こんにちは。今回は「Shanling H7」です。久しぶりにポータブルアンプのレビューですね。DAP(デジタルオーディオプレーヤー)のブランドとしてマニアの間ではすっかりお馴染みとなった「Shanling」のハイエンドなポータブルアンプ製品です。 「AK4499EX」と「AK4191EQ」の合わせ技によるフラグシップ級DACチップに高品質なアンプ回路、そしてデジタルポータブルアンプとしては「全部入り」な入出力仕様で、それでいて「カバンでの持ち歩きも大丈夫そう」なサイズ感と、個人的にも「待望」のモデルです。
■ 製品の概要について
最近ではポータブルオーディオの世界では「Shanling」はマニアを中心にかなりメジャーな存在になりました。もともと30年以上の実績を持つ中国のオーディオメーカーで据置きの世界でもハイグレードな製品を結構出している「老舗」のひとつです。日本では高音質なDAP(デジタルオーディオプレーヤー)で幅広く知られる存在となり、最近ではワイヤレスアンプやオーディオアダプター、そしてイヤホン製品など幅広いラインナップが展開されています。個人的にも同社のDAP製品はずっと使い続けており、音質傾向的にも耳馴染みの良いメーカーでもあります。
そんなShanlingがリリースした新しいハイエンドのポータブルアンプが「Shanling H7」です。
「Shanling H7」では、AKM製のハイエンドDACチップ「AK4499EX」を、さらにΔΣモジュレータとして「AK4191EQ」を搭載します。この「AK4499EX+AK4191EQ」のコンビネーションでは、あらかじめ「AK4191EQ」部でノイズを低減したあとに「AK4499EX」でD/A変換を行う、デジタル信号処理とアナログ信号処理の物理的な分離を行う仕組みのため、モジュレータ部をチップ内に内蔵していた従来型の「AK4499」と比較し、より高いS/N効率を実現しています。この仕組みを回路設計に組み込むことでノイズレスで微細な情報を余すことなく再現し、聴覚上の「透明感」や「静寂感」をより高めています。
アンプ回路はTI製「TPA6120A2」を中心に優れた特性のあるコンデンサ等を採用し広帯域、ノイズレスで、滑らかさと温かみがあり自然かつ力強いサウンドに仕上げられています。
ローパスフィルタにはTI製「OPA2211」を採用。また「ADA4896-2」オペアンプ、KDS製水晶発振器と自社開発FPGAにより極めてクリーンで純粋で原音への忠実性の高いサウンドを実現しています。
そしてUSBインターフェースにはXMOS製「XU316」を採用し、16Coreの処理能力によりPCM 768kHz/32bit、DSD512、MQA(8X)デコードに対応。USB入力もUAC(USB Audio Class)2.0および1.0をサポート。
PC/Mac、Android、iPhone/iPadへのUSB接続のほか、UAC1.0モードに切替えることでPS5などのゲーム機の音声出力に使用することも可能です。
「Shanling H7」のヘッドホン出力は6.35mmステレオ、3.5mmステレオミニのシングルエンドと、4.4mmのバランス接続端子を搭載し、Low/Medium/Highの3段階のゲイン設定に対応。シングルエンドでは最大450mW、バランスでは1300mW(ともに32Ω)の高出力が可能です。また背面にはRCAのラインアウトも搭載します。
入力もUSB、SPDIF(Coaxial、Optical)、そしてBluetooth 5.0ワイヤレス接続に対応。BluetoothはLDAC、AAC、SBCの各コーデックに対応します。そして、microSDカードによるローカルファイル再生機能を搭載。最大2TBのmicroSDカードに対応し、Android/iOS用の「Eddict Player」コントロールアプリと「SyncLink機能」でペアリングすることで、音楽ファイルの再生などの操作や各種設定をスマートフォンから行うことが出来ます。
その他「Shanling H7」の製品概要および仕様等は以下サイトの通りです。
→ MUSIN公式サイト「SHANLING H7」製品ページ
「Shanling H7」のカラーバリエーションは「ブラック」と「チタニウム」の2色。専用のPUレザーケースも別売りで販売されています。購入はMUSIN直営店(Hey Listen)ほか主要な販売店にて。
価格は本体が108,900円、専用のレザーケースが4,950円です。
