BQEYZ Winter

こんにちは。今回は「BQEYZ Winter」です。独自のドライバー技術などによる個性的な製品をリリースし続けている中国のイヤホンブランド「BQEYZ」の「季節」シリーズも第5弾でとうとう最後の季節「冬」になりました。今回は「12mmの大口径ダイナミックドライバー」と「11.6mm PZT骨伝導ユニット」のハイブリッド構成になります。IEMタイプでは高級イヤホンでのみ採用されている技術である骨伝導ドライバーを搭載しつつ250ドル以下の価格設定で、音質面の完成度も高く、今回もマニアには相当魅力的なイヤホンに仕上がっています。

■ 製品の概要について

中国のイヤホンブランド「BQEYZ」はOEM/ODM製造メーカーとして長年の実績を持ちつつ、2018年以降独自の製品展開を開始。主に低価格中華ハイブリッドの分野で存在を認知されるようになりました。そして2019の後半からリリースを開始した「四季」シリーズは、毎回製品面・音質面の完成度の高さでマニアから高い評価を得ています。四季シリーズでは既存モデルとしてピエゾセラミックドライバーにBAおよびDDのトリプルハイブリッド構成を採用した「Spring1」「Spring2」「Summer」の3モデルと、高音質シングルダイナミック構成の「Autumn」の4モデルがリリースされています。

BQEYZ Winter今回5モデル目、いよいと最後の季節の名称を持った製品として登場した「BQEYZ Winter」は、「12mm PAR振動板・デュアルキャビティ・ダイナミックドライバー」と「11.6mm PZT(ピエゾセラミック/圧電)骨伝導ユニット」で構成されています。
いわゆるIEMタイプで骨伝導ドライバーを搭載するイヤホンというと、現在発売されている製品では「Unique Melody」の「MESTシリーズ」や「Empire Ears」の一部のハイブリッドモデルなど10万円~数十万円クラスの高級イヤホンに限定されますね。

通常のイヤホンおよびヘッドホンでは耳の付近でドライバーから発生した音(音波)が外耳道を通って、つまり「空気伝導」によって鼓膜へ伝わり、そこから中耳(耳小骨など)、内耳(聴覚を司る蝸牛)へ伝達されます。これに対して振動を頭蓋骨通すことで外耳および中耳を迂回し、直接内耳の蝸牛へ伝える方式が一般的に「骨伝導」と呼ばれます。
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なお、最近増えている骨伝導ヘッドホンなどの製品(主にスポーツ用など)は耳元付近に装着し通常のイヤホンやヘッドホンの代替として、「周囲の音が聞こえる」ことなどをメリットに、音質等はわりと度外視しています。これに対して「Unique Melody」や「Empire Ears」の高級IEMで採用される「骨伝導」はより頭蓋骨に近いイヤホンの装着位置、つまり外耳道付近を振動させることで、より高い分離性と忠実性を持った高域を伝達できるとされています。つまり、より音質を高めるために採用されている、という意味で両者は全く目的が異なるものです。
また「Empire Ears」の骨伝導ドライバーは密閉したダイナミックドライバーの振動を利用した仕組みなのに対し、「Unique Melody」はPZT(ピエゾセラミック/圧電)ドライバーによる高域特化タイプを採用するなど、実は仕組みが全く異なります。

そして、「BQEYZ Winter」の骨伝導ドライバーは同社か「季節」シリーズで培ってきた技術を活かし、6kHz~20kHzの高域を担う「PZT骨伝導ドライバー」を独自に開発し搭載しています。
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BQEYZ Winter」ではメインとしてフルレンジで鳴る「12mm デュアルキャビティ・ダイナミックドライバー」の高域を「11.6mm PZT骨伝導ドライバー」が効率よく補完します。骨伝導ブラケットからイヤホンキャビティ(シェル)に振動を伝播し、側頭骨に接触して音を伝播します。デュアルキャビティ構造のダイナミックドライバーによる空気伝導とPZTユニットによる骨伝導が効率的に組み合わせられることで分離性と音場を総合的に向上。ダイナミックドライバー部ではスピーカー専用に開発された12mm のPAR(ポリアリレート)薄膜振動板を採用。従来のLCP(液晶ポリマー)より弾力性に富み、0.25mmの磁気キャップにより解像度を向上させます。
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本体はドイツ製の切削機を使用した5軸CNC加工によりアルミニウム合金から精密に製造。フィギュアスケートのリンクから着想された滑らかなラインを持つデザインで、軽量かつ耐久性の高いシェルを実現しています。カラーバリエーションは「シルバー」と「ブラック」の2色が選択できます。

