KZ PR1 Pro

 こんにちは。今回は「KZ PR1 PRO」です。先日レビューした平面駆動ドライバー搭載モデルの「KZ PR1」のアップグレードモデルです。「CCA PLA13」「KZ PR1」と非常に早いペースでリリースされていますね。2022年は14mm級の大型サイズの平面駆動ドライバー搭載のイヤホンが100ドル超~200ドル台で各社よりリリースされ非常に活況でしたが、KZ/CCAは独自に開発した13.2mmサイズのユニットを採用。アンダー100ドルの同社らしい低価格攻勢で差別化をすすめています。

■ 製品の概要について

私のブログでは毎度おなじみ低価格中華イヤホンブランド「KZ(KZ ACOUSTICS)」の「13.2mm 平面駆動ドライバー」搭載したモデルとして既に販売されている「KZ PR1」 のアップグレードモデルが、今回紹介する「KZ PR1 PRO」となります。「CCA PLA13」、「PR1」「PR1 HIFI」と続き、さらに数ヶ月ペースでの矢継ぎ早での上位バージョンのリリースはかなり異例ですが、それだけ同社にとっても注力しているモデルと言うことでしょう。
→過去記事:「KZ PR1 (Balanced)」「KZ PR1 HIFI」 独自13.2mm平面ドライバー搭載。それぞれ異なるチューニングが楽しい1万円クラスの高音質中華イヤホン【レビュー】
→過去記事:「CCA PLA13」 13.2mm平面磁気ドライバー搭載で60ドル台を実現。十分な再生環境を揃えれば結構高音質が楽しめる低価格中華イヤホン【レビュー】

ちなみに「KZ PR1 PRO」の発表直後、プレリリース時にはすでに「PR1」または「PR1 HIFI」、および姉妹ブランドの「CCA PLA13」を購入済みのユーザーを対象に同社公式サイトにて「KZ PR1 PRO」を半額で販売するキャンペーンが実施されました。販売間隔が短かったことをKZ自身がなにより認識していたようですね。

KZ PR1 ProKZ PR1 Pro
KZ PR1 PRO」も主要な仕様はベースとなった「PR1」を踏襲しており、KZ独自の13.2mm平面駆動ドライバーをシングルで搭載します。2〜8μmの極薄銀メッキ振動板と両面で14個のN52磁気アレイによる独立したデュアルキャビティ構造を採用し高速なレスポンスと繊細で透明感のある表現力に加え、より広い音場、より少ない歪み、優れた高音を実現しています。
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フェイスプレートは軽量なアルミニウム合金を使用し、メッキ処理による美しい外観と透明樹脂シェルによる軽量デザインを採用しています。また「KZ PR1 PRO」ではより原音充実性(Hi-Fi)を高めたサウンドチューニングを実施しており、数千回のテストを経て開発されています。より高水準のサウンドを低価格で楽しめることを目指しているようです。
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そして「KZ PR1 PRO」ではアクセサリーのアップグレードも行われています。付属のイヤーピースをアップグレードし、さらにメモリフォームイヤーピースを付属しています。ケーブルも8芯タイプの高純度銀メッキ線アップグレードケーブルが標準で付属しています。
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KZ PR1 PRO」の購入はAliExpressの主要ストアまたはアマゾンにて。
価格は〜89ドル、アマゾンでは13,000円程度です。
Amazon.co.jp(GK Offical Store): KZ PR1 PRO


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

今回私はプレセールス時の半額キャンペーンで購入しました。パッケージサイズは通常版の「PR1」および「PR1 HIFI」と同様ですが、今回は付属品が結構アップグレードされています。
KZ PR1 ProKZ PR1 Pro
具体的には付属ケーブルがアップグレード版の8芯銀メッキ線となっており、イヤーピースは従来とは異なる開口部の大きいシリコンタイプが2サイズ、そしてウレタンタイプが1ペア付属します。「PR1」のレビューでは「リケーブル必須」といった内容の記載を行っており、イヤーピースもKZの場合交換がやはり必須ですが、今回の「KZ PR1 PRO」では最初からこの二つのアクセサリーが最初からアップグレードされているわけです。

KZ PR1 ProKZ PR1 Pro
本体は金属フェイスと樹脂製ハウジングの組み合わせで「PR1」と同様ですがシェル部分はより透明感のあるクリアシェルが、フェイス部分は光沢のあるメッキ処理が表面に施されています。13.2mmの平面駆動ドライバーはクリアシェル越しでも存在感がありますね。
KZ PR1 ProKZ PR1 Pro
ハウジング部分の本体形状は従来のKZのデザインを踏襲しており、装着感もほぼ同様です。最近は「CCA HM20」のようなよりコンパクトなマルチドライバーモデルも登場してますが、「PR1」および「KZ PR1 PRO」では13.2mmの大口径ドライバーをみっちりと詰めることで従来のドライバーサイズに収めた、という表現の方が適切かもですね。
KZ PR1 ProKZ PR1 Pro
付属ケーブルは8芯の銀メッキ線で比較的柔らかく取り回しは良好です。ウレタンフォームのイヤーピースはシリコンに比べて解像感がやや下がるため好みは分かれるかも知れません。ただ耳に密着することで遮音性は向上します。シリコンタイプも開口部が広くなっているため、従来のものより格段に良い印象ですが、これについては自分の耳によりフィットするものに好感する方が良いでしょう。


