こんにちは。前回に引き続きTruthearのイヤホンのレビューです。今回は「Truthear HOLA」です。2023年に入ってリリースされたアンダー20ドルの最新モデル。11mmのPUサスペンションとLCPドームの複合振動板のダイナミックドライバーをシングルで搭載します。
■ 製品の概要について
「Truthear」は2022年に登場した深圳の新しい中華イヤホンブランドです。高度な音響設計技術と、DLP 3Dプリンティングによる高精度シェルにより、低価格ながら高品質のイヤホンを相次いでリリースしています。MoondropやSoftearsなどと関係がある企業との情報もあり、同社は科学的で「成熟した」音作りについてのノウハウにより低コストの製品作りを得意としているようです。
同社が最初にリリースした「ZERO」は有名レビュアーのCrinacle氏とコラボした2DDモデルで、そのコストパフォーマンスの高さからマニアの間でも大きく話題になりました。現在までに同社では3BA+1DDの「HEXA」、そして2023年に入り、1DD構成の「HOLA」をリリースしています。
今回は最新モデルの「Truthear HOLA」です。PU+LCP複合振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載し、本体は高精細のDLP 3DプリンティングのシェルとCNC加工したアルミニウム合金製フェイスプレートを採用しています。
「Truthear HOLA」のドライバーは、PU(ポリウレタン)サスペンションとLCP(液晶ポリマー)ドームによる複合振動板およびN52マグネットを採用した11mmサイズの二重磁気回路ダイナミックドライバーをシングルで搭載します。低コストながら優れた音響特性を実現しています。
「Truthear HOLA」のパッケージは20ドル以下の低価格モデルということもあり、従来よりコンパクトなタイプになりました。ちょうど「TANCHJIM ZERO」のパッケージに近い感じですが外箱が引き出し式になっているなどデザイン的にもより考慮されている印象です。
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース、レザーポーチ、説明書ほか。イヤーピースは2種類で開口部の小さい方が3サイズ、広い方が4サイズ入っています。
イヤホン本体は3Dプリンティングによるレジン製で、フェイス部分にプリントされたアルミ製パネルが貼り付けられています。既存の「ZERO」や「HEXA」に比べると一般的な耳掛けタイプのデザインでステムノズルも一般的なサイズです。フェイスパネルの特徴的な模様のデザイン以外には特に個性的な要素は無いシンプルな形状ですね。
そのため装着性も一般的で、多くの方に馴染みやすい形状でしょう。なお結構耳奥まで装着する音を想定しているらしくイヤーピースは非常に小さいサイズのものから、全体的にやや小さめかもしれません。私自身は耳穴がもともと小さいため特に問題はなかったのですが、普段Mサイズのイヤーピースを使用されている方でも付属品ではいちばん大きいものが合うかも入れません。そうなるとそれ以上のサイズの場合は付属品では無く、スパイラルドットやAET07(互換品含む)などのようなイヤーピースに交換した方が良さそうです。
ケーブルは「HEXA」に付属していたものより若干太さのある2芯線タイプになりました。線材はOFCとのこと。樹脂製の滑らかな被膜で従来より絡まりにくく取り回しも向上している印象です。
■ サウンドインプレッション
「Truthear HOLA」の音質傾向はニュートラルで滑らかな印象。バランスとしては緩やかにU字を描く弱ドンシャリで、○○ターゲット的な最近の「流行り」に忠実に寄せた印象です。それだけだと低価格中華イヤホンを普段から多く聴かれている方ですと「あーまたこのパターンね。はいはい」みたいに思われるかもしれないのですが、「Truthear HOLA」はボーカル域の「聴き心地」みたいなものに特にフォーカスした印象で、全体として柔らかく、ストリーミングを長時間聴き続けるような最近のリスニングスタイルに合わせた音作りを感じます。
アンダー20ドル、アマゾンでも3千円と購入しやすい価格帯で、外観も好き嫌いが少なく、どのようなファッションでも浮くことなく使えそうなデザインで、音質的には聴きやすく心地よいサウンドのイヤホンを探しているライトユーザーに最適なイヤホンといえるでしょう。
「Truthear」のサウンドチューニングは「成熟している」とよく言われ、メーカー自身も製品説明で表記しています。いっぽうでその癖の無い音作りは個性的な要素が生まれにくいこともあり、前回の「HEXA」は同価格帯で強力な競合がひしめいている状況もあり若干辛めの記述も多めに入れました。しかし、今回の「Truthear HOLA」については、競合製品と比較してもむしろ「強み」のほうが際立つかもしれませんね。
