こんにちは。今回は「NICEHCK NX7 MK4」です。結構前から書きかけになっていたのですが、なかなかスケジュール通りに掲載できずこのタイミングとなりました。中華イヤホン&ケーブルセラーとして私のブログでもお馴染み「NICEHCK」ブランドのなかでも屈指の人気モデル「NX7」がとうとう4代目まで進化しました。「MK3」でちょっとオトナになった気もしたこのシリーズですが、「MK4」では「NX7」シリーズらしいサウンドをしっかり継承しつつ、ボーカル域および低域の質感の向上など、より成長および成熟を感じる仕上がりになっています。
■ 製品の概要について
中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」は私のブログでもお馴染みの老舗中華イヤホンセラーで多くのマニアに絶大な支持を受けていることでも知られています。そのオリジナルブランド「NICEHCK」もまた多くのマニアに寄り添った、「他とはちょっと違う製品」が特徴だったりもしますね。そんな同社の製品のなかでも「攻めたアプローチ」と「変態度の高さ」でひときわ注目されたのが初代の「NX7」でした。アンダー100ドルの価格設定で4基のBA、デュアル使用のダイナミックドライバー、そしてピエゾセラミックのツイーターを加えた7ドライバー構成を実現するというKZやTRNもびっくりという内容が注目を浴びました。その「NX7」も基本構成を踏襲しつつブラッシュアップを続け、気がつけば4代目にあたる「MK4」まで進化しました。
4代目となる「NICEHCK NX7 MK4」は、「PRO」(2代目)、「MK3」でのフェイスプレートの交換ギミックを廃し、代わりに「NX7」シリーズのなかでも最も高級感のある外観で仕上げられています。新しいフェイスプレートはスタビライズウッド製パネルとアルミ製フレームによる構成で同社の「Topguy」を彷彿とさせる印象ですね。いっぽうで価格は「MK3」の発売時価格より低く設定されておりスペックアップした内容も含め、よりお買い得感が増した印象になっています。もっとも昨今の円安の影響で日本円換算だと価格が相応に上がってしまっているのですが・・・。
ドライバー構成は「NX7」シリーズの4BA+2DD+PZT構成を踏襲しつつ内部的には今回もアップグレードが行われています。高域用ツイーターには7層ピエゾ(圧電/PZT)ドライバー、中高域には4基のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーが搭載され、中低域から低域を担う1基のシャーシに直列で収容されたデュアルダイナミックドライバーは新たにベリリウムコート振動板を採用しています。「NX7」の2DD部分は初代「NX7」から「NX7 MK3」までカーボンナノチューブ(CNT)振動板が採用されており、ドライバー面では「MK4」での最も大きなアップデートになりますね。
また「NICEHCK NX7 MK4」では「PRO」以降搭載されているフィルターノズルの交換ギミックを採用。中高域の帯域に変化があり、標準、高域強化、低域強化(高域抑制)の3種類のサウンドチューニングを組み替えることができます。
また今回「NICEHCK NX7 MK4」専用のケーブルが用意されました(「PRO」および「MK3」では当時販売していた16芯のOFCまたはOFCミックス線ケーブルの「NX7」用を付属)。新しいケーブルは高純度単結晶銅(OCC)線と銀メッキ線のミックスケーブルとなり美しいシルバーカラーのケーブルにまとめられています。コネクタは従来の「NX7」シリーズ同様にTFZタイプのカバー付き0.78mm 2pin仕様。プラグはオーダー時に「3.5mm」または「4.4mm」を選択できます。また「NICEHCK NX7 MK4」は同社の人気フラグシップケーブル「NICEHCK FourMix」とのセット販売も行われています。
「NICEHCK NX7 MK4」の購入はAliExpressの「NiceHCK Audio Store」にて。
価格は99.65ドル~、「NICEHCK FourMix」ケーブル付きセットは163.65ドル~です。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): NICEHCK NX7 MK4
