TANGZU Wan'er S.G

こんにちは。今回は「TANGZU Wan'er S.G」です。 最近注目度が向上している中国のイヤホンブランド「TANGZU」のエントリークラスの製品です。とはいえ上位モデルを踏襲したサウンドバランスで2ドル以下、3千円以下の超低価格モデルとしてはなかなかの完成度だと思います。製品名の「Wan'er S.G」は「唐」の女帝「武則天」に仕えた才女「上官婉児」のことで、言うまでも無く「武則天」=「Zetian Wu」は同社の平面駆動ドライバー搭載の人気モデルの名称、という関係性も興味深いですね。

■ 製品の概要について

「TANGZU Audio」は新しい中華イヤホンブランドで、2021年に「T Force Audio」というブランド名で最初の製品をリリース。その後ブランド名を現在の「TANGZU Audio」に改名しました。今回の「TANGZU Wan'er S.G」は同社の同社の「王朝シリーズ」のエントリーモデルに位置づけられます。前述の通り「Wan'er S.G」は「上官婉児」の英語表記で、中国史上唯一の女帝「武則天(Wu Zetian)」に仕えた才女とされます。「TANGZU Zetian Wu (武則天 / Wuzetian)」とのサウンドの違いも興味深いですね。
→ 過去記事: 「TANGZU Zetian Wu (武則天/Wuzetian)」 14.5mm平面駆動ドライバー搭載。個性的フェイスと滑らかで質感の良いサウンドの高音質中華イヤホン【レビュー】

TANGZU Wan'er S.GTANGZU Wan'er S.G
TANGZU Wan'er S.G」は10mm シングルダイナミックドライバー構成で、歪みの少ないPET樹脂振動板およびデュアルキャビティ構造を採用。入念にチューニングを繰り返し、バランスが取れたサウンドを実現しています。
TANGZU Wan'er S.GTANGZU Wan'er S.G
本体カラーは「白」と「黒」でこれは中国の陰陽哲学を表し、フェイスプレートには縁起が良いとされる雲模様をプリントしています。「TANGZU」は、唐代の最も偉大な詩人として、その才能で中国の歴史の中で最も有名な女性のひとりであり、中国初の女性首相として知られる「Wan'er S.G(上官婉児)」に敬意を示し、この名称を付けることで、同価格帯で前例のない優れたパフォーマンスを実現することを目指しています。
TANGZU Wan'er S.GTANGZU Wan'er S.G

TANGZU Wan'er S.G」の購入はLinsoulの直販サイトまたはアマゾンの「LINSOUL-JP」にて。
価格は19.90ドル、アマゾンでは2,920円です。
Linsoul(linsoul.com): TANGZU Wan'er S.G
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): TANGZU Wan’er S.G


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

TANGZU Wan'er S.G」のパッケージは20ドル以下の低価格イヤホンとは思えないくらいしっかりしていますね。カバーアートが非常に綺麗です。
TANGZU Wan'er S.GTANGZU Wan'er S.G

パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピースが2種類でグレーのタイプの3サイズ、「AET07」風のタイプが4サイズ、そしてカバーアートと同じデザインのクリーニングクロスが付属します。
TANGZU Wan'er S.GTANGZU Wan'er S.G

TANGZU Wan'er S.G」の本体はクリアカラーの樹脂製でステムノズル部分は金属製。流石に低コスト感は否めませんが価格を考慮すれば納得できる範囲でしょう。コネクタはqdcタイプですね。
TANGZU Wan'er S.GTANGZU Wan'er S.G
ケーブルは以前のKZやTRNの安価なモデルに付属するような細い銀メッキ線タイプ。この辺はリケーブル前提と考えた方が良いかも知れません。
TANGZU Wan'er S.GTANGZU Wan'er S.G
いっぽうでイヤーピースはグレーの一般的なものに加えて、いわゆる「AET07」タイプのものが4サイズ付属しているのは有り難いですね。多くの場合はこのイヤーピースで問題ないでしょう。また他にも各社のイヤーピースでよりフィット感を高めるのも良いと思います。


■ サウンドインプレッション

TANGZU Wan'er S.GTANGZU Wan'er S.G」の音質傾向はやや中低域寄りでニュートラルなサウンド。適度な明るさと鮮やかさがあり、ボーカル域を中心に広い音場感を楽しめる、ライトユーザーを含むより多くのターゲット層に幅広く使いやすいサウンドといった印象です。
サウンドバランス自体はメーカー資料の通り、同社の「Shimin-Li」と比較的近いようですが、印象としては「TANGZU Wan'er S.G」のほうがオールラウンダーな印象で、高域および低域が全体として過不足無くしっかり鳴っているように感じます。いっぽうで「Shimin-Li」と比べて解像感や分離感は価格相応の違いがあります。
TANGZU Wan'er S.G」は各音域の伸びるところは伸び、沈むところはしっかり沈むバランスの良さと音場の広さがあり、コスト面の制約の中ではよくまとまっている製品だと感じます。「Shimin-Li」はより高級感のある外観とケーブルを使用しており、音質面は駆動力のある再生環境でじっくり楽しみたい印象ですが、「TANGZU Wan'er S.G」はより手軽に聴きやすく心地よいサウンドを楽しめる製品という位置づけのようです。

TANGZU Wan'er S.G」の高域は比較的スッキリと伸びつつ、刺激の少ない聴きやすい音を鳴らします。解像度は価格なりという印象ですが明るく適度に鮮やかさがあるため全体のバランスとしては不満を感じることは少ないでしょう。多少ドライで主張もそれほど強いわけではありませんが、伸びや煌めきも十分に感じられる点は「Shimin-Li」より好印象です。

TANGZU Wan'er S.G中音域はニュートラルで癖の無い音を鳴らします。「Shimin-Li」や上位モデルの「Zetian Wu」も含め、「TANGZU」の製品は中音域が比較的柔らかい印象がありますが、「TANGZU Wan'er S.G」もボーカル域で自然な柔らかさと僅かに温かみがあります。そのため寒色系でキレ重視の製品が多い同価格帯の低価格中華イヤホンと比べると結構ウォームに感じるかも知れませんね。音場は広くボーカルの距離は自然です。解像感や分離感がそれほど高いイヤホンではないため、空間表現はややのっぺりとしたように感じる場合もありますが、比較的正確な定位感があるためリケーブルやバランス化で情報量や分離を向上することで改善が期待できます。

低域は適度な量感とインパクトがありボーカル域を心地よく下支えします。ミッドベースは直線的で過度な響きは無く中高域をマスクすることはありません。重低音もこの価格帯としては深さおよび重量感があると思います。締まりの良さ、タイトさで解像感やスピード感を補っているため、全体として聴きやすく楽しさを感じさせます。。


■ まとめ

TANGZU Wan'er S.GTANGZU Wan'er S.G」は、アンダー20ドルという超低価格帯のイヤホンのなかで、デザイン的にも音質的にも派手さはありませんが「とにかくバランスが良く、使いやすくまとまっている」イヤホンだと感じました。キレッキレのサウンドでは有りませんし、低域がヘビーなイヤホンでもないため、そのような傾向を求める方には合いませんが、十分に明るく軽快で、同時に聴きやすい柔らかさを持ったイヤホンとして幅広い層の「日常使い」としてお勧めできるイヤホンだと思います。また適度にドライで音場が広く、定位も正確ですのでゲーミング用としても十分に使えそうですね。お手頃価格で楽しめる音の良いイヤホンを探している方には良い選択肢のひとつといえると思いますよ。