KiiBOOM Allure

こんにちは。今回は「KiiBOOM Allure」です。これまでメカニカルキーボードなどの製品を中心に展開していた「KiiBOOM」というブランドが新たにIEM製品に進出するということで、 早速「Allure」と「Evoke」という2種類の製品が同時にリリースされました。今回両製品が手元に届きましたので順に紹介していきたいと思います。今回はメタルハウジング仕様で「ベリリウムコート・DLCポリマー振動板ダイナミックドライバー」をシングルで搭載する「KiiBOOM Allure」を紹介します。

■製品の概要について

「KiiBOOM」はメカニカルキーボードなどの製品を手がけるブランドで、新たにイヤホン(IEM)製品にも進出することとなり、同時に「Allure」と「Evoke」という2種類の製品をリリースしました。
KiiBOOM Allure」はCNC加工された金属製シェル「にベリリウムコート・DLCポリマー振動板ダイナミックドライバー」をシングルで搭載するイヤホンです。価格も99ドルと比較的手頃な価格設定になっている点も魅力のモデルといえるでしょう。
KiiBOOM AllureKiiBOOM Allure
KiiBOOM Allure」が搭載するダイナミックドライバーは、DLC(Diamond-Like Carbon)ポリマー振動膜にベリリウムを三層でメッキ処理を施し、振動膜を硬化および強化しています。表面張力の増加により非常に優れた応答性能を実現し、よりハードな低音のインパクトと透明度の高い高音のディテールも実現します。
KiiBOOM AllureKiiBOOM Allure

また「KiiBOOM Allure」ではマグネット、振動板、内部キャビティ構造など、ダイナミックドライバーの各コンポーネントで完璧な音質を目指して設計。さらに周波数とインピーダンスを調整し全ての周波数帯域でのバランスを追求しています。これにより広い音場感と高域も詳細でありながら自然なサウンドに調整されています。「KiiBOOM Allure」はスタジオモニターのような正確性をもちつつ日々のリスニングに快適をもたらすチューニングを実現しています。
KiiBOOM AllureKiiBOOM Allure

購入は「KiiBOOM」の公式サイトまたはAliExpressの公式ストア等にて。
KiiBOOM Allure」の価格は99ドルです。
KiiBOOM(www.kiiboom.com):  KiiBOOM Allure


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

パッケージは結構大きめのしっかりした作りのボックスです。手慣れた感じのパッケージデザインはメカニカルキーボードなどのサプライ製品の実績のあるメーカーらしさも垣間見えますね。
KiiBOOM AllureKiiBOOM Allure
パッケージ内には非常に大きなサイズのレザーケースが入っており、製品はケース内に収容されています。内容はイヤホン本体およびケーブルとイヤーピースがS/M/Lサイズ、と非常にシンプルです。
KiiBOOM AllureKiiBOOM Allure

本体はCNC加工されたアルミ製の金属シェルで耳にフィットしやすい形状です。グリーンのウッドパネルにレジンコートしたフェイスプレートが印象的です。耳への収まりの良いサイズ感とデザインで装着性は良好です。コネクタは2pin仕様で埋め込みのないフラットな仕様です。
KiiBOOM AllureKiiBOOM Allure
ちなみに、「KiiBOOM Allure」のシェル形状は以前レビューした「THIEAUDIO Elixir」ほぼ同じでカラーリングと表面処理の違い程度です。私のレビューでも時折ありますが、中華イヤホンは部品ごとの分業化が進んでいる分野ですのでこのようなパターンはそれほど珍しくはありません。なお、「KiiBOOM Allure」のドライバーは「DLCポリマー振動板のベリリウムメッキ3層構造」とのことですが、「THIEAUDIO Elixir」はベリリウムメッキされたCNT振動板の多層構造と、材質に違いはあるもののアプローチは比較的似ているため、同じファクトリーで製造されている可能性もありますね。
KiiBOOM AllureKiiBOOM Allure
ケーブルは布張りの0.78mm 2pin仕様。使いやすい太さの4芯線でしっかり編み込まれてているため取り回しも良く見た目にも高級感がありますね。イヤピースは付属品のほか、他にもよりフィット感を高めるため定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、より密着感の強いタイプではSpinFit「CP100+」などへの交換も良いと思います。


