HarmonicDyne Devil

こんにちは。今回は「HarmonicDyne Devil」です。以前350ドルオーバーの「P.D.1」を購入レビューしたことのある「HarmonicDyne」ですが、今回は200ドルクラス、3万円以下とちょっと購入しやすくなりました。無骨なアルミ製シェルにデュアルCNTドライバー搭載の2DD構成となかなか渋めのイヤホンではありますが、音質面では伸びのある低域とタイトで深みのある低域、そして奥行きのある音場感と、「P.D.1」の印象も踏襲しつつ、より鮮烈でスッキリした高域を持つドンシャリサウンドが楽しめます。

■ 製品の概要について

「HarmonicDyne」は「Zeus」や「Helios」といった個性的なヘッドホン製品をリリースしているメーカーで主に「Linsoul」系で販売されています。同社のイヤホン製品としては平面駆動ドライバーとCNT&DLC複合振動板ドライバーのハイブリッド構成を採用したフラグシップの「P.D.1」が2021年後半より販売されており、さらに今回の「HarmonicDyne Devil」が2022年にリリースされました。
過去記事: 「HarmonicDyne P.D.1」 平面駆動+CNT&DLC複合ダイナミックのハイブリッド構成、ちょっとディープなマニア向け中華イヤホン 【棚からレビュー】

HarmonicDyne Devil」は2年間の研究開発を経て製品化。10mm カーボンナノチューブ(CNT)振動板ダイナミックドライバーを2基搭載するデュアルドライバー構成で、特に深みのある低音、パワフルかつクリーンな高音が優れています。本体は音響チャンバーの均一性を確保するために、航空グレードのCNCアルミニウム合金を5軸CNC加工により成形したシェルを採用しています。
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このデュアルドライバーは、強力なネオジム(NdFeB)磁石と高精度CNC磁気回路システムによるテスラグレードの磁束を実現。さらに日本から輸入されたCCAWボイスコイルを採用し、16Ωの低インピーダンスのチューニングにより利用性も向上しています。
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HarmonicDyne Devil」は慎重なチューニング プロセスにより全体的に自然で、超低歪みと快適な滑らかさでバランスが取れています。優れた周波数応答により、曲の感情の小さな変化をすべて明らかにすることができ、よりリアルで感動的なリスニング体験を実現します。
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ケーブルはMMCX仕様で、0.08mm線材×33本+0.06mm線材38本で構成される高純度OCC同軸ケーブルが付属します。優れた電気絶縁性を確保するために被膜にはPVC絶縁層が追加され外被にはマイクロフォニックを避けるために高密度ナイロンで覆われた仕上げになっています。

HarmonicDyne Devil」の購入はLinsoul(linsoul.com)またはアマゾンの「LINSOUL-JP」にて。
価格は199ドル、アマゾンでは28,220円です。
Linsoul(linsoul.com): HarmonicDyne Devil
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): HarmonicDyne Devil


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

届いたパッケージはロゴ入りの段ボール箱に入っており、これがパッケージかな、と思って開封したらさらに中に黒箱のパッケージが入っていました。付属品は引き出し式の2段目にはいっているなど、比較的グレードの高いモデルを作っているメーカーらしいコストのかかったボックスです。
HarmonicDyne DevilHarmonicDyne Devil

パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースは2種類、それぞれS/M/Lサイズ、6.3mm変換プラグ、ロゴ入りメダル、ハードケース。今回ケーブルは4.4mm仕様でオーダーしたため、6.3mmの変換プラグは付属ケーブルでは使えないですが、まあそこら辺はご愛嬌ということで。
HarmonicDyne DevilHarmonicDyne Devil

本体は重厚感のあるアルミニウム合金製。本体のプリントはR/L表記のみでモデルやメーカー表記は一切プリントされていない硬派な仕様です。この辺は「P.D.1」とも共通していますね。ステムノズルはちょっと長めですがフェイス部分は比較的コンパクトなため耳への収まりは良い印象。イヤーピースは小さめのもので奥まで装着するか密着性の高いタイプを使用する方がよさそうです。
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シェルサイズは「HarmonicDyne Devil」も「P.D.1」もほぼ同じですが意匠は結構異なり、側面部分は「P.D.1」のほうが僅かに厚みがあるものの、「HarmonicDyne Devil」はフェイス部分が側面にベントを備えた段差がある仕様でこの厚みが少しある分で全体としては同じくらいになっています。
HarmonicDyne DevilHarmonicDyne Devil
ケーブルはナイロン製の布巻被膜で適度な太さがあります。ちょっとゴツい印象もありますが取り回しは良いようです。「P.D.1」が8芯銀メッキ線(3.5mm)と8芯ミックス線(4.4mm)の2本入りでしたので、ケーブルの使いやすさは「HarmonicDyne Devil」のほうが良さそうですね。


