
こんにちは。今回は「KiiBOOM Evoke」です。前回に引き続き、イヤホンブランドとしては新しい「KiiBOOM」から同時リリースされた最初のモデルになります。前回の「Allure」はシングルダイナミック構成の金属製シェルのイヤホンでしたが、「KiiBOOM Evoke」は3Dプリントによるレジン製の2BA+1DD構成のハイブリッドモデルになります。
■ 製品の概要について
「KiiBOOM」はメカニカルキーボードなどの製品を手がけるブランドで、今後さまざまな分野への製品展開を計画しているようで、イヤホン(IEM)製品としては同時に「Allure」と「Evoke」という2種類の製品をリリースしました。
今回の「KiiBOOM Evoke」は美しいレジン製の3DプリントシェルにLCP振動板ダイナミックドライバーと高域、中音域用の2機のバランスド・アーマチュア・ドライバーを搭載した2BA+1DD構成のモデル。フェイスデザインにより169ドルの「ヒヤシンス」(Jacinth)と「ターコイズ」(Turquoise)、そして199ドルの「エメラルド」(Emerald)の3モデルが選択できる仕様になっています。


高域用のツィーター、中音域にフルレンジユニットと2機のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを配置し、低域用にダイナミックドライバーのウーファーを配置する3Wayの2BA+1DD仕様は3つの音域にそれぞれ最適なドライバーを配置する最も安定したハイブリッドの構成のひとつといえるでしょう。


「KiiBOOM Evoke」は低域用に10mmサイズの液晶ポリマー(LCP)振動板ダイナミックドライバーを採用し、深みのあるパワフルな低音の応答を実現。高域用、中音域用にはどちらも米国Knowles製のBAドライバーを採用。中音域にはフルレンジ仕様のユニットを使用し、低音域と調和し、フルボディの中音域を実現しながら、音の表現をフラットでニュートラルに保つように慎重に設計されています。これに高域用BAのマイクロツイーターを組み合わせることで3つのドライバーはパフォーマンスと効率の比率において最高のバランスを実現します。


「KiiBOOM Evoke」のハウジングは補聴器などで使用される欧州の医療グレードのレジンを使用。肌への安全性と長時間のリスニングの快適性を確保しています。3Dプリントにより成形後に手作業で研磨され仕上げられています。
「KiiBOOM Evoke」の購入は「KiiBOOM」の公式サイトまたはAliExpressの公式ストア等にて。
価格およびカラーバリエーションは199ドルの「エメラルド(Emerald)」、
そして169ドルの「ヒアシンス(Jacinth)」と「ターコイズ(Turquoise)」が選択可能です。


「KiiBOOM Evoke」のほうもパッケージ内には非常に大きなサイズのレザーケースが入っており、製品はケース内に収容されています。内容はイヤホン本体およびケーブルとイヤーピースがS/M/Lサイズ、と非常にシンプルです。


「KiiBOOM Evoke」の本体は非常に軽量なレジン製で。表面処理は非常に美しく、フェイスプレートの光沢も綺麗です。今回は「ヒアシンス(Jacinth)」カラーの製品が届きました。シェルサイズは2BA+1DDのレジン製としては少し大きめでステムノズルも太さのあるアルミ製が採用されていますが、耳へホールドしやすい形状のため装着性は比較的良好です。今後上位グレードの製品が出た際に共用となるのかも知れませんね。


イヤーピースについては「Allure」に付属するものと同じタイプのシリコン製が付属しますが、「KiiBOOM Evoke」はより耳奥までしっかり装着した方が良い印象となるため、小さめのサイズを選んだ方が良いでしょう。できればJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、より密着感の強いタイプではSpinFit「CP100+」などより自分の耳にフィットするイヤーピースへの交換が推奨です。


