SIMGOT EA2000

こんにちは。またまた購入済み未レビューのイヤホンを取り上げる「棚からレビュー」企画ですね。今回は 「SIMGOT EA2000」です。さまざまな高音質イヤホンをリリースしている「SIMGOT」の最新モデルのなかで最も上位グレードの設定になっている製品ですね。「1DD+1PR」という非常に興味深い独特のドライバー構成を採用し、音質的にもSIMGOTの優れた音作りを改めて実感出来る製品だと思います。

■ 製品の概要について

「SIMGOT」は主にミドルグレードの高音質モデルを得意とする中華イヤホンブランドで、かつての代表的なモデル「EN700」シリーズは中華イヤホンを枠を超えた人気モデルとして幅広いユーザーを獲得していました。その後、数年は100ドル前後の比較的エントリークラスの製品が多かったものの、2022年秋は「EN700」シリーズを受け継ぐ「EN1000」と、ハイグレードモデルの「EA2000」、そしてその技術を応用したエントリーモデルの「EA500」を相次いでリリースしました。

今回紹介するのは新シリーズのなかのハイグレードモデル「SIMGOT EA2000 (Boson)」です。日本でも4万円オーバーの価格設定ですが、同社の最新技術を詰め込んだフラグシップらしい仕様で高音質を実現。その最大の特徴はドライバー構成で、1DD+1PR(Passive Radiator/誘導構造ドライバー)という独特の仕組みを採用しています。
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ベースとなるフルレンジのダイナミックドライバーには、デュアル磁気回路&デュアルチャンバー構造の12mm ムービングコイル・ダイナミックドライバー を搭載。新開発のドライバーは内外の二重磁気回路にN52マグネットを採用し1.9テスラの磁束密度を実現。ダイナミックレンジとトランジェント性能の向上とともに広帯域化、低歪化を可能にしています。
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そして、「SIMGOT EA2000」では低域用に6mmサイズのPR(Passive Radiator/誘導構造ドライバー)を搭載。その原理はベースとなる12mmドライバーの振動板の動きによって発生するキャビティ内の空気圧の変化に連動してパッシブ型の振動板が振動し低域を発生させるという構造です。空気の膨張および圧縮に合わせて発生する音により低域の量感が増し、より深みのあるサウンドを実現します。
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SIMGOT EA2000」のケーブルはリッツ構造の高純度無酸素銅銀メッキ線の8芯ケーブルを採用。芯当たり19本、8芯で152本の線材を使用し、個別エナメル絶縁で内部はリッツ構造を採用しています。そして、プラグ部分は3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスのモジュール式プラグを採用。さらに3.5mmシングルエンドは標準でクリアな印象の「N3A000」(3.5mm)、「N4A000」(4.4mm)と、よりボーカル域にフォーカスした「N3A035」(3.5mm)の3種類のプラグモジュールに交換が可能です。

SIMGOT EA2000 (Boson)」の購入は主要専門店などで。価格は43,996円 です。
Amazon.co.jp(国内正規品): SIMGOT EA2000 
※掲載時アマゾンで38,886円(12% OFF)で購入可能なようです。

またLinsoul(linsoul.com)でも取扱いを開始しました。価格は319.99ドルです。
Linsoul(linsoul.com): SIMGOT EA2000


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

SIMGOT EA2000 (Boson)」のパッケージは製品画像が描かれたシンプルながら高級感のあるもので、内箱は観音開きになっています。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、モジュール式プラグ(「N3A000」「N3A035」「N4A000」)、イヤーピース(2種類、それぞれS/M/Lサイズ)レザーケース、説明書など。
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本体は5軸CNC加工にアルミニウム合金の金属製シェルでフェイス部分には高透明度クリスタルガラスが埋め込まれています。ハイグレードモデルらしい美しい仕上がりで、背面のパッシブラジエーター(PR)用のベントが特徴的ですね。
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シェル自体はやや重量感がありますが比較的コンパクトで装着性も良い印象。コネクタはMMCX仕様です。
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イヤーピースは2種類付属し、通常の場合は問題なく利用できるでしょう。他にも定番の定番の「スパイラルドット」や、フィット感の強いタイプでは「SpinFit CP100+」や「Softears U.C.」など、自分の耳に合う最適なイヤピースに交換するのも良いでしょう。このイヤホンの特徴である低域を実感するためにはしっかり挿入してフィットさせる必要があるため、とくに低域が抜けるようでしたらイヤーピースを交換した方が良いでしょう。私は最終的に「Softears U.C.」に交換しました。

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ケーブルは8芯銀メッキ線タイプで表面のTPE樹脂被膜は適度な弾力を保ちつつ柔らかで取り回しも良い印象。プラグは3.5mm、4.4mmのほか音質傾向の異なるタイプの3.5mmも付属する興味深い仕様。


