
こんんちは。久しぶりの「棚からレビュー」ネタです。過去に購入して未レビューになっているイヤホンを振り返る企画ですが、特に昨年後半に購入したイヤホンは相当「積み」になっているため、ぼちぼち掲載できればと思います。というわけで今回は「Moondrop Stellaris」です。Moondrop(水月雨)の14mm級平面ドライバー搭載イヤホンですね。購入したのは昨年10月くらいで国内版がリリースされる以前だったような気がしますが、書きかけのまま結構放置していましたね(^^;)。
■ 製品の概要について
2022年は14mmクラスの大口径の平面磁気駆動ドライバーを搭載したイヤホンが一斉に登場し、完全にひとつのジャンルとして定着した感じがあります。そんななか中華イヤホン分野でのトップブランドのひとつに成長したMoondrop(水月雨)からも14.5mmドライバー搭載モデルがリリース。それが「Moondrop Stellaris」です。
過去記事(一覧): 平面駆動ドライバー搭載イヤホンのレビュー
「Moondrop Stellaris」はMoondropの「Starfield」とデザインの特徴を共有し、光の角度で様々な色に輝く虹色のテーマを採用。フェイスプレートには星空を象徴する手書きのパターンが描かれています。


「Moondrop Stellaris」が搭載する14.5mm平面磁気ドライバーは中国の平面ドライバーメーカーのTuoyin Electronics社と共同で設計。1μmの超薄型サブナノメートル振動板を採用し、振動板の両側を7+7個のN52磁石で挟むこむ高精度の磁気アレイを構成します。ドライバーは1テスラに近い強力な磁束を生成し、素早いレスポンスによるクリーンなパフォーマンスを実現します。
この特別に設計されたドライバーを最大限に活用するための音響構造設計を実施。優れた非線形歪み性能と一貫性が確保されます。新しい平面ドライバーと特別な音響キャビティにより優れたサウンドを実現しています。


「Moondrop Stellaris」の購入は国内版は主要な専門店にて。海外版はMoondrop製品が購入できるHiFiGo、Linsoul、SHENZHENENAUDIO等で。価格は 109.99ドル(海外版)、国内版は20,700円程度です。Moondropについては国内版も海外版に非常に近いレートで価格設定をしてくれることが多いのですが、この製品については円安が最も進んでいたタイミングでの価格設定だったこともあり、掲載時点では海外版の方が結構割安になっていますね。また同社製品はHiFiGoなどのセール対象にもなりやすいので、この辺を狙うのも良いかも知れません。
HiFiGo: Moondrop Stellaris
Amazon.co.jp(国内版): Moondrop Stellaris
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Moondrop Stellaris」のパッケージは「KATO」や「KXXS」のような製品で使用されている大きめのボックス。パッケージアートや付属品の配置も見栄えが良いですね。


パッケージ内容は、本体、ケーブル、イヤーピース2種、レザーケース、説明書、保証書、イラストカードなど。イヤーピースはシリコンタイプの「U.C.(Ultra Clear)Ear-tips」とウレタンタイプの「MIS-Tip」の2種類で、それぞれS/M/Lサイズ。


イヤホン本体は金属製でメタリックブルーの塗装処理にフェイス部分はゴールドで手書きのデザインが施されています。コネクタは2pin仕様で楕円形の一番上にあるちょっと変わったデザインのため、通常の耳掛けタイプのイヤホンと比べると結構違和感のあるデザインではあります。


ただしシェルサイズは大きめですが、装着部分がシェイプされ長めのステムノズルのため、耳の大きさにあまり関係せず装着はできそうです。ただサイズが大きく重いため、イヤーピースとケーブルで支える感じになるため、リケーブルの際は落ちにくい組み合わせを検討する必要があります。


しっかり装着しないと特に低域が抜けたような印象になるため、長いステムノズルにあわせて小さめのイヤーピースで奥までしっかりと合わせることが必要です。正直装着性のうえでは、この重さでこの形状はもう少し考慮してほしかった部分ですね。
ケーブルはブルーとゴールドの線材の撚り線タイプで透明な被膜に覆われています。被膜は弾力があるもののしなやかで取り回しに困ることは無いでしょう。


