HZSOUND Heart Mirror Pro

こんにちは。今回は「HZSOUND Heart Mirror Pro」です。中華イヤホンの世界でも時々大きなトレンドになる大ヒットモデルが出現しますが、2020年に登場した「HZSOUND HeartMirror」はそのなかでも最も注目された製品のひとつといえるでしょう。この大ヒット製品のアップグレードモデルがついに登場しました。音質面、付属品などがさらに充実し、既に2022年いちばんの当たりイヤホンとの呼び声も聞こえる、全方位で完成度の高いイヤホンに仕上がりました。

■ 製品の概要について

「HZSOUND」は中華イヤホン界隈でも結構老舗に入るブランドですが、「Heart Mirror」の登場までは約3年間ほどイヤホンの新製品は無く、ケースなどのアクセサリーを中心に販売していました。そのため2020年8月頃の「Heart Mirror」発売時には積極的なマーケティングが行われたもののすぐには話題にはならず、数ヶ月かけてその音質面の完成度の高さがマニアの間で広がるにつれ加速度的に人気が高まっていきました。
→過去記事: 「HZSOUND Heart Mirror」(心鏡) コンパクトなメタルシェルと明るくクリアなサウンド。完成度の高いCNTドライバー搭載低価格中華イヤホン【レビュー】

個人的にも「Heart Mirror」の登場は相当に衝撃的で、ちょうどその頃はネットなどでの話題の中心は「KZ ZAX」でしたが、当時掲載したランキング(2020年11月版)では「ZAX」をあえて厳しめにして「Heart Mirror」を1位にするなど、低価格中華イヤホンのなかでもっとも気に入ってる製品として捉えていました。その後、「Heart Mirror」はお手頃価格の高音質中華イヤホンとして定番アイテムとなり現在も安定した人気を継続しています。

そして、今回満を持して登場したのがアップグレードバージョンの「HZSOUND Heart Mirror Pro」となります。「Heart Mirror」の基本性能の高さを踏襲し、さらに音質面をグレードアップ。付属品やカラーバリエーションなども充実させています。
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HZSOUND Heart Mirror Pro」では「Heart Mirror」でも搭載された10mm CNT(カーボンナノチューブ)振動板ダイナミックドライバーをさらにブラッシュアップし、デュアルキャビティ構造、強力なN52磁石、DAIKOKU(大黒電線)の高テンションCCAWボイスコイルの採用などのアップグレードが行われています。
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またケーブルについては、マイクリモコン付きケーブルと、プラグ交換可能な高品質ケーブルの2本を同梱。0.78mm 2pinコネクタ仕様の高純度OFC(無酸素銅)銀メッキ線を採用し、高品質ケーブルでは3.5mmアンバランスおよび2.5mm、4.4mmのバランス接続プラグへの交換が可能です。
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本体は亜鉛合金製のダイキャストでCNC高精度切削加工による表面加工とメッキ処理または金属塗装を施しています。カラーバリエーションは「ガンメタリック(鏡面処理)」と「ブラック(メタリック塗装)」の2色が選択可能です。
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HZSOUND Heart Mirror Pro」の購入はAliExpressの「Easy Earphones」またはアマゾンの「WTSUN Audio」にて。価格はAliExpressが79.99ドル、アマゾンが10,999円です。現在は円安の影響で実質的にはアマゾンの価格が逆転していますね。WTSUN Audioでは継続してプライム在庫を補充しているようですので、サポート面も考慮しても通常はアマゾンでの購入がよいでしょう。Amazon.co.jp(WTSUN Audio): HZSOUND Heart Mirror Pro


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

HZSOUND Heart Mirror Pro」のパッケージは「Heart Mirror」のときよりシンプルな印象になりました。既に実績のある人気商品ですのでパッケージに過度な装飾は不要と言うことでしょう。今回は「ブラック」カラーをオーダーしました。
HZSOUND Heart Mirror ProHZSOUND Heart Mirror Pro

「HZSOUND」は「Heart Mirror」以前は低価格のアクセサリ製品を多く手がけていただけに、今回の「HZSOUND Heart Mirror Pro」でもパッケージ内容は充実しています。同梱されているのはイヤホン本体、プラグ交換可能タイプのケーブル、マイク付きケーブル、交換用プラグ、イヤーピースはシリコンタイプが3種類(それぞれS/M/Lサイズ)、ウレタンタイプ1ペア、交換用ノズルメッシュパーツ、ハードケース、カラビナフック、説明書。70ドル台のイヤホンとしては破格の充実ぶりです。
HZSOUND Heart Mirror ProHZSOUND Heart Mirror Pro