Amazon.co.jp(Hey Listen ショップ): Shanling H7(本体)
Amazon.co.jp(Hey Listen ショップ): Shanling H7専用PUレザーケース
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
というわけで、国内版のリリースに合せて届きました。カラーは「チタニウム」を選択しています。パッケージは製品画像が描かれたシンプルな白箱タイプ。同時発売の専用PUレザーケースは黒い箱で届いています。
個人的に過去に購入しているポータブルアンプはAliExpressなどを利用して海外セラーから、というパターンも結構多いのですが、ワイヤレス製品では技適の問題もありますし、故障した際のリスクを考慮するとやはりきちんとした国内代理店から購入するべきでしょう。「Shanling H7」については海外でも829ドルという価格設定で、多少円安が解消した最近の為替レートでも国内版のほうが低価格で購入できます。それで国内でサポートが受けられるメリットは大きいですね。毎度の事ながら国内代理店のMUSINは非常に良心的だと思います。
パッケージ内容は本体、充電用USB(Type-C to Type-A)ケーブル、接続用USB OTG(Type-C to Type-C)ケーブル、コアキシャル用変換ケーブル、ゴム足、布製ポーチ、スタートガイド、保証書。専用PUレザーケースはグレーのカラーのみが販売されています。薄い材質で本体にフィットし滑り止めにもなりますね。
本体サイズは142×85×25mm、352.5gとポータブルアンプとしては結構大きいサイズで、手持ちのポータブルアンプでは最も大きい「xDuoo XD05 BAL」と比べてもひとまわり大きいサイズ感です。まあなんとかギリギリ「ポータブル」という感じでもありますが、最近はさらに巨大で2倍近い重さのある「FiiO Q7」とかもありますので、正直最初に見た印象は「思ったより使いやすいサイズだな」と感じてしまったり。まあカバンで持ち歩くうえでは全然オッケーだと「個人的には」思いました(^^)。
本体バッテリーは6800mAhと本体サイズに見合った大容量で、高出力ながらシングルエンド10時間、バランス8時間の再生が可能。普段使いでは思い出したときに充電するくらいの感じで使えました。なお「専用の電源監視機能により高精度なパワーマネージメントを行っている」とのことですが、据置き利用の場合、常時給電ポートをつなぎっぱなしというのはやめた方がいいかなと思います。また、付属OTGケーブルを本体の「USB/DAC」ではなく充電用の「Charge」ポートに接続して、USB-C仕様のACアダプタからの給電やMacBookからの横取り給電も問題なく可能でした(ほかのOTGケーブルなどでも可)。ただ逆にC to Cの「USB PD(Power-Delivery)」用ケーブルは使用できませんでした。通常の使用では困ることは無いと思いますが念のため。
あと、余談ですが、ちょうど同じタイミングでMUSINショップでは「MUSIN君ケース2号」が発売されています。実際に使ってみると、これが「Shanling H7」はもちろん「FiiO Q7」サイズでも入ってしまうという、「いったいポータブルとは?」という疑問に向き合ってしまうことも無くはない、完全にごく一部のマニアのためだけの無双アイテムでした。だってイヤホンとかも含めて全部綺麗に入るんですよ。これ。絶対「Shanling H7」付属のポーチより有能です。持ち歩くなら間違いなく持ってたほうがエエですよ(^^;)。
本体の液晶パネルは小さく、必要最小限の情報しか表示しませんが、普段は音量以外では入力モードの変更やゲイン変更くらいしか使わないので慣れればそれほど難しくはありません。数分程度で全体の操作も理解できますし、操作のコツを掴んでしまえばさほど悩むことは少ないでしょう。
■ 接続および機能について(USB-DAC)
「Shanling H7」はUSB接続、SPDIF、ワイヤレス(Bluetooth 5.0)、そしてローカルファイル再生、と多様な入力機能を搭載しています。
「USB-DAC」モードでは付属のOTG(Type-C to Type-C)ケーブルで接続し、Android、PC、Mac、iPadなどでUAC2.0で接続して使用できます。iPhoneの場合は別途USB-Lightning OTGケーブルが必要となります。専用のものが今後発売されるとのことですが、とりあえず今回はMUSIN直営店で扱っているUAシリーズ用の「Shanling UA用Lightning to Type-C OTGケーブル」を使用して問題なく利用できました。