■ サウンドインプレッション

SIMGOT EA2000 (Boson)」の音質傾向は、バランスの良いV字を描く弱ドンシャリ方向のサウンド。パッシブラジエーターの生み出す低域は独特の深みがあり、奥の方で感じる広がりの良さは結構「やみつき」になりそうですね。また12mmフルレンジドライバーの解像感やディテール表現も非常に素晴らしく、伸びのある高域と広く非常に見通しの良い空間表現のなかで1音1音の粒立ちが良く実在感があります。適度なV字バランスでリスニング的な臨場感もあり、いつまでも聴いていたくなる心地よさを感じさせるイヤホンです。

SIMGOT EA2000シングルエンドでは「N3A000」プラグは高域の伸びが良く、「N3A035」のほうが中高域の抜けの良さを維持しつつ若干柔らかく、ボーカル域はより厚みを感じさせます。4.4mmの「N4A000」ではバランス接続による分離の向上とともに解像感がよりハッキリと強調されるため明瞭かつスッキリした印象を感じさせます。日本でこのクラスのイヤホンを検討される方の多くは、よりディテールなどの表現が明瞭でスッキリした印象を好むことが多い印象ですので、「N3A000」または「N4A000」プラグの方が好印象となるのではと思います。とはいえリスニング的には「N3A035」も僅かにウォームさのあるSIMGOTらしい音作りが楽しめ、特に見通しの良いアンプやDAPを使用して聴くうえでは結構良いのではと感じました。「N4A000」は非常に明瞭で解像感が高いだけに、やや聴き疲れはしやすいかもしれませんね。

SIMGOT EA2000SIMGOT EA2000」の高域は、明るく伸びやかな音を鳴らします。「N3A000」および「N4A000」はまっすぐ伸びていく印象で細かい音もしっかり捉える見通しの良さと解像感をより実感しやすい印象。特にバランスの「N4A000」では分離感が高まり透明感が向上します。いっぽうで「N3A035」では女性ボーカルやピアノの高音など中高域からのスッキリした抜けの良さは維持しつつ若干抑え気味でボーカル域が際立つようなチューニングになります。ただし、「N3A035」の場合、シンバル音がちょっと目立つアクセントがあり、高域の実際の解像感は「N3A000」「N4A000」より低いものの存在感のあるチューニングになっています。

中音域は特に凹むことはなく広い音場感で立体的な音を鳴らします。ボーカル域は比較的近く、女性ボーカルは艶やかで男性ボーカルは密度感があります。自然な輪郭を保ちつつ息づかいや余韻もしっかり表現されており、明瞭な解像感と人工的にならない自然な粒立ちの良さのバランスが絶妙です。
SIMGOT EA2000また演奏との分離に優れ見通しがよく、楽器の質感はリアルで生き生きとした印象があります。女性ボーカル同様にピアノも非常に美しく伸びやかで、ストリングスは豊かな倍音があり気持ちよい厚みを感じます。ブラスはエネルギッシュですが、全体とのバランスに優れ全体として優れた臨場感があります。広く立体的な音場で定位にも優れているため、オーケストラをバックにしたピアノ曲やボーカルが歌い上げるような音源ではその特徴がもっとも実感させられるように思います。

低域は非常に深く、絶妙な広がりと心地よくスッキリとした鳴り方で存在感を示してくれます。もし低域がやや淡泊に感じたらイヤーピースを換えてよりフィット感を高めるのが良いと思います。メインの12mmドライバーの低域は小気味良く、重さや響きより適度に締まりがあり直線的なレスポンスを重視した印象だろうと思われますが、そこにパッシブラジエーターによるブーストされた低域が加わることで奥の方で自然に広がり、独特のグルーヴ感を演出する印象になります。重低音も非常に深く解像度も高い印象で、音数の多い曲も籠もること無く鳴ります。重くなりすぎないため非常に聴きやすく、同時に物足りなさも感じさせない臨場感があり「とにかく心地良い」低域だと思います。4万円オーバーの価格を全然高く無いと思わせるのに十分な説得力があります。


■ まとめ

SIMGOT EA2000というわけで、「SIMGOT EA2000 (Boson)」は、最近購入したイヤホンのなかでも、個人的には最も満足度の高い製品でした。やはりパッシブラジエーターによる低域はたまらんですね(^^;)。あと明瞭で抜けの良いサウンドも、ドンシャリ方向のバランスも、個人的に非常に好みです。SIMGOTのレビューだとつい書いてしまうのですが、「やっぱり音作りが上手い」ということにつきますね。ロック、ポップス、アニソンなどのボーカル曲、各種サウンドトラックやインストルメンタル、そしてクラシックなど、幅広いジャンルで実力を遺憾なく発揮してくれます。決して安価ではありませんが、いちおう試聴もできますし、興味のある方は購入されても結構期待に応えてくれるのではと思います。実はSIMGOTは「EN1000」も購入済みで、近いうちにレビューしようと思っていますが、もし購入できるのであれば「SIMGOT EA2000」のほうがお勧めです。間違いなく、非常に良いイヤホンですよ。