こんにちは。今回は「Yanyin Canon」(ヤンイン・カノン)です。最近マニア界隈でじわじわと評判になっている、350ドル級のアッパーミドルグレードの高音質中華イヤホンですね。4BA+1DDのハイブリッド構成による質の高いサウンドに、結構珍しい3系統のスイッチ切替えによりかなり柔軟なサウンドチューニングの変更ができるなど、いかにもマニアのためのイヤホンという印象の楽しい製品です。
■ 製品の概要について
「Yanyin」は非常に新しい中華イヤホンブランドで、同社はまず「Aladdin」(3BA+1DD)をリリースしマニアの間でいきなり高い評価を得ました。そして同社が次にリリースした2作目が今回レビューする4BA+1DD構成の「Yanyin Canon」です。ちなみに名称の「Canon」は言うまでもありませんが日本の「キ○ノン」ではなく最近ではコード進行の「カノン進行」のほうがよく見かけるかもな音楽用語の「カノン」です。なので音読する際は「ヤンイン・カノン」と呼びましょう(^^)。ちなみにアマゾンなど国内で「Ca-non」という表記にしているのは「キヤ○ン」の商標と被らないようにするための配慮かもしれませんね。
「Yanyin Canon」のドライバー構成は4BA+1DDのトラディショナルなマルチドライバー・ハイブリッドで、中音域および高域を担う4基の高品質なバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーと低域用のバイオ素材振動板ダイナミックドライバーで構成されます。Yaininのプロフェッショナルなエンジニアにより5基のドライバーを高域・中音域・低域の3方向の周波数帯に配置し、高レベルの低歪みを維持しながら強いインパクトと良質な低域、繋がりの良さと豊かさおよびボーカルの表現力を持つ中音域、優れたディテールと刺激のコントロールを行う高域を実現しています。
さらにこれらの各音域は3つのスイッチによる独立したチューニングが可能。スイッチ1は低域、スイッチ2は中音域、スイッチ3は高域のゲインをコントロールし、それぞれ「ON」でより高い出力を行います。ユーザーは好みに応じてスイッチを調整することで異なる種類のサウンドバランスを楽しむことが可能です。
「Yanyin Canon」の本体は医療グレードのレジンを使用しハンドメイドで丁寧に製造されています。超軽量で人間工学に基づいた優れた装着感を提供します。ケーブルは高品質の単結晶銅銀メッキ線ケーブルが付属。0.78m 2pinコネクタを採用。またプラグは購入時に3.5mm、4.4mm、2.5mmが選択できます。
「Yanyin Canon」の購入は「Linsol」の直販サイト、またはアマゾンの「LINSOUL-JP」にて。
価格は349ドル、アマゾンでは45,180円(プライム扱い)です。
Linsoul(linsoul.com): Yanyin Canon
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): Yanyin Ca-non
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
300ドルオーバー、4万円台のイヤホンということもあり、パッケージはシンプルなデザインながらしっかりした作りになっていますね。大きめの箱で黒い内箱をシルバーのカバーで覆うデザインです。今回は4.4mm仕様でオーダーしました。
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、スイッチ切替用ピン、レザーケース、説明書、保証書など。
レジン製のイヤホン本体はフェイスプレート部だけでなくハウジン部の2色のカラーが流し込まれているのが分かります。メタリックカラーで落ち着いたカラーリングながら高級感がありますね。ハンドメイドということですが表面の仕上げなど外観の品質は高いと思います。
背面にはモデル名の「CANON」とシリアルナンバーがプリントされています。個体ごとに異なるナンバーが記載されているのもハイグレード製品らしくて良いですね。上部側面には調整スイッチとダイナミックドライバー用のベント(空気孔)があります。ベントには右側赤・左側青のリング状のカバーが付けられています。
そして「Yanyin Canon」の個性をひときわ感じさせる3基のスイッチはなかなかに存在感があります。1基または2基のスイッチ付きのイヤホンはこのグレードになると何種類かはありますが、高・中・低の音域用にそれぞれスイッチが用意されているのは、有りそうで無い特徴でしょう。しかしそれぞれの音域にスイッチが割り当てられている、という設計はとても分かりやすいですね。他もこうすれば良いのにと思わなくもないですが、普通にやるとサウンドバランスが崩壊する恐れもあるので、やはり「Yanyin Canon」のチューニングは相当すごいことをやっている、と考えるべきでしょう。
