DUNU VULKAN (DK-X6)

こんにちは。前回に引き続き購入済み未レビューのイヤホンを紹介する「棚からレビュー」ネタです。今回はDUNU VULKAN」(DK-X6です。Knowles製BAと8mm同軸デュアルダイナミックドライバーによる4BA+2DDの構成のハイブリッドイヤホンです。特徴的なデザインのフェイスプレートにフラット方向にまとめられたサウンドが印象的ですね。リリースされてから結構経っていますが、「棚からレビュー」らしく「実はこっそり買ってました」的イヤホンもちょいちょいレビューできたらなと思っていたりします(^^;)。

■ 製品の概要について

DUNU VULKAN」(DK-X6)は2022年に発売されたDUNUの4BA+2DD構成のハイブリッドモデルです。Knowles製の2種類の2BAユニットと8mmサイズの同軸配置デュアルダイナミックドライバーの組み合わせで印象的なフェイスデザインのアルミハウジングに収容された高音質モデルです。
DUNU VULKAN (DK-X6)DUNU VULKAN (DK-X6)
ドライバーにはKnowles製の超高域用スーパーツィーターのデュアルBAユニットおよび中高域用の津有るBAユニットの2種類のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーによる合計4BA構成に、同軸(Coaxial)設計によりひとつのシャーシに納められたデュアル8mmダイナミックドライバーを搭載。2種類のダイナミックドライバーはドーム型の「ストラクチュラルフォームセル(STRUCTURAL FOAM CELL/発泡構造セル)ドライバー」と後方の「ナノクリスタルチタン(NANOCRYSTALLINE TITANIUM)ドライバー」で、同軸設計により深みのある低域とリニアでレスポンスに優れた中低域を低域のレスポンスが相乗的に機能することで低域の質感を向上しています。

DUNU VULKAN (DK-X6)DUNU VULKAN (DK-X6)
内部では3Dプリンティングにより音導管とマウントブラケットを一体成型しており安定した実装を実現するとともに各ドライバーからのパスウェイを最適化し設計されています。またフェイス部分には「ACIS」(Air Control Impedance System)モジュールが埋め込まれており、ダイナミックドライバーの低域をコントロールしレスポンスを強化します。

DUNU VULKAN (DK-X6)DUNU VULKAN (DK-X6)
本体はアルミ製でCNC精密加工により成形。フェイスパネルは「杢目金(もくめがね)」をイメージし、火成岩から変成した岩石のような蛇紋岩ような模様が幾重にも重なるデザインを採用しています。
DUNU VULKAN」(DK-X6)の価格は379.99ドル、日本では税込60,470円程度です。日本での発売時期の関係で円安がピークだったこともあり、現時点では海外で購入するより1万円程度の価格差がありますね。
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■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

DUNU VULKAN」(DK-X6)のパッケージはDUNUとしてはわりと珍しい大きめのボックス。同社はレザーケースのサイズに合わせた比較的コンパクトなパッケージが多いのですが、このモデルはブラックのパッケージデザインからこだわってる感じがありますね。
DUNU VULKAN (DK-X6)DUNU VULKAN (DK-X6)

パッケージ内容は本体、ケーブル、モジュラー式の交換プラグが3種類、6.3mm変換プラグ、イヤーピースは3種類でそれぞれS/M/Lサイズ、クリーニングクロス、クリーニングブラシ、レザーケース、説明書など。
DUNU VULKAN (DK-X6)DUNU VULKAN (DK-X6)

アルミ製のシェルはやや大きさがあり比較的重量感のある印象。MMCXコネクタ部分がやや突起している形状ですね。シェル形状自体は「DUNU EST112」とほぼ同じで、ブラックの本体カラーとフェイス部分にレーザー彫刻された模様の違いといったところだと思います。「DUNU VULKAN」(DK-X6)はKnowles製の2BAユニットが2種類と8mmの同軸デュアルドライバーが収容されたハイブリッドですが、「DUNU EST112」はSonion製ESTと13.5mmのドライバーなので、どちらの構成でも収容できるサイズ感、ということなのかもですね。
DUNU VULKAN (DK-X6)DUNU VULKAN (DK-X6)
海外では2022年の6月くらいにはリリースされていたモデルですので、イヤーピースは最近の「DUNU S&S」は付属せず、DUNUでは一般的な2種類のイヤーピースと、初期のAZLA SednaEarfitみたいな感じのイヤーピースが付属します。装着性自体は悪くないですが、イヤーピースが合わない場合はフィット感に合う他社製のイヤーピースに交換するなど多少工夫が必要かも。