20ドル前後の価格帯で、全体的に癖の無い手堅いまとめ方と、ボーカル域にフォーカスした若干緩めのサウンドは、マニア以外のより幅広い層を考慮した場合でよりメリットを感じる製品だと思います。
「Truthear HOLA」の高域は、滑らかで聴きやすい音を鳴らします。伸び感や明瞭さは平均的な印象で全体的にはやや主張を抑え気味のため、高域成分の多い曲でも歪みなどはほぼ感じず聴きやすくまとめられていますが煌めきや解像感はそれなりです。しかし中高域に若干のアクセントがあり、ボーカル域を適度な量感で下支えする印象。また刺さりや歯擦音なども皆無で穏やかさを感じます。
中音域は癖の無いニュートラルな音を慣らしつつ、ややU字の印象で全体的には若干凹むもののボーカル域については前面に出ます。女性ボーカルやピアノの高音などは明るめで明瞭感があります。男性ボーカルの低音はやや軽め。全体としての音像は自然で滑らかですが、解像感やキレ重視の方には緩めのサウンドに感じるかもしれませんね。音場は平均的ですがボーカルと演奏は前後に分離し、全体的に聴きやすいサウンドです。ただし、音量やゲインを上げるとやや派手に鳴る傾向があり、聴きやすい音量で穏やかなリスニングを楽しむのに最適なチューニングといえるでしょう。
低域は適度な締まりのある明瞭な音を鳴らします。「HEXA」の低域より量感があり全体としてバランスの良さを感じます。重低音は深く厚みのある質感で臨場感があります。ただしミッドベースはやはり軽めの印象で、低域にパワーやキレの良さを求める方には不満を感じるかもしれませんね。やはりボーカル域を下支えするための低域という印象を受けますね。
■ まとめ
「Truthear HOLA」のサウンドは穏やかなU字バランスの聴きやすいボーカル曲向けイヤホン、ということで、ロック、ポップス、アニソンなどをメインにストリーミングなどで気軽に楽しむユーザー向けに最適化された製品だと思います。いっぽうでゴリゴリのハードロックやメタル、あるいはEDMなどでテンポの速いビートを効かせる曲などでは物足りなさが際立つかもしれません。個人的にはライトユーザー向けの製品として良くできていると思います。
ただしいて言えば、ライトユーザー向けを狙っているわりにやや鳴らしにくく、またゲーミングなどの用途などもあまり想定されていない感じがしますね。また刺さりの無い柔らかい音や黒を基調としたシンプルなデザインは、それこそQoAあたりがターゲットにしている大人の女性みたいな層にも聴きやすく服に合わせやすいなどの点で向いていそうですが、プレゼントで渡すのにはちょっとパッケージで引かれそうですね(^^;)。ブランドや経営者の趣味嗜好に対して製品のマーケティング的なギャップを上手く調整出来れば、もう一皮むけそうな、別のポテンシャルも感じるイヤホンでした。
同社が最初にリリースした「ZERO」は有名レビュアーのCrinacle氏とコラボした2DDモデルで、そのコストパフォーマンスの高さからマニアの間でも大きく話題になりました。現在までに同社では3BA+1DDの「HEXA」、そして2023年に入り、1DD構成の「HOLA」をリリースしています。
今回は最新モデルの「Truthear HOLA」です。PU+LCP複合振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載し、本体は高精細のDLP 3DプリンティングのシェルとCNC加工したアルミニウム合金製フェイスプレートを採用しています。
「Truthear HOLA」のドライバーは、PU(ポリウレタン)サスペンションとLCP(液晶ポリマー)ドームによる複合振動板およびN52マグネットを採用した11mmサイズの二重磁気回路ダイナミックドライバーをシングルで搭載します。低コストながら優れた音響特性を実現しています。
「Truthear HOLA」の購入はAliExpressのオフィシャルストア、SHENZHENENAUDIO、アマゾンにて。アマゾンではプライム扱いで購入できます。価格は18.99ドル、アマゾンでは3,000円です。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Truthear HOLA」のパッケージは20ドル以下の低価格モデルということもあり、従来よりコンパクトなタイプになりました。ちょうど「TANCHJIM ZERO」のパッケージに近い感じですが外箱が引き出し式になっているなどデザイン的にもより考慮されている印象です。
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース、レザーポーチ、説明書ほか。イヤーピースは2種類で開口部の小さい方が3サイズ、広い方が4サイズ入っています。
イヤホン本体は3Dプリンティングによるレジン製で、フェイス部分にプリントされたアルミ製パネルが貼り付けられています。既存の「ZERO」や「HEXA」に比べると一般的な耳掛けタイプのデザインでステムノズルも一般的なサイズです。フェイスパネルの特徴的な模様のデザイン以外には特に個性的な要素は無いシンプルな形状ですね。