本体コネクタは2pinタイプで、今回オーダーした4.4mmタイプでは付属ケーブル側のコネクタも埋め込み用の突起が無いフラットな2pin仕様でした。ケーブルは太さのあるシルバーの4芯線でこちらも高級感があります。被膜は非常に薄く取り回しは良い印象です。イヤーピースは付属品のほか、定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、あるいは「SpinFit CP100+」などの密着感のあるタイプなどに交換するのも良いと思います。また多少価格は上がりますが「Softears U.C.」も非常に良い組み合わせだと思います。
■ サウンドインプレッション
「Yanyin Canon」の音質傾向はバランスの良いV字カーブを描くドンシャリ傾向ですが、3つのスイッチの切替でサウンドチューニングはかなり分かりやすく変化します。今回届いた個体ではスイッチは3つとも「ON」でしたので(以前のロットでは異なる場合もあったようです)、開封時の状態でかなり主張の強いドンシャリ傾向のサウンドを楽しむことができました。
興味深いのは3つのスイッチ、つまり低域(スイッチ1)、中音域(スイッチ2)、高域(スイッチ3)の全てがON、つまり「ゲインを強く」している場合に、いわゆる「W字」のバランスにはならないこと。実際に聴いてみた印象としては低域(スイッチ1)と高域(スイッチ3)は「ON」にするとそれぞれの出力が上がるいっぽうで、中音域(スイッチ2)だけは「ON」にすると中音域自体は変更せずに低域と高域の出力を下げる、というアプローチを取るのではないかと感じました(その後、海外のレビューで掲載されているf値を見ましたが、やはりそんな感じでしたね)。
このような傾向もあり、スイッチの組み合わせでスイッチ1~3の順で3桁の数字で表し、ONを1、OFFを0とすると実際に聴いた印象としては、
・「111」(すべてON): 出荷時設定。パワフルでバランスの良いドンシャリ傾向
・「000」(すべてOFF): やや中低域寄りの弱ドンシャリ傾向
・「010」(中音域ON): ボーカルにフォーカスした傾向(ややカマボコぽい印象)
・「100」(低域がON): 低域が強調された弱ドンシャリ傾向
・「001」(高域がON): 中高域~高域が増した弱ドンシャリ傾向
・「011」(低域のみOFF): スッキリしたニュートラルサウンド(最もフラット寄り?)
・「110」(高域のみOFF): 中低域寄りのニュートラルサウンド(低域好き向けかも)
・「101」(中音域のみOFF) : 最もアグレッシブな強ドンシャリ(結構個性的)
みたいに感じました。実は「011」「110」が結構良い印象だったのは意外でしたが、やはりこういうのは聴いてみないと分からないものですね。
個人的には最もニュートラルな印象だった「011」がいちばん好みで、標準の「111」の「HiFiって何?」って感じパワフルなドンシャリも結構楽しくて好き、という感じです。よりアグレッシブな「101」はちょっとやり過ぎかなと個人的には思いましたが、これはこれで好きという方がいらっしゃるのも理解できます。つまり、どの組み合わせも、それぞれで良い点があり、どれもちゃんと楽しい、という結論。何でこんなことが成立できるのか全然理解できないのですが、改めて「Yanyin Canon」のチューニングの凄さを実感しました。何というか、良くできたイヤホンですね(笑)。
「Yanyin Canon」の高域は、過度な主張な無いものの伸びやかさのある見通しの良い音を鳴らします。シンバルも綺麗な音で明瞭さを感じる解像感と分離の良さがあります。どちらかといえば寒色系ですが硬すぎず、かといってウォームにもならず自然な印象を持っています。高域を強調した「001」でも刺激が増すことは無く中高域付近からの存在感とともにシャープさを増す印象となります。音源によっては適度にキレが良くなることで心地よく感じるのではと思います。また「011」ではよりニュートラルなバランスで非常にスッキリした印象となり、より透明感が増した印象を楽しめます。
中音域は立体的な空間表現とともに実在感のある鳴り方が印象的です。音場は必要以上に広がることは無く自然な印象ですが優れた分離と解像感でボーカルと演奏は立体的に定位します。ただしボーカルがやや前面に出る印象のためモニター的な正確さは無く、演出としてリスニング的な楽しさを感じさせるチューニングといえそうです。
