NICEHCK F1

こんにちは。今回は「NICEHCK F1」です。お馴染みHCKのオリジナルブランド「NICEHCK」による最新モデルで、 14.2mm平面駆動ドライバーを搭載したミドルグレード仕様のイヤホンです。大口径ドライバーをコンパクトなメタルシェルに収容し、フィルター交換ギミックも搭載した意欲的なモデルと言えるでしょう。

■ 製品の概要について

中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」は私のブログでもお馴染みの老舗中華イヤホンセラーで、多くのマニアに絶大な支持を受けていることでも知られています。そのオリジナルブランドの「NICEHCK」もまた多くのマニアに寄り添った、「他とはちょっと違う製品」が特徴だったりもしますね。同社の最新モデルである「NICEHCK F1」は今年になって一気に主流のひとつになった14mm級平面駆動ドライバーを搭載したシングルドライバーのモデルです。

NICEHCK F1」の本体は5軸CNC加工によるアルミニウム合金製。個性的な形状設計を採用し、大口径の平面駆動ドライバーを搭載しつつコンパクトなシェルデザインにより快適な装着感を実現しています。フェイスパネルにはブラックカーボンファイバー素材を採用し質感を高めています。
NICEHCK F1NICEHCK F1

NICEHCK F1」は、全ての周波数帯域で安定したサウンドを実現する「14.2mm平面駆動ドライバー」を搭載。2μmの極薄平面振動板、銀合金製ボイスコイル、N55強力マグネットおよび両面磁気回路などの技術を採用しています。
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またステムノズル部には3種類の交換式音響フィルターを採用。標準(Balanced)の「シルバー」、高域強化の「レッド」、低域強化の「ブラック」の3種類のサウンドに切替えることができます。

付属ケーブルは0.78mm 2pin仕様を採用。高純度OCCと銀メッキ線のミックス線ケーブルを使用し、プラグは購入時に3.5mmステレオまたは4.4mmバランス仕様を選択可能です。
NICEHCK F1NICEHCK F1

NICEHCK F1」の購入はAliExpressの「NiceHCK Audio Store」にて。価格は149ドル~です。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): NICEHCK F1 現在138.36ドル~で購入可能


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

NICEHCK F1」のパッケージは製品画像を載せたシンプルな白箱のデザインで、同社の「NX7 MK4」などと共通したパッケージサイズ。
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パッケージ内容は、イヤホン本体、交換用フィルターノズル、ケーブル、イヤーピースは「NICEHCK 07」(「AET07」互換タイプ)が4サイズ、ブラックのソ○ー風イヤーピースが3サイズ、ハードレザーケース、説明書および保証書など。
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本体は大口径の14.2mm平面駆動ドライバーを覆うような円筒形デザイン。形状的なイメージとしては「TINHIFI T2」シリーズと「TFZ TEQUILA PRO」の中間みたいな感じですね。円筒部分が耳の中にすっぽり収まるので装着性は良いですが、耳穴の位置に合わせてイヤーピースを少し小さめにしたり、長めのものに交換するなどの工夫が必要な場合もあります。
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当然ながらドライバーのサイズ以下にはできないのでそれなりの大きさにはなりますが、同様に14mm級平面ドライバーを搭載しているイヤホンの中では比較的コンパクトですね。
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ケーブルは本体デザインともよく合ったシルバーカラーのOCC&銀メッキ銅ミックス線タイプの2芯ケーブルが付属します。線材は「NICEHCK NX7 MK4」の付属ケーブルと同じもので、プラグ部分がフラットな0.78mm 2pin仕様になっています。柔らかく取り回しの良いケーブルです。

そして「NICEHCK F1」でも「NX7 MK4」のように3種類のフィルターノズルが付属します。ただこちらはよりメッシュ部分の穴が大きいのが特徴的ですね。各フィルターの違いは今回もメッシュパーツ裏面に貼られたフィルターシートの違いで、最も高域が強く出る「ゴールド」がメッシュプレートのみ。標準の「シルバー」と低域強化の「ブラック」は貼られているシートの密度が異なるようです。
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イヤーピースは「NICEHCK 07」(「AET07」風イヤーピース)と黒色の某ソ○ーのハイブリッドイヤーピース風のが付属します。黒色のイヤーピースは軸穴部分が細くフィルターのある「NICEHCK F1」ではちょっと使いづらいので、通常は「NICEHCK 07」を使用すると思います。付属品のほか、JVC「スパイラルドット」、少し長めのタイプではacoustuneの新タイプ「AEX07」および「AEX70」、より粘着度のある「SpinFit CP100+」など、定番イヤーピースに交換するのも良いでしょう。