DUNU VULKAN (DK-X6)DUNU VULKAN (DK-X6)
ケーブルは「DUNU DUW-02S」 と同じ4芯OCCリッツ線タイプで「DUNU DK2001」に付属するケーブルとほぼ同じものです。モジュラー式のプラグ交換ギミックに対応しており、3.5mmステレオと4.4mmおよび2.5mmのバランスに対応します。


■ サウンドインプレッション

DUNU VULKAN」(DK-X6)の音質傾向はニュートラルで若干ですが中低域に寄ったバランスです。350ドル前後の価格設定のマルチドライバーハイブリッドでニュートラルサウンド、というとやはり比較対象としては4BA+1DD構成の「Moondrop Blessing2」、特に329.99ドルの「Moondrop x Crinacle Blessing2:Dusk」との比較をイメージしますね。両者は比較的よく似た方向性のチューニングが行われていますが、「DUNU VULKAN」は低域の質感、特に重低音の表現において優れており、「Blessing2:Dusk」はより明瞭で伸びのある高域を持っています。
DUNU VULKAN (DK-X6)DUNU VULKAN」と比較されがちな「Blessing2」はMoondropの製品のなかでも特にモニター的なアプローチの高い製品で、「Blessing2:Dusk」はCrinacle氏の助言により僅かな変更を加えることで絶妙にリスニングチューンに変更されています。「DUNU VULKAN」はこれらの製品と比べると最初から明確にリスニングイヤホンとして仕上げられており、ボーカル域はやや温かく、低域は厚みを持ち、高域は聴きやすく、全体として快適さが増しています。それでも原音忠実性は比較可能なレベルで十分に確保されており、実はより情報量の多いケーブルに交換することでより明瞭さや解像感が向上するポテンシャルも持っています。もしもそのデザインに魅了されて購入したとしても、期待に応えてくれるサウンドパフォーマンスは発揮してくれると思います。ただし、再生環境はそれなりに駆動力があったほうが実力を実感出来るでしょう。

DUNU VULKAN」の高域は、適度に明るく、煌めきのある音を鳴らします。高域自体の主張は「Blessing2:Dusk」と比べると大人しめで突き抜けるような伸び感はありませんが、明るく煌めきがあり量的な不足感はありません。曲によっては鋭さが際立つため高域の刺激が苦手の方には若干キツく感じるかもしれませんが、刺さり手前くらいで調整されておりニュートラルバランスとしては結構聴きやすい印象です。

DUNU VULKAN (DK-X6)中音域はニュートラルで癖の無い音を鳴らします。よりリスニング的なチューニングが行われており、ボーカル域は適度な空気感と若干の温かみがあり、音場は自然な広さがあり立体的です。見通しも良く良くボーカルと演奏は綺麗に分離します。女性ボーカルの高音などの中高域に若干のアクセントがあり抜け感は良好です。また男性ボーカルも明瞭さとともに厚みも感じられます。ディテールの表現や粒立ちの良さなどでは「Blessing2」には及ばないものの十分な解像感があります。どちらかというとキレより穏やかさを感じさせるサウンドといえるでしょう。そのためメリハリを重視するかたには多少マイルドに感じるかも知れませんね。

低域はニュートラルなバランスを維持しつつ厚みと深さのある音を鳴らします。重低音はより深く重く存在感があります。そのため一般的なフラットバランスのイヤホンと比べ低域の存在感が増し、リスニング的な臨場感と楽しさを加えています。ミッドベースは適度に締まりがあり、アタックはパンチ力があります。ややドライでスピード感があり、中高域との分離も明確です。ハイブリッド的なメリハリの良さを感じる要素としてアクセントがつけられているのかもしれませんね。そのためジャズやクラシックなどで正確性のある低域を求める方には向かないかもしれません。いっぽうで、ロック、ポップス、また低域の多いEDMなどでは優れた表現力があり、リスニングサウンドとしては非常にエモーショナルです。


■ まとめ

DUNU VULKAN」は「Blessing2」などの同様のハイブリッドを始め、同価格帯のシングルダイナミックやマルチドライバーのイヤホンに対して競合しうる質感のニュートラルサウンドを実現しつつ、随所にDUNUとして他社とは異なるアプローチを感じさせる興味深いイヤホンでした。
DUNU VULKAN (DK-X6)DUNUの製品はミドルグレード以上でもラインナップや構成によって全く異なる方向性のサウンドチューニングを行いますが、例えばハーマンターゲットなど他でもやってるから、みたいな流され方はせず、それぞれの方向性で自社なりの正解を見つけようとしている姿勢が感じられるのは好感が持てます。もちろん中には私自身の好みに合わないケースもあるわけですが、様々な選択肢を提案し、それぞれで一定のクオリティを確保出来ているのはさすがですね。
私自身としてはこのクラスと競合する製品は何種類か持っていますが、似ているようでそれぞれ個性があり使い分ける楽しさも感じられるのが良いなと思っていたりしています。