標準の「111」では分かりやすいドンシャリ傾向のため少し凹みますが、これらの傾向によりボーカルは自然な存在感があります。さらにボーカル域を強調する「010」では高域および低域が少し抑えられ後方に下がることで、相対的にボーカルがより近く、存在感を増します。鮮明さが増し、非常に生き生きとしたサウンドになるため、ボーカル曲を中心に聴かれる方はこのチューニングを好まれる場合も多そうです。また「011」ではボーカル域の存在感も感じさせつつフラット方向の印象に変化します。
低域はパワフルかつレスポンスの良い音を鳴らします。9.2mmバイオ振動板ダイナミックドライバーが生み出す低域は締まりが良く力強さのあるミッドベースと深く沈む重低音が印象的です。明瞭でタイトな印象ながら自然な輪郭で高い質感を持ちます。
付属の銀メッキOCC線ケーブルは3.5mm仕様(シングルエンド)または4.4mm/2.5mmのバランス接続でも駆動力を抑えた再生環境では低域の量感がやや多めに出る印象があります。それでも中高域との分離は良くそれぞれの音域に被ることはありません。
「111」の場合、付属ケーブルではバランスの良いドンシャリ傾向ながら多少低域は強調気味になります。「100」にするとミッドベースの直線的な印象は維持したままエネルギーが増加し、存在感が向上します。「010」や「011」では少し低域は抑えられますがそれでも質感は同様で、存在感もやや多めにあります。この辺はリケーブルでも結構印象が変わるため低域のバランスをさらに変えたい方は色々試されるのも良いでしょう。
■ まとめ
というわけで、「Yanyin Canon」はイヤホンとしてはパワフルなドンシャリ傾向にチューニングされており、最近のハーマンターゲット偏重の印象とは異なる、従来型のチューニングで質感を高めたリスニングサウンドを楽しめるイヤホンでした。そして3つのスイッチによる変化はこの製品の驚くべき特徴で、それぞれのモードでしっかりと個性を持ったキャラクターがあることに感心しました。人によって好みはいろいろだと思いますが、8種類のサウンドのなかにはきっと自分に合うものを見つけられると思います。ハイブリッド構成の中華イヤホンとしては決して安価な製品ではありませんが、興味のある方は挑戦しても十分に満足できそうな、オールラウンドに楽しめる高音質・高品質イヤホンだと感じました(^^)。
「Yanyin」は非常に新しい中華イヤホンブランドで、同社はまず「Aladdin」(3BA+1DD)をリリースしマニアの間でいきなり高い評価を得ました。そして同社が次にリリースした2作目が今回レビューする4BA+1DD構成の「Yanyin Canon」です。ちなみに名称の「Canon」は言うまでもありませんが日本の「キ○ノン」ではなく最近ではコード進行の「カノン進行」のほうがよく見かけるかもな音楽用語の「カノン」です。なので音読する際は「ヤンイン・カノン」と呼びましょう(^^)。ちなみにアマゾンなど国内で「Ca-non」という表記にしているのは「キヤ○ン」の商標と被らないようにするための配慮かもしれませんね。
「Yanyin Canon」のドライバー構成は4BA+1DDのトラディショナルなマルチドライバー・ハイブリッドで、中音域および高域を担う4基の高品質なバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーと低域用のバイオ素材振動板ダイナミックドライバーで構成されます。Yaininのプロフェッショナルなエンジニアにより5基のドライバーを高域・中音域・低域の3方向の周波数帯に配置し、高レベルの低歪みを維持しながら強いインパクトと良質な低域、繋がりの良さと豊かさおよびボーカルの表現力を持つ中音域、優れたディテールと刺激のコントロールを行う高域を実現しています。
さらにこれらの各音域は3つのスイッチによる独立したチューニングが可能。スイッチ1は低域、スイッチ2は中音域、スイッチ3は高域のゲインをコントロールし、それぞれ「ON」でより高い出力を行います。ユーザーは好みに応じてスイッチを調整することで異なる種類のサウンドバランスを楽しむことが可能です。
「Yanyin Canon」の本体は医療グレードのレジンを使用しハンドメイドで丁寧に製造されています。超軽量で人間工学に基づいた優れた装着感を提供します。ケーブルは高品質の単結晶銅銀メッキ線ケーブルが付属。0.78m 2pinコネクタを採用。またプラグは購入時に3.5mm、4.4mm、2.5mmが選択できます。
「Yanyin Canon」の購入は「Linsol」の直販サイト、またはアマゾンの「LINSOUL-JP」にて。
