TRI iONE

こんにちは。購入済み未レビューのイヤホンを紹介する「棚からレビュー」ネタです。
今回は「TRI iONE」です。リリースされたのは結構前のイヤホンですが、最近ではEasy Eaphonesの福袋で入手された方が多いかもしれませんね。 こだわりの詰まった設計で価格的にはやや高めで、傾向も「イマドキ」ではないですが、優れた質感とエネルギッシュさが結構気に入ったイヤホンです。

■ 製品の概要について

「TRI Audio」は、中華イヤホンブランドとしてマニアの間ですっかりお馴染みになった「KBEAR」の兄弟ブランドとして、よりこだわりのあるハイグレードモデルを多く手がけている印象がありますね。「TRI iONE」は2022年にリリースされた250ドルオーバーのシングルダイナミックモデルです。
最近ではEasy Eaphonesの150ドルくらいの福袋に入っていることで入手された方も多いかもしれませんね。
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TRI iONE」は10mmサイズのカーボンPET振動版ダイナミックドライバーをシングルで搭載するイヤホンです。ようするにPET樹脂の表面にカーボンコーティングを行っている振動板ですね。DLCやグラフェンコートなども広義ではカーボンコートの一種ですが、「TRI iONE」で採用されている振動板でも硬度や剛性によるレスポンスの良さなどこれらの振動板の特徴に近い特性を持ち、さらに透明性や艶感なども特徴のようです。また外磁気回路の採用やキャビティ構造、非対称の3カ所のベント(空気孔)などの最適化設計によりドライバーの出力の最大限に活かし、サウンドをよりクリアにします。

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本体は5軸CNC加工により成形されたアルミニウム合金製で、シェルは電気メッキ加工を施し、フェイスプレートは保護ガラスで覆われています。シルバーとブラックの2色のカラーバリエーションで全く異なる雰囲気を演出しています。
ケーブルは純銅シールドによる純銀線によるハイグレードケーブルの「TRI Wolfram」を付属。高い解像感と音場感に加え、ボーカル域にも多くのエネルギーを与えます。またイヤーピースには最新の「TRI Clarion」を付属。ハイグレードイヤホンに相応しい構成となっています。
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TRI iONE」の購入はAliExpressのEasy Eaphones、アマゾンのWTSUN Audioにて。「ブラック」または「シルバー」のカラー、「3.5mm」または「4.4mm」のプラグ形状を選択可能です。
価格は251.1ドル、アマゾンでは37,090円です。
AliExpress(Easy Eaphones): TRI iONE
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): TRI iONE


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

TRI iONE」はTRIのなかでもシングルドライバー機としてはハイグレードな設定ということもあり、パッケージも結構なおおきさがあります。表面および裏面はシンプルですが、パッケージを開くとケースと同じ鮮明なオレンジが特徴的です。
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TRI iONE」のパッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースは「TRI Clarion」および白色の柔らかいシリコンタイプがそれぞれS/M/Lサイズ、「TRI Wolfram」ケーブル、本体カバー、クリーニングクロス、クリーニングブラシ、レザーケース、説明書。
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本体は非常にコンパクトなアルミニウム合金製の削り出し。しっかりした作りの本体で電気メッキ処理による表面加工も美しく仕上がっています。非常にコンパクトなサイズのため、耳の小さい方でもすっぽり収まるサイズ感です。
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ケーブルは非常に太さのある「TRI Wolfram」ケーブルが付属します。このケーブルについては以前個別にレビューを掲載しています(「TRI Wolfram」ケーブルのレビュー)。ケーブル単品でも2万円以上で販売されるTRIのハイグレードケーブルです。イヤホン本体の小ささに比べて非常に太いため、ケーブルが装着性に影響する可能性があります。ただしケーブルの耳掛け部分はかなり強めの耳掛け加工がされているため、たいていの場合は問題なく装着出来るのではと思います。
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その他付属品は非常に充実しています。TRIの新しいイヤーピースの「TRI Clarion」も最初から付属していますのでケーブル同様に交換の必要が無いのは良いですね。ただケーブルとの組み合わせで「TRI Clarion」が耳に合わない場合はイヤーピース選びは結構難しいかも知れません。その場合、個人的には「Softears U.C」や「AZLA SednaEarfit Crystal」、そして「TRN T-Eartips」などの開口部が広い粘着系シリコンタイプがお勧めです。


