TRIPOWIN Rhombus

 こんにちは。今回は「TRIPOWIN Rhombus」です。「10mm LCP/PU複合振動板」ダイナミックドライバーと「Knowles 33518」BAを搭載した1BA+1DD構成のハイブリッドモデルです。クールな多面的デザインの金属シェルに分かりやすいドンシャリ傾向のハイブリッドサウンドと、最近ではありそうで無かった音作りが魅力的なモデルです。

■ 製品の概要について

「TRIPOWIN」は数々のコストパフォーマンスに優れたイヤホンやケーブル製品をリリースしている、中国のオーディオメーカー&セラー「Linsoul」系のブランドです。同じく「Linsoul」系の「THIE AUDIO」が比較的ハイグレードな製品も多いのに対し、「TRIPOWIN」ではより個性的なモデルが数多くリリースされている印象がありますね。最近では一部製品を国内代理店での取扱いを開始したり、HBB氏とのコラボシリーズの人気が高かったりと注目度もより向上しています。

今回の「TRIPOWIN Rhombus」は、「10mm LCP/PU複合振動板」ダイナミックドライバーと「Knowles 33518」バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを搭載した1BA+1DD構成のハイブリッドモデルです。シェルは5軸CNC加工による航空グレードのアルミニウム製。名称の由来となった多面体デザインが特徴的です。各ドライバー用に別々の音響チャンバーが設計されており、それぞれのチャンバーはステムノズル部で結合され不要な共鳴を抑え調和されたサウンドを出力します。
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TRIPOWIN Rhombus」が搭載する「10mm LCP/PU複合振動板ダイナミックドライバー」は、LCP(液晶ポリマー)をドームに、サスペンションエッジにPU(ポリウレタン)を採用した複合設計を振動板を使用しています。このドライバーとKnowles製BAの組み合わせによりハイブリッド構成の音色分布と特性を活かしつつシングルダイナミック構成のような均一性を実現。高速な高域および中高域を実現するLCP層と豊かな低域および中低域を実現するPU層のレスポンスを向上させるため二重ボイスコイルとN52マグネットを組み合わせスピーカーのようなダイナミクスと質感を実現しているとのことです。
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また、併せて搭載されるKnowlesの「RAD-33518」は私のブログでもこれまでに数多く登場しているBAユニットで内部的には「WBFK-30095」とほぼ同等と考えられています。FiiO製ハイブリッドモデルを起点に主に中華系メーカーで多く採用されていることからKnowlesからのライセンス生産で中華メーカーに供給されるユニットという説もありますね。ただし、「RAD-33518」の場合、用途としては「WBFK-30095」のようなツイーターとしてだけでなく、ダイナミックドライバーを補完するかたちで中高域以上の比較的幅広いレンジをカバーさせるケースも多いようです。しかし今回の「TRIPOWIN Rhombus」ではほぼフルレンジで稼働する「10mm LCP/PU複合振動板ダイナミックドライバー」に対し、本来のツイーターとして高域の拡張に利用されているようです。
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TRIPOWIN Rhombus」の購入はアマゾンのLINSOUL-JP(L.S オーディオ)にて。
価格は海外(Linsoul)が79ドルでアマゾンでは11,180円で購入可能です。
LINSOUL-JPではプライム扱いで国内在庫を用意しているようです。
Linsoul(linsoul.com):  TRIPOWIN Rhombus
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): TRIPOWIN Rhombus


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

TRIPOWIN Rhombus」のパッケージは今回もシンプルなロゴ入りの黒箱。パッケージ内容もイヤホン本体、ケーブル、イヤーピースは白(通常タイプ)、黒(少し柔らかいタイプ)の2種類でそれぞれS/M/Lの3サイズ、布製ポーチ、説明書。
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アルミ製のシェルは幾何学的て多面体フェイスデザインが印象的です。シェルサイズは一般的ですが厚さはかなり抑えられており、装着すると耳にぴったり収まる感じです。
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形状的にはIKKO OH10あたりと似たサイズ感及びシルエットですが、亜鉛合金製のOH10と比べるとアルミ製の「TRIPOWIN Rhombus」はかなり軽量で装着して耳から落ちる心配は無さそうです。
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ケーブルは0.78mm 2pin仕様。銀メッキOCCリッツ線ケーブルが付属します。適度に細く滑らかな手触りで取り回しも良好です。情報量は一般的なイメージですので、必要に応じてリケーブルを検討するのも良いでしょう。
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イヤーピースについても付属品のほか、定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、またよりフィット感の強いタイプでは「SpinFit CP100+」などへの交換も良いと思います。


