
こんにちは。今回は「KZ ZS10 PRO X」です。低価格中華イヤホンのブランドとしてお馴染み「KZ ACOUSTICS」のなかで同社を代表するモデルのひとつが4BA+1DD構成の「KZ ZS10 PRO」でしょう。実際同社でも最も売上に貢献したモデルらしく、現在もロットごとに少しずつ音質を改善しながら販売は継続されています。その「ZS10 PRO」からドライバー構成をリニューアルし、新世代モデルとして登場したのが「KZ ZS10 PRO X」です。今回は最近の新旧ロットの「ZS10 PRO」と比較しながらアップグレードされた点を確認したいと思います。
■ 製品の概要について
「KZ」は低価格中華イヤホンのブランドとして一時代を築いたといっても過言ではないブランドですが、そのなかでも最も高いセールスを記録した製品のひとつが「ZS10 PRO」でしょう。製品ページにも「50万個の販売実績」という記載があります。同社の「KZ ZST」が低価格中華イヤホンにおけるハイブリッドによるアプローチ、つまりメインとなるダイナミックドライバーを低価格の中華BAで補完する手法を確立させたのに対し、その後の多ドラ化で音質面のアップデートと音作りの方向性を模索し続けます。
そして、4BA+1DD構成でやはり人気モデルとなった「KZ ZS10」「CCA C10」という2機種を経て、決定版とも言える製品として登場したのが「KZ ZS10 PRO」でした。この製品の人気は高く当時、私のブログでも低価格イヤホンのランキング1位に設定したこともありました。それは音質的な完成度というより、「メリハリのある寒色系ドンシャリ」という中華ハイブリッドのイメージをこの製品によって確立させた、というポイントが大きいと考えています。「ZS10 PRO」はロットごとにマイナーアップデートを繰り返し、現在も販売を続けていますが、そのリファインバージョンとして登場したのが今回の「KZ ZS10 PRO X」です。


従来の「ZS10 PRO」はステム部に「30095」、本体部に「30095」と「50060」×2基の組み合わせで4BA+1DD構成を作っていました。今回の「KZ ZS10 PRO X」では「KZ ZAS」などで採用されている「30019s」を2基、「50024s」(2BAユニット)を1基、本体に収納する構成になりました。なお、サイトによっては「50024s」を2基で4BAを構成する、という記述の画像を使っているセラーもありますが、後述の通り、実際に届いた製品を確認する限り、こちらのパターンが正解のようです。
KZ ZS10 PRO X: (ステム) なし (ハウジング) [30019s]×2 + [50024s(2BA)]×1 +10mmDD(新)
KZ ZS10 PRO : (ステム) [30095] (ハウジング) [30095]×1 + [50060]×2 + 10mmDD
「KZ ZS10 PRO X」のドライバー自体は新世代ハイブリッドの「KZ ZAS」(7BA+1DD)を踏襲し、さらに構成や配置などは「ZS10 PRO」以降の従来型の最終形態といえる「KZ ZAX」(7BA+1DD)のデザインをベースにしており(「ZAX」から高高域の「30095」と中音域の「50024」を1基減らしたイメージ)、同社の経験値の蓄積が伺えますね。


また、「KZ ZS10 PRO X」ではメインとなるダイナミックドライバー部分が進化し、より反応が強化されたバージョンが搭載されています。スペックとしてはインピーダンス29Ω、112±3dB/mWで、「ZS10 PRO」の30Ω、125±5dB/mWより若干反応が下がっています。むしろスマートフォン等で直挿しした場合のホワイトノイズが減少しより広範な環境で使いやすくなったと言えるかも知れません。


「KZ ZS10 PRO X」のカラーは現時点ではブラックのみ。購入はAliExpressまたはAmazonの主要セラーにて。価格はAliExpressが37ドル~程度、Amazonが6,500円~(値引き後)程度です。AliExpressでの購入はこちらを参照ください。
AliExpress(KZ Official Store): KZ ZS10 PRO X
Amazon.co.jp(KZ Flagship Store): KZ ZS10 PRO X
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
今回はAliExpressでプレセールス段階で購入しました。パッケージはいつもの白箱・製品グラフィックタイプですね。


パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/L)、説明書。イヤーピースはKZお馴染みのフジツボタイプですが白色バージョンになっています。おなじタイプでも白色のほうがちょっと感触が良い気がするのは気のせい?