HZSOUND Heart Mirror Pro」の本体形状は従来の「Heart Mirror」を継承し、表面のカラーリングを変えています。ガンメタは鏡面仕上げロゴ無しで、ブラックの方はメタリック塗装でゴールドのロゴがプリントされています。塗装仕上げのブラックもメッキ仕上げのガンメタや既存のシルバーの「Heart Mirror」とはまた異なる質感で綺麗な仕上がりです。
HZSOUND Heart Mirror ProHZSOUND Heart Mirror Pro
10mmサイズのドライバーが結構ギリギリで収容されているらしく、非常にコンパクトなシェルサイズなのも同様ですね。そのため装着感も良好で、耳にすっぽりと収まるサイズ感です。亜鉛合金のダイキャスト製のためアルミほど軽量ではありませんがシェル自体がコンパクトなため重さで外れるようなこともほぼないでしょう。
ZSOUND Heart Mirror ProHZSOUND Heart Mirror Pro-2
ケーブルはマイク有り/無しの両方が同梱されます。通常のマイクなしのケーブルは左右の線を撚り線にした2芯タイプでやや硬めで弾力のある被膜で覆われた銀メッキ線タイプです。今回からプラググ分が交換式となり、最初からシングルエンドおよびバランス接続の3タイプが付属します。取り回しも比較的良く、リケーブルなしでバランス接続できるのは有り難いですね。マイク付きは樹脂被膜で覆われたシンプルな銀メッキ線タイプが付属します。またこちらはL型プラグを採用しています。
HZSOUND Heart Mirror ProHZSOUND Heart Mirror Pro
イヤーピースは3種類のシリコンタイプと1ペアのウレタン仕様の4タイプ。シリコン仕様は一般的な形状の白色タイプと創薬部分が柔らかくやや広い形状のブラック、そして以前のソニーのイヤーピース風のタイプが同梱されます。イヤーピースは付属品のほかWTSUN Audio取扱いでは「AET07」互換の「KBEAR 07」や新しくリリースされた「TRI Clarion」への交換もお勧めです。他には定番のJVC「スパイラルドット」、acoustuneの新タイプの「AEX07」、粘着度のあるタイプでは「SpinFit CP100+」、「AZLA SednaEarfit XELASTEC」などもありますね。


■ サウンドインプレッション

HZSOUND Heart Mirror Pro」の音質傾向はニュートラルでフラット方向にバランスの取れたサウンド。「Heart Mirror」より中低域に厚みが加わり、完成された絶妙なサウンドバランスとともに、全ての音域で非常に聴き応えのある音を鳴らしてくれる印象となりました。
HZSOUND Heart Mirror Proちなみにベースとなった「Heart Mirror」はやや中高域寄りな印象を受けましたが、実際はよりフラットで、ハーマンターゲットにも結構近いバランスだったようです(正確には「Moondrop KXXS」あたりに寄せたという説も)。これに対し「HZSOUND Heart Mirror Pro」は実際はU字または緩やかなV字のカーブを描くのではと考えられます。それでもドンシャリな印象はほぼ感じられず、よりハイグレードな製品と遜色ない質の高いニュートラルサウンドを非常に明瞭かつ伸びやかに表現してくれます。この各音域における表現力の高さこそがこの製品の特筆すべきポイントだろうと思います。
もともとの「Heart Mirror」の完成度が高く、また同社の以降の製品も比較的手堅い印象だったため、「HZSOUND Heart Mirror Pro」に対する期待値はかなり高めだったのですが、その水準を超える勢いでブラッシュアップされており、個人的には「アンダー100ドルクラス最強イヤホン」という感想を持ちました。

なお、開封直後は多少ドンシャリ感が有る場合もありますが一定のエージングにより本来のサウンドバランスを楽しめると思います。またインピーダンス32Ω(±15%)、感度110dB/mW(±3dB)と、再生環境についてはそれほど大きくは影響しない仕様ですが、それなりの環境で鳴らせばより高いポテンシャルを実感出来ます。プラグ交換ができるのでバランス接続を積極的に試してみるのも良いでしょう。