■ サウンドインプレッション

NICEHCK F1」の音質傾向は、平面駆動らしいニュートラルな印象で傾向としてはバランスの良い弱ドンシャリ。駆動力のある再生環境でしっかり鳴らしてやると、気持ちよく伸びる高域、音場感のある立体的な中音域、力強く締まりのある低域と深く沈む重低音のバランスが素晴らしく、非常に楽しく心地よいリスニングサウンドを楽しめます。
標準の「シルバー」フィルターの場合、同様に14mm級の平面駆動ドライバーを採用した「LETSHUOER S12」あたりのバランスにやや近い印象もありますが、1音1音の描写がより滑らかで、非常に高い解像感や分離の良さのなかにより平面駆動らしい厚みなどを感じます。また高域強調の「レッド」フィルターは結構派手さが増し、14mm級平面駆動のイヤホンでいうと「TRN Kirin」などの方向にちょっと近づくかもしれません。これに対し低域強調の「ブラック」フィルターでは高域がかなり抑えられる真逆の印象になります。

NICEHCK F1なお、14mm級の平面駆動ドライバーを搭載した製品の多くは、それ以前の平面駆動タイプの製品と比べて比較的鳴らしやすい傾向のものが多いですが、「NICEHCK F1」の場合、インピーダンスが15Ωに対し、感度はフィルターによって変化するものの98dB~101dB/mWと結構低めに設定されています。
そのため、通常の再生環境でも「それなりの音」になるもののやや暗く、本来の明瞭で鮮やかさのあるサウンドに「覚醒」させるためには十分に駆動力のある再生環境でガツンと鳴らす必要があります。また「NICEHCK F1」購入時にセット指定が可能な「NICEHCK FourMix」など、情報量が多くより鮮やかさを引き立てるタイプのケーブルにリケーブルするのも良いと思います。
つまり「NICEHCK F1」14mm級の製品のなかでもより比較的マニア向けにチューニングされており、いかにも「NICEHCK」らしいアプローチがされているとも言えるでしょう。

NICEHCK F1」の高域は、明るく伸びの良い明瞭な音を鳴らします。平面駆動らしい歪みの少ないクリアなサウンドといえるでしょう。駆動力のある再生環境でも過度にキツく感じるような変化は無く適度な主張とともに煌びやかさのある音を鳴らします。高域強調の「ゴールド」のフィルターの場合さらにハッキリした分離感となり明瞭感も増しますが、「シルバー」「ゴールド」のどちらのフィルターでも歯擦音やシャリ付きは無く適度に聴きやすく調整されています。それでも鋭い音はある程度鋭く鳴らすため、高域の刺激が苦手な方は「ブラック」のフィルターを選ぶのも良いかも知れません。ただ「ブラック」の場合、曇りなどは無いものの若干暗めの印象になります。

NICEHCK F1中音域はニュートラルで癖の無い音を鳴らします。やはりしっかり駆動力のある再生環境で鳴らす、あるいはリケーブルなどで情報量を確保することで解像度が高く鮮明なサウンドを楽しめます。ボーカルは適度に近く凹みはほぼ感じません。中高域の抜けも非常に良く、女性ボーカルやピアノの高音も明瞭でスッキリしています。音場は立体的ですが広すぎず定位も比較的正確なようです。同様に弱ドンシャリで明瞭さのある「LETSHUOER S12」の中音域と比べると、「S12」のほうがあっさりした印象で「NICEHCK F1」はより厚みがあり、男性ボーカルなども濃密さを感じます。多少中華ハイブリッドのようなパワー押しの派手めの印象に近い印象もあるのですが、平面駆動ドライバーの特徴を活かし、より歪みが少なく自然な分離感を持っているためニュートラルな印象をキープできているのは好感が持てます。

低域は非常にパンチ力と締まりのある音を鳴らします。やや暗くボワ付くように感じたら、繰り返し記載しているとおり再生環境を見直し、さらにイヤーピースなどもより耳奥までしっかり装着出来るものを選ぶことを推奨します。他のレビューでも記載していますが、平面駆動タイプのイヤホンは低域がもっとも特徴が出やすく、直線的で歪みの無い中低域はこのタイプの大口径ドライバーを搭載したイヤホンならではのサウンドでしょう。
NICEHCK F1NICEHCK F1」もその特徴をしっかり活かしており、自然な滑らかさとともに高い解像感と分離性を持っています。いわゆるキレ重視のチューニングではありませんが非常に粒立ちが良く情報量の多い低域を鳴らしてくれるのは楽しさがあります。また重低音も非常に深く、そして重く鳴ります。これはドライバーの感度をある程度下げてしっかり鳴らす必要がある仕様としたことで得られるサウンドでしょう。いわゆるHiFi(原音忠実)の方向とは異なりますが、リスニングイヤホンとして非常に楽しく、心地よさがあります。


■ まとめ

NICEHCK F1というわけで、「NICEHCK F1」は今年数多くリリースされた14mm級平面駆動ドライバー搭載イヤホンのなかでも、先行する各メーカーの製品の「いいとこ取り」ともいえるアプローチをフィルターチューニングで行い、他の機種より多少鳴らしにくさはあるものの、ある程度「わかっている」マニア層をターゲットとすることで、低域の表現などより高い質感を実現しています。また中音域付近でハーマンターゲットぽいニュートラルさもあるものの、サウンドバランスはドンシャリ寄りでよりリスニングの楽しさに振ったチューニングも良いですね。ちょっと上質なヘッドホン的な楽しさもあるイヤホンとして結構利用する機会も増えそうですね(^^)。