価格は349ドル、アマゾンでは45,180円(プライム扱い)です。
Linsoul(linsoul.com): Yanyin Canon
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): Yanyin Ca-non
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
300ドルオーバー、4万円台のイヤホンということもあり、パッケージはシンプルなデザインながらしっかりした作りになっていますね。大きめの箱で黒い内箱をシルバーのカバーで覆うデザインです。今回は4.4mm仕様でオーダーしました。
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、スイッチ切替用ピン、レザーケース、説明書、保証書など。
レジン製のイヤホン本体はフェイスプレート部だけでなくハウジン部の2色のカラーが流し込まれているのが分かります。メタリックカラーで落ち着いたカラーリングながら高級感がありますね。ハンドメイドということですが表面の仕上げなど外観の品質は高いと思います。
背面にはモデル名の「CANON」とシリアルナンバーがプリントされています。個体ごとに異なるナンバーが記載されているのもハイグレード製品らしくて良いですね。上部側面には調整スイッチとダイナミックドライバー用のベント(空気孔)があります。ベントには右側赤・左側青のリング状のカバーが付けられています。
そして「Yanyin Canon」の個性をひときわ感じさせる3基のスイッチはなかなかに存在感があります。1基または2基のスイッチ付きのイヤホンはこのグレードになると何種類かはありますが、高・中・低の音域用にそれぞれスイッチが用意されているのは、有りそうで無い特徴でしょう。しかしそれぞれの音域にスイッチが割り当てられている、という設計はとても分かりやすいですね。他もこうすれば良いのにと思わなくもないですが、普通にやるとサウンドバランスが崩壊する恐れもあるので、やはり「Yanyin Canon」のチューニングは相当すごいことをやっている、と考えるべきでしょう。
本体コネクタは2pinタイプで、今回オーダーした4.4mmタイプでは付属ケーブル側のコネクタも埋め込み用の突起が無いフラットな2pin仕様でした。ケーブルは太さのあるシルバーの4芯線でこちらも高級感があります。被膜は非常に薄く取り回しは良い印象です。イヤーピースは付属品のほか、定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、あるいは「SpinFit CP100+」などの密着感のあるタイプなどに交換するのも良いと思います。また多少価格は上がりますが「Softears U.C.」も非常に良い組み合わせだと思います。
■ サウンドインプレッション
「Yanyin Canon」の音質傾向はバランスの良いV字カーブを描くドンシャリ傾向ですが、3つのスイッチの切替でサウンドチューニングはかなり分かりやすく変化します。今回届いた個体ではスイッチは3つとも「ON」でしたので(以前のロットでは異なる場合もあったようです)、開封時の状態でかなり主張の強いドンシャリ傾向のサウンドを楽しむことができました。
興味深いのは3つのスイッチ、つまり低域(スイッチ1)、中音域(スイッチ2)、高域(スイッチ3)の全てがON、つまり「ゲインを強く」している場合に、いわゆる「W字」のバランスにはならないこと。実際に聴いてみた印象としては低域(スイッチ1)と高域(スイッチ3)は「ON」にするとそれぞれの出力が上がるいっぽうで、中音域(スイッチ2)だけは「ON」にすると中音域自体は変更せずに低域と高域の出力を下げる、というアプローチを取るのではないかと感じました(その後、海外のレビューで掲載されているf値を見ましたが、やはりそんな感じでしたね)。
このような傾向もあり、スイッチの組み合わせでスイッチ1~3の順で3桁の数字で表し、ONを1、OFFを0とすると実際に聴いた印象としては、
・「111」(すべてON): 出荷時設定。パワフルでバランスの良いドンシャリ傾向
・「000」(すべてOFF): やや中低域寄りの弱ドンシャリ傾向
・「010」(中音域ON): ボーカルにフォーカスした傾向(ややカマボコぽい印象)
・「100」(低域がON): 低域が強調された弱ドンシャリ傾向
・「001」(高域がON): 中高域~高域が増した弱ドンシャリ傾向
・「011」(低域のみOFF): スッキリしたニュートラルサウンド(最もフラット寄り?)