■ サウンドインプレッション

TRIPOWIN RhombusTRIPOWIN Rhombus」の音質傾向はハイブリッドらしいメリハリの効いたドンシャリ。パワフルで重量感のある低域と、明瞭で煌めきのある高域が非常に楽しく感じられる寒色系のサウンドです。非常にハッキリしたV字カーブを描く印象で、高域と低域の主張が強く、中音域は凹みます。いっぽうでボーカルは近くエネルギーがあります。音場は広くはありませんが適切な分離感と解像感があり、ドンシャリ傾向特有の前後のレイヤーを構築するためそれほど窮屈な印象は持たないでしょう。最近ではここまで分かりやすい傾向は久々という感じもありますが、バランスとしては非常にまとまっており、お手頃価格で質の良いハイブリッドイヤホンを購入したい方には最適な選択となるかもしれませんね。

TRIPOWIN Rhombus」の高域は明るくやや硬質な音を鳴らします。適度な主張がありシンバルなどは適度な煌めきと余韻があるものの刺激はコントロールされており聴きやすい印象。LCP(液晶ポリマー)の過度にドライにならず鮮やかさのある印象も感じさせつつ、Knowles製BAによる解像感や明瞭感も感じさせます。同時にKnowles「RAD-33518」を搭載した他のイヤホンでも感じられる傾向ですが、中高域からの直線的な伸びに対して高高域はやや抑えられた印象で透明感や見通しの良さという点では最近のシングルダイナミック機のほうが有利かもしれません。「TRIPOWIN Rhombus」の高域はどちらかというとメリハリの強さやエネルギーを感じさせる音です。

TRIPOWIN Rhombus中音域は曲によってある程度凹みます。そのため一部のインストルメンタル曲などでは演奏の抜け感や不足したり、もう少し明瞭さが欲しいと感じる場合があります。いっぽうでボーカルは近く元気な印象で再生されます。癖の無い音で鳴り、女性ボーカルの抜けの良さや男性ボーカルの厚みなどは良好で余韻なども十分に表現できていると思います。ボーカルが寄っている関係で音場は広くありませんが、ドンシャリ傾向特有の前後のレイヤーがありそれほど狭く窮屈に感じることはないでしょう。ロック、ポップス、アニソンなどとの相性は良く、エネルギッシュなサウンドをより引き立たせてくれるでしょう。また中音域の明瞭感や音場感についてはリケーブルにより変化させることもできます。

低域は非常にパワフルで強い主張があります。ミッドベースは直線的なややソリッドな印象ですがいっぽうで適度な滑らかさがあり、中華ハイブリッドに多い重量感とインパクト重視な音とは異なる印象です。キックは軽快さも感じる印象で元気で生き生きとした音色です。重低音は深く量感があり、適度な響きがあります。解像感はアンダー100ドルクラスとして一般的ですが表現力はまずまず高い印象を持ちました。


■ まとめ

TRIPOWIN Rhombusというわけで、「TRIPOWIN Rhombus」はいかにもハイブリッド感のあるドンシャリ傾向のイヤホンで。アンダー100ドルクラスながら最新のドライバー技術を反映して、とくにボーカル帯域の表現力を向上させ、極端に派手に鳴らない滑らかさを全体に与えるなどチューニングの上手さも感じられる製品でした。高域の伸び感や、中音域の一部の音域の解像感や輪郭などについては、より情報量が多くニュートラルな印象の銅線ケーブルや銀メッキ線ケーブルを組み合わせることで結構変化を与えることもできるようです。色々な組み合わせを試して見るのも楽しいですね。やたらハーマンターゲット偏重だったりW字やU字のバランスが増えたりと、ちょっと方向性がパターン化しつつある最近の中華イヤホンですが、このような従来型のサウンドバランスで質の高い製品もコンスタントに登場すると、楽しみも増えて良いと思います。興味のある方はぜひとも挑戦してみてくださいね(^^)。