イヤーピースはシリコンの「U.C.(Ultra Clear)Ear-tips」はSoftearsからの供給で、要するに「Softears U.C.」と同じものです。非常に評判は良いいっぽうでちょっと価格が高いのがネックなイヤーピースですが、最初から付属しているのは有り難いですね。とはいえ、全ての方の耳に合うとも限らないので、必要に応じてよりフィット感の高い物に交換することも推奨されます。
■ サウンドインプレッション
「Moondrop Stellaris」の音質傾向は若干中高域寄りでニュートラルなサウンドバランス。「Starfield」と同様に外観は星雲をイメージした製品ということですが、音質傾向的に「Starfield」はMoondrop製品のなかでもハッキリしてやや硬質なイメージをもったサウンドが特徴で、発売時は柔らかさと透明感が特徴的だった「KXXS」と差別化されていました。今回の「Moondrop Stellaris」も同様に最近のMoondrop製品のなかでも寒色傾向のイメージでスピード感やキレの良さを前面に出した印象です。サウンドバランスは「Starfield」より中高域寄りですが、力強い低域もあり印象としては弱ドンシャリ方向のサウンドに感じます。
Moondrop製品は基本的に独自の「Virtual Diffusion Sound Field (VDSF)」ターゲットカーブをもとにチューニングされており、よりニュートラルな印象を受けるサウンドバランスになっています。要するにハーマンターゲットのMoondrop版みたいなものですが、ドライバーの種類や製品のキャラクターに応じてVDSFのリファレンスから製品ごとに微妙に変化を付けているようですね。
他社の14mm級平面駆動ドライバー搭載イヤホン同様に平面駆動としては比較的鳴らしやすい印象ですが、駆動力はあったほうがより密度感は高まります。必要に応じてバランス化なども検討する方が良いでしょう。「Moondrop KATO」や「KXXS」は柔らかい音質傾向から必ずしもバランス化が良いとは限らない側面もありましたが、硬質でハッキリした印象の「Moondrop Stellaris」はバランス化も良い方に変化することが多いようです。
またイヤーピースは付属の「Softears U.C.」は傾向としては非常に良いのですが、軸部分の長さがあるタイプのため、「Moondrop Stellaris」の長いステムノズルと組み合わせることでぐらついてしまう場合もあります。この場合低域の印象などが変わってしまうためもう少し短いタイプのイヤーピースに交換した方が良い場合もあります。この場合のお勧めは「AZLA SednaEarfit Crystal」や「TRN T-Eartips」などです。私はTRNのものを使用しました。
「Moondrop Stellaris」の高域は明瞭でやや硬質な印象の音を鳴らします。輪郭のハッキリした音でキレの良さを感じますが、刺激はコントロールされており、明瞭ながら聴きやすいチューニングになっています。明るさや鮮やかさが多少強調されており、「KATO」などの伸びやかで透明感のある音作りとは異質の印象を受けるかもしれませんね。ただ全体としてはバランスが取れており、ボーカル主体のイヤホンとして聴きやすく楽しさを感じる高域です。
中音域は分離の良いニュートラルな音を鳴らします。自然な距離感で定位し適切な空間表現を持っており、中音域がフラットな印象であることを実感させます。リケーブルなどによりさらに立体的な音場感を感じることが出来るでしょう。いっぽう音作りはかなり派手めでMoondrop的な柔らかさや自然な印象を想像すると多少拍子抜けするかもしれません。この手の音作りはやはり「Starfield」に近く、中華イヤホンとしては分かりやすく、キレとメリハリのあるサウンドという点でKZあたりと比較する方が違和感が少ないでしょう。鮮やかさのある明るい音ですが、質感は低価格の中華ハイブリッドとは明らかにレベルが違うもので、平面駆動ドライバーと歪みの少なさと、Moondropの技術力の片鱗も感じる事は出来ます。
低域は平面駆動らしい直線的で締まりのある音を鳴らします。やはり全体としては寒色傾向でまとめられていますがミッドベースは力強さとエネルギーがあり、アタックもキレがあります。重低音も非常に深く歪みの無い音を鳴らし解像感があります。ただ全体としてニュートラルにまとめつつ、全体的に鮮やかさや明るさを強調しているため、より中高域が目立つ傾向にあり、本来は十分な量感がある低域が物足りなく感じる場合があります。このような音作りを行うならVDSFを多少あきらめて思い切ってしっかりドンシャリ傾向に振った方がより好印象に感じるかも知れませんね。
■ まとめ
「Moondrop Stellaris」のサウンドは14mm級平面駆動ドライバーらしい歪みの無い中低域とニュートラルなサウンドを活かしつつ、従来のMoondrop製品より明瞭感や鮮やかさを優先したメリハリ重視の印象を受けました。ロック、ポップス、アニソンなどの楽曲と非常に相性が良いボーカル系のイヤホンといえるでしょう。
全体としては、やはり「KXXS」に対して「Starfield」で感じた印象に近く、オーディオ的なアプローチより、ボーカル曲を中心とした楽しさを意識した音作りの方向性ということなのでしょう。他のMoondrop製品と比較して違和感を感じるレビューが多いのもこの辺が理由かもしれませんね。個人的には「Starfield」や「Moondrop Stellaris」については他社が行っているようにサブブランド化してキャラクターの違いを鮮明にした方が違った評価が得られそうな気がします。
日本での価格設定は高めですが、USドルベースの本来の価格は「TRN Kirin」や「7HZ Salnotes Dioko」に近い、14mm級平面駆動タイプのイヤホンとしては低価格な方の製品ですし、気軽に楽しめる平面駆動のイヤホンと考えればそれなりにお勧めできるイヤホンだとは思いますよ(^^)。
2022年は14mmクラスの大口径の平面磁気駆動ドライバーを搭載したイヤホンが一斉に登場し、完全にひとつのジャンルとして定着した感じがあります。そんななか中華イヤホン分野でのトップブランドのひとつに成長したMoondrop(水月雨)からも14.5mmドライバー搭載モデルがリリース。それが「Moondrop Stellaris」です。
過去記事(一覧): 平面駆動ドライバー搭載イヤホンのレビュー
「Moondrop Stellaris」はMoondropの「Starfield」とデザインの特徴を共有し、光の角度で様々な色に輝く虹色のテーマを採用。フェイスプレートには星空を象徴する手書きのパターンが描かれています。