「NICEHCK NX7 MK4」のパッケージは製品画像を載せたシンプルな白箱のデザインながら、同社の「Lofty」や「Topguy」などの上位モデルを踏襲した豪華版の大きさ。
パッケージ内容は、イヤホン本体、交換用フィルターノズル、ケーブル、イヤーピースは「NICEHCK 07」(「AET07」互換タイプ)が4サイズ、およびグレーのイヤーピースが3サイズ、ハードレザーケース、説明書および保証書など。
「NICEHCK NX7 MK4」の本体サイズは「NX7」シリーズを踏襲しており基本的には同様です。樹脂製のハウジング部分には厚みを抑えたデザインにドライバーがつめられています。そして今回アップグレードされたフェイスプレートは接着されており、「PRO」や「MK3」のように取り外すことはできない仕様です。実質外観上はフェイスプレート部分の変更とノズルカラーがゴールドになった点ですが従来モデルより随分と高級感が増しているのがわかりますね。
シェル形状はKZやTFZあたりの製品を連想させる形状ですが、比較すると樹脂製のハウジング部分の厚みは少なく、実際にはかなりコンパクトな印象を受けます。装着性のうえでもフェイスプレートのサイズのわりに耳への収まりも良く軽量のため落ちることもないでしょう。
そして「NICEHCK NX7 MK4」でも3種類のフィルターノズルが付属します。違いはメッシュパーツ裏面に貼られたフィルターシートの違いで、最も高域が強く出る「レッド」がメッシュプレートのみ。標準の「ゴールド」と低域強化の「ブラック」は貼られているシートの密度が異なるようです。
ケーブルは今回新たにシルバーカラーのOCC&銀メッキ銅ミックス線タイプの2芯ケーブルが付属します。柔らかく取り回しの良いケーブルです。
■ サウンドインプレッション
今回「NICEHCK NX7 MK4」は開封後から100時間オーバーのエージングを実施しています。また4.4mmコネクタ仕様でオーダーしていますが、レビューでは4.4mmでの接続のほか、3.5mm変換プラグを使用して3.5mm接続での印象についても確認を行っています。
「NICEHCK NX7 MK4」の音質傾向はピエゾの明瞭な高高域を活かした解像度推しのスッキリしたドンシャリ傾向、という点で「NX7」シリーズ、とりわけバランス面で大幅に向上した「MK3」を踏襲していますが中音域~低域を中心に質感が大幅に向上し、「MK3」とはまた異なったベクトルでハイブリッドらしさを上手くコントロールできている印象です。個人的に「NICEHCK NX7 MK4」を最初に聴いた印象は「大人になったなぁ」というものでした。
初代の「NX7」はとにかくピエゾの主張が強く腰高で派手さが前面に出た「ちょっと頭悪い感じ」という意味では非常に楽しいイヤホンでした。それが次の「PRO」では明らかに情報量の不足していたケーブルが16芯タイプとなって一気に改善され、交換式フィルターの採用で暴れていた高域を制御することも可能になりました。つまり成長しつつちょっと節度を覚えた感じですね。
そして「MK3」ではダイナミックドライバーまわりが大きく改善され中低域が強化。「PRO」までの中高域寄りサウンドから硬質、寒色系の派手なサウンドであることには変わりは無いもののよりバランスの良いドンシャリに成長。そして今回の「NICEHCK NX7 MK4」ではベリリウムコート振動板2DDの採用で一気に質感が向上し、「スッキリした高解像度ハイブリッドサウンド」というキャラクターを成熟させることに成功した、そんな印象です。なんか一人の成長を見守っている気分になりますね(笑)。最近のハーマンカーブ推しのイヤホンとは対極にいるようなサウンドですが、100ドル程度の価格設定としては非常に完成度が高く成長しており、マニアならぜひとも押えておきたいイヤホンのひとつになったと思います。
「NICEHCK NX7 MK4」の高域はピエゾによる高高域とBAによる高域の組み合わせにより、非常に高い解像感と分離感を持つスッキリとした音を鳴らします。低価格ハイブリッド特有のギラつきは無く、直線的に綺麗に伸びる印象。見通しはよく明瞭感があります。