ケーブルは高純度単結晶銅(OFC)銀メッキ線の4芯タイプのケーブルが付属します。コネクタは0.78mm 2pin仕様です。しっかりした太さがあり編み込みも良く取り回しの良いケーブルです。
■ サウンドインプレッション
「KiiBOOM Evoke」の音質傾向は弱ドンシャリのリスニング傾向ながら非常にニュートラルな印象で各音域をバランス良くならします。製品説明では特に触れられてはいませんが、いわゆる「ハーマンターゲットカーブ準拠」に近い印象の音作りです。
ハーマンターゲットカーブというと、ここ1~2年で非常に「流行った」こともあり低価格帯でもサウンドバランスだけ合わせた製品がいくつも登場するなど「猫も杓子も」みたいなノリで多少ネガティブなイメージが広がった感もあります。高価格帯のフラット傾向のイヤホン同様にハーマンターゲット準拠の場合も「聴かせどころ」をニュートラルに鳴らすため、ドライバーの能力がシビアに感じられる(ごまかしがきかない)傾向があります。そのため低価格イヤホンでバランスだけ合わせるとドライバーの能力が追いつかず、粗さだけが目立つ、というケースも出てくるわけですね。
それに対して「KiiBOOM Evoke」ではKnowles製BAおよびLCP振動板ダイナミックドライバーの組み合わせによるチューニングは概ね成功しているようで、低域から中音域、特にボーカルを中心に自然な音像表現を維持しつつ、十分な質感での表現が実現できています。全体の印象としては、やはり「ハーマンターゲット準拠」を明言している2BA+1DD構成の「SeeAudio Yume」の最初のモデルが近く感じます。ただし、「Yume」の高域がやや伸びやかさが不足していた印象だったのに対し、「KiiBOOM Evoke」の高域はより鮮やかでメリハリを高めた印象があります。また低域も10mmと「Yume」より大口径のダイナミックドライバーを搭載していることもあり、より力強さがあり、重低音も深く重く鳴ってくれる印象です。
いっぽうで「KiiBOOM Evoke」は上流の駆動力など再生環境での変化が大きく、かなり印象が変わる可能性があります。私が据置き環境で使用することが多い「FiiO K9 LTD」あたりのアンプになると「KiiBOOM Evoke」は非常に鮮やかに気持ちよく鳴ってくれるのですが、多くのオーディオアダプター製品やミッドレンジのDAPのミッドまたローゲインの場合は、やや大人しく、透明感に物足りなさがあるかもしれません。このような場合は情報量の多い銀メッキ線のバランスケーブル等に替えることでかなり印象の変化が得られると思います。
また、ちょっと派手めに鳴るタイプのアダプター(省電力高出力タイプのアンプチップを使用している場合)や低価格DAPのハイゲインなどでは低域が強すぎたり音量をあげることで高域がちょっとキツめに出る場合もあります。この場合はOCCなどの純銅線タイプのケーブルを合わせてみると印象に変化が得られるかもしれませんね。高域の刺激などは調整されており一見すると使いやすい印象もありますが、実は結構玄人向けかもしれませんね。まあ本来ハーマンターゲットに寄せるようなイヤホンはこのような製品が多かったのですが。
「KiiBOOM Evoke」の高域は比較的鮮やかさのある明瞭な音を鳴らします。印象としては多少寒色寄りな鳴り方ですが、高高域は少し穏やかになっており鮮やかさのわりに突き抜けるような伸び感はありません。刺激はある程度コントロールされていますが、キラキラ感は結構強めに感じます。そのため再生環境や音量によってはやや派手目に感じる場合もありますね。例えば高域用ツイーターを2BAにして、BAユニット当たりの出力を分散させるなどすればより直線的な伸びやかさを得られるかもしれませんね。多少コストとの折り合いもあったかなと感じる部分ではありますが、それでもボーカル域を中心に考えればよくまとまっていると思います。
中音域は明瞭感を持ちつつ味付けのないニュートラルなサウンドで再生されます。高域同様に寒色傾向ながら輪郭は過度にエッジが立つこと無く自然な印象。同時にディテールの表現などは忠実感があります。ボーカル域は特に強調は無くありのままに再生される印象ですが、比較的見通しが良く凹む印象はありません。女性ボーカルの高音など中高域の伸びの部分に少し華やかさがあり、全体として暗く感じないようにチューニングされている印象です。また男性ボーカルの低音など中低域は適度な厚みがあり全体的に表現力の豊かさを感じさせます。似たバランスの無印「Yume」などと比べると多少メリハリ感があり滑らかさでは譲るものの、リスニング的な楽しさをより感じられるチューニングといえるでしょう。
低域は適度な締まりとスピード感があり分離の良い音を鳴らします。駆動力のある環境や小音量ではミッドベースはやや控えめな印象を受けますが、十分な解像感と膨らみを抑えたキレの良さがあり、中高域を自然な音場感で下支えします。いっぽうで重低音は非常に深く強さがあります。地響きするような重厚感のある音を鳴らすため、中高域との高い分離性を保ちつつ、迫力のある低域を楽しめます。ただ前述の通り再生環境によっては相対的に低域が強くなりこの重低音が響きすぎると感じる場合もありますので、その場合はケーブルやイヤーピースなどを検討することをお勧めします。
■ まとめ
といわけで「KiiBOOM Evoke」は前回の「Allure」とは全く異なったベクトルで非常に興味深く、ある意味では非常にトラディショナルなミドルグレードIEM製品という印象を受けました。質の高いシェルデザインと基本に忠実なサウンドデザイン。方向性としてはハーマンターゲットを意識しつつリスニング的な楽しさとイマドキの聴きやすさを意識したチューニングが施されていますが、上流への依存度が高いため決して万人向けの製品ではないという点をウィークポイントと捉えるか、あるいは「遊べる、追い込める余地」と捉えるかで評価にも違いが出るかも知れません。個人的にはアンダー200ドル程度の価格設定ということも踏まえて、分かっている方には十分におすすめできるイヤホンだと思いました。
「KiiBOOM」はメカニカルキーボードなどの製品を手がけるブランドで、今後さまざまな分野への製品展開を計画しているようで、イヤホン(IEM)製品としては同時に「Allure」と「Evoke」という2種類の製品をリリースしました。
今回の「KiiBOOM Evoke」は美しいレジン製の3DプリントシェルにLCP振動板ダイナミックドライバーと高域、中音域用の2機のバランスド・アーマチュア・ドライバーを搭載した2BA+1DD構成のモデル。フェイスデザインにより169ドルの「ヒヤシンス」(Jacinth)と「ターコイズ」(Turquoise)、そして199ドルの「エメラルド」(Emerald)の3モデルが選択できる仕様になっています。


