TINHIFI T2 DLC

こんにちは。今回は 「TINHIFI T2 DLC (2022)」です。TINHIFIの定番モデル「T2」はどうもバリエーションでシリーズ化するみたいですね。今回の2022年モデルはモデル名通りドライバーにDLC振動板を採用。これまでより質感が向上し、より成熟度を増したリスニングサウンドを楽しめます。

■ 製品の概要について

手堅い音作りながら気がつけば結構豊富なラインナップでマニアの間ではすっかりお馴染みとなった中華イヤホンブランドの「TINHIFI」ですが、元々のOEM/ODMメーカーから自社ブランドとしてスタートした最初のモデルが2017年の「T2」でした。その後2018年に高域強化タイプの「T2 PRO」を、以降2019年以降は「T3」「T4」「T5」と上位モデルのリリースを続け、「T2」はデザインとサウンドを一新した「T2 PLUS」の登場でいったんは置き換わるものと思われました。しかし2020年以降になってもオリジナルの「T2」の人気は根強く、2021年の「T2 EVO」、そして今回の「TINHIFI T2 DLC」と「T2」自体がシリーズ化していく流れにつながったのでは、と想像します。
過去記事(一覧): TINHIFI製イヤホンのレビュー

TINHIFI T2 DLCTINHIFI T2 DLC

今回の「TINHIFI T2 DLC」では「T2」シリーズの円筒形のタンクスタイルを踏襲し、本体内部では高密度アルミ製による独自のアウトサイドキャビティ構造を採用。音波の反射による共鳴を抑制し、サウンドをより自然に、原音に忠実なピュアサウンドを表現します。
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そしてドライバーには新たに「DLC(Diamond-Like Carbon)振動板」を採用した10mmダイナミックドライバーをシングルで搭載。従来機種と比べより高い解像度と明瞭さを備え、迫力のあるサウンドを実現します。また日本から輸入した高品質のCCAW軽量コイルを使用、ハイパワーのN54マグネットによる強力な磁気回路を実現。豊かなディテールと透明度の高い印象的なサウンドを提供します。

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TINHIFI T2 DLC」の本体は航空グレードの高品質アルミニウム合金を採用することで頑丈ながら非常に軽量なシェルに仕上げられています。また本体コネクタは0.78mm 2pin仕様を採用し、ケーブルは高品質の 5N 銀メッキ OFC(無酸素銅)ケーブルが付属しています。
TINHIFI T2 DLC」の購入はHiFiGo等の主要セラーまたはアマゾンにて。
価格は59ドル(HiFiGo)、アマゾンが8,474円です。
HiFiGo: TINHIFI T2 DLC
Amazon.co.jp(HiFiGo): TINHIFI T2 DLC ※プライム扱い


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

TINHIFI T2 DLC」のパッケージはいつもの「T2」のサイズの箱ですが、今回は黒地に白。いつもの白箱とは違うぞ、感があります(^^)。箱の中にはかつての「T2」「T2 PRO」同様にブック状に開く内箱が入っています。こちらも表面はブラックです。前回の「T2 EVO」では内箱は簡易パッケージになっていたので、ちょっと原点回帰感があります。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、シリコンイヤーピース(S/M/L各2ペア)、ウレタンイヤーピース(1ペア)、説明書、保証書。
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TINHIFI T2 DLC」の本体はアルミニウム合金製で非常に軽量です。本体サイズおよび形状は「T2」シリーズを継承しており、フェイス部分はロゴのプリントのみとよりシンプルな外観になりましたね。
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初代の「T2」以降、「T2」シリーズでは「亜種」の「T2 PLUS」も含めMMCXコネクタを採用していましたが、今回は0.78mm 2pin仕様になりました。MMCXのコネクタ接触不良を敬遠されている方には朗報ですね。
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付属ケーブルは従来のT2シリーズ同様な細い撚り線タイプで耳掛け加工は行われています。コネクタは本体に合わせたフラットな2pin仕様を採用しています。
「T2」シリーズは初期の「T2」に合わせてほぼ同じサイズ感で作られています。ちなみにケーブルの接続部分はかつての「T2」「T2 PRO」のみ現在の逆でそのまだとかなり装着性に問題がありましたが、「T3」以降では現在の向きとなっており、もちろん「TINHIFI T2 DLC」でも同様の仕様となっています。なお、付属ケーブルは耳掛け加工がされていますが、加工のないケーブルにリケーブルすればストレートタイプのイヤホンとしても使えるデザインでもありますね。
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初期の「T2」「T2 PRO」がコネクタ接続部分の向きが逆で装着性が良くなかったためとこれらのモデルは低域を抑えたチューニングだっため標準のイヤーピースがブルーのウレタンタイプでした。その名残で「T2」シリーズではブルーのウレタンタイプが付属するのが通例になっており、やはり中高域寄りのバランスの「TINHIFI T2 DLC」でも低域を厚くしたい用に付属しているようです。しかし解像感などいろいろ犠牲になる側面もあるため、やはイヤーピースは付属品ならシリコンタイプを使用した方がよいでしょう。また他にも定番の定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、あるいは「SpinFit CP100+」などの密着感のあるタイプなどのイヤーピースに交換するのも良いと思います。今回私は「SpinFit CP100+」を使用しています。