■ サウンドインプレッション

KiiBOOM AllureKiiBOOM Allure」のサウンドは癖の無いニュートラルな印象でバランスとしては若干U字寄りの印象。音質傾向も前述の「THIEAUDIO Elixir」と割と似ていますが「KiiBOOM Allure」のほうがフラット方向の印象です。また高域は「KiiBOOM Allure」のほうが聴きやすくやや大人しめにまとめられているように感じます。「THIEAUDIO Elixir」は全体的なバランスを維持しながら要所要所で非常に個性的な音を鳴らす傾向があり正直結構マニアックなイヤホンでしたが、好みに刺されば唯一無二な感じもあった製品でした。それに対して「KiiBOOM Allure」もベリリウムコートらしい硬質さと分離の良さ、スピード感を持ちつつバランスとしては非常にニュートラルで、かつ刺激を抑え聴きやすくまとめられている、という点で、より幅広い層に向けたチューニングだと感じます。

KiiBOOM Allure」の高域はスピード感を持ちつつ聴きやすい音を鳴らします。曇りなどはありませんがバランスとしてはやや抑え気味のため、高高域にもう少し煌めきや鮮明さが欲しく感じる場合もありますが、ボーカル域を引き立たせるチューニングとして聴きやすさはあります。なお、リケーブルなどで高域の伸びを強調させたりバランス接続などで駆動力を稼ぐことで伸びやかさに変化を持たせることは可能なようです。

KiiBOOM Allure中音域は非常にニュートラルで、ありのままの音を鳴らし、ボーカル域と演奏の見通しも良い印象。良く言えば忠実性が高いサウンドですがリスニング的には多少淡泊に感じる場合もあるかもしれませんね。全体としてはベリリウムぽい寒色傾向でスピード感もありますが、同時にDLCポリマーの自然な解像感と音像表現も実感できます。音場は平均的からやや広い程度ですが、定位は比較的正確さがあります。とはいえモニター的な分離感ではないため神経質な聴き方には向きません。高域同様に聴きやすく自然な質感を意識したチューニングと言えるでしょう。

低域は適度な量感があり、自然な輪郭を維持しつつ過度に膨らむこと無く適切なアタックとスピード感をもたらします。重低音は深く思い印象。タイトさやキレを強調する印象では有りませんが分離は良く音数が多くても籠もることはほぼありません。高域同様駆動力の違いにより印象に変化があるため、パワーのあるプレーヤーやアンプの場合ハイゲインで、場合によっては情報量の多いバランスケーブルなどにリケーブルをすることで力強さやキレの良さがより強調されます。


■ まとめ

というわけで、「KiiBOOM Allure」は非常にニュートラルで聴きやすくまとめられた印象のイヤホンでしたが、同時に非常に個性的な「片鱗」を随所に感じられる製品でもありました。DLCポリマー振動板にベリリウムメッキを多層で施すドライバーを搭載するイヤホンらしく、両方の特性を持つ個性的なサウンドが各所で感じられるのはとても興味深い印象でした。
KiiBOOM Allureイヤホンとしては非常にポテンシャルが高いようですが、大人しめの印象のケーブルなど全体として、やや万人向けに聴きやすくまとめているという側面も感じられました。そのためmリケーブルや再生環境を追い込むことでイヤホンの特性を引き出してみる、というのもなかなか楽しいと思います。おそらくポテンシャルとしては2倍以上の価格設定の「THIEAUDIO Elixir」に匹敵する部分もあり、イヤホンとしての使いやすさと同時に、マニア向けとしてはよりその実力を引き出す楽しみ、という意味で「KiiBOOM Allure」の99ドルの価格設定は結構なディスカウントと言えるかも知れませんね。興味のある方はぜひとも挑戦してみていただければと思います(^^)。