高域用のツィーター、中音域にフルレンジユニットと2機のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを配置し、低域用にダイナミックドライバーのウーファーを配置する3Wayの2BA+1DD仕様は3つの音域にそれぞれ最適なドライバーを配置する最も安定したハイブリッドの構成のひとつといえるでしょう。


「KiiBOOM Evoke」は低域用に10mmサイズの液晶ポリマー(LCP)振動板ダイナミックドライバーを採用し、深みのあるパワフルな低音の応答を実現。高域用、中音域用にはどちらも米国Knowles製のBAドライバーを採用。中音域にはフルレンジ仕様のユニットを使用し、低音域と調和し、フルボディの中音域を実現しながら、音の表現をフラットでニュートラルに保つように慎重に設計されています。これに高域用BAのマイクロツイーターを組み合わせることで3つのドライバーはパフォーマンスと効率の比率において最高のバランスを実現します。


「KiiBOOM Evoke」のハウジングは補聴器などで使用される欧州の医療グレードのレジンを使用。肌への安全性と長時間のリスニングの快適性を確保しています。3Dプリントにより成形後に手作業で研磨され仕上げられています。
「KiiBOOM Evoke」の購入は「KiiBOOM」の公式サイトまたはAliExpressの公式ストア等にて。
価格およびカラーバリエーションは199ドルの「エメラルド(Emerald)」、
そして169ドルの「ヒアシンス(Jacinth)」と「ターコイズ(Turquoise)」が選択可能です。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
パッケージは前回の「Allure」と同じ大きさでカラーの異なるボックスです。やはりデザイン的にも手慣れた感じの洗練された印象がありますね。ところでラインアートで描かれた製品形状が実際の「KiiBOOM Evoke」と異なるのはご愛嬌ですね。もしかしたら当初はこのようなデザインで「Allure」と同じ金属製シェルだったのかもしれません。そういえばこのデザインどことなく某社のA○R○RAみが・・・。おっと余計な想像はやめておきましょう(^^;)。


「KiiBOOM Evoke」のほうもパッケージ内には非常に大きなサイズのレザーケースが入っており、製品はケース内に収容されています。内容はイヤホン本体およびケーブルとイヤーピースがS/M/Lサイズ、と非常にシンプルです。


「KiiBOOM Evoke」の本体は非常に軽量なレジン製で。表面処理は非常に美しく、フェイスプレートの光沢も綺麗です。今回は「ヒアシンス(Jacinth)」カラーの製品が届きました。シェルサイズは2BA+1DDのレジン製としては少し大きめでステムノズルも太さのあるアルミ製が採用されていますが、耳へホールドしやすい形状のため装着性は比較的良好です。今後上位グレードの製品が出た際に共用となるのかも知れませんね。


