THIEAUDIO Ghost

こんにちは。今回は 「THIEAUDIO Ghost」です。Linsoul系のオーディオブランド「THIEAUDIO」の最新ヘッドホンでLinsoul(linsoul.com)で2月27日にオーダーが開始されました。同社は平面駆動のフラグシップ「Wraith」を昨年リリースしており、ヘッドホン製品でも手堅さがあります。今回の「THIEAUDIO Ghost」は「Wraith」のバランスの良いサウンドを踏襲しつつ、2万円以下の手頃な価格設定を実現している点でも注目度が高いですね。

■ 製品の概要について

THIEAUDIO Ghost」はLinsoul系ブランドの「THIEAUDIO」の最新ヘッドホン製品です。同社ではフラグシップモデルの「THIEAUDIO Wraith」が昨年リリースされ結構話題になりましたが、今回は比較的購入しやすい価格帯の開放型ヘッドホンになりますね。
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ドライバーには40mmサイズのサファイアダイナミックドライバーを搭載。熱可塑性ポリマー・フィルムにサーメット(cermet、セラミックのように硬く金属のように粘い強い、という意味の金属複合材)を重ねた新しい振動板を採用しています。具体的にはサーメット用にチタン合金とポリマーセラミック酸化物の複合材を選択し、マグネトロンスパッタリングによる定着方法でメッキ処理を行っています。「マグネトロンスパッタリング定着」については、私のレビューではDOC(DLC overcoat)振動板を採用する「TINHIFI T5」のレビューやTFZの第4世代ドライバー搭載機「TFZ KING RS」のレビューなどでも紹介していますね。

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また「THIEAUDIO Ghost」ではサファイア複合振動板に全体に十分な磁束を提供するため、強力なN52ネオジム磁石を搭載。非常に高い応答性とトランジェント、明瞭さ、低音のパワーを備えていることが特徴です。また可能な限り自然なサウンドを提供するため、オープンバック設計を採用。ドライバーの外側の音響キャビティに自然な空気の流れを実現。すべての曲に実在感のあるステージプレゼンスを提供し、スピーカーのようなリスニング体験を可能にします。そして大型で耳をすっぽり覆うハウジングでベロア生地の柔らかいイヤーパッドを採用しています。左右両出しタイプの脱着式ケーブルを採用し、バランスケーブルへのリケーブルも容易にできます。
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THIEAUDIO Ghost」の購入はLinsoul(linsoul.com)、AliExpressの「DD-Audio」、またはアマゾンの「LINSOUL-JP」にて。価格は129ドル、アマゾンでは17,420円です。
Linsoul(linsoul.com): THIEAUDIO Ghost
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): THIEAUDIO Ghost


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

THIEAUDIO Ghost」のパッケージは製品イラストが描かれたなかなか格好いいデザインですね。パッケージを開けるとしっかりしたヘッドホンケースが入っており、本体および付属品もケースの中に収納されています。
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パッケージ内容は、本体、ケーブル、説明書、ヘッドホンケース。説明書は日本語で分かりやすく記載されています。ケーブルは3.5mmの両出しタイプ。プラグも3.5mmステレオミニ仕様です。
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THIEAUDIO Ghost」はオーバーイヤーの耳をすっぽり覆う楕円形のハウジングが特徴的なデザインで、非常に軽量な設計になっています。ベロア生地のイヤーパッドもソフトなつけ心地ですね。ハウジングは回転したりするギミックはありませんが、イヤーパッドがしっかり耳を覆ってくれます。側圧はやや強めですが耳が痛くなることはなく、ソフトな感触でしっかりホールドしてくれる印象です。
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外観については分かる方はすぐにお気づきの通り、要するに「SRH1840」ぽいデザインですね(^^;)。とはいえレザーで覆われたヘッドバンド部のデザインだったり、イヤーカップの金属製のリング部分がゴールドカラーだったり、「SRH1840」では大きめのパンチ穴になっているイヤーカップのメッシュ部分がV字のスリットのカバーで裏にメッシュ穴のプレートが配置された構造だったりと、いろいろ意匠が異なります。ここは「オマージュしたデザイン」という類いのものだと解釈しましょう。
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また「SRH1840」をはじめとするShureのヘッドホンは先端がMMCXタイプになっている独自形式のコネクタ仕様ですが、「THIEAUDIO Ghost」は一般的な3.5mmコネクタの両出しタイプを採用。付属ケーブルはブラウンの樹脂被膜の線材で、左右の極性ごとに分かれた4芯線を各被膜で横方向に一体化した平面タイプです。
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THIEAUDIO Ghost」の場合は3.5mmのTRS仕様コネクタですので、互換性のあるケーブルを選びやすく、バランスケーブルなどにリケーブルも比較的容易です。先日レビューした「JSHiFi-静夜」でリケーブルしたところ問題なく利用できました。リケーブルの選択肢が多いのは有り難いですね。


