TINHIFI T4 PLUS

こんにちは。今回は「TINHIFI T4 PLUS」です。カーボンナノチューブ振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載する「T4」の後継となるモデルで、新世代ドライバーの搭載など数々のアップグレードにより音質面もグレードアップしました。「T4」らしい質の良さも感じさせつつ、キレのある高域とパワフルな低域などリスニング性も向上した完成度の高いイヤホンに仕上がっています。

■ 製品の概要について

最近矢継ぎ早に新製品をリリースしている中華イヤホンブランド「TINHIFI」ですが、同社の「PLUS」モデルに「T4」が加わりました。既にリリースされている「T2 PLUS」「T3 PLUS」は「T2」「T3」と比べて名称と価格設定以外、つまり製品としては全く踏襲していない別物のイヤホンでしたが、今回の「TINHIFI T4 PLUS」についてはタンク型円筒形デザインやCNT(カーボンナノチューブ)振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載する構成など、リリース当初から評価の高かった「T4」を踏襲したアップデートになっています。
→過去記事(一覧): TINHIFI製イヤホンのレビュー

現在TINHIFIのタンク型デザインは、オリジナルの「T2」(2DD)がMMCXから2pin仕様となったリニューアルモデルになり、同様のデザインの「T2 EVO」(1DD)と「T2 DLC」(1DD/DLC振動板)が現行製品としてリリースされています。今回の「TINHIFI T4 PLUS」はこれらの新たな上位モデルという感じになりそうですね。
TINHIFI T4 PLUSTINHIFI T4 PLUS

TINHIFI T4 PLUS」では第3世代のカーボンナノチューブ(CNT)複合振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載。新しいCNT振動板は従来より軽量化され物理的特性を大幅に改善。 鋼の400倍もの強度を持つCNTとさらにPU素材を複合した構造を採用することで、よりクリアなサウンドを実現しています。さらに N54 磁気回路設計とCCAW 多層ボイスコイルの採用により原音忠実性の高い表現力を備えました。
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また「TINHIFI T4 PLUS」では歪みを極限まで排除するために、ブラスフレームが導入され歪み減少させています。音響チャンバーは耳のトンネル共鳴によって引き起こされる歪みを効果的に取り除きます。
軽量コンパクトに作られたシェルのフェイスプレートには高級木材を使用。ケーブルは高純度銀メッキ線のエナメルケーブルが付属します。
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TINHIFI T4 PLUS」の購入はAliExpressやアマゾンのTINHIFIオフィシャルストア、またはHiFiGoやLinsoulなどの各セラーにて。価格は129ドル、アマゾンは15,699円前後です。
AliExpress(TINHIFI Offical Store): TINHIFI T4 PLUS ※掲載時123.26ドル
HiFiGo: TINHIFI T4 PLUS / Linsoul: TINHIFI T4 PLUS ※どちらも掲載時119ドル
Amazon.co.jp(TINHIFI Offical):  TINHIFI T4 PLUS
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP):  TINHIFI T4 PLUS
Amazon.co.jp(HiFiGo): TINHIFI T4 PLUS


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

TINHIFI T4 PLUS」のパッケージはポップなイラストカバーのデザイン。同社でも「P1 MAX」あたりからパッケージのデザインを意識したモデルも増えてきましたね。個人的にはこういうパッケージアートは楽しくて良いと思います。
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パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースはいつもの黒色タイプ、グレーで軸部分が赤色のタイプおよび黄色のウレタンタイプでそれぞれS/M/Lサイズ。レザーケース、説明書、保証書など。
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本体はアルミ合金製でシェル形状は「T2 DLC」を踏襲しつつブロンズカラーで仕上げられています。また「TINHIFI T4 PLUS」の特徴的なデザインとして、フェイス部分がゴールドカラーの金属製リムで囲まれた木製プレートが埋め込まれています。
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オリジナルの「T4」は「T2」シリーズおよび「TINHIFI T4 PLUS」より若干小振りなサイズ感だったのですが、同様に非常に軽量なこともあり、どちらの形状でも装着性自体にはほぼ相違はないようです。
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イヤーピースは最近のTINHIFIの製品で付属しているのと同様の2種類のシリコンタイプのイヤーピースのほか、今回ウレタンタイプがシリコンカバー付きのタイプになりました。形状や黄色い外観などから「Symbio Eartips ハイブリッド」とそっくりですが、製品名の明記がないところから例によって互換品のようですね。ウレタンの密着性とシリコンのフィット感のいいとこ取りをしたイヤーピースなのですが、形状的に耳に合わない場合はあまりメリットはないため、使ってみて判断するのがよいでしょう。
TINHIFI T4 PLUSTINHIFI T4 PLUS
ケーブルはエナメルコートされた銀メッキ線ケーブルです。本体カラーと合わせたブロンズカラーの仕上げで落ち着いた印象がありますね。ちょっと被膜が硬いですが取り回し自体は問題ありません。


■ サウンドインプレッション

TINHIFI T4 PLUS」の音質傾向はフラット方向の弱ドンシャリで、ニュートラルかつCNT振動板らしいキレのある音を鳴らします。ボーカル域を中心とした中音域は原音忠実性の高い質感を持ちつつ、高域の抜けの良さと低域はタイトでエネルギーのあるリスニングサウンドに進化しました。