「Moondrop Stellaris」が搭載する14.5mm平面磁気ドライバーは中国の平面ドライバーメーカーのTuoyin Electronics社と共同で設計。1μmの超薄型サブナノメートル振動板を採用し、振動板の両側を7+7個のN52磁石で挟むこむ高精度の磁気アレイを構成します。ドライバーは1テスラに近い強力な磁束を生成し、素早いレスポンスによるクリーンなパフォーマンスを実現します。
この特別に設計されたドライバーを最大限に活用するための音響構造設計を実施。優れた非線形歪み性能と一貫性が確保されます。新しい平面ドライバーと特別な音響キャビティにより優れたサウンドを実現しています。


「Moondrop Stellaris」の購入は国内版は主要な専門店にて。海外版はMoondrop製品が購入できるHiFiGo、Linsoul、SHENZHENENAUDIO等で。価格は 109.99ドル(海外版)、国内版は20,700円程度です。Moondropについては国内版も海外版に非常に近いレートで価格設定をしてくれることが多いのですが、この製品については円安が最も進んでいたタイミングでの価格設定だったこともあり、掲載時点では海外版の方が結構割安になっていますね。また同社製品はHiFiGoなどのセール対象にもなりやすいので、この辺を狙うのも良いかも知れません。
HiFiGo: Moondrop Stellaris
Amazon.co.jp(国内版): Moondrop Stellaris
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Moondrop Stellaris」のパッケージは「KATO」や「KXXS」のような製品で使用されている大きめのボックス。パッケージアートや付属品の配置も見栄えが良いですね。


パッケージ内容は、本体、ケーブル、イヤーピース2種、レザーケース、説明書、保証書、イラストカードなど。イヤーピースはシリコンタイプの「U.C.(Ultra Clear)Ear-tips」とウレタンタイプの「MIS-Tip」の2種類で、それぞれS/M/Lサイズ。