■ サウンドインプレッション

KZ PR1 ProKZ PR1 PRO」のサウンドは、従来の「KZ PR1」「KZ PR1 HIFI」よりニュートラルさが増しており、伸びのある高域と歪みが少なく各音域まで非常にスムーズなサウンド。傾向としてはフラット寄りの弱ドンシャリで、本体のサウンドバランスは「KZ PR1 HIFI」のサウンドバランスを踏襲し高域を中心に改良された印象です。また付属ケーブルがアップグレードされたことにより、「PR1」より高域がより伸びやすくなったようです。仕様としては「KZ PR1 PRO」がインピーダンス16Ω(±3Ω)、感度100dB/mW(±3dB)で、「KZ PR1」「KZ PR1 HIFI」の96dB(±3dB)より若干鳴らしやすくなっています(この差は本体では無く単純にケーブルの違いによるものかもしれません)。

とはいえ「KZ PR1 PRO」のポテンシャルを十分に引き出すためには100時間程度のエージングと、より情報量が多いケーブル、駆動力のある再生環境など「PR1」「PR1 HIFI」同様にある程度上流を揃える必要があること自体は変わり有りません。付属ケーブルの情報量が多少増えたことで再生環境次第である程度はカバーできるものの、特にボーカル域や低域の奥行きを引き出すためには「リケーブル推奨」だろうと思います。

KZ PR1 Pro「PR1」のレビューでも記載した通り、KZの13.2mm平面駆動ドライバーは他社のいわゆる14mm級ドライバーと比較し、より低コストと若干小型である反面、鳴らしやすさという点ではそれ以前の平面駆動に近く、プレーヤーの駆動力は大きな要素になります。そのうえで既存の平面駆動同様に中低域の歪みの少ない質感の良さが特徴となるわけですが、「KZ PR1 PRO」はさらにドライバー内の磁気回路などをチューニングし高域の反応を向上させることで、100ドルオーバー、あるいは200ドル級の14mm級平面ドライバーに匹敵するサウンドを実現しようと挑戦しているのが伺えます。「KZ PR1 PRO」は特に「LETSHUOER S12」あたりに結構近いバランスで(意図的にやってるかも)、ケーブルでかなり印象が変わる点はあるものの、リケーブルも含めしっかり上流を揃えれば確かに音質面もこのクラスにかなり近づいているかもしれませんね。とはいえ、「KZらしい」寒色系のやや派手目の音色自体は「KZ PR1 PRO」も踏襲しており、「LETSHUOER S12」とは聴いた印象はかなり異なります。

KZ PR1 PRO」の高域はスッキリした印象の伸びのある音を鳴らします。再生環境によっては従来の「PR1」よりやや派手目に感じる場合があるかもしれません。明瞭かつ歪みの非常に少ない直線的な音で、硬質ながら刺さり等はある程度コントロールしつつ煌めきや鋭さは「PR1」「PR1 HIFI」より向上しています。
KZ PR1 Pro中音域はニュートラルで癖の無い音を鳴らします。従来の「PR1」よりさらに癖が無くありのままの音を比較的高い解像感で鳴らす印象。ボーカルは比較的近く凹みはほぼ感じませんが、付属ケーブルだと音場感はまだ表現し切れていないかも。より情報量が多いケーブル、特にバランス化によって広い音場感や見通しの良さなどが結構化ける印象は「PR1」「PR1 HIFI」以上かもしれませんね。硬質感のある明瞭サウンドでやや人工的にも感じられる解像感がありますが、従来のKZ製ハイブリッドに比べるとそこまで派手さは無く、ちょっとだけ「大人になった」印象もあります。まあ「ちょっとだけ」ですね。
低域は力強さのある直線的な音を鳴らしますが、バランスとしては「PR1」「PR1 HIFI」より若干ニュートラルに寄った印象。平面駆動ドライバーのメリットを感じやすく従来のKZ製イヤホンのパワー押しの印象より格段に質感は優れています。ミッドベースは直線的かつタイトな印象で重低音は分離の良い解像感とスピード感があります。


■ まとめ

KZ PR1 Proというわけで、「KZ PR1 PRO」はベースとなった「PR1」および「PR1 HIFI」と比べて見事に後出しじゃんけんな印象です。方向性としては「PR1 HIFI」のアップグレード版となりますが、まあこれ1個持っていれば「PR1」「PR1 HIFI」は要らないかも、という意見は確かに頷けるかも。まあAliExpressでは「PR1」「PR1 HIFI」の価格もかなり下がってきているので、よりお手頃価格で購入できるというメリットが今後ありそうとは思います。正直50ドル以下なら「PR1」「PR1 HIFI」は相当にお買い得だと思います。
そして「KZ PR1 PRO」ですが、PRO版といういより細かいブラッシュアップを経て完成形に近づいたモデル、という感じで、おそらく今後同社の定番モデルとして長く販売されることになるのでは、と感じられます。まだアマゾンでは割安感はないですが、今後日本でも1万円以下で購入できるようになるとこのクラスの音質面でさらに大きく底上げになりそうですね。平面駆動を楽しむための1台としても十分にお勧めできると思います。ただ、本気で楽しむためには環境を揃える費用が別途かかるかもしれませんが(^^;)。