Joyodio SHINE

こんにちは。今回は「Joyodio SHINE」です。80ドル前後の価格設定の2BA+1DDハイブリッドのイヤホンですが、その最大の特徴は側面の4系統のスイッチ。低価格ながら低域、高域、超高域と全体のインピーダンスを変化させるスイッチの組み合わせて異なるサウンドバランスを楽しむことが出来ます。それぞれのモードは均整が取れており、お手頃価格で「Yanyin Canon」のようなサウンドチューニングを楽しめる個性的な製品です。

■ 製品の概要について

「Joyodio」はLinsoul系で取り扱われる新しい中華イヤホンのブランドのようです。
今回の「Joyodio SHINE」は2種類のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーと7mmダイナミックドライバーによる2BA+1DD構成のハイブリッド型イヤホンで、3Dプリントによるキャビティと亜鉛合金製の金属フェイスプレート、そして4系統のスイッチを備えた独創的なモデルです。
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ドライバー構成は高域および超高域用ツィーターの「30019」BAと、中音域から中高域をカバーするフルレンジの「29689」BA、そして低域用の「7mm 二重磁気デュアルキャビティダイナミックドライバー」を搭載します。ちなみに「30019」および「29689」はどちらもKnowlesの「WBFK」および「ED」シリーズで同型番のBAユニットがありますが、KZやTRNと同様にBellsingなど中華BAサプライヤーからの相当品と考える方が妥当でしょう。ポイントなのは独自のクロスオーバー処理を行うネットワーク回路でこのイヤホンの最も重要な部品といえるでしょう。従来の数々の低価格中華イヤホンで成熟し、しかも低コストで入手可能となった各ドライバーを使用しつつ、特許技術のネットワーク回路を使用することで、1ランク製品のステージを上げたような音作りを実現しているようです。
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また本体は音導管やドライバーユニットの固定部分を含め一体成形された3Dプリントによるレジン製キャビティを使用しており、正確なサウンドチューニングを実現しています。
そして本体側面には最も特徴的な特許取得済みの 4レベルのチューニングスイッチを備えます。クロスオーバーの制御回路に対し、隣接周波数帯域のクロストーク抑制と位相補償技術を使用して低域(Low)、高域(High)、超高域(Ultra-High)の3段階のチューニング変更が可能。さらに全周波数帯に影響する4つめのスイッチと併せて、最大16種類の異なるチューニングを楽しめます。
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Joyodio SHINE」の購入はLinsoul(linsoul.com)またはアマゾンのLINSOUL-JPにて。
価格は79.99ドル、アマゾンでは10,520円です。
Linsoul(linsoul.com): Joyodio SHINE
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): Joyodio SHINE


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

Joyodio SHINE」のパッケージはアンダー100ドルのイヤホンとしてはかなりしっかりした印象ですね。正直届いたときには2倍くらいの価格をイメージしてしまいました(^^;)。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピースは本体装着済みの黒色のイヤーピースのほか2種類、それぞれS/M/Lサイズが付属、さらに、スイッチ変更用ピン、ハードケース、スイッチ説明、説明書など。付属するケースはDUNUの上位モデル(「SA6」など)に付属しているレザーケースと同一のロゴなし版で、やはりアンダー100ドルとしてはかなり豪華な印象ですね。
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本体は3Dプリンタによるレジン製シェルと亜鉛合金による金属製プレートの組み合わせ。金属部分はフェイスおよびコネクタおよびスイッチ部分も含めた特徴的な分割面になっていますね。
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スイッチ付きのイヤホンも多くは1系統または2系統で、「Yanyin Canon」のような3系統スイッチでも結構珍しいですが、「Joyodio SHINE」の4系統スイッチというのはさらにレアで、たぶん私がレビューしたイヤホンでは初めてかも知れませんね。さすがにこの数になると占有しているサイズも大きくなりますね。
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ステムノズルは一般的な太さでイヤーピースの選択にはあまり困らないでしょう。最初から装着済みのイヤーピースはKZ付属のフジツボタイプのようなものですが、それ以外に開口部の広いイヤーピースが芯の硬いタイプと柔らかいタイプで2種類付属します。私は付属品はどれもいまひとつ合わなかったのでSpinFit CP100+を使用しました。ほかにも定番の「スパイラルドット」や「AET07」(互換品含む)などに交換するのも良いですね。
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ケーブルは細めの線材による8芯 銀メッキ線ケーブル。今回はマイク付きモデルで届きました。コネクタはqdc互換タイプ。柔らかい線材で取り回しは良いですが、適時リケーブルを検討するのも良いでしょう。

■ サウンドインプレッション

※以降、各スイッチのOFFを「0」、ONを「1」として、①~④の順で、例えば初期値の「Standard(すべてOFF)」を「0000」のように表記します。
Joyodio SHINE」のサウンドは4種類の各スイッチモードによりかなり分かりやすく変化しますが、ベースとしてはニュートラルな弱ドンシャリで、「Standard」(0000)では最近の中華イヤホンで増えているU字方向のバランスでボーカル域から中高域にかけては僅かにウォームな印象もあります。逆に「POP」(1111)ではかなり派手目で、TRNあたりのエネルギッシュな印象に近いサウンドに変化します。