いっぽうでいかにもピエゾ、いかにもBAや硬質感ははっきり感じる事ができるため、自然な透明感を求める方にはかなり人工的な音に感じるでしょう。
それでも「MK3」以降の聴きやすいスムーズさは確保されており初代および「PRO」と比べると質感は格段に向上しています。標準の「ゴールド」バランスフィルターでは、高域タイプの「レッド」フィルターより刺さりやすい帯域を中心に調整が加えられており、聴きやすく最もバランスが良い印象。しかしこれでも刺激を強めに感じる方は「ブラック」のフィルターでさらに高域を抑制するのも良いでしょう。
中音域はスッキリした印象を維持しつつ、ボーカル帯域を中心に硬くなりすぎない質感にまとめられています。またもともと分離性に優れたシリーズでしたが、輪郭が明瞭でエッジが効いていた感じの「MK3」までと比べて「NICEHCK NX7 MK4」ではより見通しの良い空間表現が特徴的で、中音域は実際には少し凹むものの、ボーカル帯域はより近くしっかりした存在感があります。
ただ、印象としては3.5mmステレオより4.4mmバランス接続の方が印象が良い場合が多く、あらかじめ4.4mm仕様で購入するか、ニュートラルな印象のバランスケーブルに交換するほうが相性が良いかも知れません。3.5mmの場合は据置き環境のように余裕を持って駆動力を提供できるアンプを使用した方が良いでしょう。例えばTHX AAAなどの小型ハイパワー仕様のアンプは少ない消費電力で一気に出力を上げるため、ゲインに対して出力(電流)が二次曲線的に変化します。このような再生環境の場合、「NICEHCK NX7 MK4」はかなり派手めに鳴ることがあります。バランス接続ではシングルエンドより少ないゲインで同等の出力を確保できる事が多いためこのような現象を多少は回避できる可能性があるわけですね。
低域はベリリウムコート振動板2DDの採用による恩恵を最も受けており、従来のCNT振動板の「NX7」シリーズと比較しても格段に質感が向上しています。もともとピエゾ+4BAの中高域および高域の主張が非常に強いイヤホンですので低域が強く主張することはありませんが、しっかりした存在感があり全体的にバランスの良い音を鳴らしてくれます。厚みと力強さのあるミッドベースと深く重い重低音を持ちつつ分離の良さとスピード感がある濃くキレがある音というベリリウムコートらしさもしっかり感じさせてくれます。
なお、「NICEHCK NX7 MK4」ではセット販売で同社のフラグシップケーブル「NICEHCK FourMix」を一緒に購入することができます。この組み合わせも悪くはないですが、個人的には「NICEHCK NX7 MK4」は付属ケーブルを使用し、「NICEHCK FourMix」は別のイヤホンで使用することをお勧めします。なお、「NICEHCK FourMix」のレビューについては以下を参照ください。
→ 過去記事:「NICEHCK FourMix」 (銀銅合金+7N高導電性OCC+純銀+6N銀メッキOCC) 待望の再販の遂げたHCKの「旗艦級」ハイグレードケーブル 【レビュー】
■ まとめ
というわけで、「NICEHCK NX7 MK4」は紛れもなく「NX7」シリーズのサウンド、という印象をしっかり感じさせつつ、ボーカル域および低域の質感が大幅に向上し、より完成度が高まった印象をもったイヤホンでした。とはいえハイブリッドらしさというか、それぞれのドライバーのキャラクターもかなり前面に出ており、各音域、各ドライバー感のクロスオーバーを整えるとか、滑らかな繋がりとか、その辺はとりあえず置いておこう、みたいな割り切りも感じます。上記のように再生環境で多少暴れることがなくても、全体の構成要素のなかに、やっぱりピエゾらしい、BAらしい、そしてベリリウムらしい、という個々の音をマリアージュしている感じは確実にあります。それでもバランスとしてはしっかり成立していて、相応に成長、あるいは成熟しているあたりが「NICEHCK NX7 MK4」のたぶん唯一無二の楽しさだろうと思います。