■ サウンドインプレッション

HarmonicDyne DevilHarmonicDyne Devil」の音質傾向はハッキリしたドンシャリ傾向で量感的にはどの音域も強めの主張があるものの、特に高域のスッキリした伸び感と低域のタイトな締まりが分かりやすく、鋭さを持ったキレ感がとても楽しく感じられます。刺さり等はある程度コントロールされているものの、曲によっては金属質な刺激もしっかりあるので、穏やかで聴きやすい音を好まれる方には、多少やかましく感じるかも。個人的には癖の少ないサウンドにちょっと物足りなさを感じている方にはぜひとも試して頂きたい、外観のソリッドさを裏切らない楽しいサウンドです。

HarmonicDyne Devil」の高域はかなり特徴的で、このイヤホンの好き嫌いがハッキリ分かれるポイントと言えるでしょう(個人的には好きです)。「P.D.1」より低域がタイトで量的にも少し抑えられたため、相対的に高域の主張がより鮮明に感じられるようになったという感じもあります。印象として硬質で金属感のある「カーボンナノチューブらしさ全開」のシャープな音を鳴らします。分離は良くどこまでも伸びるような解像感も楽しいですね。刺さりは多少コントロールされている印象もありますが鋭い音は相応に鋭く、煌めきもしっかり感じさせます。結構聴き疲れはしやすいかも知れませんね。ただしイヤーピースでもかなり印象が変化します。より耳奥までしっかり挿入しフィットさせることでかなり刺激的で明瞭さと鋭さを感じますが、逆にイヤーピースを換えることで結構聴きやすくも出来るようです。

HarmonicDyne Devil中音域はシャープで分離感のある音を鳴らします。ボーカル域のバランスはフラットですが、中高域にアクセントがあり曲によっては歯擦音が少し発生します。抜けは良く女性ボーカルやピアノの高音は伸びがあります。男性ボーカルなどの中低域はタイトでニュートラルな印象ですが、低域がタイトなこともあり余韻は少なく、中高域の鮮やかさに比べるとちょと大人しく感じるかもしれませんね。いっぽうで音場は広く立体的で、特に奥行き感があります。ただし、高域および低域の演出感から定位の正確性を求めるような分析的な聴き方にはあまり向きません。基本はキレの良さと音場感を楽しむリスニングイヤホンという印象のチューニングです。

低域はエネルギーを感じつつしっかりとした締まりのある音を鳴らします。「P.D.1」の前面に出るパワフルな低域と比べると多少控えめに感じますが、それでも非常に力強さがあり、重低音も深く重量感があります。「P.D.1」が非常に強く前面に出る低域だったため高域の鮮明さが多少失われていた感もあったのに対し、「HarmonicDyne Devil」の低域は非常にタイトで直線的な印象のため中高域との分離がより向上し、キレの良い、全体としてスッキリとした印象に変化した感があります。いっぽうで重低音は解像感をもちつつ深く重量感があるため、奥行きのある立体的な音場感を演出してくれます。


■ まとめ

HarmonicDyne DevilHarmonicDyne Devil」は硬派な外観に違わず、音質面でもしっかり「硬派」で、ハードなドンシャリサウンドを楽しませてくれます。とはいえ全体のバランスは「P.D.1」と比べるとむしろニュートラル方向にチューニングされており、特にボーカル域は思ったよりフラットで凹むことなく音源しっかり表現してくれます。より低域がタイトにチューニングされたことで、特に高域は「P.D.1」と比べても鮮烈さと明瞭感の強さを感じさせる、かなり特徴的な印象となっています。結局どちらのモデルも聴きやすくバランスの良い、とか、ハーマンターゲット云々という世界とは大きく離れており、好きな人に響けば良い、という分かりやすさが好感できます。選び方としては低域好き向けの「P.D.1」に対して、高域好き向けの「HarmonicDyne Devil」、という選び方も出来るかも知れませんね。個人的にはちょっと聴き疲れしやすいですが結構好きなイヤホンです(^^)。