Windows10、11搭載PCについてはドライバー無しでもAmazon Musicアプリなどでの再生(排他モード含む)は可能ですが、通常はASIO対応ドライバーをインストールします。ドライバーはMUSINのサポートページからダウンロード可能です(Shanling社のページでもダウンロード可能ですが、確認した限りでは同じバージョンでした)。
MacやUSBトランスポートに対応しているDAP(デジタルオーディオプレーヤー)などはUAC2.0で接続されるため、DSDやMQAの再生も含めドライバー等は不要です。普段使用してる「Audirvana」のステータスでは「Shanling H7」の対応フォーマットを確認出来ました。
また再生時の各フォーマットはLEDのカラーで確認することが出来ます。本体の操作は、右側ダイヤルボタンの長押しで電源のON/OFF、回転でボリュームで、入力切替は右側のボタンを軽くプッシュすることで、USB→Bluetooth→Optical→COAX→ローカル再生と順にモードが順に切り替わります。右側を長押しすると各種設定モードに入り、最初の項目がゲイン設定です。再度長押しすると設定モードが終了します。通常はこれだけ覚えておけば特に困ることは無いでしょう。
■ サウンドインプレッション
「Shanling H7」の音質傾向は非常に癖の無い、フラットで透明感の高い音を鳴らします。ハイゲインではかなり高い出力を確保出来ますが、滑らかに駆動力を与えてくれる印象で派手さや極端に音圧が高まるような感覚はなくあくまで自然なサウンド。非常に繊細さがありかつ線が細くならずに、接続したイヤホンやヘッドホンの特徴を的確に表現してくれます。
この辺はAKMのDACチップの特性的な要素も大きく、据置きで普段使っている「FiiO K9 PRO LTD(AK4499版)」とも近い出力傾向かもですね。さらに「Shanling H7」はよりスッキリとした見通しの良さがあり、輪郭も含め的確に描写される低域と、1音1音を鮮やかに表現する中音域、明瞭で伸びやかさをしっかり捉える高域と、「AK4499EX」+「AK4191EQ」によるノイズレス感の向上と最大限に活かす回路設計がしっかり音質面に発揮されている印象です。
出力面ではローゲインでも音質的に変化することは無く、かなり敏感なCIEMなどでも快適に鳴らすことができ、ハイゲインでは逆に相当鳴らしにくいヘッドホンも問題なく対応します。どちらもS/Nは非常に高くホワイトノイズなどを感じることは皆無です。
個人的には癖の無いサウンドでさまざまなイヤホンやヘッドホンのレビューには最適です。このサウンドを持ち出せて、カフェとかでもがっつり高音質を楽しめるのは本当に有り難いですね。
■ 接続および機能について(Bluetooth)
Bluetoothモードに切替えてペアリングすると、対応するAndroidデバイスなどではLDACコーデック、それ以外ではAACでペアリングします。
「LDAC」コーデックのワイヤレス再生品質では「高音質」と「ベストエフォート」が選択できます。開発者向けオプションを有効にするとより詳細なビットレートも確認出来ます。開発者向けオプションを確認すると、「LDAC」以外には「AAC」と「SBC」コーデックをサポートし、「LDAC」モードでは最大96kbps、32bitでのLDAC接続が可能なことが確認出来ます。また後述する「Eddict Player」アプリでは本体のステータス及び各種設定の変更も可能です。
実際の音質面について、Bluetooth接続時にAmazon MusicでUltraHD音源を再生したところ24bit/96kHzでの再生も確認出来ました。ハイレゾ音源での印象は、ワイヤレス再生時はUSB接続に比べると若干解像感が落ちる印象はありますが、ストリーミング音源を中心にリスニングする場合は特に問題ないレベルで「Shanling H7」の実力を発揮できているように感じます。ロスレスフォーマットでもワイヤレスで十分に音質を堪能できると思います。
■ 接続および機能について(ローカル再生とSyncLinkによるリモート操作)