■ サウンドインプレッション

TINHIFI T2 DLCTINHIFI T2 DLC」の傾向はニュートラルな印象の弱ドンシャリ。オリジナルの「T2」をイメージさせるボーカル域の存在感などは踏襲しつつ、より癖の無い自然なバランスで、上品さをもった質感と滑らかさが加わったサウンドを感じます。前回の「T2 EVO」では意図的に「T2」に寄せるようなチューニングによりボーカル寄りのバランスとしては成功していたものの低域の質感が生かし切れない印象もありました。それに対し今回の「TINHIFI T2 DLC」は「T2」シリーズのなかではニュートラルな方向で最も自然なサウンドバランスを実現しており、中高域はもちろん、低域も適度な量感と質の高い音を鳴らします。

ただ、注意すべき点は、これまでの「T2」シリーズと比べて長時間のエージングが必要なところ。DLC振動板ドライバー搭載イヤホンで最初に話題になった「Moondrop KXXS」も「とりあえず100時間エージングしてから」とメーカーからも言われていた製品でしたが、やはりDLCはある程度の長時間エージングが必要というイメージがあります。今回の「TINHIFI T2 DLC」もやや粗さがあり中低域も本気を出していない印象がありました。エージングはだいたい50時間~100時間程度で安定するものと思われます。私はエージングマシンに数日かけておくことで100時間オーバーのエージングを実施した状態にしています(私の試聴環境およびエージング環境についてはこちらを参照)。

TINHIFI T2 DLC」の高域は伸びのある自然な高音を鳴らします。バランスとしては最初の「T2」をイメージさせる明るさと主張がありますが、質感は格段に向上しており、明瞭な音像とやや強調されたアタックを感じさせつつ、過度に人工的にならず、自然な音色を維持しています。また歯擦音は抑制されており、刺さりやすい帯域は僅かにマイルドに感じます。適度に鋭さや煌めきも感じさせつつ聴きやすくまとめられていると思います。

TINHIFI T2 DLC中音域は味付けのないニュートラルな音で、初期の「T2」に感じられた中高域にやや強調のあるちょっと癖強めの印象と比べると、より多くの方に勧められるクオリティに近づいたと思います。やはり「T2 EVO」より格段に質感が向上しています。いっぽうでCNT振動板の「T4」あたりと比較すると寒色系ながら「TINHIFI T2 DLC」はDLC振動板らしい自然な柔らかさと温かみがあり、逆にキレやスピード感は「T4」のほうが優れていそうです。この辺が両者を使い分ける、あるいは選択するポイントになるかも知れませんね。女性ボーカルは自然に伸び透明感があり、男性ボーカルは豊かさと厚みがあります。音場は自然な広さで演奏との定位も50ドル前後のイヤホンとしては適切でしょう。ただし、非常に細かい音を追うような神経質な方向性では無く、基本的には心地よいリスニングを楽しむイヤホンとしての印象で、解像感や分離などは上位モデルの「T4」や「T5」には及びません。

低域は100時間オーバーのエージング後の印象ではあるものの、ニュートラルなイヤホンとしてのバランスとしては十分な量感があり、重低音も比較的深く存在感があります。ミッドベースは直線的で締まりがあり、自然な輪郭ながら明瞭で正確な音を鳴らしてくれる印象です。過度や膨らみやマスクするような響きは皆無で透明感のある、非常にクリーンで見通しの良い低音です。
TINHIFI T2 DLC間違いなくこれまでの「T2」シリーズの中では最も優れた低域の質感だと思います。とはいえ、ある程度強調された低域を好まれる方には量的に少なめに感じるかもしれません。しかし50ドル前後のイヤホンとしては、各楽器の深みのある表現力、豊かさ、音色の滑らかなど、これまでの「T2」シリーズからの進化がうかがえます。同クラスのイヤホンとしては相当優れた低域と評価する海外レビューも結構ありましたが、それも頷ける気がします。なお、個人的にはエージング前後で低域の印象は相当変わると感じましたので、しつこいですが「TINHIFI T2 DLC」は低域をじっくり育てるつもりでエージングを十分に行った方が良いと思います。


■ まとめ

TINHIFI T2 DLCというわけで「TINHIFI T2 DLC」は、外観はもちろん音質傾向でも最初の「T2」を意識したサウンドバランスで仕上げつつ、大きく「質感」が向上した、TINHIFIの進化と想いを感じさせるアップデートモデルでした。私自身はたぶん日本ではもっとも早い時期に「T2」をレビューし同社を推していたレビュアーではないかと勝手に思っているわけですが(まあ最初期のTIN Audioのサイトでは私のレビュー写真が知らないうちに「T2」の製品画像で使われてたりしてたくらいですから、あながち間違ってもいないと思います^^;)、結構進化したなぁ、という感慨深さもありますね。このような多少心情的な要素を抜きにしても50ドル前後(Official Storeでは11.11に向けてさらに価格が下がってるみたいです)のイヤホンとしては、特筆して優れたポイントがあるわけではありませんが、ボーカル曲を中心に聴きやすくバランスの良いリスニングイヤホンとして結構おすすめできると思いますよ。