本体形状は基本的には「KZ ZS10 PRO」を踏襲していますが、金属製フェイスプレートは若干厚みが増しています。また本体とフェイスプレートを固定するビスが黒色で、これが「ZS10 PRO」後期ロットのブラック仕様と「KZ ZS10 PRO X」を見分ける一番分かりやすいポイントになります。


「KZ ZS10 PRO X」と「ZS10 PRO」後期ロット(ブラック)、中期ロット(Glare blue)を比較すると「KZ ZS10 PRO X」はフェイスパネル、ステムノズルのメッシュパーツなどの相違点を見ることができますね。ただ形状自体は同じなので装着性も同じです。またイヤーピースは「ZS10 PRO」については中期~後期ロットでも黒色のフジツボタイプが付属するため、白色タイプが付属する「KZ ZS10 PRO X」とはわずかな相違点のひとつになっています。


ドライバー配置についてはプリセールス段階で2種類のグラフィックが出たことで多少の混乱がありましたが写真のようにダイナミックドライバーの周辺を2セットの「30019s」と、1セットの「50024s」(2BA)が配置されているのが確認出来ますね。「KZ ZS10 PRO X」の付属ケーブルは最近のKZの被膜の硬い銀メッキ線タイプ。なおこのケーブルについては「ZS10 PRO」についても中期ロットの後半くらいから同じタイプのケーブルに変わっていますので現時点では両者に相違点はありません。
■ サウンドインプレッション
「KZ ZS10 PRO X」の音質傾向は、「期待を裏切らない」寒色系ドンシャリ。「ZS10 PRO」の傾向を基本的には踏襲しつつ高域は従来のギラつきを抑えつつ伸びが良くなり、中高域~中音域の密度感、そして低域の質感が向上するなど、分かりやすく「音質面でのブラッシュアップ」が行われているのがわかります。実は「ZS10 PRO」自体も搭載されるドライバーが黒色タイプ(sつき)に後期ロットではこっそり変わっているなどマイナーチェンジを繰り返しており、以前レビューした初期ロットと比べるとかなり音質は向上しています。しかし「KZ ZS10 PRO X」ではドライバー構成を一新することでさらに1段階ステップアップした印象もありますね。
「KZ ZS10 PRO X」の高域は、明瞭でスッキリした音を鳴らします。以前のKZ製ハイブリッドの特徴であり大きなウィークポイントであった金属質のギラつきは無く、より直線的で伸びのある音を鳴らします。刺さり等はある程度抑制されるようになりましたが強めの主張は健在で、同社らしい硬質で鋭い音は鋭くドライながら煌めきを感じる印象はしっかり踏襲されています。
ちなみに、以前のKZはそれまで使用していたダイナミックドライバーの高域が弱く曇りがちであることを非常に気にしており、最初のハイブリッドモデルだった「KZ ZST」で「KZ 30095」というツイーターユニットを最も鼓膜に近いステムノズルに搭載してきました。このデザインは後継の「KZ ZSTX」を含めKZ製ハイブリッドの標準的なデザインとなります(ちなみに「ZST」最初期ロットでは別の中華BA、その後「Bellsing 30095」となり、同様のユニットをKZがOEMで「KZ 30095」として受け現在に至ります。ただし現在のKZブランドのBAもBellsing製OEMかは不明)。
しかし、新製品の主流がシングルダイナミック構成になっている現在のKZにとってはこの問題はすでに過去のものなのかもしれません。「KZ ZS10 PRO X」はハウジング部分に配置された「30019s」がダイナミックドライバーと並列で高域を補完し、硬質な印象とともに解像感を高めています。
中音域は曲によって僅かに凹みます。この分かりやすいV字のサウンドバランスも「KZ ZS10 PRO X」の特徴のひとつと言えるでしょう。最近の中華イヤホンではボーカル帯域をやや持ち上げる、いわゆる「W字」の傾向も増えていますが、以前の「ZS10 PRO」同様のバランスを踏襲しているのは朗報と言えます。全体として臨場感とともに自然で聴き応えのあるバランスと言えるでしょう。ボーカル曲は自然な距離で定位しますが高域同様ドライで解像感と分離感があるため、演奏に埋もれることは無く明瞭に描写されます。中高域の抜けは良く女性ボーカルやピアノの高音はより鮮明に描写されます。ボーカル曲だけで無くインストルメンタルも楽しめ、切れの良いスピード感も健在です。ただメリハリの強い寒色系の音ですので適度な温かさや滑らかさ、ボーカル帯域の存在感の強さなどを好む方にはあまり合わないかもしれない、という点では「KZ ZS10 PRO X」も「ZS10 PRO」と変わらない、という解釈もできます。良し悪しというより「そういうサウンドのイヤホン」だということですね。
低域は基本は従来モデルを踏襲した二重磁気回路ダイナミックドライバーですが、磁気回路などの改良により反応が向上し、全体域での質感の向上が行われています。端的に言えば「ZS10 PRO」のドライバーは「KZ EDX」のドライバーと同じで、「KZ ZS10 PRO X」のドライバーは「KZ EDX Pro」と多分同じ、という感じでしょう。重低音は最近の「CCA CRA」あたりを彷彿とさせる重く深い音を鳴らし解像感も高い印象。ミッドベースも非常にパワフルでインパクトも強めに感じます。全体的に切れが良くアタックも早いためEDMなどの音数の多い曲との相性が良いのも特徴ですね。質感についてはアンダー50ドルクラスとしては結構満足できるレベルでしょう。
■ まとめ
というわけで、「KZ ZS10 PRO X」は最近では逆に減ってきている「分かりやすいドンシャリ系イヤホン」をしっかり踏襲した製品として交換を持ちました。数年前のレビューで初期ロットの「ZS10 PRO」について「質感などで評価するサウンドではないが、分かりやすく楽しいメリハリの効いた音」というイメージで「最も楽しい『下品な音』のイヤホン」として評価しました。その「ZS10 PRO」が各音域のメリハリを「間」を埋めるようにロットごとにブラッシュアップを続け、そして今回の「KZ ZS10 PRO X」で改めてサウンドを再構築することでより自然なバランスと質感についても手に入れることに成功したように感じます。円安傾向の昨今ですがそれでも6千円台、50ドル以下で購入できるサウンドとしては十分な品質をクリアしていると感じます。バランスの良いニュートラルサウンドにちょっと飽きてきたら、改めて派手なドンシャリサウンドも楽しんでみませんか。そうお勧めしたくなるイヤホンだと思いますよ(^^)。
「KZ」は低価格中華イヤホンのブランドとして一時代を築いたといっても過言ではないブランドですが、そのなかでも最も高いセールスを記録した製品のひとつが「ZS10 PRO」でしょう。製品ページにも「50万個の販売実績」という記載があります。同社の「KZ ZST」が低価格中華イヤホンにおけるハイブリッドによるアプローチ、つまりメインとなるダイナミックドライバーを低価格の中華BAで補完する手法を確立させたのに対し、その後の多ドラ化で音質面のアップデートと音作りの方向性を模索し続けます。
そして、4BA+1DD構成でやはり人気モデルとなった「KZ ZS10」「CCA C10」という2機種を経て、決定版とも言える製品として登場したのが「KZ ZS10 PRO」でした。この製品の人気は高く当時、私のブログでも低価格イヤホンのランキング1位に設定したこともありました。それは音質的な完成度というより、「メリハリのある寒色系ドンシャリ」という中華ハイブリッドのイメージをこの製品によって確立させた、というポイントが大きいと考えています。「ZS10 PRO」はロットごとにマイナーアップデートを繰り返し、現在も販売を続けていますが、そのリファインバージョンとして登場したのが今回の「KZ ZS10 PRO X」です。