そして、もうひとつの再生機能がローカル再生のモードで、2TBまでのmicroSDに格納した音楽データを再生できる機能。操作はAndroid/iOS用の「Eddict Player」コントロールアプリを使用し、「SyncLink機能」でBluetoothペアリングすることで利用できます。
このローカル再生機能はどうやら「MPD(Music Player Daemon)」が組み込まれているとのことで、「Eddict Player」以外にもMPD用のコントロールソフトで再生などが出来るらしい、という情報があります。「MPD」はラズパイオーディオ(シングボードコンピュータの「Raspberry Pi」を使って構築されたオーディオ再生環境)を嗜んでいらっしゃる方にはお馴染みですね。私の場合はASUSTOR社製のNASに搭載されるMPDベースの「Hi-Res Player」機能をネットワークオーディオとして利用しており、MPD自体はわりと馴染みのある再生環境です。ただ「Eddict Player」以外のアプリでの接続についてはまだ未確認のため、今後の「自由研究」ネタにしようと思っています(^^;)。
とりあえず、「Shanling H7」のパフォーマンスを確認する意味もあって、1TBのmicroSDXCメディアにFLACやALAC、WAV、DSD、MQA、M4Aなどの音楽ファイルを合計900GB近く詰め込んで挿入し、「Eddict Player」で操作してみました。「Eddict Player」で「SyncLink」を選択するとBluetoothで接続され、リモート操作が可能になります。900GB近くの音楽データのスキャンも思ったほどの時間はかかりませんでした。
「SyncLink」接続後の「Eddict Player」アプリの操作はShanlingのAndroid搭載DAPとほぼ同様のインターフェースで、機能および操作性はAndroid用およびiOS用でほぼ同様です(一部表記が異なる程度)。またアプリ上で「Shanling H7」の各種設定の変更も可能です。
ただレビュー掲載数日前にたまたま使用してる「XPERIA 1III」のアップデートがあったため判明したのですが、Android版「Eddict Player」(バージョン2.1.3)はどうやらGoogle製スマートフォンやGalaxy、XPERIA(最新ファームウェア)など、一部の端末が搭載するAndroid13と相性が悪く、「SyncLink」で接続した場合の動作が非常に不安定になるようです。
現在も多くのスマートフォンが搭載しているAndroid12ベースの端末では安定して動作しますし、iOS版も安定していますので、現時点では多くの方に影響は無いと思いますが、より多くの端末が13対応になるまでには修正版のアップデートをお願いしたいところです。この点について確認したところ、Shanlingに対して既に問題点を伝えており、改善のための対応を進めているとの情報を得ました。
あと、これも現時点の仕様ですが、ローカル再生機能では音楽ファイルに貼ってあるカバーアートは表示されません。実用性に問題は無いもののこちらも今後の対応に期待したいところですね。
※3月7日追記(ファームウェア 1.5について):
「Shanling H7」の新バージョンのファームウェア(バージョン1.5)およびAndroid版「Eddict Player」のバージョン2.1.5がリリースされました。このバージョンでは2.1.3では動作に問題のあったAndroid13搭載のスマートフォン(Google Pixel、Galaxy、XPERIAなど)でも安定して動作するようになりました。
また新バージョンのファームウエアでは「SyncLink」接続後の「Eddict Player」アプリでの操作では曲データのカバーアートが正常に表示されるようになりました。他にも様々な修正が加えられており、安定した利用が可能になっています。レビューを掲載時の問題点はほぼ解決することが出来ました。
新しいファームウェアの案内→ 「ファームウェア・アップデートの更新内容について(MUSIN)」
■ まとめ
というわけで、「Shanling H7」はポータブルアンプとしてハイエンドらしい、ハイグレードなイヤホンやヘッドホンを余すところなく鳴らしてくれる実力を持っており、かつポータブルアンプとしてのサイズ感に何とか収まっているという絶妙な製品だと感じました。USB、SPDIF、そしてBluetoothでのひととおりの接続に対応しており、どの環境でも非常に高いクオリティのサウンドを楽しむことができます。最新版のファームウェアおよびアプリにより、私もメインで使っているローカル再生機能はさらに便利になりました。