またいっぽうで、「初代NX7の変態サウンドが聴きたい」とか「もっと派手さを抑えたい」というニーズにもフィルターで対応出来るギミックも残しており、実用性と楽しさを両立している点も良いですね。円安でちょっと割高にはなっていますが、やはりお買い得なイヤホンだとは思いますので、気になる方は挑戦してみてくださいね(^^)
中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」は私のブログでもお馴染みの老舗中華イヤホンセラーで多くのマニアに絶大な支持を受けていることでも知られています。そのオリジナルブランド「NICEHCK」もまた多くのマニアに寄り添った、「他とはちょっと違う製品」が特徴だったりもしますね。そんな同社の製品のなかでも「攻めたアプローチ」と「変態度の高さ」でひときわ注目されたのが初代の「NX7」でした。アンダー100ドルの価格設定で4基のBA、デュアル使用のダイナミックドライバー、そしてピエゾセラミックのツイーターを加えた7ドライバー構成を実現するというKZやTRNもびっくりという内容が注目を浴びました。その「NX7」も基本構成を踏襲しつつブラッシュアップを続け、気がつけば4代目にあたる「MK4」まで進化しました。
4代目となる「NICEHCK NX7 MK4」は、「PRO」(2代目)、「MK3」でのフェイスプレートの交換ギミックを廃し、代わりに「NX7」シリーズのなかでも最も高級感のある外観で仕上げられています。新しいフェイスプレートはスタビライズウッド製パネルとアルミ製フレームによる構成で同社の「Topguy」を彷彿とさせる印象ですね。いっぽうで価格は「MK3」の発売時価格より低く設定されておりスペックアップした内容も含め、よりお買い得感が増した印象になっています。もっとも昨今の円安の影響で日本円換算だと価格が相応に上がってしまっているのですが・・・。
ドライバー構成は「NX7」シリーズの4BA+2DD+PZT構成を踏襲しつつ内部的には今回もアップグレードが行われています。高域用ツイーターには7層ピエゾ(圧電/PZT)ドライバー、中高域には4基のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーが搭載され、中低域から低域を担う1基のシャーシに直列で収容されたデュアルダイナミックドライバーは新たにベリリウムコート振動板を採用しています。「NX7」の2DD部分は初代「NX7」から「NX7 MK3」までカーボンナノチューブ(CNT)振動板が採用されており、ドライバー面では「MK4」での最も大きなアップデートになりますね。
また「NICEHCK NX7 MK4」では「PRO」以降搭載されているフィルターノズルの交換ギミックを採用。中高域の帯域に変化があり、標準、高域強化、低域強化(高域抑制)の3種類のサウンドチューニングを組み替えることができます。
また今回「NICEHCK NX7 MK4」専用のケーブルが用意されました(「PRO」および「MK3」では当時販売していた16芯のOFCまたはOFCミックス線ケーブルの「NX7」用を付属)。新しいケーブルは高純度単結晶銅(OCC)線と銀メッキ線のミックスケーブルとなり美しいシルバーカラーのケーブルにまとめられています。コネクタは従来の「NX7」シリーズ同様にTFZタイプのカバー付き0.78mm 2pin仕様。プラグはオーダー時に「3.5mm」または「4.4mm」を選択できます。また「NICEHCK NX7 MK4」は同社の人気フラグシップケーブル「NICEHCK FourMix」とのセット販売も行われています。
「NICEHCK NX7 MK4」の購入はAliExpressの「NiceHCK Audio Store」にて。
価格は99.65ドル~、「NICEHCK FourMix」ケーブル付きセットは163.65ドル~です。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): NICEHCK NX7 MK4
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「NICEHCK NX7 MK4」のパッケージは製品画像を載せたシンプルな白箱のデザインながら、同社の「Lofty」や「Topguy」などの上位モデルを踏襲した豪華版の大きさ。