従来の「ZS10 PRO」はステム部に「30095」、本体部に「30095」と「50060」×2基の組み合わせで4BA+1DD構成を作っていました。今回の「KZ ZS10 PRO X」では「KZ ZAS」などで採用されている「30019s」を2基、「50024s」(2BAユニット)を1基、本体に収納する構成になりました。なお、サイトによっては「50024s」を2基で4BAを構成する、という記述の画像を使っているセラーもありますが、後述の通り、実際に届いた製品を確認する限り、こちらのパターンが正解のようです。
KZ ZS10 PRO X: (ステム) なし (ハウジング) [30019s]×2 + [50024s(2BA)]×1 +10mmDD(新)
KZ ZS10 PRO : (ステム) [30095] (ハウジング) [30095]×1 + [50060]×2 + 10mmDD
KZ ZAS : (ステム) なし (ハウジング) [30019s]×1+[50024s(2BA)]×3+10mmDD(XUN)
KZ ZAX : (ステム) [30095] (ハウジング) [30019]×2+[50024(2BA)]×2+10mmDD
KZ ZAX : (ステム) [30095] (ハウジング) [30019]×2+[50024(2BA)]×2+10mmDD
「KZ ZS10 PRO X」のドライバー自体は新世代ハイブリッドの「KZ ZAS」(7BA+1DD)を踏襲し、さらに構成や配置などは「ZS10 PRO」以降の従来型の最終形態といえる「KZ ZAX」(7BA+1DD)のデザインをベースにしており(「ZAX」から高高域の「30095」と中音域の「50024」を1基減らしたイメージ)、同社の経験値の蓄積が伺えますね。