個人的には、普段から出張の多い仕事をしていることもあり、据置きで使用している「FiiO K9 PRO LTD(AK4499)」と同等レベルのサウンドをポータブルで使えるのは本当に有り難いですね。平日の一部の新幹線で用意されているオフィス車両なら(空いていれば)移動中に2席使いで仕事をすることもできるので、「Shanling H7」で聴きながら余裕を持って仕事をすることもできます。いやあ、色々な意味で良い時代になったものですね(^^)。
最近ではポータブルオーディオの世界では「Shanling」はマニアを中心にかなりメジャーな存在になりました。もともと30年以上の実績を持つ中国のオーディオメーカーで据置きの世界でもハイグレードな製品を結構出している「老舗」のひとつです。日本では高音質なDAP(デジタルオーディオプレーヤー)で幅広く知られる存在となり、最近ではワイヤレスアンプやオーディオアダプター、そしてイヤホン製品など幅広いラインナップが展開されています。個人的にも同社のDAP製品はずっと使い続けており、音質傾向的にも耳馴染みの良いメーカーでもあります。
そんなShanlingがリリースした新しいハイエンドのポータブルアンプが「Shanling H7」です。
「Shanling H7」では、AKM製のハイエンドDACチップ「AK4499EX」を、さらにΔΣモジュレータとして「AK4191EQ」を搭載します。この「AK4499EX+AK4191EQ」のコンビネーションでは、あらかじめ「AK4191EQ」部でノイズを低減したあとに「AK4499EX」でD/A変換を行う、デジタル信号処理とアナログ信号処理の物理的な分離を行う仕組みのため、モジュレータ部をチップ内に内蔵していた従来型の「AK4499」と比較し、より高いS/N効率を実現しています。この仕組みを回路設計に組み込むことでノイズレスで微細な情報を余すことなく再現し、聴覚上の「透明感」や「静寂感」をより高めています。
アンプ回路はTI製「TPA6120A2」を中心に優れた特性のあるコンデンサ等を採用し広帯域、ノイズレスで、滑らかさと温かみがあり自然かつ力強いサウンドに仕上げられています。
ローパスフィルタにはTI製「OPA2211」を採用。また「ADA4896-2」オペアンプ、KDS製水晶発振器と自社開発FPGAにより極めてクリーンで純粋で原音への忠実性の高いサウンドを実現しています。
そしてUSBインターフェースにはXMOS製「XU316」を採用し、16Coreの処理能力によりPCM 768kHz/32bit、DSD512、MQA(8X)デコードに対応。USB入力もUAC(USB Audio Class)2.0および1.0をサポート。
PC/Mac、Android、iPhone/iPadへのUSB接続のほか、UAC1.0モードに切替えることでPS5などのゲーム機の音声出力に使用することも可能です。
「Shanling H7」のヘッドホン出力は6.35mmステレオ、3.5mmステレオミニのシングルエンドと、4.4mmのバランス接続端子を搭載し、Low/Medium/Highの3段階のゲイン設定に対応。シングルエンドでは最大450mW、バランスでは1300mW(ともに32Ω)の高出力が可能です。また背面にはRCAのラインアウトも搭載します。
入力もUSB、SPDIF(Coaxial、Optical)、そしてBluetooth 5.0ワイヤレス接続に対応。BluetoothはLDAC、AAC、SBCの各コーデックに対応します。そして、microSDカードによるローカルファイル再生機能を搭載。最大2TBのmicroSDカードに対応し、Android/iOS用の「Eddict Player」コントロールアプリと「SyncLink機能」でペアリングすることで、音楽ファイルの再生などの操作や各種設定をスマートフォンから行うことが出来ます。
その他「Shanling H7」の製品概要および仕様等は以下サイトの通りです。
→ MUSIN公式サイト「SHANLING H7」製品ページ
「Shanling H7」のカラーバリエーションは「ブラック」と「チタニウム」の2色。専用のPUレザーケースも別売りで販売されています。購入はMUSIN直営店(Hey Listen)ほか主要な販売店にて。
価格は本体が108,900円、専用のレザーケースが4,950円です。