イヤーピースについては「Allure」に付属するものと同じタイプのシリコン製が付属しますが、「KiiBOOM Evoke」はより耳奥までしっかり装着した方が良い印象となるため、小さめのサイズを選んだ方が良いでしょう。できればJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、より密着感の強いタイプではSpinFit「CP100+」などより自分の耳にフィットするイヤーピースへの交換が推奨です。


ケーブルは高純度単結晶銅(OFC)銀メッキ線の4芯タイプのケーブルが付属します。コネクタは0.78mm 2pin仕様です。しっかりした太さがあり編み込みも良く取り回しの良いケーブルです。
■ サウンドインプレッション
「KiiBOOM Evoke」の音質傾向は弱ドンシャリのリスニング傾向ながら非常にニュートラルな印象で各音域をバランス良くならします。製品説明では特に触れられてはいませんが、いわゆる「ハーマンターゲットカーブ準拠」に近い印象の音作りです。
ハーマンターゲットカーブというと、ここ1~2年で非常に「流行った」こともあり低価格帯でもサウンドバランスだけ合わせた製品がいくつも登場するなど「猫も杓子も」みたいなノリで多少ネガティブなイメージが広がった感もあります。高価格帯のフラット傾向のイヤホン同様にハーマンターゲット準拠の場合も「聴かせどころ」をニュートラルに鳴らすため、ドライバーの能力がシビアに感じられる(ごまかしがきかない)傾向があります。そのため低価格イヤホンでバランスだけ合わせるとドライバーの能力が追いつかず、粗さだけが目立つ、というケースも出てくるわけですね。

いっぽうで「KiiBOOM Evoke」は上流の駆動力など再生環境での変化が大きく、かなり印象が変わる可能性があります。私が据置き環境で使用することが多い「FiiO K9 LTD」あたりのアンプになると「KiiBOOM Evoke」は非常に鮮やかに気持ちよく鳴ってくれるのですが、多くのオーディオアダプター製品やミッドレンジのDAPのミッドまたローゲインの場合は、やや大人しく、透明感に物足りなさがあるかもしれません。このような場合は情報量の多い銀メッキ線のバランスケーブル等に替えることでかなり印象の変化が得られると思います。

「KiiBOOM Evoke」の高域は比較的鮮やかさのある明瞭な音を鳴らします。印象としては多少寒色寄りな鳴り方ですが、高高域は少し穏やかになっており鮮やかさのわりに突き抜けるような伸び感はありません。刺激はある程度コントロールされていますが、キラキラ感は結構強めに感じます。そのため再生環境や音量によってはやや派手目に感じる場合もありますね。例えば高域用ツイーターを2BAにして、BAユニット当たりの出力を分散させるなどすればより直線的な伸びやかさを得られるかもしれませんね。多少コストとの折り合いもあったかなと感じる部分ではありますが、それでもボーカル域を中心に考えればよくまとまっていると思います。

低域は適度な締まりとスピード感があり分離の良い音を鳴らします。駆動力のある環境や小音量ではミッドベースはやや控えめな印象を受けますが、十分な解像感と膨らみを抑えたキレの良さがあり、中高域を自然な音場感で下支えします。いっぽうで重低音は非常に深く強さがあります。地響きするような重厚感のある音を鳴らすため、中高域との高い分離性を保ちつつ、迫力のある低域を楽しめます。ただ前述の通り再生環境によっては相対的に低域が強くなりこの重低音が響きすぎると感じる場合もありますので、その場合はケーブルやイヤーピースなどを検討することをお勧めします。
■ まとめ
といわけで「KiiBOOM Evoke」は前回の「Allure」とは全く異なったベクトルで非常に興味深く、ある意味では非常にトラディショナルなミドルグレードIEM製品という印象を受けました。質の高いシェルデザインと基本に忠実なサウンドデザイン。方向性としてはハーマンターゲットを意識しつつリスニング的な楽しさとイマドキの聴きやすさを意識したチューニングが施されていますが、上流への依存度が高いため決して万人向けの製品ではないという点をウィークポイントと捉えるか、あるいは「遊べる、追い込める余地」と捉えるかで評価にも違いが出るかも知れません。個人的にはアンダー200ドル程度の価格設定ということも踏まえて、分かっている方には十分におすすめできるイヤホンだと思いました。