
こんにちは。今回は「Truthear HEXA」です。昨年Crinacle氏とコラボした「Truthear x Crinacle ZERO」でマニアの間で大きな話題になった「Truthear」ブランドですが、「ZERO」に続いて登場した3BA+1DD構成のハイブリッドモデルが「Truthear HEXA」となります。DLP-3Dプリンティングによるシンプルデザインのシェルは非常にクールで、音質面も80ドル以下、12,000円ほどの低価格ながら滑らかなニュートラルサウンドを実現しています。
■ 製品の概要について
「Truthear」は2022年に登場した深圳の新しい中華イヤホンブランドです。高度な音響設計技術と、DLP 3Dプリンティングによる高精度シェルにより、低価格ながら高品質のイヤホンを相次いでリリースしています。MoondropやSoftearsなどと関係がある企業との情報もあり、同社は科学的で「成熟した」音作りについてのノウハウにより低コストの製品作りを得意としているようです。
同社が最初にリリースした「ZERO」は有名レビュアーのCrinacle氏とコラボした2DDモデルで、そのコストパフォーマンスの高さからマニアの間でも大きく話題になりました。現在までに同社では3BA+1DDの「HEXA」、そして2023年に入り、1DD構成の「HOLA」をリリースしています。
というわけで、今回の「Truthear HEXA」は「ZERO」に次いで登場したモデルで、PU+LCP複合振動板ダイナミックドライバーと高域用1BAと中音域用2BAユニットによる3BA+1DD構成のハイブリッド仕様のイヤホンです。シンプルで合理的かつ効率的な構成を採用し、完成度の高いイヤホンを低価格で製品化することを目指しています。


低域用の10mmダイナミックドライバーは、「ZERO」でも搭載されている、PU(ポリウレタン)サスペンションとLCP(液晶ポリマー)ドームによる複合振動板およびN52マグネットと独自ボイスコイルを採用し、パンチのある低域と正確な音域表現を可能にしています。また高域用と中音域用には2種類のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを搭載。高域用のBAは(Knowlesの)WBFKシリーズに類似した特性を持つツイーターユニットを搭載し、スムーズでクリアな高域を実現。中音域用にはフルレンジ仕様の2BAユニットを搭載し、低域用ダイナミックドライバーと完全にシンクロし、HRTF特性に沿った優れたサウンドを実現します。


シェルはフェイスプレートはCNC成型にサンドブラスト処理を行った金属製フェイスプレートに樹脂製のハウジングを採用。本体部は高精度のDLP 3Dプリンティング技術により音導管構造を一体化して成形し、ステムノズルに搭載されるフィルターと併せて4つのドライバーが対応する音域が正確に計算され調整しています。


「Truthear HEXA」の購入はAliExpressのオフィシャルストア、SHENZHENENAUDIO、アマゾンにて。アマゾンではプライム扱いで購入できます。価格は79.99ドル、アマゾンでは12,000円です。
Amazon.co.jp(シンセンオーディオ): Truthear HEXA
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Truthear HEXA」のパッケージは「ZERO」など同社の他の製品同様の「キャラ絵」タイプです。最近ではこの手のパッケージもほとんど違和感を感じなくなりましたね。ちなみに、アクリルスタンド付きというのもあったみたいですね。このうさ耳さんは「VIRGO」という名前なんでしょうかね。乙女座ですね。うん、全然わかんないw。


あと、「ZERO」のパッケージにも入っていた説明書の入った薄い箱はパッケージアートのスタンドとしても使える仕様は「Truthear HEXA」でも引き継がれています。この方法はコストをかけずにオマケを付けるという意味で(要る人にも要らない人にも)良いアイデアだなぁと感心しました。


パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースはシリコンタイプが2種類でS/M/Lサイズ、ウレタンが1ペア、レザーポーチ、説明書ほか。
シェルは米国HEYGEARSのDLP 3Dプリンタによるレジン製でフェイスプレートはサンドブラスト加工の表面処理を行った金属製。「ZERO」とは異なり直線を基調としたデザインで、ブラックのフェイスプレートとうっすらと透けて見える本体部分のコントラストがクールですね。それでも装着部分は耳に馴染みやすく、コンパクトな設計のため装着性は比較的良好です。


また2種類のフィルターが取り付けられたステムノズルは結構太めでイヤーピースもこの太さに合わせたものが付属します。中華イヤホンのイヤーピースは安っぽいものが多いですが、「Truthear HEXA」に付属のものは使いやすく質感も良い印象です。


ケーブルはCIEMに付属するケーブルのようなしなやかな手触りの撚り線でコネクタは2pinタイプ。多少絡まりやすいですが取り回しは良いです。本体部分の埋め込みも浅いため、リケーブルは中華2pinタイプでも問題なく利用できます。
■ サウンドインプレッション
「Truthear HEXA」の音質傾向はニュートラルで、フラットな滑らかさがあり、同時に小気味よさを楽しめる印象のサウンド。低価格の中華ハイブリッドイヤホンのイメージといえば、低域どーん、高域シャリシャリ、みたいな派手めのサウンドを想像しますが、「Truthear HEXA」のサウンドはミドルグレード以上の製品で多い各ドライバーのクロスオーバーを調整しニュートラルな方向にチューニングされたイヤホンのアプローチが見えます。このようなアプローチでは低コストのドライバーの場合は粗さが目立ってしまうため、あまり良い印象にならないことが多いのですが、「Truthear HEXA」ではほぼ粗さは感じず、驚くほどよく均整が取れた音を鳴らします。もしアンダー100ドル、1万円程度で高品質なフラットサウンドのイヤホンを探している方がいらっしゃったら、最適な製品のひとつといえるでしょう。
ただいっぽうで、クールな外観以上の「個性」は「Truthear HEXA」には見つけられないという印象も受けました。理詰めで均等に平均以上の得点を取るように作られた感があり、それ故に、それ以上のものは特に無い、という印象も感じます。
非常に良くできたイヤホンですが、同様のチューニングのミドルグレード以上の製品を持っている方には面白みを感じない製品かもしれません。何というか、「すごく勉強して飛び級して、そこでも全教科及第点を取ってる、スマートだけど真面目さだけが取り柄の子」みたいな感じもあるわけです。努力は認めるし好感も持てるけど、あまり楽しくない。この辺のイヤホンとしての楽しさ的な部分が同価格帯の「HZSOUND Heart Mirror Pro」にはあって「Truthear HEXA」には無いところのような気がしました。
「Truthear HEXA」の高域は思ったり滑らかで聴きやすい音を鳴らします。WBFKぽいBAといえば普通に考えれば「Bellsing 30095」あたりを想像しますが、KZやTRNの「30095」搭載イヤホンに特有の金属質なギラギラ感は「Truthear HEXA」にはありません。フィルターによる効果的に働いているのかも。ドライな明瞭感はあり伸びも比較的良好ですが思ったより柔らかく自然な印象です。キレ重視の方には物足りないかも知れませんが、全体のバランスとしては完全に調和しており、聴きやすい印象があります。