BQEYZ Winter」は通常価格239ドルで国内では3万円前半の価格設定になると思われます。
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■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

「BQEYZ Winter」のパッケージは今回も比較的シンプルなデザイン。フェイスプレートのシルエットが描かれたデザインが印象的です。
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パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、シリコンイヤーピース(黒色タイプ、グレータイプが開口部の違いで2種類、それぞれS/M/Lサイズ)、ウレタンイヤーピース(1ペア)、ノズルブラシ、ハードケース、説明書など。
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本体はアルミニウム合金製でシェルサイズは従来の「四季」シリーズのなかでは比較的大きく、樹脂製の「Summer」に近い形状。骨伝導のため本体が耳にフィットさせることをより意識した形状だろうと思われます。
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本体背面にベント(空気孔)とは別に三角形の窪みがあり、3つの開口部があります。骨伝導ユニットからの出力の伝達系統ということかもですね。
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シェル形状を比較すると「Summer」以降はよりフェイス部分のシルエットがより似た印象になっていますが、モデルごとに意匠を変えていることが分かります。また装着部分も「BQEYZ Winter」はより耳奥まで装着するような形状になっているようです。
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ケーブルは0.06mmの線材を芯当たり49本(7×7本)使用した4芯(196本)の単結晶銅銀メッキ線ケーブルが付属します。被膜は比較的柔らかく取り回しは良好です。
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イヤーピースは軸部分が柔らかい黒色タイプと、通常タイプが開口部の大きさで2種類のタイプ、そしてウレタンタイプが1ペア(合計4種類)が付属します。付属品のほかには他にもよりフィット感を高めるため定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、より密着感の強いタイプではSpinFit「CP100+」などへの交換も良いと思います。


■ サウンドインプレッション

BQEYZ Winter」の音質傾向はニュートラルな印象かつフラットに近いサウンドバランスで、「Autumn」で好評を得た癖の無い傾向を踏襲しつつ、広さとともに倍音をより感じる音場感と高域の量感としては適度に抑えつつ芯のあり明瞭に聴くことができる骨伝導ユニットによる伝わり方が特徴的です。骨伝導ユニットはシェルを耳内にしっかりフィットさせることが重要なため、イヤーピースはより深く挿入できるよう、必要に応じて多少小さめのものを選ぶのも良いかもしれません。
BQEYZ Winter全体としては非常に聴きやすいバランスで、高域については「Autumn」のノーマルフィルターと比べてもやや大人しめになっています。しかし、骨伝導ユニットは解像感や量感とは別のアプローチで、よりハッキリと音像を伝える役割を果たしおり、高域および中高域で物足りなさは皆無です。。全体としては自然で滑らかな印象のサウンドながら、ひとつひとつの楽器やボーカルの息づかいや余韻などがしっかり聞き取れるのはなかなか新鮮な体験ですね。
いっぽうで低域については量感としてはやや抑えめで、質感においても「Autumn」に比べると多少の差があります。どちらのイヤホンもオールラウンダーとして非常に優れていますが、ドライバーによる相違点がそのまま使い分け、あるいは選択のポイントにもなりそうです。

