではDropで確保されている分はまだ残っているらしく定期的に再販売されています。

■ 製品の概要について

中国のカスタムIEMおよびハイグレードなイヤホンブランドとしてマニアにはお馴染みのブランド「qdc」ですが、5周年記念としてリリースした3BAモデル「Anole V3II」のさらに中国のショップ限定版として200個のシリアルナンバー入りで発売されたのが「qdc Anole V3II Special Edition」です。ちなみに日本ではユニバーサルモデルは「Anole V3」までは販売されていましたが「Anole V3II」になってからはカスタムIEM専用のモデルになっているみたいですね。
※2023年2月からユニバーサル版の「Anole V3II-S」もケーブルをモジュール式プラグに替えた新バージョンで再販されるそうです。

qdc Anole V3II Special Editionqdc Anole V3II Special Edition

中国国内のショップ以外では米国の共同購入サイト「Drop」で募集販売されました。レビュー掲載時点でちょうど2回目の募集を実施中でした。
Drop:QDC ANOLE V3II SPECIAL EDITION IEM


ベースとなった「Anole V3II」は、「Anole V3」の後継モデルとして、2015年に設立されたqdcの5周年記念モデルとして2021年リリースされました(カスタムは「V3II-C」、ユニバーサルモデルは「V3II-S」と表記して区別する場合もあり)。前モデルの「Anole V3」とは異なり、「Anole V3II」は同社の「qdc Anole VX」と同様のシェルデザインとメタルノズルを採用しています。「Anole V3」に対してフルチューニングが施され、強力な低音を維持しながら、クリーンな高周波と滑らかな伸びが強化されているようです。
qdc Anole V3II-Sqdc Anole V3II Special Edition
qdc Anole V3II Special Edition」と「Anole V3II」との相違点はカメレオンフェイスのデザインとクリアブルーのシェルカラーです。完全に調整された3基のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーによるサウンドと、スイッチコントロールによる4種類のモード設定などはそのまま踏襲されています。またケーブルも「Anole V3II」と同じ「GE4C II 銀メッキ線ケーブル」が付属します。
qdc Anole V3II Special Editionqdc Anole V3II Special Edition

Dropでの「qdc Anole V3II Special Edition」の募集価格は359ドルでした。これは海外セラーで販売される「Anole V3II」の価格(688ドル~799ドル、SHENZHENAUDIO / HiFiGo)と比べて4割から5割近くディスカウントされており、日本への送料・手数料を想定しても相当にお買い得だと言うことが分かりますね。
Drop:QDC ANOLE V3II SPECIAL EDITION IEM


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

qdc Anole V3II Special Edition」のパッケージは通常の「qdc Anole V3II」のパッケージに限定版と記載された青い帯を施してありました。私はDropの初回の申し込みで購入しましたが限定200個のうち結構な数をDropが確保しているみたいで、繰り返し募集は行われているようです。
なお、Dropの場合は日本への送料(通常は15ドル)と関税(正確にはイヤホンは無税扱いのため輸入消費税のみ)が1万円以上の商品では発生し、今回は受取り時に輸入消費税として2,000円を支払いました。つまり最近のレートでいうと359ドルの本体価格以外に合計4,000円程度はかかるわけですが、それでも「qdc Anole V3II」の通常価格を考えれば随分お買い得です。
qdc Anole V3II Special Editionqdc Anole V3II Special Edition

パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピースセット、6.3mmステレオ変換プラグ、飛行機用変換プラグ、クリーニングブラシ(兼スイッチつまみ)、レザーケース、説明書、保証書ほか。写真ではケースを撮り忘れました(^^;)。
qdc Anole V3II Special Editionqdc Anole V3II Special Edition

