Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition

こんにちは。今回は「Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」です。中華イヤホンブランド「Kinera」の上位ブランド「Kinera Imperial」カテゴリーにに含まれるハイグレードモデル「Nanna」のアップデート&コラボバージョンとなります。「Nanna」は日本国内でも販売されているSonion製の静電(EST)ドライバー2基を含む 2EST+1BA+1DD構成 のハイグレードモデルで、現在はアップデート版の「Nanna 2.0 Pro」バージョンが販売されています。今回はさらに「Z Reviews」とのコラボにより独自のチューニングを行った「Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」バージョンとして1月8日にリリースされました。

■ 製品の概要について

「Kinera」は2016年に設立された中華イヤホンブランドで、製造メーカーとしての実績とデザイン性の高い製品展開で幅広く認知されるようになりました。現在は2021年に設立された姉妹ブランドの「QoA」や2022年から展開を始めている新しいサブブランド「Celest」など幅広い展開をおこなっています。また「Kinera」自体も上位グレードの製品群を2019年にハイエンド専門ブランド「Kinera Imperial」として分離しています。
今回のベースとなった「Nanna」は「Kinera Imperial」ブランドのラインナップのなかでSonion製のEST(静電)およびBAドライバーと、7mmのダイナミックドライバーを組み合わせた「2EST+1BA+1DD構成」のハイブリッドモデルです。現在通常モデルの「Nanna」はアップデートした「Nanna 2.0 Pro」バージョンが販売されています。

Kinera Nanna 2.1 Z-Tune EditionKinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition
そして今回レビューする「Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」は「Nanna 2.0」をベースに海外の有名レビュアーである「Z Reviews(Zeos Pantera)」氏とのコラボレーションにより新たなチューニングを加えたモデルになります。ドライバーには「Nanna 2.0」同様に7kHz~40kHzの高音域をカバーするSonion社製の複合型静電(2×EST)ドライバー「EST65DA01」を搭載。同じくSonion製「26A008/5」フルレンジ・バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーによる中音域、Kinera独自の7mmチタンドーム+PU複合振動板ダイナミックドライバーによる低域という3Wayのハイブリッド構成を採用。
Kinera Nanna 2.1 Z-Tune EditionKinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition
さらに「Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」では、よりパワフルなダイナミックドライバーにより5~250Hzの低音域が「Nanna 2.0」より3dB上昇しており、強力なサブベースとともに全体のサウンドがより豊かになり魅力的なリスニングが可能になります。
またケーブルは2芯仕様の6N 銀メッキOCCケーブルを採用し、モジュラー型のプラグを採用します。
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Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」の購入はLinsoul(linsou.com)にて。価格は949ドルです。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」のパッケージはKineraの上位モデルではお馴染みの6角形タイプのボックス。通常の「Nanna」のパッケージに「Z Reviews」のロゴがでかでかとステッカーで貼られています。
Kinera Nanna 2.1 Z-Tune EditionKinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition
パッケージ内容も基本的には「Nanna 2.0 Pro」と同じで、本体、ケーブル、交換式モジュラープラグ、イヤーピースは「Final Eタイプ」5サイズのほか、シリコンタイプ2種類がそれぞれS/M/Lサイズ、ウレタンタイプが1ペア、クリーニングブラシ、レザーケース、説明書、保証書ほか。
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本体シェルは「Nanna 2.0」同様に3Dプリントされたレジンシェルを手作業で丁寧に仕上げたもの。「Nanna 2.0」がブルー系のフェイスペインティングだったのに対し、「Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」では左右で異なるフェイスデザインとなっており、左側がブラックベースにオレンジを基調とした模様と「Kinera」のロゴが、右側はダークブルーとダークレッドの模様の中央に「Z Reviews」のロゴが配置されています。特に右側のデザインについては、まあ見た方はだいたい同じ意見だと思いますので割愛します。
Kinera Nanna 2.1 Z-Tune EditionKinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition

Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」のシェルはやや大きめですが非常に軽量で装着感においてはっほとんどストレスはありません。イヤーピースは軸が青色の「JH-FY009-B」がバランスタイプ、黒色の「RS-B45」が標準でボーカル強調、ウレタンフォームタイプが低域強調という仕様で、「Final Eタイプ」は「低域を強調し、歯擦音を抑制する」とのこと。フィット感に合わせて選ぶのが良いでしょう。
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ケーブルは2芯タイプの6N OCC銀メッキ線ケーブルで最近のハイグレード仕様のイヤホンではかなり増えているプラグ交換式を採用。弾力があり柔らかい被膜で取り回しの良いケーブルです。