中音域はニュートラルで癖の無い音を鳴らします。印象としては無味無臭に近いため、ボーカルの熱量や臨場感などはあまりなく、ありのままに鳴らす、という傾向ですね。そのためリスニングイヤホンとしてはつまらない印象に感じる場合もありそうです。ボーカル域はやや近い印象がありますが、前後に深く、演奏との分離は非常に優れています。解像感はこのクラスのイヤホンとして突出するものでは無いかもしれませんが、ドライで小気味よい音を鳴らすことで、適度に柔らかく自然な輪郭ながらごちゃつくことはありません。この辺の音作りを計算でやってそうな感じは「すごいな」と思いますが、音作り的な「上手さ」とは別のものかもしれませんね。
低域はフラットなバランスながら適度な存在感があり、重低音は十分な量感があります。マニア的な評価の高い「ZERO」と同じドライバーを使用しているようですが、こちらは抑え気味なのか中高域のBAとのバランスでそう感じるのか、あまり厚みは無く、小気味よさと同時に軽めの印象になります。やや温かく、輪郭も緩めですがこのチューニングのため分離は良く、やや暗めに感じるものの自然な質感だと思います。
■ まとめ
というわけで、「Truthear HEXA」は非常に平均点の高い80ドル級イヤホン、という印象でした。非常に良くできており、この価格帯でのフラット方向のニュートラルなサウンドを実現したハイブリッドのなかでは間違いなくハイレベルな製品ですが、同時にこの手のサウンドを製品としてまとめることの難しさも改めて実感したイヤホンでした。
ネットワークを使わず、ドライバーの特性と入念に計算された音導管設計を高精度3Dプリントで出力し、最後にステムのフィルターで整える。入念に設計することで生産コストを下げ、高品質なイヤホンに仕上げる。このようないかにもIQ高めの理系なアプローチの製品は、本業がいちおう技術屋の私としてはかなり好感が持てるのですが、音質というのはやはりアナログというか好みによるもので、理詰めだけではそこを超えて感性に訴えるのは難しい、ということも感じさせました。なので、敢えてすげー変態的な特徴のケーブルに換えてみるとか、古い真空管アンプで思い切り歪ませるとか、この優等生にどういうイタズラをしたら楽しいかな、などと考えてしまうおっさんなのでした(笑)。
いやでも念のためですが、「Truthear HEXA」はこーゆー沼に落ちきってるダメなマニア以外には「お手頃価格で結構優秀な良いイヤホン」ですよ(^^)。
「Truthear」は2022年に登場した深圳の新しい中華イヤホンブランドです。高度な音響設計技術と、DLP 3Dプリンティングによる高精度シェルにより、低価格ながら高品質のイヤホンを相次いでリリースしています。MoondropやSoftearsなどと関係がある企業との情報もあり、同社は科学的で「成熟した」音作りについてのノウハウにより低コストの製品作りを得意としているようです。
同社が最初にリリースした「ZERO」は有名レビュアーのCrinacle氏とコラボした2DDモデルで、そのコストパフォーマンスの高さからマニアの間でも大きく話題になりました。現在までに同社では3BA+1DDの「HEXA」、そして2023年に入り、1DD構成の「HOLA」をリリースしています。
というわけで、今回の「Truthear HEXA」は「ZERO」に次いで登場したモデルで、PU+LCP複合振動板ダイナミックドライバーと高域用1BAと中音域用2BAユニットによる3BA+1DD構成のハイブリッド仕様のイヤホンです。シンプルで合理的かつ効率的な構成を採用し、完成度の高いイヤホンを低価格で製品化することを目指しています。