パッケージ内容は、イヤホン本体、交換用フィルターノズル、ケーブル、イヤーピースは「NICEHCK 07」(「AET07」互換タイプ)が4サイズ、およびグレーのイヤーピースが3サイズ、ハードレザーケース、説明書および保証書など。
「NICEHCK NX7 MK4」の本体サイズは「NX7」シリーズを踏襲しており基本的には同様です。樹脂製のハウジング部分には厚みを抑えたデザインにドライバーがつめられています。そして今回アップグレードされたフェイスプレートは接着されており、「PRO」や「MK3」のように取り外すことはできない仕様です。実質外観上はフェイスプレート部分の変更とノズルカラーがゴールドになった点ですが従来モデルより随分と高級感が増しているのがわかりますね。
シェル形状はKZやTFZあたりの製品を連想させる形状ですが、比較すると樹脂製のハウジング部分の厚みは少なく、実際にはかなりコンパクトな印象を受けます。装着性のうえでもフェイスプレートのサイズのわりに耳への収まりも良く軽量のため落ちることもないでしょう。
そして「NICEHCK NX7 MK4」でも3種類のフィルターノズルが付属します。違いはメッシュパーツ裏面に貼られたフィルターシートの違いで、最も高域が強く出る「レッド」がメッシュプレートのみ。標準の「ゴールド」と低域強化の「ブラック」は貼られているシートの密度が異なるようです。
ケーブルは今回新たにシルバーカラーのOCC&銀メッキ銅ミックス線タイプの2芯ケーブルが付属します。柔らかく取り回しの良いケーブルです。
■ サウンドインプレッション
今回「NICEHCK NX7 MK4」は開封後から100時間オーバーのエージングを実施しています。また4.4mmコネクタ仕様でオーダーしていますが、レビューでは4.4mmでの接続のほか、3.5mm変換プラグを使用して3.5mm接続での印象についても確認を行っています。
「NICEHCK NX7 MK4」の音質傾向はピエゾの明瞭な高高域を活かした解像度推しのスッキリしたドンシャリ傾向、という点で「NX7」シリーズ、とりわけバランス面で大幅に向上した「MK3」を踏襲していますが中音域~低域を中心に質感が大幅に向上し、「MK3」とはまた異なったベクトルでハイブリッドらしさを上手くコントロールできている印象です。個人的に「NICEHCK NX7 MK4」を最初に聴いた印象は「大人になったなぁ」というものでした。
初代の「NX7」はとにかくピエゾの主張が強く腰高で派手さが前面に出た「ちょっと頭悪い感じ」という意味では非常に楽しいイヤホンでした。それが次の「PRO」では明らかに情報量の不足していたケーブルが16芯タイプとなって一気に改善され、交換式フィルターの採用で暴れていた高域を制御することも可能になりました。つまり成長しつつちょっと節度を覚えた感じですね。
そして「MK3」ではダイナミックドライバーまわりが大きく改善され中低域が強化。「PRO」までの中高域寄りサウンドから硬質、寒色系の派手なサウンドであることには変わりは無いもののよりバランスの良いドンシャリに成長。そして今回の「NICEHCK NX7 MK4」ではベリリウムコート振動板2DDの採用で一気に質感が向上し、「スッキリした高解像度ハイブリッドサウンド」というキャラクターを成熟させることに成功した、そんな印象です。なんか一人の成長を見守っている気分になりますね(笑)。最近のハーマンカーブ推しのイヤホンとは対極にいるようなサウンドですが、100ドル程度の価格設定としては非常に完成度が高く成長しており、マニアならぜひとも押えておきたいイヤホンのひとつになったと思います。
「NICEHCK NX7 MK4」の高域はピエゾによる高高域とBAによる高域の組み合わせにより、非常に高い解像感と分離感を持つスッキリとした音を鳴らします。低価格ハイブリッド特有のギラつきは無く、直線的に綺麗に伸びる印象。見通しはよく明瞭感があります。
いっぽうでいかにもピエゾ、いかにもBAや硬質感ははっきり感じる事ができるため、自然な透明感を求める方にはかなり人工的な音に感じるでしょう。