Amazon.co.jp(Hey Listen ショップ): Shanling H7(本体)
Amazon.co.jp(Hey Listen ショップ): Shanling H7専用PUレザーケース
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
というわけで、国内版のリリースに合せて届きました。カラーは「チタニウム」を選択しています。パッケージは製品画像が描かれたシンプルな白箱タイプ。同時発売の専用PUレザーケースは黒い箱で届いています。
個人的に過去に購入しているポータブルアンプはAliExpressなどを利用して海外セラーから、というパターンも結構多いのですが、ワイヤレス製品では技適の問題もありますし、故障した際のリスクを考慮するとやはりきちんとした国内代理店から購入するべきでしょう。「Shanling H7」については海外でも829ドルという価格設定で、多少円安が解消した最近の為替レートでも国内版のほうが低価格で購入できます。それで国内でサポートが受けられるメリットは大きいですね。毎度の事ながら国内代理店のMUSINは非常に良心的だと思います。
パッケージ内容は本体、充電用USB(Type-C to Type-A)ケーブル、接続用USB OTG(Type-C to Type-C)ケーブル、コアキシャル用変換ケーブル、ゴム足、布製ポーチ、スタートガイド、保証書。専用PUレザーケースはグレーのカラーのみが販売されています。薄い材質で本体にフィットし滑り止めにもなりますね。
本体サイズは142×85×25mm、352.5gとポータブルアンプとしては結構大きいサイズで、手持ちのポータブルアンプでは最も大きい「xDuoo XD05 BAL」と比べてもひとまわり大きいサイズ感です。まあなんとかギリギリ「ポータブル」という感じでもありますが、最近はさらに巨大で2倍近い重さのある「FiiO Q7」とかもありますので、正直最初に見た印象は「思ったより使いやすいサイズだな」と感じてしまったり。まあカバンで持ち歩くうえでは全然オッケーだと「個人的には」思いました(^^)。
本体バッテリーは6800mAhと本体サイズに見合った大容量で、高出力ながらシングルエンド10時間、バランス8時間の再生が可能。普段使いでは思い出したときに充電するくらいの感じで使えました。なお「専用の電源監視機能により高精度なパワーマネージメントを行っている」とのことですが、据置き利用の場合、常時給電ポートをつなぎっぱなしというのはやめた方がいいかなと思います。また、付属OTGケーブルを本体の「USB/DAC」ではなく充電用の「Charge」ポートに接続して、USB-C仕様のACアダプタからの給電やMacBookからの横取り給電も問題なく可能でした(ほかのOTGケーブルなどでも可)。ただ逆にC to Cの「USB PD(Power-Delivery)」用ケーブルは使用できませんでした。通常の使用では困ることは無いと思いますが念のため。
あと、余談ですが、ちょうど同じタイミングでMUSINショップでは「MUSIN君ケース2号」が発売されています。実際に使ってみると、これが「Shanling H7」はもちろん「FiiO Q7」サイズでも入ってしまうという、「いったいポータブルとは?」という疑問に向き合ってしまうことも無くはない、完全にごく一部のマニアのためだけの無双アイテムでした。だってイヤホンとかも含めて全部綺麗に入るんですよ。これ。絶対「Shanling H7」付属のポーチより有能です。持ち歩くなら間違いなく持ってたほうがエエですよ(^^;)。
本体の液晶パネルは小さく、必要最小限の情報しか表示しませんが、普段は音量以外では入力モードの変更やゲイン変更くらいしか使わないので慣れればそれほど難しくはありません。数分程度で全体の操作も理解できますし、操作のコツを掴んでしまえばさほど悩むことは少ないでしょう。
■ 接続および機能について(USB-DAC)
「Shanling H7」はUSB接続、SPDIF、ワイヤレス(Bluetooth 5.0)、そしてローカルファイル再生、と多様な入力機能を搭載しています。
「USB-DAC」モードでは付属のOTG(Type-C to Type-C)ケーブルで接続し、Android、PC、Mac、iPadなどでUAC2.0で接続して使用できます。iPhoneの場合は別途USB-Lightning OTGケーブルが必要となります。専用のものが今後発売されるとのことですが、とりあえず今回はMUSIN直営店で扱っているUAシリーズ用の「Shanling UA用Lightning to Type-C OTGケーブル」を使用して問題なく利用できました。