■ サウンドインプレッション

TRI iONETRI iONE」の音質傾向はハッキリしたドンシャリ傾向ながら中音域は比較的ニュートラルで音源を正確に捉えてくれる印象。スピード感とともにパワフルなエネルギーがあり、カーボンPETドライバーによる非常に解像度の高いサウンドを余すところなく耳に伝えようという明確な意思を感じる音作りです。イヤホン自体の音量は比較的取りやすいものの、本来のサウンドを楽しむためには相当の駆動力およびノイズ特性の高さを必要とするため、ある程度上流を揃えられるマニア向けの製品といえるでしょう。4.4mmのバランス接続の方が真価を発揮させやすいですが、もし3.5mmモデルで高域が過剰に強めだったり、多少淡泊な印象を感じた場合はハイパワーのアンプなど再生環境を変えてみることをお勧めします。

TRI iONE」の高域は非常に鮮明で前向きの主張があります。最近の大人しいチューニングのイヤホンに慣れていると高域が派手すぎるように感じるかもしれませんが、非常に重く空気感のある低域のインパクトとのバランスで調和が取れており、全体としてエネルギッシュな印象を与えています。鋭い音は鋭く、煌めきも非常に鮮明に鳴らしてくれます。明瞭さととものにスピード感と伸びのある印象で心地よく感じます。歯擦音などはほぼ感じませんが、原音に忠実な刺激はあるため、高域の刺さりが苦手な方には強めに感じる可能性もあります。

TRI iONE中音域はバランスとしては多少凹みますが、十分な駆動力とアイソレーションを確保出来ている再生環境を使用することで、立体的な空間表現とボーカル域の前向きな主張を感じる事ができるため、リアリティとともに臨場感と迫力があり、不足を感じることはありません。ボーカルの女性も男性も解像感と透明性があります。原音忠実性は高く、自然な輪郭は僅かに温かみがあり、息づかいも忠実に表現し、余韻も綺麗に感じます。また演奏との分離も優れており、ギターやピアノの音色は美しく、音数の多い曲でもしっかり捉え、印象的なサウンドを楽しめます。
しっかり環境を整えるとその心地よさは質の良いヘッドホンのようでもあり、このイヤホンのポテンシャルの高さを感じます。ただイヤーピースによりしっかり密閉性を確保することが必要ですが、この場合太く硬いケーブルによるタッチノイズを感じるようになるため、室内でじっくり聴くというリスニングのスタイルも必要かも。

低域は非常に重量感と強めのインパクトがあり、明確な主張を持っています。とはいえ決してブーミーな印象にはならず、ハッキリとした音像表現と分離があり、重くパワーのある低域を自然な輪郭のままスピード感を持って鳴らしてくれます。おそらく主張としては高域のほうが強めのため、全体としてこのようなバランスになっているのでしょうね。それでも低域が多い楽曲ではその存在感を余すこと無く表現され、締まりの良さと耳に圧力をかけてくる感じのパワーがあります。ミッドベースは直線的で膨らむことは無く、かつエッジを強調せずにタイトにならす印象。そのため音数が多く早い曲でもしっかりしっかりセパレーションして表現してくれます。重低音は非常に重くかつ同様に解像度の高い音をならします。エモーショナルではありませんが質感は非常に高く、優れていると思います。


■ まとめ

TRI iONETRI iONE」のサウンドはインパクトと質感のある低域を好まれる人、ハッキリとした臨場感のあるドンシャリ傾向で高域もしっかりと鋭さと煌めきを持って鳴らして欲しい、というサウンドを求めてる方には期待に応えてくれるエネルギッシュなサウンドだと思います。しかし低音量で穏やかに聴きたい方やモニター的に全体を見通しながら聴きたい方、刺激の強すぎるのは敬遠したい方には向きません。というか最近の○○ターゲットカーブ偏重の音作りとは真逆で、良し悪しをその点で評価される方には特に合わないでしょう(笑)。ただ楽しい音というのは本来こう言うのだよね、と感じられる方であれば、1音1音のこだわりや質感の良さをしっかり実感出来るイヤホンだと思います。個人的にはもっと評価されてもいいイヤホンだと思いますが、たぶん「イマドキ」じゃないんでしょうね。福袋などで多少数が出回ったことで今後「合わない」と思った方がフリマなどで出す確率も増えるかもしれませんので、気にならない方は中古で狙ってみるのも良いかも。とはいえ個人的には250ドル程度の価格設定は十分に見合うものだと感じました。