ZSOUND Heart Mirror ProHZSOUND Heart Mirror Pro」の高域は、この価格帯のシングルダイナミックとしては驚くほど「洗練」された綺麗な音を鳴らします。癖の無い直線的な音で、見通しの良い伸びやかさを持ち、また「Heart Mirror」でも感じたCNT(カーボンナノチューブ)らしいシャープな印象があります。さらに「HZSOUND Heart Mirror Pro」では「Heart Mirror」より粗さが解消され質感と情報量が向上しているのを感じます。かつての「Heart Mirror」はよく「Moondrop KXXS」の廉価版みたいな取り上げられ方をされましたが、「KXXS」の高域は透明感とともに柔らかさのある音でそれがMoondropの特徴ともいえる部分だと思っています。これに対し「Heart Mirror」や今回の「HZSOUND Heart Mirror Pro」はより明瞭感が強く、鋭い音は適度に鋭く、煌めきのある音はしっかりキラキラさせてくれます。全体のバランスとしては中低域の増加に伴い相対的に「Heart Mirror」より僅かに主張が抑えられたように感じる場合もありますが、しっかり駆動力をかけたりバランス接続によりしっかりと覚醒します。

中音域はニュートラルなバランスを維持しつつ、非常に緻密で輪郭も明瞭に捉えられますが、過度に人工的な音色にならず、「Heart Mirror」同様にボーカル帯域は適度な温かさがあり自然な印象です。女性ボーカルやピアノの高音など中高域には伸びの良さよエネルギーと光沢があります。また男性ボーカルも余韻と厚みがあり心地よく感じます。
ZSOUND Heart Mirror Proいっぽうで、音の厚みが増したことでスマートフォン直挿しなど再生環境によっては多少カマボコに感じられボーカル偏重で解像感が下がったように感じる場合もありますが、再生環境の変更、リケーブル、イヤーピースの交換、そしてある程度のエージングにより本来の分離の良いスッキリした定位感を感じられると思います。また「Heart Mirror」でも言えたことですが、演奏については多少ドライな印象もあるためキレの良さやスピード感に対して、ウェットなサウンドを好まれる方には合わない場合もあるかもしれません。とはいえ基本的に非常に質の高い音色ですので様々なジャンルの曲について満足度の高いサウンドを楽しませてくれると思います。

低域は「HZSOUND Heart Mirror Pro」でかなり量感がアップし、同時に質感についても損なうこと無く再現性の高い音を鳴らしてくれます。アタックは早くミッドベースには適切な主張がありますが、ブーミーになることなくタイトに締まる質感を維持します。重低音は深さがあり底までしっかり捉えられる解像感があります。全体的にはフラット方向、ニュートラル傾向のサウンドですので、重くパワフルな低音とは当然異なるものですが、どのようなジャンルの曲でも過不足無い量感と、人工的な誇張や響きではない自然な質感があります。


■ まとめ

というわけで、30ドルほど価格もアップし、内容もグレードアップした「HZSOUND Heart Mirror Pro」ですが、印象としては「相変わらず良くできたイヤホンだなぁ」と思いました。とはいえ、非常にニュートラルで、マニアが喜びそうな音です。つまり「より上のクラスのイヤホンでやるようなサウンドチューニングを本気でやってみて、いろいろ工夫してるぽいけどとりあえず全く破綻せずちゃんとまとまってる印象」のイヤホンだと思います。
ZSOUND Heart Mirror Pro最近のハーマンターゲット流行りでちょっと残念な粗さが出る低価格イヤホンが増えており、その多くは「表現力に限界のある低コストのドライバーや各種設計で無理して高性能ドライバーみたいなチューニングをやって失敗する」パターンだったりします。しかし「HZSOUND Heart Mirror Pro」でも同様にコスト制限があるはずなのに音質面で破綻が無いことが驚異的なわけです。もちろん潤沢なコストをかけじっくり調整されたハイエンド製品には及ばない点も相応にありますが、70ドル台、円安の日本でも約1万円という価格設定を考慮すると、とんでもなく完成度の高いイヤホンだと感じます。
それでも、ニュートラルサウンドのイヤホンですので、「とにかくパワフルなのがいい」とか、逆に「もっとボーカルをしっとりと聴きたい」とか、「高域はできるだけまろやかなのがいい」とかのニーズには合いません。しかし、ちょっとクラスアップ感のある上質なサウンドをお手頃価格で楽しみたい方には「とりあえず今すぐ買っときましょう」とお勧めしたい製品だと思います(^^)。