Hisenior Meag5P

こんにちは。今回は「Hisenior Meag5P」です。低価格&高品質なカスタムIEM(CIEM)でマニアの間でもファンがじわじわ拡大している中国のファクトリーブランドの「Hisenior Audio」(ハイシニア・オーディオ)ですが、最近はCIEM以外にユニバーサルモデルにも注力をしています。
今回の「Hisenior Meag5P」は4BA+1DD構成の5ドライバー・ハイブリッド構成のユニバーサル仕様モデルで、CIEMと同様に高音質ドライバーを組み合わせ高度なチューニングによる卓越したサウンドと、非常に美しい仕上げのシェルデザインが印象的なハイグレードイヤホンに仕上がっています。
なお、「Hisenior」のユニバーサルモデル各種については、先日の「秋のヘッドフォン祭2022」の終了後に、有名レビュアーのヤンネ氏が主催された大規模オフ会で試聴機が一同に揃ったそうで、ヤンネ氏の簡易レビューや参加された方からの感想などでも好評価だったことが伺えました。
個人的には同社はまだAliExpressなどで細々と販売していた2017年頃からこっそり注目しており、当時6BAモデルのイージーオーダー製品を購入したりもしていました(2017年当時の過去記事)。

その当時とは異なり、現在は自社サイトにて販売からサポートまでを一貫して行っており、安心して購入することができます。また同社の日本語Twitterアカウント(@HiseniorAudio)も開設されています。
外部サイト: Hisenior Audio


私のブログでは「Hisenior」の低価格カスタムIEM「Hisenior T2(Custom)」を実際に購入してみたレビューを掲載しており、インプレッション取得からの実際のオーダー方法などについても簡単にまとめています。
過去記事:「Hisenior T2」 実質100ドル程度のKnowles製2BA搭載カスタムIEM。 インプレ込み総額2万円で作れるCIEMをオーダーしてみました【購入レビュー】

実際にこのレビューを参照頂き、初めてカスタムIEMに挑戦された方もいらっしゃるとのことで、多少なりとも検討及び購入のお役に立ててうれしく思います。


■ 「Hisenior Meag5P」の概要について

多少前置きが長くなりましたが、改めて今回レビューする「Hisenior Meag5P」について。このイヤホンは4基のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーと10mmサイズのダイナミックドライバーの組み合わせによる5ドライバー・ハイブリッド構成のユニバーサル仕様モデルとなります。
ドライバー配置は「Low ×1(10mm DD)、Mid & High ×2(BA)、Super High ×2(BA)」の4way チューニング仕様とのことです。同社の長年のCIEM実績から得たノウハウによる充実なバランスを実現しており、明確なレスポンスとスムーズなクロスオーバーによる透明性の高いサウンドを実現しているそうです。製品サイト内で「自社のハイブリッド製品のなかで最もバランスに優れたイヤホン」(The Most Balanced Hybrid In-Ear Monitor we Hisenior ever have)と明記していることからも自信の程がうかがえますね(^^)。
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シェルデザインはより優れた装着感が得られるように新しくデザインされており、人間工学に基づいた形状および角度の調整により、耳の小さな方でもしっかりとホールドし快適な装着感が得られるように設計されています。個体ごとに模様の異なるシェルはアレルギーフリーのアクリル樹脂を使用してひとつひとつ手作りされています。
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Hisenior Meag5P」の通常価格は399ドルですが、現在は239ドルの特別価格で販売されています。製品の詳細及び購入は以下のページを参照ください。
hisenior-iem.com(直販サイト):  Hisenior Meag5P
AliExpress(Angelears Audio Store): Hisenior Mega5P
※現在は「Mega5P」のアップグレード版「Mega 5P Ultra」にマイナーチェンジしています。


■ 製品構成、外観および内容について

今回「Hisenior Audio」よりレビューサンプルの提供をいただきました。そのため通常の製品内容とは一部付属品などが異なる場合がありますのでご了承ください。
製品内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピースはブルー、レッド、グレーの3種類がそれぞれ2サイズ、ダブルフランジ(白色)、トリプルフランジ(黒色)、ウレタン(黒色)がそれぞれ1ペア、清掃用クロス、ケースといった内容。なお今回は「Hisenior Audio」の製品ブランドの「febos」ロゴのメタルケースで届きました(上記のペリカンケースは以前購入した「Hisenior T2」で届いていますので写真等はそちらのレビューを参照ください)。
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個人的にシンプルな雰囲気の製品が好み、という会話を担当者とさせていただいたこともあり、届いたサンプルはフェイスの模様があえて抑えめの個体を選んで頂けたそうです。上記のメーカー写真のような模様のハッキリした個体ももちろんあります。実際に購入される方はサイトやTwitterのDM等で要望を伝えると可能な範囲であれば応えてくれるかも(^^;)。もともと個別注文のCIEMをネット注文で対応しているメーカーということもあり、個人的には以前から普段からとても丁寧に対応してくれるというイメージがあります。
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Hisenior Meag5P」のシェルは光沢のある非常に美しいピアノブラックのレジンシェルで、量産品とは異なる質の高さをビルドクオリティからも実感します。耳にフィットしやすい形状で装着性や遮音性も高い印象です。コネクタは0.78mm 2pin仕様で埋め込み型ではないフラット仕様。「See Audio」や「Kinera」「QoA」あたりの製品と同様のタイプですね。リケーブルでは中華2pin、CIEM 2pinの両方が使用できます。ケーブルは8芯の銀メッキOCC線ケーブルが付属します。
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ケーブルについては通常はコネクタ部分が透明で傾斜のあるタイプが付属するようです。今回は別途用意されていたCIEM 2pinタイプを選択しました。ケーブルの線材自体は同じようですね。実際の購入でもコネクタが選択できるかについては、CIEM 2pinタイプを選びたい方は事前にサイトやDMでご確認ください。線材はしっかり編み込まれており、やや被膜は硬さがありますが取り回しは良好です。

