AFUL Performer 5

こんにちは。今回は「AFUL Performer 5」です。 11月24日に発売を開始した、新進気鋭の中華ブランド「AFUL Acoustics」による3万円程度のミドルグレード4BA+1DD構成のハイブリッドモデルです。複数の特許を取得した技術を投入し、独自構造のシェルとその構造を正確に反映する高度な3Dプリンティング技術、独自のクロスオーバー回路設計などを惜しみなく投入した、とにかく「凄そう」なイヤホンです(^^)。そのサウンドは自然ながらキラリと個性を感じる、秀逸な仕上がりとなっていますね。

■ 製品の概要について

「AFUL Acoustics」は中国の新進気鋭の中華イヤホンブランドで、同社は「AFUL Performer 5」の製品化にあたり、より質の高いパフォーマンスを提供するため、複数の特許技術を取得しています。
AFUL Performer 5」は、独自の音響構造設計に加え、パワフルなダイナミックドライバー部と、独自開発された「RLC ネットワーク周波数分割補正技術」により精緻にチューニングされた4基の高性能バランス アーマチュア(BA)ドライバーの組み合わせによる4BA+1DDのハイブリッド構成を採用します。また外観においては、高度な3Dプリンティングによる人間工学に基づいた軽量シェルに独特のの質感のフェイスプレートが印象的です。
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AFUL Performer 5」では特許技術の音響構造を設計し、高精細3Dプリンタメーカーとして知られるドイツ EnvisionTEC社(現ETEC)製の3Dプリンタにより成形しています。具体的には、30mmの中低域用ダクトと60mmという超長・超薄の低域用チューブが特徴的な構造です。この独自構造は、異なる周波数帯域間で適切な位相補正を維持するのに役立ちます。

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また、「AFUL Performer 5」は、同様に特許を取得している「RLCネットワーク周波数分割補正技術」(RLC Network Frequency Division Technology)が採用されています。4BA+1DDの5ドライバー構成を最大限に活用するための独自のクロスオーバー技術で、ドライバー間の周波数帯の分割を適切に行うだけでなく、特定の周波数帯域でのチューニングの上で望ましくない周波数応答を修正し、ピークや不規則性のない滑らかなサウンド実現します。
さらに、「高減衰空気圧バランスシステム」(High-Damping Air-Pressure Balance System)により、装着時の外耳道内の気圧を逃がし快適なリスニング状態を実現し、さらに低域の質感や力感も改善されます。

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このように高度な特許技術に裏付けされた「AFUL Performer 5」はコンパクトで人間工学に基づいたデザインで快適な装着性を実現しています。
AFUL Performer 5」の購入は「HiFiGo」またはアマゾンの「HiFiGo」マーケットプレイスにて。
価格は219.99ドル、アマゾンでは28,570円です。
HiFiGo: AFUL Performer 5
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■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

AFUL Performer 5」のパッケージはシンプルなデザイン。200ドルオーバーのミドルグレード製品の位置づけですのでシンプルながらグレード感のあるパッケージングになっていますね。

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パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピースは軸部分が赤、青でそれぞれS/M/Lサイズ、メタルケース等。イヤーピースはSサイズの赤、青がそれぞれ左右に装着されていました。
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本体は3Dプリンティングによるレジン製。質感は非常に高く、また非常に軽量コンパクトで装着性も良好です。ちなみに3Dプリンタを実際に使っていたり購入を考えたことのある方ならご存じの通り、3Dプリンタは中国製が一大勢力。おそらく深圳界隈では地元メーカーで選び放題だと思うのですが、そこであえてドイツの EnvisionTEC社のプリンタを使用して成形しているあたり、「まあ強調したくなる気持ちはわかる」というところでしょう(にしてもHiFiGoの製品ページの「それを EnvisionTEC 音響管構造と名付けました」みたいな記述は流石に「そんな名前ではないだろう」と思います。見せて頂いた同社の特許情報にも該当箇所でそのような名称は使っていませんね^^;)。
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その独自の音響構造は「AFUL Performer 5」の大きな特徴のひとつで、低域の音導管を非常に薄く長くすることでチューニングを行う考え方。低域の通り道を工夫するアプローチは「Shure SE846」のローパスフィルターなど、これまでもやはり独自技術でさまざまな手法が存在することはご存じの方も多いでしょう。「AFUL Performer 5」の特許技術による音響設計もこれらのひとつと捉えて良いと思います。

AFUL Performer 5また、オレンジのフェイスプレートはメタリックな素材を使ったプレートがレジンのなかに埋め込まれており、実物は結構綺麗です。ステムノズル内には3つの穴があり、うちひとつは出口部分にもフィルター上のものが埋め込まれています。実はこのフィルター状のものが入った穴がダイナミックドライバーの空気孔(ベント)らしく、ハイブリッドやシングルダイナミックには基本的に必ず存在するシェル表面のベントはありません。またそれぞれの音導管および空気孔からは同時に「高減衰空気圧バランスシステム」を使って高い密閉感を維持しつつ空気圧の維持をやってるようです。よく見ないと分からないけど「何か凄い」のはわかります。