■ サウンドインプレッション

Kinera Nanna 2.1 Z-Tune EditionKinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」のサウンドバランスはニュートラルで穏やかさを感じさせるサウンドバランス。ESTドライバーらしさとか、そういった要素は考慮せず、とにかく滑らかで心地よいサウンドを楽しみたい、という視点でフォーカスされているように感じます。まさに「シルクのように上質なサウンド」と言った印象です。音場は自然で立体的な空間表現があり、ほぼ完璧な定位があります。決して解像度押しのキレキレサウンドというわけではなく、どちらかというとややウォーム寄りの印象ですが、1音1音の粒立ちが非常に良く、微細な音も適切な位置でしっかり聴き取れる感覚はとても心地良ですね。
ちなみに日本国内で代理店を通じて販売されている通常の「Nanna」については店頭での試聴のみで周辺の騒音など聴いた環境に大きな差があるため、違いについての言及は控えますが、「Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」によって強化された低域は適度な厚みと深さを感じさせます。低域の力強さを楽しみたい楽曲でもドンシャリ系のイヤホンのようなメリハリ感とは異なりますが十分な量感とエネルギーがあり、リスニングに楽しさを加えてくれます。このクラスの製品となると、ユーザーによって求めるものは結構変わってきますが、とにかくバランスの良さと滑らかさ、そして品の良さみたいなものを求める方には「少なくとも音質面では」十分に価格に見合うイヤホンだと思います。

Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」の高域は自然な印象を保ちつつ、明るく伸びやかな音を鳴らします。見通しは良く微細な音も詳細に表現する透明感がありますが、ESTドライバーで想像するような印象よりはかなり柔らかく、直線的と言うより滑らかさが先行するイメージです。そのため歪み無くまっすぐと伸びていくような凜とした「ESTらしい音」を希望される方には多少期待外れに思うかもしれませんね。とはいえ高域の質感としては非常に優れており、歯擦音を抑えつつ適度な光沢感と自然な質感があります。また全体のややウォームで柔らかいサウンドバランスとの調和は完全に取れている印象です。

Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition中音域は凹むことなくありのままの音を極めて忠実に再現してくれます。透明感に優れ、自然で立体的な広がりと奥行きがあり、楽器やボーカル域は非常に詳細かつ適切な定位で鳴ってくれます。女性ボーカルやピアノの高音などの中高域は明るく存在感があり伸びやかに鳴ってくれますが硬くなりすぎず自然な抜け感があります。男性ボーカルなどの中低域は十分な存在感と厚みがあり、余韻も心地よく感じさせます。高域同様に僅かにウォーム方向で解像感を強調することはありませんが、粒立ちが良く、微細な音もしっかり表現します。また滑らかさとともに適度な艶感があり全体の質感を上品な印象にしています。

低域は適度に温かみを持ちつつ、中高域に被るようなことはなく自然な厚みを持っています。適度に直線的で解像感と見通しの良さがありますが、やはり滑らかさが前面に出る印象です。中低域同様に適度な艶感があります。おそらく標準の「Nanna」はもう少しニュートラル方向だったかもように重いますが、「Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」では強調された低域のチューニングにより適度な力感があり、エネルギッシュな曲でもパワフルさを失うこと無く適切な臨場感を楽しむことが出来ます。また重低音も非常に深く表現力も豊かです。


■ まとめ

Kinera Nanna 2.1 Z-Tune EditionKinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」は「Kinera」の上位モデルとして「高級イヤホン」と呼ぶに相応しい優れたサウンドを持ったイヤホンだと感じました。もともと「Kinera」や「QoA」は比較的ウォーム方向のサウンドアプローチが多いのですが、同様のアプローチでも下位モデルでは表現力が追いついていなかった部分が「Nanna」ではほぼ完全にクリアしており、このアプローチでもここまでやれば本物、と感じさせるレベルにまで昇華している印象がありました。とはいえ、この価格を出すのであればもっとモニター的な解像感が欲しいとか、突き抜けた特徴が欲しいとか、あるいはSonion製ESTドライバーをもっと前面に出したサウンドを楽しみたい、などさまざまなニーズが存在するため、このグレードを好まれる全てのユーザーに刺さる製品ではないと思います。しかし、とにかく上質で心地よいサウンドを好まれる方には検討に値するでしょう。
ただ、「Kinera Nanna 2.1 Z-Tune Edition」は通常の「Nanna 2.0」と比較として低域の表現力など確実にグレードアップしているとは思いますが、惜しむらくはコラボロゴが目立ちすぎて音質面の印象とそぐわない外観になってしまっている点ですね。例えば「LETSHUOER Z12」で使われているほうのロゴを本体側面にプリントするなどのアプローチで対応出来れば、外観の印象は180度変わったことでしょう。今後フェイスを改良した「Nanna 2.2」の登場にも期待したいところですね(^^;)。