イヤホン本体は金属製でメタリックブルーの塗装処理にフェイス部分はゴールドで手書きのデザインが施されています。コネクタは2pin仕様で楕円形の一番上にあるちょっと変わったデザインのため、通常の耳掛けタイプのイヤホンと比べると結構違和感のあるデザインではあります。


ただしシェルサイズは大きめですが、装着部分がシェイプされ長めのステムノズルのため、耳の大きさにあまり関係せず装着はできそうです。ただサイズが大きく重いため、イヤーピースとケーブルで支える感じになるため、リケーブルの際は落ちにくい組み合わせを検討する必要があります。


しっかり装着しないと特に低域が抜けたような印象になるため、長いステムノズルにあわせて小さめのイヤーピースで奥までしっかりと合わせることが必要です。正直装着性のうえでは、この重さでこの形状はもう少し考慮してほしかった部分ですね。
ケーブルはブルーとゴールドの線材の撚り線タイプで透明な被膜に覆われています。被膜は弾力があるもののしなやかで取り回しに困ることは無いでしょう。


イヤーピースはシリコンの「U.C.(Ultra Clear)Ear-tips」はSoftearsからの供給で、要するに「Softears U.C.」と同じものです。非常に評判は良いいっぽうでちょっと価格が高いのがネックなイヤーピースですが、最初から付属しているのは有り難いですね。とはいえ、全ての方の耳に合うとも限らないので、必要に応じてよりフィット感の高い物に交換することも推奨されます。
■ サウンドインプレッション

Moondrop製品は基本的に独自の「Virtual Diffusion Sound Field (VDSF)」ターゲットカーブをもとにチューニングされており、よりニュートラルな印象を受けるサウンドバランスになっています。要するにハーマンターゲットのMoondrop版みたいなものですが、ドライバーの種類や製品のキャラクターに応じてVDSFのリファレンスから製品ごとに微妙に変化を付けているようですね。

またイヤーピースは付属の「Softears U.C.」は傾向としては非常に良いのですが、軸部分の長さがあるタイプのため、「Moondrop Stellaris」の長いステムノズルと組み合わせることでぐらついてしまう場合もあります。この場合低域の印象などが変わってしまうためもう少し短いタイプのイヤーピースに交換した方が良い場合もあります。この場合のお勧めは「AZLA SednaEarfit Crystal」や「TRN T-Eartips」などです。私はTRNのものを使用しました。
「Moondrop Stellaris」の高域は明瞭でやや硬質な印象の音を鳴らします。輪郭のハッキリした音でキレの良さを感じますが、刺激はコントロールされており、明瞭ながら聴きやすいチューニングになっています。明るさや鮮やかさが多少強調されており、「KATO」などの伸びやかで透明感のある音作りとは異質の印象を受けるかもしれませんね。ただ全体としてはバランスが取れており、ボーカル主体のイヤホンとして聴きやすく楽しさを感じる高域です。

低域は平面駆動らしい直線的で締まりのある音を鳴らします。やはり全体としては寒色傾向でまとめられていますがミッドベースは力強さとエネルギーがあり、アタックもキレがあります。重低音も非常に深く歪みの無い音を鳴らし解像感があります。ただ全体としてニュートラルにまとめつつ、全体的に鮮やかさや明るさを強調しているため、より中高域が目立つ傾向にあり、本来は十分な量感がある低域が物足りなく感じる場合があります。このような音作りを行うならVDSFを多少あきらめて思い切ってしっかりドンシャリ傾向に振った方がより好印象に感じるかも知れませんね。
■ まとめ
「Moondrop Stellaris」のサウンドは14mm級平面駆動ドライバーらしい歪みの無い中低域とニュートラルなサウンドを活かしつつ、従来のMoondrop製品より明瞭感や鮮やかさを優先したメリハリ重視の印象を受けました。ロック、ポップス、アニソンなどの楽曲と非常に相性が良いボーカル系のイヤホンといえるでしょう。

日本での価格設定は高めですが、USドルベースの本来の価格は「TRN Kirin」や「7HZ Salnotes Dioko」に近い、14mm級平面駆動タイプのイヤホンとしては低価格な方の製品ですし、気軽に楽しめる平面駆動のイヤホンと考えればそれなりにお勧めできるイヤホンだとは思いますよ(^^)。