今回届いたパッケージを見るとシリアル番号は「014」とかなり最初の方の番号でした。どうやらDropでは番号はランダムに確保したみたいですね。本体はqdcらしいコンパクトなシェルデザイン。形状としては「qdc Uranus」とほぼ同様でユニバーサルモデルでも高い装着性を持っていますね。フェイスパネルはカメレオンのデザインが施されている以外にもプレート自体の模様も異なっています。個人的には「Anole V3」や「Anole V3II」のオリジナルのロゴデザインはかなり浮いた印象で全然好みではありませんでした。「qdc Anole V3II Special Edition」は価格もさることながら、むしろ愛嬌のあるカメレオンデザインになってくれたおかげで購入しようという気になった、ともいえます。
qdc Anole V3II Special Editionqdc Anole V3II Special Edition
本体側面にあるモード切替スイッチがあるのも「Anole V3」からの特徴です。このスイッチコントロールでは、標準の「Standard Mode」に加え「High Sensitivity(中高域寄り)」「Strong Bass(低域強化)」「Smooth Vocal(ボーカル強調)」の4種類のチューニングをスイッチで切替えることができます。4種類のモードは全く音色が異なり、4つのイヤホンを同時に入手できたような体験を目指して開発されたそうです。
qdc Anole V3II Special Editionqdc Anole V3II Special Edition
そしてケーブルは「Anole V3II」で採用された「GE4C II 銀メッキ線ケーブル」が付属します。「Anole V3」に付属の黒いケーブルとは異なるシルバーのカラーリングがされた銀メッキ線ですね。非常に柔らかく取り回しの良いケーブルです。


■ サウンドインプレッション

qdc Anole V3II Special Editionqdc Anole V3II Special Edition」(Standard Mode)の音質傾向は非常にニュートラルでqdcらしい整った印象のサウンド。インピーダンス 27~33Ω、感度105~108dB/mW(モードによって変わる)という仕様で、CIEMモデルがメインの製品としては比較的どのような環境でも鳴らしやすい製品ですが、多くのCIEM同様に再生環境のノイズに影響されやすい側面もあるため、相応にクリーンな音質のDAP等を使用すべきでしょう。「Standard Mode」では自然で長時間でも聴きやすい印象にチューニングされています。これがスイッチを変更することでかなり分かりやすく変化します。

qdc Anole V3II Special Edition」の高域は見通しが良く伸びのある音を鳴らします。「Standard Mode」では刺激などはコントロールされており刺さりなどはありません。適度に空気感のある自然な印象で、解像感や鮮明さを強調することはあまりありません。このモードでは滑らかさを感じる聴きやすい印象です。ここで高感度モードの「High Sensitivity(中高域寄り)」にスイッチを合わせると、煌びやかさが強調された非常にアグレッシブなサウンドに変化します。相応に鋭さも増すため聴きやすさは無いですし刺激も強くなりますが、高域は刺さるくらいがちょうど良いと思う方には結構楽しめるモードだといえるでしょう。

qdc Anole V3II Special Edition中音域は凹むことなく適度な量感があります。ニュートラルな印象とともに自然な温かさも感じます。音場は自然な広さがあります。存在感のあるボーカルの表現があり、演奏との分離の良さと伸びやかさもあります。女性ボーカルはそれほど前面には強調されませんが調和が取れており抜けの良い中高域とともに心地よさがあります。男性ボーカルは過度に響くことは無く締まりがある印象。自然な音色のなかにモニター的な解像感や明瞭さもしっかり感じる事ができます。ここで「Smooth Vocal(ボーカル強調)」を選ぶとよりボーカル帯域が強調され前面に出ます。いわゆるW字のバランスに変化するため好みは分かれそうですね。個人的には音数の少ない曲の方が好印象でした。アコギのみで歌い上げる曲とかは非常に雰囲気があります。

低域は量感とともにタイトさのある重低音が魅力的です。十分なインパクトとともにスピード感があり音数の多い曲でも正確に表現できる質感があります。ミッドベースもバランスの良い量感とともにパンチ力があり直線的に表現されます。そして「Strong Bass(低域強化)」モードは低域の質感を高めるため、よりリスニング寄りのサウンドとなり好感する方は多いかもしれません。このモードでは低域の量感が増すことで全体の音場も広く感じます。非常に雰囲気のある音を鳴らしますが、qdcらしさというか煌めきのある中高域は相対的に減少するため鮮やかさや明るさを求める場合は別のモードを試した方が良いでしょう。


■ まとめ

qdc Anole V3II Special Editionというわけで、「qdc Anole V3II Special Edition」は個人的にはとても良い買い物でした。もともとの「Anole V3II」がqdcのブランド価格というか、スペックのわりに結構高額なイヤホンですが300ドル以上のディスカウントを得たこのイヤホンは久々にDropによる共同購入の良さを実感出来た製品だなと思いました。デザイン的にも「むしろこっちの方が好み」でしたので良かったですね。
私も色々なイヤホンを取っかえ引っかえ使っていますが、この「qdc Anole V3II Special Edition」はかなり利用頻度が高いイヤホンです。通常は「Standard Mode」と「High Sensitivity」モードを気分で切替えています。ある程度以上のマニアの方で興味のある方は挑戦してみるのも良いと思いますよ(^^)。