・「110」(高域のみOFF): 中低域寄りのニュートラルサウンド(低域好き向けかも)
・「101」(中音域のみOFF) : 最もアグレッシブな強ドンシャリ(結構個性的)
みたいに感じました。実は「011」「110」が結構良い印象だったのは意外でしたが、やはりこういうのは聴いてみないと分からないものですね。
個人的には最もニュートラルな印象だった「011」がいちばん好みで、標準の「111」の「HiFiって何?」って感じパワフルなドンシャリも結構楽しくて好き、という感じです。よりアグレッシブな「101」はちょっとやり過ぎかなと個人的には思いましたが、これはこれで好きという方がいらっしゃるのも理解できます。つまり、どの組み合わせも、それぞれで良い点があり、どれもちゃんと楽しい、という結論。何でこんなことが成立できるのか全然理解できないのですが、改めて「Yanyin Canon」のチューニングの凄さを実感しました。何というか、良くできたイヤホンですね(笑)。
「Yanyin Canon」の高域は、過度な主張な無いものの伸びやかさのある見通しの良い音を鳴らします。シンバルも綺麗な音で明瞭さを感じる解像感と分離の良さがあります。どちらかといえば寒色系ですが硬すぎず、かといってウォームにもならず自然な印象を持っています。高域を強調した「001」でも刺激が増すことは無く中高域付近からの存在感とともにシャープさを増す印象となります。音源によっては適度にキレが良くなることで心地よく感じるのではと思います。また「011」ではよりニュートラルなバランスで非常にスッキリした印象となり、より透明感が増した印象を楽しめます。
中音域は立体的な空間表現とともに実在感のある鳴り方が印象的です。音場は必要以上に広がることは無く自然な印象ですが優れた分離と解像感でボーカルと演奏は立体的に定位します。ただしボーカルがやや前面に出る印象のためモニター的な正確さは無く、演出としてリスニング的な楽しさを感じさせるチューニングといえそうです。
標準の「111」では分かりやすいドンシャリ傾向のため少し凹みますが、これらの傾向によりボーカルは自然な存在感があります。さらにボーカル域を強調する「010」では高域および低域が少し抑えられ後方に下がることで、相対的にボーカルがより近く、存在感を増します。鮮明さが増し、非常に生き生きとしたサウンドになるため、ボーカル曲を中心に聴かれる方はこのチューニングを好まれる場合も多そうです。また「011」ではボーカル域の存在感も感じさせつつフラット方向の印象に変化します。
低域はパワフルかつレスポンスの良い音を鳴らします。9.2mmバイオ振動板ダイナミックドライバーが生み出す低域は締まりが良く力強さのあるミッドベースと深く沈む重低音が印象的です。明瞭でタイトな印象ながら自然な輪郭で高い質感を持ちます。
付属の銀メッキOCC線ケーブルは3.5mm仕様(シングルエンド)または4.4mm/2.5mmのバランス接続でも駆動力を抑えた再生環境では低域の量感がやや多めに出る印象があります。それでも中高域との分離は良くそれぞれの音域に被ることはありません。
「111」の場合、付属ケーブルではバランスの良いドンシャリ傾向ながら多少低域は強調気味になります。「100」にするとミッドベースの直線的な印象は維持したままエネルギーが増加し、存在感が向上します。「010」や「011」では少し低域は抑えられますがそれでも質感は同様で、存在感もやや多めにあります。この辺はリケーブルでも結構印象が変わるため低域のバランスをさらに変えたい方は色々試されるのも良いでしょう。
■ まとめ
というわけで、「Yanyin Canon」はイヤホンとしてはパワフルなドンシャリ傾向にチューニングされており、最近のハーマンターゲット偏重の印象とは異なる、従来型のチューニングで質感を高めたリスニングサウンドを楽しめるイヤホンでした。そして3つのスイッチによる変化はこの製品の驚くべき特徴で、それぞれのモードでしっかりと個性を持ったキャラクターがあることに感心しました。人によって好みはいろいろだと思いますが、8種類のサウンドのなかにはきっと自分に合うものを見つけられると思います。ハイブリッド構成の中華イヤホンとしては決して安価な製品ではありませんが、興味のある方は挑戦しても十分に満足できそうな、オールラウンドに楽しめる高音質・高品質イヤホンだと感じました(^^)。