低域用の10mmダイナミックドライバーは、「ZERO」でも搭載されている、PU(ポリウレタン)サスペンションとLCP(液晶ポリマー)ドームによる複合振動板およびN52マグネットと独自ボイスコイルを採用し、パンチのある低域と正確な音域表現を可能にしています。また高域用と中音域用には2種類のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを搭載。高域用のBAは(Knowlesの)WBFKシリーズに類似した特性を持つツイーターユニットを搭載し、スムーズでクリアな高域を実現。中音域用にはフルレンジ仕様の2BAユニットを搭載し、低域用ダイナミックドライバーと完全にシンクロし、HRTF特性に沿った優れたサウンドを実現します。


シェルはフェイスプレートはCNC成型にサンドブラスト処理を行った金属製フェイスプレートに樹脂製のハウジングを採用。本体部は高精度のDLP 3Dプリンティング技術により音導管構造を一体化して成形し、ステムノズルに搭載されるフィルターと併せて4つのドライバーが対応する音域が正確に計算され調整しています。


「Truthear HEXA」の購入はAliExpressのオフィシャルストア、SHENZHENENAUDIO、アマゾンにて。アマゾンではプライム扱いで購入できます。価格は79.99ドル、アマゾンでは12,000円です。
Amazon.co.jp(シンセンオーディオ): Truthear HEXA
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Truthear HEXA」のパッケージは「ZERO」など同社の他の製品同様の「キャラ絵」タイプです。最近ではこの手のパッケージもほとんど違和感を感じなくなりましたね。ちなみに、アクリルスタンド付きというのもあったみたいですね。このうさ耳さんは「VIRGO」という名前なんでしょうかね。乙女座ですね。うん、全然わかんないw。


あと、「ZERO」のパッケージにも入っていた説明書の入った薄い箱はパッケージアートのスタンドとしても使える仕様は「Truthear HEXA」でも引き継がれています。この方法はコストをかけずにオマケを付けるという意味で(要る人にも要らない人にも)良いアイデアだなぁと感心しました。


パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースはシリコンタイプが2種類でS/M/Lサイズ、ウレタンが1ペア、レザーポーチ、説明書ほか。
シェルは米国HEYGEARSのDLP 3Dプリンタによるレジン製でフェイスプレートはサンドブラスト加工の表面処理を行った金属製。「ZERO」とは異なり直線を基調としたデザインで、ブラックのフェイスプレートとうっすらと透けて見える本体部分のコントラストがクールですね。それでも装着部分は耳に馴染みやすく、コンパクトな設計のため装着性は比較的良好です。


また2種類のフィルターが取り付けられたステムノズルは結構太めでイヤーピースもこの太さに合わせたものが付属します。中華イヤホンのイヤーピースは安っぽいものが多いですが、「Truthear HEXA」に付属のものは使いやすく質感も良い印象です。


ケーブルはCIEMに付属するケーブルのようなしなやかな手触りの撚り線でコネクタは2pinタイプ。多少絡まりやすいですが取り回しは良いです。本体部分の埋め込みも浅いため、リケーブルは中華2pinタイプでも問題なく利用できます。
■ サウンドインプレッション

ただいっぽうで、クールな外観以上の「個性」は「Truthear HEXA」には見つけられないという印象も受けました。理詰めで均等に平均以上の得点を取るように作られた感があり、それ故に、それ以上のものは特に無い、という印象も感じます。

「Truthear HEXA」の高域は思ったり滑らかで聴きやすい音を鳴らします。WBFKぽいBAといえば普通に考えれば「Bellsing 30095」あたりを想像しますが、KZやTRNの「30095」搭載イヤホンに特有の金属質なギラギラ感は「Truthear HEXA」にはありません。フィルターによる効果的に働いているのかも。ドライな明瞭感はあり伸びも比較的良好ですが思ったより柔らかく自然な印象です。キレ重視の方には物足りないかも知れませんが、全体のバランスとしては完全に調和しており、聴きやすい印象があります。

低域はフラットなバランスながら適度な存在感があり、重低音は十分な量感があります。マニア的な評価の高い「ZERO」と同じドライバーを使用しているようですが、こちらは抑え気味なのか中高域のBAとのバランスでそう感じるのか、あまり厚みは無く、小気味よさと同時に軽めの印象になります。やや温かく、輪郭も緩めですがこのチューニングのため分離は良く、やや暗めに感じるものの自然な質感だと思います。
■ まとめ
というわけで、「Truthear HEXA」は非常に平均点の高い80ドル級イヤホン、という印象でした。非常に良くできており、この価格帯でのフラット方向のニュートラルなサウンドを実現したハイブリッドのなかでは間違いなくハイレベルな製品ですが、同時にこの手のサウンドを製品としてまとめることの難しさも改めて実感したイヤホンでした。

いやでも念のためですが、「Truthear HEXA」はこーゆー沼に落ちきってるダメなマニア以外には「お手頃価格で結構優秀な良いイヤホン」ですよ(^^)。