ちなみに、同様のPZTドライバーを使用した骨伝導ユニットを採用する「Unique Melody」の「MEST MK II」や「mini MEST」といった最近の製品について何度か試聴をしていますが、「BQEYZ Winter」のほうが「骨伝導らしさ」的なものをより分かりやすく実感することができる印象です。もちろん「MEST MK II」や「mini MEST」は価格帯的に全く異なり、ドライバー構成もマルチドライバーのひとつとして骨伝導ユニットはフルレンジで作用しているなど使われ方にも結構差があります。
BQEYZ Winter特に「MEST MK II」では骨伝導ドライバー自体の音というよりそれ以外のドライバーで調整されたサウンドバランスに音場感やディテール感などを向上させるためのエッセンスとして追加されているような印象もあります。これに対して「BQEYZ Winter」では従来の同社製品と比較してサウンドバランスやピエゾドライバーの主張などにより表現されていた高域を量感としてはやや控えめにするバランスで、その代わりに骨伝導ユニットによって伝達はしっかり行う、というチューニングを行っていると感じます。価格差的にも一概に比較はできないですが、より骨伝導ユニットのメリットを感じるイヤホンとしては「BQEYZ Winter」のほうが実感しやすいかなと思います。

BQEYZ Winter」の高域は「四季」シリーズの中では量的には多少控えめな印象なものの、骨伝導ユニットによるハッキリした表現力とエネルギーがあり、自然で滑らかさのなかに強い存在感があります。歯擦音や刺さりなどは抑制されており非常に聴きやすい音ですが、天井が低い印象は無く伸びやかで、鋭い音も鋭く、煌びやかさも感じさせます。なかなか不思議な感覚で、このイヤホンの醍醐味といえるかもしれませんね。この高域がやみつみになる方もいらっしゃるかも、と思える独特の良さがあります。

BQEYZ Winter中音域は非常にニュートラルで癖の無い音を鳴らします。フラット方向ですが、曲によってはややカマボコ寄りに感じるかも知れません。骨伝導ユニットが働くのは中高域から高域にかけてですが、ボーカルは男性女性とも実際は様々な音域の成分が含まれていることから、恩恵は当然あると思われます。実際に聴いた印象ではボーカルの高域成分が骨伝導ユニットにより際立つことでよりエッジの効いた明瞭な表現に感じさせる効果があるようです。定位も比較的正確で演奏との分離も良く音像は捉えやすい印象。音場も広く、より倍音効果を増したような心地よい響きがあります。

低域は全体のバランスとしてはやや控えめな印象をうけます。実際には「Autumn」のバランスフィルターと同程度の量感はあるのではと思われますが、存在感を感じるためには上流にある程度の駆動力が求められます。しっかり鳴らすことでミッドベースの力強さをより感じられるようになるでしょう。ただ「BQEYZ Winter」では中高域、高域が骨伝導ユニットの効果をしっかり感じさせているのに対し、低域はこれらの音域を下支えし全体のバランスを整えるチューニングのように感じます。そのため「Autumn」の低域と比べると質感や重低音などに相応の違いは感じるかもしれません。


■ まとめ

BQEYZ Winterというわけで、「BQEYZ Winter」はニュートラルバランスで骨伝導ユニットの特徴を非常に上手く生かした非常に完成度の高いイヤホンだと思います。これまで非常に高額なイヤホンにのみ搭載されていたオーディオ品質の骨伝導ユニットを200ドル台のイヤホンに搭載したこと自体が相当に画期的ですが、よりシンプルなドライバー構成とすることで、他の製品と比べてもユニットの「うま味」をより実感しやすくなっている点は購入する上でも大きなアドバンテージになるでしょう。
音質的には高域、中高域の聴きやすく存在感とエネルギーのある独特の質感を楽しめるほか、ニュートラルなサウンドバランスでオールラウンダーとしても十分な実力を持っていますが、特にボーカル曲との相性の良さを感じさせます。とはいえ中低域の質感や、より様々なジャンルでのバランスの良さでは「Autumn」は優れており、より元気な「Summer」や、それぞれの個性を持つ「Spring1」「Spring2」も良さがあります。「四季」シリーズはどれも完成度が高く、できれば全部持って使い分けたくなるのではと思いますよ(^^)。