TINHIFI C5

こんにちは。今回は「TINHIFI C5」です。「TINHIFI」の「Cシリーズ」の最新モデルは10mmサイズのSPD(角形平面ドライバー)とBAのハイブリッドで登場しました。すでにKineraやTRNからもリリースされているSPDハイブリッドですが、TINHIFIらしいシンプルな金属シェルを採用し、ニュートラルなバランスを目指した意欲的なモデルとして仕上がっています。例によって発売後すぐに購入してみました(^^)。

■ 製品の概要について

昨年後半くらいから次々と新製品をリリースしている中華イヤホンブランド「TINHIFI」ですが、同社の新しい「Cシリーズ」は、従来の「Tシリーズ」に比べ比較的低価格で興味深い製品をラインナップしています。この「Cシリーズ」で「MECA C2」「C3」に次いで登場したのが今回の「TINHIFI C5」となります。現在(Kinera)「Celest」や「TRN」などからリリースされている「SPD」(角形平面ドライバー)を「TINHIFI」としては初めて採用したハイブリッド仕様のモデルです。

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TINHIFI C5」は惑星をイメージした円形のデザインを採用しており、片側約4gの軽量コンパクト設計でより快適な装着性を実現してます。シェルは航空グレードのアルミニウム素材を5軸CNC精密加工で成形し、手作業で研磨され、表面処理が施されています。
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ドライバーには正方形型の10mm SPD(Square Planar Driver/角形平面ドライバー)と高域及び高高域用のカスタマイズされたバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを搭載。平面駆動とBAのそれぞれの利点を活かした設計で、TINHIFIのエンジニアによる幾度ものシミュレーションを経て最適なバランスで組み合わせが行われています。ケーブルは0.78mm 2pinコネクタを採用し、芯あたり74本、4芯で296本の線材を使用した銀メッキ線ケーブルが付属します。
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TINHIFI C5」の購入は海外の主要セラー、AliExpressおよびアマゾンの各マーケットプレイスにて。
価格は79ドル前後、アマゾンでは10,420円~で販売されています。
AliExpress(TINHIFI Offical Store): TINHIFI C5
HIFIGO: TINHIFI C5 / Linsoul: TINHIFI C5
Amazon.co.jp(TINHIFI Offical): TINHIFI C5
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): TINHIFI C5
Amazon.co.jp(HiFiGo): TINHIFI C5


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

TINHIFI C5」のパッケージは惑星のコンセプトにもとづいたイラストが描かれたブラックのシンプルなボックス。化粧カバーを外しても同様のデザインが描かれています。
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パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースは各サイズ2ペアずつ、ブルーのウレタンイヤーピース、布製ポーチ、説明書、保証書。
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シェルは円形で、似たデザインの「TINHIFI T2 PLUS」よりさらにコンパクトな印象。本体部分に10mm SPD、ステムノズル部分にBAを収納しています。ステムノズルは楕円形になっています。
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同様に10mm SPD搭載ハイブリッド構成の「Kinera Celest Gumiho」や「TRN XuanWu (玄武)」と比較しても「TINHIFI C5」は相当コンパクトですね。耳にすっぽり収まるサイズ感で耳への収まりは良好です。ただしステム部分が少し短いためイヤーピースが合わないと低域が抜けたような印象になります。少し大きめのイヤーピースを選ぶか、耳奥までしっかり装着出来るように長めの形状のイヤーピースを選ぶことで印象が変わる場合があります。
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イヤーピースはTINHIFI製イヤホンにこれまでも付属してる一般的なものですが、交換する場合は楕円形のステムノズルに合せやすいように軸部分に弾力があり、かつ多少リーチのあるほうが良いでしょう。Acoustuneの新タイプの「AEX07」や、少し大きめの「Spinfit CP100+」、あるいは「Softears U.C.」などが相性が良い印象でした。
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ケーブルは4芯タイプの銀メッキ線で柔らかい線材を使用しており取り回ししやすい印象。コネクタはフラットな2pin仕様のためリケーブルの選択肢は多く選びやすいですね。


■ サウンドインプレッション

TINHIFI C5」の音質傾向はバランスの良い緩やかなU字に近い弱ドンシャリ。「TINHIFI」の「Cシリーズ」のなかでは最もニュートラル方向で穏やかな印象のサウンドです。アプローチとしてはメリハリのあるドンシャリ傾向の「TRN XuanWu (玄武)」より「Kinera Celest Gumiho」の方向性に近いものの、Kineraらしい若干のウォームさを持ちつつ中高域寄りなアプローチの「Gumiho」に対して、より自然で癖の無いバランスに仕上がっています。
TINHIFI C5「Cシリーズ」では全体としては「○○ターゲット」的なサウンドバランスを踏襲しつつ、「MECA C2」が中高域のキレがよくメリハリ強めの寒色系で、「C3」が中低域寄りで臨場感のあるサウンド、と、それぞれ異なるキャラクターが与えられていましたが、「TINHIFI C5」では方向性としては「T3 PLUS」あたりの聴きやすく万人受けしやすいニュートラルサウンドに寄せているように感じます。しかし、自信を持ってこのチューニングにしている、というよりは「SPD」という新しいドライバーを使った構成で万人受けしやすい無難なチューニング、という感じもしないではありません。