Joyodio SHINEJoyodio SHINE」の側面スイッチは①低域(Low)②高域(High)③超高域(Ultra-High)、そして④全体の調整(full frequency overall regulation)という記載になっています。①②③の各スイッチでも各音域のネットワーク的な抵抗値が変わる仕様と考えられ、インピーダンスや感度などに多少影響するはずですが、なかでも④についてはインピーダンスそのものを一気に変更するスイッチだと思われます。「Joyodio SHINE」の仕様ではインピーダンスは「11Ω~31Ω」と記載されており、④のスイッチだけでON/OFFの差が確実に10Ω以上は変化しそうですね。

そのため、「HIFI(0001)」では「Standard(0000)」に比べ分かりやすく音量が変化します。またニュートラルな傾向維持したまま暖色方向から一気に寒色な印象に変化し明瞭感とキレの良さが一気に向上します。そして、「R&B/Rock(1001)」はメリハリを高め低域のパワーを増すチューニング、「Classical(0011)」は「HIFI(0000)」をベースに超高域を伸ばすことで聴きやすさより透明感を増したチューニング、というように解釈することが出来ます。
またこれ以外にも④のスイッチをOFFにしたままで①~③を変更することで、ウォームさをもちつつ女性ボーカルなどの高音にアクセントを付けたり、男性ボーカルなどの低域寄を厚くしたり、といったチューニングが可能になります。これらのモードでも籠もったりバランスが破綻することは無く、高度な回路設計が行われていることを改めて実感します。

Joyodio SHINEちなみに、「Joyodio SHINE」が使用している各ドライバーはおそらくKZやTRNと同じような中華BAで、7mmダイナミックドライバーも低価格中華イヤホンで採用されているものに近いと思われます。そのためか、各スイッチによる変化とは別に再生環境、特に駆動力での変化も大きく、情報量の多いケーブルやバランス接続でのリケーブルなどでもかなり変化があります。より駆動力のあるほう、情報量が多いほうが明るめ、派手目に変化しますが、高域が極端に歪むような事は無く、思ったより快適に使用できます。それでも、通常のDAPの場合は付属ケーブルでは「POP」くらいの派手さがあったほうが楽しく聴けるのに対し、据置きの「FiiO K9 PRO LTD」のようなアンプであれば、「Standard」でも十分に明瞭感が有り、「POP」ではやや派手すぎるかな、くらいの印象にはなります。スイッチだけでなく、ケーブルやイヤーピース、再生環境まで含めた最適値を見つけるのも「Joyodio SHINE」の醍醐味と言えるでしょう。

Joyodio SHINE」の高域は硬質で明瞭さのあるハッキリ目の音を鳴らします。スイッチにより印象さは変わりますが「Standard(0000)」では刺激を抑え僅かに温かく、「POP(1111)」などでは少し前のKZやTRNぽい音になります。分離も良く過度なギラつきはありませんが、低価格中華ハイブリッドぽい音ではあると思います。
Joyodio SHINE中音域は比較的近くボーカルは前向きに感じます。④スイッチのOFF/ONで暖色系・寒色系に変化し、OFFではやや暗く、ONでは鮮やかさのある印象になります。分離は良く音場は適度な広さと奥行きがあり演奏とボーカルの音像も比較的捉えやすいですが、定位はモードによって多少変化します。
低域はスッキリしたスピード感のある音を鳴らします。7mmドライバーは十分に深さのある重低音を持ちつつ、スピード感のある音を鳴らします。KZのようなパワー押しな感じはないものの量感は十分で締まりのあるミッドベースと併せてにじみの少ない聴きやすい音だと思います。


■ まとめ

というわけで、「Joyodio SHINE」は最近のKZ/CCAあたりの低価格中華イヤホンに近い音質傾向をもちつつ、「Yanyin Canon」もびっくり(笑)な高度なスイッチ回路でキレッキレのサウンドから、低域ゴリゴリのEDM、そしてジャズやバラードなど分野に合わせたサウンドを楽しめる、かなり興味深いイヤホンだと思いました。また再生環境やケーブルでの変化も大きく、これらも合わせると16種類のスイッチでの変化はさらに多くの可能性を感じることが出来るでしょう。
Joyodio SHINEただし、「Yanyin Canon」がミドルグレードの音作りをベースにスイッチオペレーションを加えていたのに対し、「Joyodio SHINE」の音質自体は「ちょっと前の低価格中華ハイブリッドくらい」であることは理解しておいた方が良いでしょう。サウンドバランスを好みに変えられることこそが「Joyodio SHINE」の最大の「売り」であるため、サウンドチューニングは相当追い込むことが出来そうですが、「音質」自体が変わるわけではない、ということですね。とはいえ、マニア向けのアイテムとしては非常に興味深く、外観の質感なども良いことも含め、1万円程度の価格設定は十分にお手頃だと思います。興味のある方は挑戦してみるのも良いと思いますよ。