Windows10、11搭載PCについてはドライバー無しでもAmazon Musicアプリなどでの再生(排他モード含む)は可能ですが、通常はASIO対応ドライバーをインストールします。ドライバーはMUSINのサポートページからダウンロード可能です(Shanling社のページでもダウンロード可能ですが、確認した限りでは同じバージョンでした)。
MacやUSBトランスポートに対応しているDAP(デジタルオーディオプレーヤー)などはUAC2.0で接続されるため、DSDやMQAの再生も含めドライバー等は不要です。普段使用してる「Audirvana」のステータスでは「Shanling H7」の対応フォーマットを確認出来ました。
また再生時の各フォーマットはLEDのカラーで確認することが出来ます。本体の操作は、右側ダイヤルボタンの長押しで電源のON/OFF、回転でボリュームで、入力切替は右側のボタンを軽くプッシュすることで、USB→Bluetooth→Optical→COAX→ローカル再生と順にモードが順に切り替わります。右側を長押しすると各種設定モードに入り、最初の項目がゲイン設定です。再度長押しすると設定モードが終了します。通常はこれだけ覚えておけば特に困ることは無いでしょう。
■ サウンドインプレッション
「Shanling H7」の音質傾向は非常に癖の無い、フラットで透明感の高い音を鳴らします。ハイゲインではかなり高い出力を確保出来ますが、滑らかに駆動力を与えてくれる印象で派手さや極端に音圧が高まるような感覚はなくあくまで自然なサウンド。非常に繊細さがありかつ線が細くならずに、接続したイヤホンやヘッドホンの特徴を的確に表現してくれます。
この辺はAKMのDACチップの特性的な要素も大きく、据置きで普段使っている「FiiO K9 PRO LTD(AK4499版)」とも近い出力傾向かもですね。さらに「Shanling H7」はよりスッキリとした見通しの良さがあり、輪郭も含め的確に描写される低域と、1音1音を鮮やかに表現する中音域、明瞭で伸びやかさをしっかり捉える高域と、「AK4499EX」+「AK4191EQ」によるノイズレス感の向上と最大限に活かす回路設計がしっかり音質面に発揮されている印象です。
出力面ではローゲインでも音質的に変化することは無く、かなり敏感なCIEMなどでも快適に鳴らすことができ、ハイゲインでは逆に相当鳴らしにくいヘッドホンも問題なく対応します。どちらもS/Nは非常に高くホワイトノイズなどを感じることは皆無です。
個人的には癖の無いサウンドでさまざまなイヤホンやヘッドホンのレビューには最適です。このサウンドを持ち出せて、カフェとかでもがっつり高音質を楽しめるのは本当に有り難いですね。
■ 接続および機能について(Bluetooth)
Bluetoothモードに切替えてペアリングすると、対応するAndroidデバイスなどではLDACコーデック、それ以外ではAACでペアリングします。
「LDAC」コーデックのワイヤレス再生品質では「高音質」と「ベストエフォート」が選択できます。開発者向けオプションを有効にするとより詳細なビットレートも確認出来ます。開発者向けオプションを確認すると、「LDAC」以外には「AAC」と「SBC」コーデックをサポートし、「LDAC」モードでは最大96kbps、32bitでのLDAC接続が可能なことが確認出来ます。また後述する「Eddict Player」アプリでは本体のステータス及び各種設定の変更も可能です。
実際の音質面について、Bluetooth接続時にAmazon MusicでUltraHD音源を再生したところ24bit/96kHzでの再生も確認出来ました。ハイレゾ音源での印象は、ワイヤレス再生時はUSB接続に比べると若干解像感が落ちる印象はありますが、ストリーミング音源を中心にリスニングする場合は特に問題ないレベルで「Shanling H7」の実力を発揮できているように感じます。ロスレスフォーマットでもワイヤレスで十分に音質を堪能できると思います。
■ 接続および機能について(ローカル再生とSyncLinkによるリモート操作)