■ サウンドインプレッション

THIEAUDIO GhostTHIEAUDIO Ghost」の音質傾向はフラット方向のニュートラルサウンドでバランスとしては若干のカマボコに感じる印象。ボーカル域を中心に自然な滑らかさと空気感があるサウンドです。モニター的な明瞭さとはちょっと違うのですが、中音域は生々しいリアルさもあり、息づかいや余韻もしっかり感じ取れます。高域はスッキリしつつ聴きやすい印象ですが、音量を上げるとやや刺さりやすい帯域もアクセントとしてあります。もっともこの辺はリケーブルで多少印象が変わります。前述の「JSHiFi-静夜」でバランス接続した方が全体的な解像感が向上しつつ、よりニュートラルな印象になりました。低域は量的にはやや控えめですがミッドベースに主張があるため心地よくボーカル域を下支えするビートが楽しめます。
また「THIEAUDIO Ghost」の仕様はインピーダンスは60Ω、感度91dB/mWで、最近のスマホでも使えるようなヘッドホンと比べると鳴らしにくく音量も取りにくい印象で、パワーのあるアンプでガツンと鳴らす方が心地よさがあります。

なお前述の「SRH1840」は6万円~7万円台の価格設定でよりモニター的な印象のサウンドであるなど、「THIEAUDIO Ghost」とはクラスが異なる製品です。しかし「SRH1840」はインピーダンス65Ω、感度96dBという仕様で、傾向的にも他社のモニター系ヘッドホンより多少エアリーな印象があるなど、「THIEAUDIO Ghost」のチューニングが「SRH1840」に結構寄せている感もあります。特にリケーブルした「THIEAUDIO Ghost」は音色もわりと近く、比較してもそれなりにいい線を行っているかも知れませんね。
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「SRH1840」以外でも、手持ちのヘッドホンと比較すると、「Sennheiser x Drop HD6XX」がバランスとしては近く、「HD6XX」のほうがニュートラルで深さと伸びを感じるいっぽうで「THIEAUDIO Ghost」はよりボーカル域がエネルギッシュに感じます。そういえば「SRH1840」は当時「HD650」のライバル機だったことを考えるとアプローチが似るのも納得ですし、やはり「THIEAUDIO Ghost」の価格を考えるとなかなか善戦しているのでは、とも思います。また価格帯的および傾向的には「HIFIMAN HE400se」あたりの機種が直接の比較対象となりそうです。「HE400se」はさらにフラット傾向のバランスのため、ボーカル曲をメインとするかどうか、というラインが検討のポイントになるかもしれませんね。

THIEAUDIO Ghost」の高域は、ややドライでスッキリした印象の音を鳴らします。中音域に比べると主張はやや控えめで乾いたシンバル音が少し後方で鳴る印象。ただ女性ボーカルのハイトーンなど刺さりやすい音域にアクセントがありやや硬質感もあります。この辺は銅線タイプのバランスケーブルにリケーブルすることで全体の解像感や主張が向上し、結果としてバランス的にはニュートラルになります。付属ケーブルの場合ボーカル域が心地よく主張し、これはこれで心地よさがあるため、どちらが良いかは好みによりますね。

THIEAUDIO Ghost中音域は付属ケーブルでは多少カマボコ気味になり、ボーカルは前面で主張します。中高域は明瞭感が有り、女性ボーカルやピアノの音色は適度な艶感があります。音像は自然な滑らかさがあり、輪郭の表現に若干の空気感はありますが細かい音を比較的捉えやすい印象。息づかいや余韻もしっかり感じられます。演奏との分離も良く、音場は開放型らしい自然な広がりがあります。ポップスやアニソンなどボーカル曲を中心に聴かれる方には相性の良いヘッドホンだと思います。インストルメンタルや演奏の質感をより向上させたい場合はリケーブルで変化が得られます。

低域は、フラット方向のバランスのため量的にはやや控えめに感じます。ミッドベースは適度な主張がありベースは弾むように鳴ります。適度にスピード感とキレもありますが、低域の音数が多い曲は多少混雑します。また重低音は軽く抜けていく感じがあります。開放型ヘッドホンではよくある傾向ですね。この辺で数万円級の有名モデルと比べて価格差なりの違いを感じる要素ではありますが、全体としては良くまとまっていると思います。


■ まとめ

というわけで、「THIEAUDIO Ghost」はニュートラルで自然なサウンドでまとめつつ、ボーカル域にフォーカスしたチューニングでTHIEAUDIOならではの個性を表現している印象もあります。2万円以下の価格設定もあり、心地よいサウンドを手軽に楽しめるのも良いですね。また3.5mm両出し仕様のコネクタはヘッドホン用リケーブルの入手もしやすいですので、バランス化も手頃にできるのがよいですね。突出したポイントは無いものの、高音質を気軽に楽しめるヘッドホンとしてお買い得度はとても高い製品だと思いますよ(^^)。