また、「KZ ZS10 PRO X」ではメインとなるダイナミックドライバー部分が進化し、より反応が強化されたバージョンが搭載されています。スペックとしてはインピーダンス29Ω、112±3dB/mWで、「ZS10 PRO」の30Ω、125±5dB/mWより若干反応が下がっています。むしろスマートフォン等で直挿しした場合のホワイトノイズが減少しより広範な環境で使いやすくなったと言えるかも知れません。


「KZ ZS10 PRO X」のカラーは現時点ではブラックのみ。購入はAliExpressまたはAmazonの主要セラーにて。価格はAliExpressが37ドル~程度、Amazonが6,500円~(値引き後)程度です。AliExpressでの購入はこちらを参照ください。
AliExpress(KZ Official Store): KZ ZS10 PRO X
Amazon.co.jp(KZ Flagship Store): KZ ZS10 PRO X
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
今回はAliExpressでプレセールス段階で購入しました。パッケージはいつもの白箱・製品グラフィックタイプですね。


パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/L)、説明書。イヤーピースはKZお馴染みのフジツボタイプですが白色バージョンになっています。おなじタイプでも白色のほうがちょっと感触が良い気がするのは気のせい?


本体形状は基本的には「KZ ZS10 PRO」を踏襲していますが、金属製フェイスプレートは若干厚みが増しています。また本体とフェイスプレートを固定するビスが黒色で、これが「ZS10 PRO」後期ロットのブラック仕様と「KZ ZS10 PRO X」を見分ける一番分かりやすいポイントになります。


「KZ ZS10 PRO X」と「ZS10 PRO」後期ロット(ブラック)、中期ロット(Glare blue)を比較すると「KZ ZS10 PRO X」はフェイスパネル、ステムノズルのメッシュパーツなどの相違点を見ることができますね。ただ形状自体は同じなので装着性も同じです。またイヤーピースは「ZS10 PRO」については中期~後期ロットでも黒色のフジツボタイプが付属するため、白色タイプが付属する「KZ ZS10 PRO X」とはわずかな相違点のひとつになっています。


ドライバー配置についてはプリセールス段階で2種類のグラフィックが出たことで多少の混乱がありましたが写真のようにダイナミックドライバーの周辺を2セットの「30019s」と、1セットの「50024s」(2BA)が配置されているのが確認出来ますね。「KZ ZS10 PRO X」の付属ケーブルは最近のKZの被膜の硬い銀メッキ線タイプ。なおこのケーブルについては「ZS10 PRO」についても中期ロットの後半くらいから同じタイプのケーブルに変わっていますので現時点では両者に相違点はありません。
■ サウンドインプレッション

「KZ ZS10 PRO X」の高域は、明瞭でスッキリした音を鳴らします。以前のKZ製ハイブリッドの特徴であり大きなウィークポイントであった金属質のギラつきは無く、より直線的で伸びのある音を鳴らします。刺さり等はある程度抑制されるようになりましたが強めの主張は健在で、同社らしい硬質で鋭い音は鋭くドライながら煌めきを感じる印象はしっかり踏襲されています。
ちなみに、以前のKZはそれまで使用していたダイナミックドライバーの高域が弱く曇りがちであることを非常に気にしており、最初のハイブリッドモデルだった「KZ ZST」で「KZ 30095」というツイーターユニットを最も鼓膜に近いステムノズルに搭載してきました。このデザインは後継の「KZ ZSTX」を含めKZ製ハイブリッドの標準的なデザインとなります(ちなみに「ZST」最初期ロットでは別の中華BA、その後「Bellsing 30095」となり、同様のユニットをKZがOEMで「KZ 30095」として受け現在に至ります。ただし現在のKZブランドのBAもBellsing製OEMかは不明)。
しかし、新製品の主流がシングルダイナミック構成になっている現在のKZにとってはこの問題はすでに過去のものなのかもしれません。「KZ ZS10 PRO X」はハウジング部分に配置された「30019s」がダイナミックドライバーと並列で高域を補完し、硬質な印象とともに解像感を高めています。

低域は基本は従来モデルを踏襲した二重磁気回路ダイナミックドライバーですが、磁気回路などの改良により反応が向上し、全体域での質感の向上が行われています。端的に言えば「ZS10 PRO」のドライバーは「KZ EDX」のドライバーと同じで、「KZ ZS10 PRO X」のドライバーは「KZ EDX Pro」と多分同じ、という感じでしょう。重低音は最近の「CCA CRA」あたりを彷彿とさせる重く深い音を鳴らし解像感も高い印象。ミッドベースも非常にパワフルでインパクトも強めに感じます。全体的に切れが良くアタックも早いためEDMなどの音数の多い曲との相性が良いのも特徴ですね。質感についてはアンダー50ドルクラスとしては結構満足できるレベルでしょう。
■ まとめ