イヤーピースも多くの種類が付属するため、通常は付属品で問題ないと思いますが、好みのものに好感するのも良いでしょう。私は外耳道がとにかく細いこともあり、私はラディウスの「ディプマウント」の透明(より粘着性の高いタイプ)のXSサイズを組み合わせて使用しています。他にもより耳奥まで装着できるという点では「final E」タイプ、より密着性を高めるという点では「SpinFit CP100+」や私が選んだ「ディープマウント」の透明、「AZLA SednaEarfit Crystal」、そして「Softears U.C.」などが候補に挙がると思います。後述の通り特に低域はイヤーピースで印象が結構変わる場合があるので色々試して見るのも良いでしょう。


■ サウンドインプレッション

Hisenior Meag5P」の音質傾向は非常にニュートラルでバランスの整った印象。ハイブリッド構成にありがちなメリハリの強い印象では無く、傾向としてはモニター的。そのため低域の量感をもっと望む場合もありそうですが、再生環境やイヤーピースの組み合わせによって十分に引き出されるため、個人的には満足がいくバランスだと感じました。低域を担当するダイナミックドライバーは中高域に合わせた繋がりの良いバランスを維持しつつ重低音の沈み込みの深さをしっかり演出してくれる感じです。癖の無いサウンドのため派手さなどは全くありませんが、どのような音源もより透明感のある伸びやかさで忠実に表現してくれる印象です。

Hisenior Meag5P特筆すべきはやはりドライバー間のクロスオーバーの滑らかさで、ハイブリッドでイメージされがちな音域間の絶壁のような段差は皆無で、非常に整えられ繋がりの良さはシルキーな滑らかさを感じます。4Wayのハイブリッドみを全く感じさせない絶妙なチューニングが素晴らしいですね。いっぽうで5ドライバーを活かした1音1音の解像感でボーカル帯域の余韻や息遣いの細やかさはこの構成ならではのものでしょう。
まるで1,000ドル級のCIEM製品を彷彿とさせるような質の高さを持っており、この美しいサウンドを200ドル台で購入できるのは本当に驚きですね。

Hisenior Meag5P」の高域は美しく透明で伸びやかな音を鳴らします。ハイブリッド的な人工感や硬さは抑えられ自然な印象ながら高高域の見通しの良さや煌めきはしっかり表現されており、歯擦音や刺さりをコントロールしつつ鋭い音もしっかり感じられる調整になっています。

Hisenior Meag5P中音域は驚くほど滑らかで美しさがあります。モニター的なバランスながら決して淡泊にならず、中音域にフォーカスした音作りを実感します。ボーカル帯域は解像感が高く明瞭で、実在感のある空間表現のなかで自然に、その声に聴きいっているときのように定位します。「聴きいっているときのように」というのは厚みやダイナミクスといった表現で表される要素で、「Hisenior Meag5P」の音作りにおける「うま味」みたいなものだと感じます。ハイブリッド構成にありがちなドライで寒色な印象は皆無で、自然な温かさを持ち、同時に1音1音にしっかり焦点の合った解像感も備えています。

低域は全体とバランスの整った心地よい音を鳴らします。リスニングイヤホンとしては低域の量感と言うよりバスドラムやベースの力強さをもっと欲しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「Hisenior Meag5P」が搭載するダイナミックドライバーはもともと分離に優れており過度な響きやにじみのようなものは無いため、より駆動力のある再生環境でしっかり鳴らせば十分な厚みを引き出すことができます。またより耳奥までしっかりフィットできるイヤーピースを選択することでも低域の印象は大きく変わるでしょう。重低音の沈み込みも深く解像度は高い印象でスッキリした印象のため音数が多い曲でもしっかり表現してくれます。


■ まとめ

このように「Hisenior Meag5P」は非常にバランスに優れ、見た目にも音質的にも「美しさ」を感じるイヤホンという印象です。どのようなジャンルの音源でも得手不得手無く表現できる優等生的な印象を持つ方も多いと思います。そのなかでも中音域の質感は非常に優れており、インストルメンタルでも質の高さを感じますが、「Hisenior Meag5P」が本領を発揮するのはやはりボーカル曲だろうと思います。適度に甘く自然な輪郭ながら明瞭かつ極めて実在感が高いボーカルまわりの表現力については、ミドルグレードのマルチドライバー構成でトップクラスの品質をもつ「DUNU SA6」にも勝っている要素だと感じました。
Hisenior Meag5PHisenior Meag5P
またリケーブルやイヤーピースの変更による変化を試して見るのも楽しいと思います。「Hisenior Meag5P」のサウンドは分かりやすい特徴や個性といったものはありませんが、CIEM的な滑らかで質の良いサウンドを楽しみたい方にはうってつけでしょう。それらの製品と比較すると399ドルの価格設定は十分に価値のあるものだと実感できますし、割引された239ドルの価格設定はかなりのディスカウントだと思いました。興味のある方は十分にお勧めできるイヤホンだと思いますよ。