そして、もうひとつの再生機能がローカル再生のモードで、2TBまでのmicroSDに格納した音楽データを再生できる機能。操作はAndroid/iOS用の「Eddict Player」コントロールアプリを使用し、「SyncLink機能」でBluetoothペアリングすることで利用できます。
このローカル再生機能はどうやら「MPD(Music Player Daemon)」が組み込まれているとのことで、「Eddict Player」以外にもMPD用のコントロールソフトで再生などが出来るらしい、という情報があります。「MPD」はラズパイオーディオ(シングボードコンピュータの「Raspberry Pi」を使って構築されたオーディオ再生環境)を嗜んでいらっしゃる方にはお馴染みですね。私の場合はASUSTOR社製のNASに搭載されるMPDベースの「Hi-Res Player」機能をネットワークオーディオとして利用しており、MPD自体はわりと馴染みのある再生環境です。ただ「Eddict Player」以外のアプリでの接続についてはまだ未確認のため、今後の「自由研究」ネタにしようと思っています(^^;)。
とりあえず、「Shanling H7」のパフォーマンスを確認する意味もあって、1TBのmicroSDXCメディアにFLACやALAC、WAV、DSD、MQA、M4Aなどの音楽ファイルを合計900GB近く詰め込んで挿入し、「Eddict Player」で操作してみました。「Eddict Player」で「SyncLink」を選択するとBluetoothで接続され、リモート操作が可能になります。900GB近くの音楽データのスキャンも思ったほどの時間はかかりませんでした。
「SyncLink」接続後の「Eddict Player」アプリの操作はShanlingのAndroid搭載DAPとほぼ同様のインターフェースで、機能および操作性はAndroid用およびiOS用でほぼ同様です(一部表記が異なる程度)。またアプリ上で「Shanling H7」の各種設定の変更も可能です。
現在も多くのスマートフォンが搭載しているAndroid12ベースの端末では安定して動作しますし、iOS版も安定していますので、現時点では多くの方に影響は無いと思いますが、より多くの端末が13対応になるまでには修正版のアップデートをお願いしたいところです。この点について確認したところ、Shanlingに対して既に問題点を伝えており、改善のための対応を進めているとの情報を得ました。
※3月7日追記(ファームウェア 1.5について):
「Shanling H7」の新バージョンのファームウェア(バージョン1.5)およびAndroid版「Eddict Player」のバージョン2.1.5がリリースされました。このバージョンでは2.1.3では動作に問題のあったAndroid13搭載のスマートフォン(Google Pixel、Galaxy、XPERIAなど)でも安定して動作するようになりました。
また新バージョンのファームウエアでは「SyncLink」接続後の「Eddict Player」アプリでの操作では曲データのカバーアートが正常に表示されるようになりました。他にも様々な修正が加えられており、安定した利用が可能になっています。レビューを掲載時の問題点はほぼ解決することが出来ました。
新しいファームウェアの案内→ 「ファームウェア・アップデートの更新内容について(MUSIN)」
■ まとめ
というわけで、「Shanling H7」はポータブルアンプとしてハイエンドらしい、ハイグレードなイヤホンやヘッドホンを余すところなく鳴らしてくれる実力を持っており、かつポータブルアンプとしてのサイズ感に何とか収まっているという絶妙な製品だと感じました。USB、SPDIF、そしてBluetoothでのひととおりの接続に対応しており、どの環境でも非常に高いクオリティのサウンドを楽しむことができます。最新版のファームウェアおよびアプリにより、私もメインで使っているローカル再生機能はさらに便利になりました。
個人的には、普段から出張の多い仕事をしていることもあり、据置きで使用している「FiiO K9 PRO LTD(AK4499)」と同等レベルのサウンドをポータブルで使えるのは本当に有り難いですね。平日の一部の新幹線で用意されているオフィス車両なら(空いていれば)移動中に2席使いで仕事をすることもできるので、「Shanling H7」で聴きながら余裕を持って仕事をすることもできます。いやあ、色々な意味で良い時代になったものですね(^^)。
海外価格の約1.5倍にする某代理店さんは見習ってほしいものです。。