そのため装着性も一般的で、多くの方に馴染みやすい形状でしょう。なお結構耳奥まで装着する音を想定しているらしくイヤーピースは非常に小さいサイズのものから、全体的にやや小さめかもしれません。私自身は耳穴がもともと小さいため特に問題はなかったのですが、普段Mサイズのイヤーピースを使用されている方でも付属品ではいちばん大きいものが合うかも入れません。そうなるとそれ以上のサイズの場合は付属品では無く、スパイラルドットやAET07(互換品含む)などのようなイヤーピースに交換した方が良さそうです。
ケーブルは「HEXA」に付属していたものより若干太さのある2芯線タイプになりました。線材はOFCとのこと。樹脂製の滑らかな被膜で従来より絡まりにくく取り回しも向上している印象です。
■ サウンドインプレッション
「Truthear HOLA」の音質傾向はニュートラルで滑らかな印象。バランスとしては緩やかにU字を描く弱ドンシャリで、○○ターゲット的な最近の「流行り」に忠実に寄せた印象です。それだけだと低価格中華イヤホンを普段から多く聴かれている方ですと「あーまたこのパターンね。はいはい」みたいに思われるかもしれないのですが、「Truthear HOLA」はボーカル域の「聴き心地」みたいなものに特にフォーカスした印象で、全体として柔らかく、ストリーミングを長時間聴き続けるような最近のリスニングスタイルに合わせた音作りを感じます。
アンダー20ドル、アマゾンでも3千円と購入しやすい価格帯で、外観も好き嫌いが少なく、どのようなファッションでも浮くことなく使えそうなデザインで、音質的には聴きやすく心地よいサウンドのイヤホンを探しているライトユーザーに最適なイヤホンといえるでしょう。
「Truthear」のサウンドチューニングは「成熟している」とよく言われ、メーカー自身も製品説明で表記しています。いっぽうでその癖の無い音作りは個性的な要素が生まれにくいこともあり、前回の「HEXA」は同価格帯で強力な競合がひしめいている状況もあり若干辛めの記述も多めに入れました。しかし、今回の「Truthear HOLA」については、競合製品と比較してもむしろ「強み」のほうが際立つかもしれませんね。
20ドル前後の価格帯で、全体的に癖の無い手堅いまとめ方と、ボーカル域にフォーカスした若干緩めのサウンドは、マニア以外のより幅広い層を考慮した場合でよりメリットを感じる製品だと思います。
「Truthear HOLA」の高域は、滑らかで聴きやすい音を鳴らします。伸び感や明瞭さは平均的な印象で全体的にはやや主張を抑え気味のため、高域成分の多い曲でも歪みなどはほぼ感じず聴きやすくまとめられていますが煌めきや解像感はそれなりです。しかし中高域に若干のアクセントがあり、ボーカル域を適度な量感で下支えする印象。また刺さりや歯擦音なども皆無で穏やかさを感じます。
中音域は癖の無いニュートラルな音を慣らしつつ、ややU字の印象で全体的には若干凹むもののボーカル域については前面に出ます。女性ボーカルやピアノの高音などは明るめで明瞭感があります。男性ボーカルの低音はやや軽め。全体としての音像は自然で滑らかですが、解像感やキレ重視の方には緩めのサウンドに感じるかもしれませんね。音場は平均的ですがボーカルと演奏は前後に分離し、全体的に聴きやすいサウンドです。ただし、音量やゲインを上げるとやや派手に鳴る傾向があり、聴きやすい音量で穏やかなリスニングを楽しむのに最適なチューニングといえるでしょう。
低域は適度な締まりのある明瞭な音を鳴らします。「HEXA」の低域より量感があり全体としてバランスの良さを感じます。重低音は深く厚みのある質感で臨場感があります。ただしミッドベースはやはり軽めの印象で、低域にパワーやキレの良さを求める方には不満を感じるかもしれませんね。やはりボーカル域を下支えするための低域という印象を受けますね。
■ まとめ
「Truthear HOLA」のサウンドは穏やかなU字バランスの聴きやすいボーカル曲向けイヤホン、ということで、ロック、ポップス、アニソンなどをメインにストリーミングなどで気軽に楽しむユーザー向けに最適化された製品だと思います。いっぽうでゴリゴリのハードロックやメタル、あるいはEDMなどでテンポの速いビートを効かせる曲などでは物足りなさが際立つかもしれません。個人的にはライトユーザー向けの製品として良くできていると思います。
ただしいて言えば、ライトユーザー向けを狙っているわりにやや鳴らしにくく、またゲーミングなどの用途などもあまり想定されていない感じがしますね。また刺さりの無い柔らかい音や黒を基調としたシンプルなデザインは、それこそQoAあたりがターゲットにしている大人の女性みたいな層にも聴きやすく服に合わせやすいなどの点で向いていそうですが、プレゼントで渡すのにはちょっとパッケージで引かれそうですね(^^;)。ブランドや経営者の趣味嗜好に対して製品のマーケティング的なギャップを上手く調整出来れば、もう一皮むけそうな、別のポテンシャルも感じるイヤホンでした。