それでも「MK3」以降の聴きやすいスムーズさは確保されており初代および「PRO」と比べると質感は格段に向上しています。標準の「ゴールド」バランスフィルターでは、高域タイプの「レッド」フィルターより刺さりやすい帯域を中心に調整が加えられており、聴きやすく最もバランスが良い印象。しかしこれでも刺激を強めに感じる方は「ブラック」のフィルターでさらに高域を抑制するのも良いでしょう。
中音域はスッキリした印象を維持しつつ、ボーカル帯域を中心に硬くなりすぎない質感にまとめられています。またもともと分離性に優れたシリーズでしたが、輪郭が明瞭でエッジが効いていた感じの「MK3」までと比べて「NICEHCK NX7 MK4」ではより見通しの良い空間表現が特徴的で、中音域は実際には少し凹むものの、ボーカル帯域はより近くしっかりした存在感があります。
ただ、印象としては3.5mmステレオより4.4mmバランス接続の方が印象が良い場合が多く、あらかじめ4.4mm仕様で購入するか、ニュートラルな印象のバランスケーブルに交換するほうが相性が良いかも知れません。3.5mmの場合は据置き環境のように余裕を持って駆動力を提供できるアンプを使用した方が良いでしょう。例えばTHX AAAなどの小型ハイパワー仕様のアンプは少ない消費電力で一気に出力を上げるため、ゲインに対して出力(電流)が二次曲線的に変化します。このような再生環境の場合、「NICEHCK NX7 MK4」はかなり派手めに鳴ることがあります。バランス接続ではシングルエンドより少ないゲインで同等の出力を確保できる事が多いためこのような現象を多少は回避できる可能性があるわけですね。
低域はベリリウムコート振動板2DDの採用による恩恵を最も受けており、従来のCNT振動板の「NX7」シリーズと比較しても格段に質感が向上しています。もともとピエゾ+4BAの中高域および高域の主張が非常に強いイヤホンですので低域が強く主張することはありませんが、しっかりした存在感があり全体的にバランスの良い音を鳴らしてくれます。厚みと力強さのあるミッドベースと深く重い重低音を持ちつつ分離の良さとスピード感がある濃くキレがある音というベリリウムコートらしさもしっかり感じさせてくれます。
なお、「NICEHCK NX7 MK4」ではセット販売で同社のフラグシップケーブル「NICEHCK FourMix」を一緒に購入することができます。この組み合わせも悪くはないですが、個人的には「NICEHCK NX7 MK4」は付属ケーブルを使用し、「NICEHCK FourMix」は別のイヤホンで使用することをお勧めします。なお、「NICEHCK FourMix」のレビューについては以下を参照ください。
→ 過去記事:「NICEHCK FourMix」 (銀銅合金+7N高導電性OCC+純銀+6N銀メッキOCC) 待望の再販の遂げたHCKの「旗艦級」ハイグレードケーブル 【レビュー】
■ まとめ
というわけで、「NICEHCK NX7 MK4」は紛れもなく「NX7」シリーズのサウンド、という印象をしっかり感じさせつつ、ボーカル域および低域の質感が大幅に向上し、より完成度が高まった印象をもったイヤホンでした。とはいえハイブリッドらしさというか、それぞれのドライバーのキャラクターもかなり前面に出ており、各音域、各ドライバー感のクロスオーバーを整えるとか、滑らかな繋がりとか、その辺はとりあえず置いておこう、みたいな割り切りも感じます。上記のように再生環境で多少暴れることがなくても、全体の構成要素のなかに、やっぱりピエゾらしい、BAらしい、そしてベリリウムらしい、という個々の音をマリアージュしている感じは確実にあります。それでもバランスとしてはしっかり成立していて、相応に成長、あるいは成熟しているあたりが「NICEHCK NX7 MK4」のたぶん唯一無二の楽しさだろうと思います。
またいっぽうで、「初代NX7の変態サウンドが聴きたい」とか「もっと派手さを抑えたい」というニーズにもフィルターで対応出来るギミックも残しており、実用性と楽しさを両立している点も良いですね。円安でちょっと割高にはなっていますが、やはりお買い得なイヤホンだとは思いますので、気になる方は挑戦してみてくださいね(^^)