付属ケーブルは0.78mm 2pin仕様の4新ケーブル。一般的な中華2pinやCIEM 2pinのケーブルが利用できるのは良いですね。付属ケーブルはやや暖色寄りに感じさせる印象ですので、よりハイブリッドらしさやキレを向上させる上ではリケーブルを検討するのも良いと思います。
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イヤーピースは一般的なものですが、Sサイズだけ軸部分が細いような・・・。付属品のほか、定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、あるいは「SpinFit CP100+」などの密着感のあるタイプなどに交換するのも良いと思います。また多少価格は上がりますが「Softears U.C.」も非常に良い組み合わせだと思います。


■ サウンドインプレッション

AFUL Performer 5AFUL Performer 5」の音質傾向はニュートラルなサウンドバランスで明瞭な分離感がありつつ不自然にならない滑らかさがあり、聴かせどころを心得ている印象のサウンド。ボーカル域が比較的近く音場は決して広くはありませんが、窮屈さは無く、定位も比較的正確です。モニター的なニュートラルさにややW字寄りのリスニングアプローチが施された印象です。
突出した特徴は感じないものの、バイブリッドらしい明瞭感や楽しさとともに、リスニングイヤホンとしての心地よさも両立した、ひとつひとつが上質な、「玄人好み」なサウンドに仕上がっていると感じます。

AFUL Performer 5」の高域は、比較的穏やかな印象も感じさせますが、伸びは良く分離も優れています。解像感も十分に高く明瞭で、細かいハイハットなども綺麗に捉えますが、繊細に感じるイメージです。刺激はコントロールされており刺さりや歯擦音はありませんが、鋭い音は煌めきをもっており、適度な明るさがあります。付属ケーブルではより柔らかく僅かに温かく感じますが、リケーブルによりより鮮やかさやキレの良さも向上します。

AFUL Performer 5中音域はニュートラルで癖の無い音を鳴らします。ボーカルは比較的近くで鳴るため曲によってはW字寄りの印象も感じさせますが、実際はかなりニュートラルで、演奏との分離は良く定位も正確さがあります。淡泊にならずハイブリッドらしいスッキリした明瞭感を感じさせることで見通しの良さを確保させつつ、非常に滑らかなクロスオーバーにより自然な印象も確保しているのが特徴的です。女性ボーカルは曇ること無く比較的綺麗に伸び、男性ボーカルは厚みがあります。余韻も心地良く感じます。高域同様に付属ケーブルでは僅かに温かく音像も柔らかい印象。これはこれで聴き疲れしにくくハイブリッド的なキレ感をうまく調整していると思いますが、よりハッキリしたサウンドを好まれる方はリケーブルおよびバランス化を検討するのが良いでしょう。

低域は表現力に優れ、非常に豊かで、かつ上質な音を鳴らします。解像感が高く非常に見通しの良い直線的な音ですが、適度な柔らかさと自然な輪郭を持っており、歪みの非常に少ないスッキリした印象をもちつつ滑らかさと熱量を持っています。ミッドベースはハイブリッドらしい力強さも持っていますが派手に鳴りすぎず、滑らかさも持っていいます。重低音は深さがあり有機的な印象を受けます。解像感やキレという点でたた物足りない方もいらっしゃるかもしれませんが、リケーブルでも結構印象が変わります。付属ケーブルは「柔らかく穏やか」な印象で、「よりハッキリ、明瞭に」したい場合はリケーブルを検討する、という考え方で良いと思います。

また「AFUL Performer 5」は再生環境においても「ある程度以上のマニア」を対象とした製品であることが分かります。手軽なオーディオアダプターでは駆動力が不足したり、本来の滑らかさが損なわれる場合もあります。アンプ部分に十分な駆動力とノイズ特性を持ったDAPやアンプなどの上流が望ましいと思います。


■ まとめ

AFUL Performer 5というわけで、「AFUL Performer 5」はある意味「ハイブリッドイヤホンの理想型」を追求したような、なんというか「いぶし銀」感のあるイヤホンでした。外観も多くのレジンシェルのイヤホンと似た印象の一般的な形状ですし、サウンドも突出した派手さは無く、とにかく、バランス良さ、聴き応え、心地よさを追求したような印象でした。しかし採用されている技術は特許の集合体で(いただいた資料でも8種類の特許が記載されています)、ひとつひとつをよく見てみると本当にこだわりの強さを感じさせます。なんだかよく分からない凄いことをとにかく積み重ねて、極めて自然なリスニングサウンドを作る。この感じは好きですね。個人的にはこういうアプローチの製品を見るたびに士郎正宗「アップルシード」第1巻に出てくる「原理は単純を、構造は複雑を極め、人は最も人らしく」という言葉を思い出したりします。まあエンジニアのロマンというか(^^)。
そんなわけで、音響エンジニア集団が目指した玄人サウンドを楽しみたい「玄人な」マニア諸氏にはぜひとも挑戦して頂きたいイヤホンだと思いました。