印象としてはまとまりのある仕上がりですが、アプローチが明確な「MECA C2」や「C3」と比べると、方向性が今ひとつはっきりしていない感じもあります。ちょうど「T2 PLUS」や「T1 PLUS」あたりの機種で感じたものに近く、マーケティング的な要望に合せたチューニングをしつつ、いまひとつ「納得し切れていない」部分みたいなものを個人的に感じるからかもしれませんね。
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とはいえ、イヤーピースでもかなり印象が変わりますし、上流の再生環境でも変化があることからリケーブルの効果も非常に大きい印象です。同時期に届いたHCKの純銀線ケーブル「NICEHCK RedAg」にリケーブルしてみましたが、中高域の明瞭感や伸びが向上し、かなり印象が変化しました。純銀線のように高域が伸びるケーブルとの相性は良いようです。また比較的音量が取りにくいイヤホンのため、駆動力のある再生環境での利用が望ましいでしょう。

TINHIFI C5」の高域は聴きやすく明瞭感のある音を鳴らします。比較的スッキリした印象で曇りのようなものはありませんが主張がやや弱く控えめな印象に感じさせます。抜けは悪くないのですが中高域付近もやや線が細い印象のためボーカル中心のチューニングというわけではなく、普通に物足りない印象。高域が伸びるタイプのケーブルにリケーブルの上、駆動力のある再生環境でガツンと鳴らすと印象は多少改善されます。

中音域はいわゆる「○○ターゲット」寄りのニュートラルチューニングで、「Cシリーズ」のなかでも最も穏やかな印象の音を鳴らします。滑らかで聴きやすく自然な印象のサウンド、ではあるものの、最近のTINHIFIの音作りを考えるとややどっちつかず感もあります。どちらかというと寒色傾向ですが、かといって切れが良いわけでもない、といった印象で、もう少しハッキリした方向性が欲しくなります。
TINHIFI C5おそらくチューニングとしては「T3 PLUS」のようなニュートラル方向の音作りを目指しているはずなのですが、使用しているSPDの特性を活かし切れていないのか、そもそもドライバーが目標とした解像感や質感を実現できていないのか、そんな感じかもしれません。正直50ドル以下のイヤホンでしたら「こんなもんかな」と思えなくもないですが、29ドルの「MECA C2」、49ドルの「C3」と比べると、やはり「もっと頑張って欲しい」ところです。こちらもリケーブルでよりスッキリした印象に変化し、分離感の向上で音場も広くなります。リケーブルは「必須」かもしれませんね。

低域は「TINHIFI C5」のなかで最も好印象な部分です。ミッドベースは適度な締まりがあり、アタックもスピード感があります。中高域との分離も良く適度な重さのある音を鳴らしてくれます。重低音は良こそ多くはありませんが適度な深さがあり心地よい臨場感を演出してくれます。また平面駆動らしい、歪みのない音像表現も好印象ですね。付属ケーブルではやや低域が目立つ印象があるため、純銀線などを使用し駆動力のある環境で鳴らすことで本来の最適なバランスで楽しめると思います。


■ まとめ

TINHIFI C5というわけで、「TINHIFI C5」は、これまでの「Cシリーズ」、つまり「MECA C2」や「C3」のような、既存のドライバーや経験などを踏まえて低コストで手堅くまとめた製品とは異なり、「巷で話題になってるSPDとやらをウチも使ってみたよ」的なちょっと実験的な製品に感じました。そのため、いまひとつチューニングがこなれていないというか慣れていない感じもありました。そのため価格的には1万円での選択肢が非常に多い現在、「敢えてこれを選ぶ」というのはかなり厳しそうです。すでに同クラスまたはそれ以上のイヤホンを複数使っているマニア向けの「ちょっとSPDを遊んでみよう」という製品かもしれませんね。
とはいえ適切なケーブルにリケーブルし、しっかりとした環境で鳴らせば、これまでの「SDP+BAハイブリッド」製品と比較しても全体のバランスに優れた「まとまりのあるサウンド」になるため、マニアにとっては多少「遊べる」イヤホンであることも、また言えると思いますよ(^^;)。