TINHIFI T4 PLUSもともとのオリジナル「T4」はよりフラット傾向の「無味無臭」ともいえる癖の無さと、当時の100ドル程度のイヤホンとしてはこのような傾向でも粗さが出にくいという点でモニター的な印象の評価も高かったイヤホンでした。
これに対し、今回の「TINHIFI T4 PLUS」も中音域のディテールや音場表現などは「T4」に通じるモニター的な印象を感じつつ、最近のモデルのような弱ドンシャリの方向に若干寄せてリスニング性を高めているのを実感します。傾向としては最近の「MECA C2」や「C3」といったモデルのアプローチに近く、特に金属シェルの「MECA C2」とはシェル形状は全く異なるものの相当類似したバランスでチューニングされているようです。

TINHIFI はオリジナルの「T2」や高域強化の「T2 PRO」など、もともと中高域寄りで明瞭感のあるサウンドが特徴でした。しかし「PLUS」シリーズの「T2 PLUS」や「T3 PLUS」では、「聴きやすいサウンドのほうが人気が出るかも」という判断からか、やや柔らかくウォームさもあるサウンドでまとめる方向で製品化されました。これはこれでそれなりに人気はあったのですが、「TINHIFIぽくない」という声もあり、タンクデザインの「T2」シリーズが復活する過程で徐々に方向修正を行い、最近の「Cシリーズ」では完全に方向性を掴んだ印象があります。
TINHIFI T4 PLUS今回の「TINHIFI T4 PLUS」は、他の「PLUS」シリーズと異質であることは確実ですが、音質的にはそれだけでなく「Tシリーズ」より「Cシリーズ」の上位モデルという解釈のほうがしっくりくるかもしれませんね。TINHIFI T4 PLUS」は「MECA C2」よりタイトで強さのある低域が楽しめ、「C3」より自然な質感と伸びのある高域を実感出来ます。
なお、「TINHIFI T4 PLUS」はインピーダンス32Ω±15%、感度106±3dB/mWと一般的な同クラスのイヤホンより鳴らしにくく、本来のサウンドを楽しむためにはある程度の駆動力が必要です。従来の「T4」より情報量の多いケーブルが付属していますが、上流は必要に応じてハイゲインなどの設定で聴くことを推奨します。

TINHIFI T4 PLUS」の高域は伸びが良く明瞭な音を鳴らします。新しいCNT振動板は非常にスピード感があり、同時に歪みの無い直線的な見通しの良さを提供してくれます。鋭さをもった音は鋭く、煌めきのある音はディテールまでしっかりと表現しており、同クラスの製品としてはかなり精度の高い音を鳴らす印象。オリジナルの「T4」と比較して中高域からの抜け感はよりスッキリしており見通しが良いものの、より刺激が増しています。たぶん黄色いハイブリッドウレタンのイヤーピースは多少聴きやすくするために付属しているのですね。私は特に気にならないというか、これくらいの主張があった方が良いので、最近気に入って使っている「TRN T-Eartips」に替えてしまいましたが(^^;)。

TINHIFI T4 PLUS中音域はオリジナルの「T4」をイメージさせる、非常にニュートラルで癖の無い音を鳴らします。自然かつ正確さを感じる空間表現と、実在感のある定位があり、ボーカルと演奏は十分な解像度により綺麗に分離します。そのため、一般的なボーカル向け製品と比べるとボーカルは自然な距離感があります。それでも明瞭な輪郭とフォーカスの合った音像表現があり、かつ人工的に感じるほどエッジが立っている分けでは無いバランスで優れた質感があります。モニター的な用途でも十分に使えそうな正確性をもちつつ、キレの良さやスピード感で適度なメリハリがあり、リスニング的にもオリジナルの「T4」より楽しく仕上げられています。

低域はインパクトのあるスピード感と力強さのある音を鳴らします。ミッドベースは直線的で締まりの良い印象で、エネルギーのあるパワフルさも印象的です。音数の多いスピード感のある曲でも籠もること無く鳴り、同時にリスニング的には楽しく心地よさがありますね。また重低音も深くタイトで重量感のある音を鳴らします。解像度的にも優れており分離の良いため音数が多い曲でも楽しめるポテンシャルの高さがあります。


■ まとめ

というわけで「TINHIFI T4 PLUS」は価格に対して質の良さで定評のあったオリジナルの「T4」のモニター的な中音域の質感を踏襲しつつ、より伸びのある高域とタイトでパワフルな低域を備え、リスニングイヤホンとして非常に完成度の高い仕上がりとなりました。ただし、明瞭かつキレのある音作りがより先鋭的になった要素もあるため、刺激のある音や聴き疲れするサウンドが得意ではない方には向かないでしょう。
TINHIFI T4 PLUSただTINHIFIに対して「らしさ」を求めていた方には「そうそう、こういうのが欲しかった」と感じるような仕上がりではないかと思います。リスニング的には壮大な音場感のある立体的で臨場感のあるサウンドの方が「エモい」かもしれませんが、ミニマルな円筒形の金属シェルと質実剛健なサウンドのイメージのままブランド名を付けた「TINHIFI」ですから、これはこれで良いのだと思います。最近では数万円クラスでも珍しくなくなった中華イヤホンで100ドル前半、1万円台半ばで購入できる「TINHIFI T4 PLUS」は結構「中華イヤホンの良心」といっても良いかも、と思うこの頃なのでした(^^)。